実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第530回】熾烈!北川景子『探偵の探偵』第6話の巻


 お盆休みで余力があるとはいえ、それでブログに全力を費やすと休み明けに余裕がなくなっちゃうので、ほどほどに行きますね。



 一部で好評の『探偵の探偵』も、ダークでバイオレンスな内容だけに視聴率は下げ止まらず、6割切ったところで折り返し点を過ぎた。たぶん次の回で、原作第2巻のエピソードが終了するが、原作どおりなら、最初のユースケ・サンタマリア編よりぐっと後味が悪い終わり方になるだろう。続く第3巻は、さらに逃げ道のないバッド・エンディングが待っている。4巻目でようやく玲奈にわずかな救いと許しの兆しが訪れるが、今回のドラマ版はそこまで話が進む雰囲気でもない。どうなるんでしょうか。



 これまでどおり今回も、原作に対するドラマの変更点は、主として峰森琴葉(川口春奈)まわりに集中している。原作では玲奈(北川景子)が一人で捜査している場面に琴葉も加わって、全体的に琴葉の活躍が増えています。
 今回のターゲットは「野方図」という半グレ集団だ。こいつらは、DV被害に耐えかねて逃げ出した女たちを探しだし、連れ戻しては、加害者である夫たちから数百万円の報酬を得ている。この「野放図」の下請けで、DV被害者の女たちの所在を調査している悪徳探偵が、ストーカーに情報提供して玲奈の妹を死に追いやった「死神」らしいのだ。




 まずは「野放図」の犯罪の実態を明らかにしなければならない。玲奈は暴力夫の一人をマークして、彼の銀行口座を突き止める。そして銀行からの電話を装い、現在潜伏中の池袋のホテルの名前を聞きだす。そのホテルで待っていれば、野放図から彼に何らかの接触があるはずだ。玲奈は隣の部屋に張り込んで男の様子を盗聴する。



 原作ではここまでの作業を、玲奈が一人でテキパキこなしているのだが、このドラマ版では、けっこう琴葉が手伝っている。ボイスチェンジャーを使い、男の声で銀行に電話をかけて情報を聞きだしたり、原作では玲奈があり合わせの材料で作る盗聴器を、ドラマでは琴葉が潜入先のホテルまで届けにいって、そのまま一緒にいて、隣の部屋を盗聴したりして手伝っている。






 そういうわけで、原作にない川口春奈の出番が大幅に増えて、またこれで視聴率が落ちたら川口さんが可哀想だよなぁ、と思っていたら案の定というか、5.9%である(泣)。
 しかし内容的には、この変更はけっこう良かったと私は思う。第3話でも、琴葉が玲奈の妹と高校時代に知り合って仲良しだった、という原作にはなかった話が出てきて、ドラマの中での玲奈と琴葉の交流を、原作よりもスムーズなものにしていたけど、今回の変更もそれと同じで、原作をさらに改善していた。だんだんと琴葉も探偵らしくなって、しかも自分の判断で行動できるようになっているのだ。
 特に良かったのが、ラストの琴葉の判断。「野放図」の隠れ家の所在を突き止めた玲奈は、琴葉に「大丈夫」と言い残し、彼女をおいて乗り込んでいく。







 でも大丈夫どころか、この潜入捜査はおそろしく危険だ。もちろん玲奈もそのことが分かっていて、だから琴葉を連れて行かなかった。そして案の定の展開となっていく。
 アジトに潜入した玲奈は、ガレージに潜んで内部を盗聴していた。





 ところが、野放図の「マリコ」という女に、すぐその存在を感づかれてしまう。このマリコ、今回は画面にちゃんと映らなくて、誰が演じていたのかよく分からなかったけど、たぶん高岡早紀みたいに胸の大きい人。『M14の追憶』の理論によれば、このドラマの悪女はみんな胸が大きいんだって。





