実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第527回】絶好調!北川景子『探偵の探偵』第4話の巻

1. プリンセス報告



 しまったな。
 みなさまご承知のとおり、当サイトは先々月「エグザイルの人が出演する『HEAT』が、前評判どおりの記録的低視聴率をマークしてくれれば、『探偵の探偵』が少々悪い数字を出しても見逃される.だからエグザイルの人、どうか頑張って視聴率を下げてくれ」という意味のことを書いた(ここ)。そしたら案の定、『HEAT』は同じ枠の前番組『戦う!書店ガール』に続く平均視聴率5%割れの世界を驀進中である。すまん。すまんがこれからもよろしく。
 と、スケープゴートとしか考えていなかったそっちの番組に我らがプリンセスが出演とは。そういや、『謎解きはディナーのあとで』の時も、プリンセスは『家政婦のミタ』にご出演だったではないか。
 ともかくホンの一瞬のご出演で、いつもならクヤシイが、今回はこれでいいや。介護士の役でした。



介護士「あ、恭子さんありがとうございます」
恭 子「またお願いします」



介護士「はい。さあシズさん、お家に入りましょ」
恭 子「あ……トラオさんはこれからお仕事があるって」



シ ズ「そう?行ってらっしゃい、あなた」



  はい終わり。あそうだ、水曜ミステリー9の沢口靖子主演『夏樹静子サスペンス 無敵の法律事務所 弁護の鉄人 橘明日香』(2015年6月3日、テレビ東京系)にもプリンセスご出演の情報があったが、うっかりやり過ごした。後日ネットを検索してみたが、これがその画像かな?



 はい、それでは今回は、お盆前の仕事の追いこみと猛暑でくたびれている私をいたわって、あまり長くなならないよう、短めに切り上げたいと思います。お題はやはり『探偵の探偵』。

2. 英断



 みなさん第4話、ご覧になりましたか。私個人の感想をいえば「絶好調」の一言につきる。おかしな表現になるが、もう願ったり叶ったり。基本が東映B級映画のノリで、どストライクなのだ。
 もちろん一応メジャーなテレビ局の、ゴールデンに見える時間帯のドラマである。北川さんだって今やトップ女優だし、番組公式サイトでは担当スタイリストが「今週の北川景子のコーディネイト」を解説していて、ブランド名とかこと細かに紹介されている(このあたりは『LADY』と同じ趣向だね)。そういうところでトレンド感やファッショナブル感を出しているのでちょっと分かりにくかったけど、この作品は『女囚さそり』とか『修羅雪姫』とか『0課の女 赤い手錠』とか『黒い牝豹M』とか、ああいった1970年代東映ヒロインバイオレンスの末裔なんだ。私は以前から、北川景子は遠い将来、森光子みたいに国民栄誉賞を受賞するだろうなどと七割ぐらい本気で言ってきたが、今は、ひょっとするとこの人は梶芽衣子の後継者なのではないかと八割くらい本気で考えている。



 それが分かりにくかったのは、エログロがなかったせいだ。本来ならこれ、坂本浩一監督が「おれにもやらせろ」と強引に割り込んできて、縛りのシーンも肌の露出とか汗とか加えてエロ度8割増しぐらいにしてしまうような作品である。あるいは三池崇史が噛んできて残酷描写のグロ度を上げてもおかしくない世界である。



 でも特撮ヒロインが大好きな坂本浩一監督は、長澤奈央や木下あゆ美や芳賀優里亜や小池里奈には入れ込んでも、ある理由から北川景子にはあまり食指を動かさない。三池崇史もテレビドラマを手がけなくなって久しい。そしてフジは外部ディレクターを招かなかった。という事情のもとにこの、エログロのない洗練された東映ピンキー・バイオレンス(という言い方が語義矛盾だが)ができた。私は一度こういう作品を観てみたかった。まさかそんな願いがかなうなんて、長生きはしてみるものである。



 もっとも視聴率は第3話の8.7%を堅持。原作を読んでいれば、今回はほぼ川口春奈が出ない、そして次回が川口春奈メインになることはだいたい分かるので、もうちょっと数字を上げておきたかったけど、それはしょうがない。



 琴葉の病室に近づいた。小窓から明かりが漏れている。玲奈はほっとしながら近づこうとした。そのとき、かすかに談笑する声をきいた。



 靴音をしのばせて、窓をそっとのぞき見る。琴葉はベッドの上で半身を起していた。額と頬にはガーゼが残る。それ以外のあざは消えていた。笑顔をひさしぶりに見た、玲奈はそう実感した。



 彩音はしばらく琴葉と冗談をいいあっていたが、やがてベッドの影にしゃがんだ。がさがさと紙の音がする。放送を解いているらしい。ふたたび立ちあがった彩音は、大きなゴールデンレトリバーのぬいぐるみを両手で抱えていた。





