実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第562回】北川景子『黒い樹海』の巻(2)



 9nineから川島海荷が脱退する(正式には「卒業」)そうだ。東京女子流、Dream5に続いて9nineも5人組から4人組へ。女優として自分を追い込むための決断だろうけど、実写版のセーラー戦士と違って、現役グループはこういうことがあるからつらいね。



 9nineは名古屋を大切にしてくれるグループで、川島海荷の卒業記念となる7月のツアーは、7月1日のZepp Nagoyaが初日で、たぶんかなり盛り上がると思う。私は去年あたりからトシのせいでアイドルのライブには行かなくなっちゃっているが(でも誘ってくれる人がいるときは行くけどね、フフフ)どうしようかなぁ。もう一度だけ「9nine o’clock」を聴いておきたいような気もする。



 9nineはメンバーのルックス、ライブにおけるパフォーマンスと演出、どれも完成度が高くて常に安定している。オタク乗りじゃなくフツーに「鑑賞」に行ってもじゅうぶん楽しめる内容なのが強みである(アイドル的には逆に弱みでもある)。あとは楽曲だ。実験的な方向に挑戦するのもいいが、もっと9nineらしい、ハーモニーを活かした王道ポップスで固めたアルバムがそろそろ欲しい。



 それでグループの今後だが、4人でやっていく方針らしいがやっぱりちょっと淋しいなぁ。本当は下垣真香や三浦萌に戻って欲しいけど、いまさらという気もするし、そもそも三浦萌はすでに事務所を移籍していた(今回気づいてちょっとショック)。
 ものすごく思い切った案として、新メンバーに能年玲奈を迎えて5人組というのはどうだろうか。じぇじぇじぇ!(古いよ)いやこれ半分くらいは本気なんだけど。




 さて『黒い樹海』である。原作は松本清張のヒロインもののなかでも、初期の代表作と言われている。
 主人公の笠原祥子(北川景子)は、両親を早くに失い、東京で姉と二人暮らしをしている。姉は大手新聞の文化部記者として華やかに活動しているが、祥子は失業中で、あちこちに履歴書を送って就職活動に余念がない(原作小説では貿易会社の地味なOLという設定)。そんな彼女に大きな不幸が降りかかるところからドラマは始まる。たった一人の肉親だった姉の信子(小池栄子)が、旅先で事故に遭遇して命を失ってしまったというのだ。



 一報を受けて現場に駆けつけた祥子に、警察が事故の顛末を説明する。長野県の信濃大町駅から大町温泉に向かっていた路線バスが、居眠り運転のダンプに激突されて命を落したという(ちなみに原作の舞台は大町ではなく、浜松駅から弁天島へ向かって出た観光バスが、踏切通過中に、遮断機が降りていなかったなどの幾つかのアクシデントが重なって、列車と激突したことになっている)。



 ダンプは、停留所に駐車していたバスに、後方から突っ込んできた。だから前方に座っていた乗客たちには比較的被害は少なかった。しかし不運にも姉の信子は最後列に座っていて、その結果、命を落すこととなってしまった。
 検死の結果、遺体が信子であることは間違いなかったが、祥子としてはどうしても納得できない。なぜなら姉は、今回の有給休暇を利用して東北に行くと言っていたのだ。いまごろ青森の十和田湖にいるはずだったのである。



祥 子「変です」



安 原「何がですか?」



祥 子「姉は今朝、東北の十和田湖に向かったんです」



安 原「十和田湖?」



祥 子「なのに何で、この長野で事故に遭うんですか?姉は大町温泉に行くなんて一言も……」
安 原「それは……」



祥 子「見てください」



安 原「『これから東北新幹線に乗ります。乗ったらすぐ寝ちゃうなー』……」



祥 子「姉がこの長野にいるはずないんです!」


 安原刑事とか長野県警の人は、すでに「はは〜ん」と気づいているが、この状況ではご遺族に申し上げづらい、という表情だ。妹に行き先を偽って旅に出たわけで、おそらくは一人旅ではなく伴侶がいたということだろう。家族にも言えないような相手である。はっきりいえば妻子ある男性との不倫旅行だ。
 まあ原作は1960年代後半に書かれているから「不倫」なんて単語は使われていないけどね。「不倫」という言い方がマスコミで一般化したのは『金曜日の妻たちへ』(1983)からではなかったかな。