 とっさに逃げ出すが、追っ手の数はどんどん増えていって、次第に追いつめられていく。
 この池袋チェイスが、今回の山場だね。少しじっくり見てみようか。















 北川さん、アクションシーンも頑張っていたが、最後は野放図にぶん殴られて(原作では木製バットだがドラマでは金属パイプ)捕まったところで終わった。











 軽いネタバレになるけど、玲奈はこのあと裸で縛られ、DV夫たちに輪姦されそうになる。テレビで全裸はないだろうが、案外それ以外は原作どおりかも知れない。
 で、そのピンチを救うのが窪塚警部補だ。窪塚は、玲奈が行く先々で残したヒントの意味を正しく理解して現場にたどり着く。そして玲奈の貞操の危機(?)に出くわして、とっさに角材を振り回してDV男たちをなぎ倒す。もはや警察のなすべき範疇を越えて、玲奈の「共犯者」になってしまうわけです。
 ところがドラマ版では、ここに琴葉が絡む。話をさっきの場面まで戻しますね。




 玲奈は「大丈夫」と言って野放図のアジトに向かった。でもぜんぜん大丈夫じゃないことくらい琴葉にも分かる。……玲奈さんは、ただ危険な任務に私を巻き込みたくなかっただけだ。玲奈さんが危ない。でも後を追っても、今の私は足手まといにしかならない。それに、このことはスマ・リサーチ社にも内密にしておくよう口止めされているから、社長にも連絡できない。どうしよう?
 というところで、琴葉は警視庁の窪塚警部補(三浦貴大)に連絡することを思いつく。このくだりは原作にはまったくないのだが、ナイスな判断だ。






 もともと琴葉は、第一エピソードでも、玲奈がころりと騙された監察医(高岡早紀)を、うさんくさいと見抜いていた。技術は未熟だが、信頼できる人を見分ける直感力に長けている。だから今回も、警察の窪塚に助けを求める、という大胆な手段に出る。原作の琴葉のキャラクターを活かし、さらに膨らませて物語の展開に絡めてきたわけで、なかなか良いと思う。
 川口春奈は、これまで主に学園ものにばかり出ていたけど、そのわりには演じた役にけっこうな幅があった。迫力不足のヤンキーとか超お金持ち校に入学した貧民の生徒とかカープ女子で探偵マニアのボクッ子とか。あと『天魔さんが行く』第1話の変顔もよく頑張ってくれたと思う。



 今回も相方の北川景子に合わせて、シリアスだったり清純派だったり、ちょっと天然だったりと、いろいろな要素を巧みに出し入れして、しかもあくまで主役を立てて控えめって、やっぱりなかなか達者な役者さんだよ。



 とはいえ、川口さんのせいではないけれど、このままいくと本作品、数字的には『LADY 〜最後の殺人プロファイル〜』(2011年、最高視聴率13.8%、最低視聴率6.8%、平均視聴率9.4%)を下回る可能性が高い、にもかかわらず、私など『LADY』より遙かに落ち着いて観ているわけで、その安定感の理由はというと、やはり北川景子の貫禄ではないか。



 『LADY』の時は、レギュラーメンバーで北川さんとタメといえたのは平岡祐太くらいではなかったかな。あとは木村多江をはじめ、須藤理彩や要潤といったキャリアのある共演者たちに「支えられて」主役を張らせてもらっていた、という感じだった。でも今回の役者群を見渡すと、たとえば川口春奈にせよ、あるいは井浦新にせよDEAN FUJIOKAにせよ、世間一般の認知度でも、連ドラの経験値でも、北川景子以上ということはない。今回の北川景子はまぎれもなく一枚看板であり、主演女優として、共演者やスタッフを「引っ張る」立場にある。そして暗くて暴力的なお話なのにけっこう楽しめてしまう最大の理由は、彼女がそんな自分の立場をうまくこなしていて、現場の空気も非常に良い感じなのが、画面を通じてこちらにも伝わってくるからなのではないだろうか。



 というのはただの素人考えなんだけど、でも北川景子はすでに、現場のスタッフ、キャストの信頼を集め、チームをまとめる度量みたいなものを身につけているのかも知れない。いつも言っていることだけど、とにかく着実に進歩している。とりたてて器用でも上手な女優さんでもないのに、私たちがいつまでも北川景子から目が離せないのはそのためだ。









 やっぱ『前代未聞」って変だけどね。というわけでみなさん、よいお盆休みを。