実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第541回】小松彩夏主演『ネオン蝶 第四幕』レビューの巻(その5)



 トヨタのCMで、妻夫木聡が20年後ののび太、ジャン・レノがドラえもん、前田敦子がジャイ子とかいうのは分かる。理解できないのがソフトバンクのCMで、小泉今日子が元セーラームーンとか、堺雅人が元鉄腕アトムとか、市川海老蔵が元ケンシロウとか、小日向文世が元ゴルゴ13とか、又吉直樹が元あしたのジョーとかいうアレね、アレはどういう設定のものとして観賞すればいいんですか?そもそも「元鉄腕アトム」ってどういう意味だ?こいつ何歳だ?





 話は飛ぶが、以前、四方田犬彦が「天馬飛雄への手紙」というエッセイの中で(『哲学書簡』2000年所収)ヒゲオヤジ先生(伴俊作)のことを「昭和三十八年生まれ」と書いているのを見て、へえそれじゃオレとまったく同世代なんだ、と驚いたことがある。しかしどうもこれは四方田先生の創作らしい。じゃあ本当は何年生まれなのか。



 ヒゲオヤジ先生の年齢が明記されているのは「ホットドッグ兵団の巻」(1961年『少年』連載)で、このとき42歳。このエピソードは、「イワンのばかの巻」(1959年『少年』連載)の続編である。「イワンのばか」は、1965年、女性パイロットとロボットのイワンを乗せたソ連のロケット「ウラル」が、初の月面着陸に失敗し、遭難してしまう、という(もちろん架空の)事件を題材にしていて、その30年後の後日談が「ホットドッグ兵団の巻」である。
 ということは「ホットドッグ兵団の巻」は1995年の出来事となるから、この時42歳のヒゲオヤジは1953年(昭和二十八年)生まれだ。ところが、そもそもアトムの誕生が作中では2003年(現在の公式設定もこれで統一されている)なので、実は「ホットドッグ兵団」事件が1995年ということ自体、何かの間違いなのである。
 だから別の考え方をしなくてはいけない。誕生したアトムが、お茶の水博士に引き取られるまでに、どのくらいの歳月が経っているのか。
 天馬博士はアトムを作って、最初は死んだ息子の代わりにして満足していたが、何年たっても身長が伸びない、成長しないロボットが嫌になってサーカスに売り飛ばす。






 怪力少年として見せ物になっていたところをお茶の水博士に拾われて、それから鉄腕アトムとしての冒険譚が始まる。手塚治虫自身はこの間をざっくり10年と考えていて(つまりアトムは10歳の少年というわけだ)アトムのお話は、だいたいどれも2013年ごろのことだ、とどこかで語っていたと思う。だとすればヒゲオヤジは1971年くらいの生まれということになり、私よりもひと回り若い。
 まあいいや。そういうわけで、私は小泉今日子が元セーラームーンとか、あのコマーシャルは見なかったことにする。いくらキョンキョンだって、ちょっとなぁ。認められないものは認められない。残念だ。




 本題だ。『ネオン蝶』第四部。今日も時間がものすごくなくて、ごくわずか進むだけなんだけど、我慢されよ。
 ここまで無愛想なボディガードと水商売女の恋物語ばっかりクローズアップして、香港マフィアの方はスルーしちゃってきているけど、もちろん香港マフィアの銀座乗っ取り計画は進展している。いやあまり進展していないか。
 まずクラブ「トレゾール」に資金調達していた湯川(修士)の姿がなくなる。日本にやってきた親玉の王(ワン)が、仕事が予定通り進んでいないことに腹を立てて、拳法であっさり湯川を殺してしまったのである。





 城定秀夫監督は、どうもこの湯川にけっこう思い入れがあるみたいで、チンピラにも五分の魂といったたたずまいが丁寧に描かれている。でもこのレビューは小松彩夏ベースですので、すみません省略します。
 続いては政界から桜子たちをサポートしていた「手毬」常連客の川口幹事長(奥野匡)。機嫌よくホステスと遊んでいるところを黒服の男たちに呼び止められる。なんと収賄罪で逮捕されてしまうのだ。




 翌朝。そんなふうに着々と事態が推移していることも知らず、マンションのベランダから、蓮司の自動車の方角を見おろす桜子。いつも必ずいてくれる蓮司の車がない。




 フィアンセの件があって気まずいのか。いやそんなことはない。私情は私情として、与えられた仕事を冷静にこなすのが蓮司という男だった。なのに昨晩は、なぜ来てくれなかったのだろう。



 と、部屋に戻って開いた新聞の一面トップに大きく「川口議員贈収賄罪で逮捕」の文字が!