 私は観ていなかったので正直よく分からないが「金妻」(=不倫)の語は当時、倦怠期に入りつつあった団塊世代の、ある種の自由恋愛みたいな意味で使われていた(推定)。それから渡辺淳一の『失楽園』(1995年、森田芳光監督の映画版は1997年)あたりまで、不倫というのは誉められないまでも、結婚という制度に束縛されない「自分(の欲望)に正直な生き方」としての認知は得ていたと思う。そういう時代を通過してきた身としては、昨今の「ゲス不倫」バッシングはほとんど隣の国の姦通罪みたいに見えて、正直どうなんだろうと思う部分が、ややなくはない(弱気な表現)。
 日本には戦前「姦通罪」というものがあって、夫以外の男と通じた女性は2年以下の懲役刑に処せられた。この法律は日本統治時代の朝鮮においても施行された。で、日本の姦通罪は戦後に廃止されたが、韓国では存続し、しかも男女平等というか、配偶者のある者には男女を問わず適用された。昨年2015年2月に「姦通罪は違憲である」という判決が出て、ようやく廃止されたという話だ。



 警察の話では、祥子の姉はバスのなかで重傷の状態で発見されて、病院で息をひきとったという。もしこれが想像どおり妻子ある男性との不倫旅行だったとすると、相手の男は、二人の関係が発覚することを恐れ、瀕死の姉を見捨てて逃げたということになる。ここにひとつ、大きなひっかかりが残る。
 もうひとつ、この事故で命を落した被害者のうちただひとり、祥子の姉だけ身許確認がなかなかとれず、祥子への連絡がほかの人より数時間遅れたという問題がある。祥子の知っている姉は、外出するときはいつも、財布とか定期入れとか社員証とか免許証のたぐいを、小さなバッグにまとめて手荷物に入れている。だから現場を捜索すれば、すぐにそれが見つかって、自分に連絡がとれたはずなのだ。それがなぜこんなに遅くなったのか。



祥 子「あの、さっき確か、姉だけ身許の確認が遅れたって……」
安 原「ご遺体に身許が分かるものが何にもなかったんですよ」
祥 子「そんなはずありません。ハンドバッグのなかに……」



安 原「まあ、どうぞ」


╳    ╳    ╳



祥 子「姉のボストンバッグです」



安 原「このボストンバッグだけ持ち主が分からなかったんです」

祥 子「え、でも」



安 原「お姉さまの身許が分かったのは、事故から四時間後の午後六時半頃、近所に住む女性が、事故現場の近くに落ちていたと言って、このハンドバッグを持ってきたからなんですよ」




 これはもう、だれかが身許の確認を遅らせるために、ハンドバッグだけを抜き取ってバスを離れたところに捨てたとしか考えられない。
 というわけで、事故死であること自体は疑えないにせよ、何かしらの事実が隠蔽されていることもまた間違いない、という状況で、祥子はさまざまな疑惑を抱え、気持ちに整理がつかないまま葬儀に臨む。





祥 子(雑誌やテレビで名前を見たり聞いたりしたことのある著名な文化人たちから、続々と弔花が届けられていた)




祥 子(姉はこういう人物たちを相手に仕事をしていたのだ)


╳    ╳    ╳



大 島「東都新聞、文化部部長の大島と申します。このたびは、本当に大変なことで、ご愁傷様です」



祥 子「畏れ入ります」



大 島「お姉さんから、妹の祥子さんのことは、よく……」



祥 子「……はい……」



大 島「で、あの、失礼ですが、お仕事をお探しでいらっしゃるとか」



祥 子「はい。お恥ずかしい話です」



大 島「こんな場で不躾なんですが、祥子さんさえ宜しかったら、お姉さまと同じ文化部所属で、まずは契約社員から……」



 ということで、わりとトントン拍子にお姉さんと同じ職場に即決採用となった祥子。まあ北川景子のルックスがあれば即採用だよな。なにせ所属は文化部だ。これだけの美人が聞き手なら相手も気持ちよく取材OKだろうし(浜村淳を除く)。
 でも祥子としては、もちろん憧れていた姉と同じ会社で、同じ仕事に就けるのは嬉しいけど、もうひとつ密かな狙いがあった。それは姉の不倫の恋の相手を特定することだ。
 もし想像どおり、姉が道ならぬ恋をしていて、その相手と密会するために、妹の自分には東北に行くと偽って信濃大町に行ったとすれば、相手はおそらく仕事関係の男だろうと祥子は確信している。姉は仕事一筋でプライベートな時間もそんなになかったし、だいたいそのへんのチャラ男とくっつくほど軽い女でもバカでもない。聰明な彼女が本当に恋に落ちたとしたら、相手は仕事で出逢った一流の文化人の誰かに違いない。祥子はそう確信して、その誰かを特定するために、姉と同じ職場に入ることを決意する。
 というあたりで今回はここまで。ではまた。