 
 蓮司が姿を消した理由はたぶん、この父の逮捕にある。そして川口の逮捕は、香港マフィアが政界にも強いパイプをもっていた事実を示唆する。
 店に出ても浮かぬ顔の桜子。こういうときって大抵、同郷の高校の先輩、新庄さん(大口兼悟)が客である。



 しかしこの新庄さん、営業成績がいいからといって、まだ若い。キャバクラならともかく、銀座の一流クラブなんてけっこうな金がかかるところには、そうそう来られないだろうし、たまたま来てみれば、また桜子が凹んでいて、慰め役にまわってばかりなんて、可哀想な気もするが、もちろん新庄先輩はそれでいいんだろうな。小松彩夏のグチ聞き役なら、金を払ってもなりたいか。
 しかもボディガートの蓮司が朝からいないと聞いて、自分が代わりに護衛として家まで送ろうと申し出る。




 すると怪しい人影がバンから降りてきた。
 ついに香港マフィアの登場だ。狙いはもちろん「手毬」の桜子である。



「ニイハオ」



新 庄「誰だあんた」



桜 子「新庄さん!」


 小林靖子作品『烈車戦隊トッキュウジャー』(2014)ではやたらと強い闇の皇帝だった大口兼悟も、ここでは一発で倒される。
 男たちは、桜子だけ拉致しようと、強引にワンボックスカーの中に引きずり込もうとする。激しく抵抗する桜子。
 そこへさっそうと蓮司登場。







蓮 司「桜子を守ってろ」








蓮 司「なあ、ここは日本だぞ」



 劣勢となって、あせって蓮司に拳銃を突きつけた香港マフィアだが、すでに周囲には弥次馬が集まっていた。さすがにここは一時撤退となる。そそくさとワンボックスカーに乗り込む手下たち。




 後に残されたのは、桜子、蓮司そして新庄先輩。



桜 子「蓮司さん、なんで」
蓮 司「これがおれの仕事だ。今日はこいつがいたから遠慮してたけどな」
新 庄「あんたが……」
蓮 司「桜子はおれに任せろ。こんなことしてたらお前も巻き込まれるんだぞ。格好つけて済むほど穏やかじゃねえって分かったろ」
新 庄「構わない。おれは桜子を……」



桜 子「新庄さん。お願い。蓮司さんの言うとおりにして」




新 庄「……わかった。桜子をお願いします」






 最後は潔く身を退く新庄先輩。なかなかカッコいいな。
 というわけで、場面は変わって桜子のマンション。



蓮 司「あいつ良い奴だな」
桜 子「はい」
蓮 司「後でちゃんと礼言っとけよ」
桜 子「はい」



桜 子「私……私、電話したんです。何度も電話したんです」
蓮 司「そうか」
桜 子「不安で仕方なかったんです」
蓮 司「悪かった。親父のことでいろいろ調べていたんだ。親父、あんな野郎で、女にだらしなくて、昔から何人も愛人を作って、そんな奴だったけどよ、立場利用して人さまの金撒きあげるような、そんな奴じゃねえんだよ。そんなことはこのおれが一番よく分かっている」


 蓮司は一日、父のことを調べて回っていた。そしてやはりそれが香港マフィアの仕組んだ罠だったことを突き止めた。そのことだけ確認して、再び桜子を守るために帰って来たのだ。


蓮 司「心配するな。お前はおれが守る。それがおれの務めだ」



桜 子「蓮司さん。今日は帰らないでください」



桜 子「――お願いします――」


さあここまで来たら、次のカットはどうなるか。これまで長いこと『ネオン蝶』シリーズのレビューにおつき合いいただいたみなさんなら分かりますよね。




 もはや二人で寝室に向かうシーンも、暗転も何もない。一瞬にして翌朝。しかも毛布を胸元までしっかり引っぱり上げ、それだけでも足りずに、下にはパジャマまで着ている。どうしてそこまで(笑)。



 せめて男の方は半裸で、昨夜の情事の名残りを思わせるかと思いきや、蓮司まできちっと服を着込んでいる。
 きっとこの二人には昨晩は何もなかったんだろうね。

 というところで限界です。今回はこれまで。