 琴葉にとってもサプライズだったようだ。満面に笑みを輝かせ、両手をひろげて歓迎する。琴葉がぬいぐるみを抱きしめると、家族はみな祝福の笑みをたたえた。



 ユースケ・サンタマリア篇も片づいてエピローグ。ふつうなら余韻をたたえて一区切りとしたいところだが、『探偵の探偵』に関して正直に言っちゃうと、余韻は要らない。原作第1巻はもうちょっとエンディングがあるんだけど、もう第2巻に飛ばしてもかまわない。
 ドラマ版もそれでいいんじゃないか、下手に情感を出そうとか思わなくても良い。ていうか出さない方がいいよな、なんて思っていたら、本当にやってくれた。原作に忠実に展開しながら、省略しちゃっていいところ(というか、省略すべきところ)はばっさり切る。どのくらい適切な処理をしているか、原作と比べてください。以下、ドラマで省略された部分は赤字にしておくが、みんな、クサしてばかりいないで、我慢してちゃんと読むんだぞ。私だって読んだんだから。



 深い安堵とともに、憂愁に似た寂しさが沁みひろがる。玲奈はそんな心境だった。永遠に身を沈めたくなるような静寂を求め、そと扉の前を離れた。
 誰もいない廊下を引きかえしていく。暗いロビーに差しかかった。窓口は閉鎖され、待合の長椅子にも人の姿はない。




 ゴミ箱のわきを通りすぎるとき、ポーレットを底に横たえた。玲奈は歩をとめず、戸口へ立ち去った。
 外にでた。夜の闇がひろがっている。しっとりとした暗がりだった。てのひらを伸ばすと、漆黒に染まったベールの感触がつかめるかに思えた。
 空に目を転じる。星が瞬いていた。東寄りにオレンジいろの光点が浮かぶ。うしかい座のアークトゥルス。その輝きがしきりに揺らぎだした。うつむくと涙が零れ落ちそうだった。
 咲良のことを思った。もう永遠に会うことはない。家族がみな揃って笑いあう日もこない。身についた職務上の技能を維持したまま、四年前に戻りたい。咲良を救ってあげられるのに。お父さんの浮気だって、早々に証拠をつきつけてやめさせられた。お母さんだって、あんなに悪くはならなかった。わたしも、こんなふうには。





 スマホが振動しながら鳴った。玲奈は応答した。「はい」
 「紗崎」須磨の落ち着いた声が告げてきた。「退社時刻後にすまない。いまいいか」
 玲奈は涙を指先でぬぐった。「どうぞ」
 「対探偵課にまわした仕事が入ってきた」
 ふと訪れた、落葉のようなもの寂しさに黙りこんだ。



 しばらく間があった。須磨の声がたずねる。「どうかしたか」
 「いえ」玲奈はいった。「オフィスに戻ります」



 せめてもの配慮と思ったのか、須磨はわずかに気遣いを感じさせる物言いに転じた。「ひとりでだいじょうぶか」
 「ひとりじゃありません」



 咲良が記憶のなかにいる。
 通話を切り、スマホをしまいこむ。玲奈は歩き出した。
 日没とともに、沈みきった空気が凍りつき停滞している。微風の生み出す音の高いふしぎな沈黙が、辺りに満ちていく。その静けさにこそ耳を傾けよう。あらゆる気配に感覚を研ぎ澄まそう。いまからわたしは、また探偵の探偵なのだから。



 もちろん心理描写はそのまま映像化できないわけだが、ダメな脚本はそこで、なにか代わりの情緒的な表現を入れちゃうんだよね。たとえば、北川さんが病院を出たところで、元気になった子供が、両親や姉に連れられて退院する光景を目にする、それをみつめる北川さんの顔から回想シーンに入って行く、とか。そういう余計なワザをいっさい入れない。病院の外に出てもまだ夜じゃない。だから星を見上げて涙ぐんだりもしない。えーと、もうはっきり書いてしまうが、原作を読んでいてうっとうしい部分は、すべて省略して、余計なものは付け加えない。そういう選択の正しさが、このドラマの最大の魅力だ。

3. エピソード2


 そういうわけで、第4回の後半から第2エピソードが始まった。第7話で終わるだろうが、ひょっとして低視聴率で途中打ち切りになると「死神」の正体も明らかにならないまま終了する可能性があるので、諸君、頑張るように。
 といっても私は頑張らない。本日は寝不足なのであとちょっと書いたら昼寝します(本当は書類仕事があるけどな)。
 まずはアレだ。納豆。



 「多量の出血に見えますけどね。凶器はなんですか」
 「手術用メスのようだ。ほんのちっぽけな刃だよ」
 「ますます奇妙に思いますが」
 「そうでもない」川垣は真顔で顎をしゃくった。
 「あっちの部屋に納豆のパックが転がっていた。尖った物で掻きまわした跡がある。ふつう人体に外傷が生じれば、血液が凝固して血栓ができ、出血がとまる。だが納豆は、血栓を溶かして液体に戻す酵素を含んできてね」


 
  鈍い警戒心が、じわりと窪塚のなかにひろがった。「刃物に納豆を塗りつけただけで、ここまでの事態に至るんですか」
 「いや。ほかにも医薬品のいくつかを使用した形跡がある。クエン酸は血液の凝固に必要なカルシウムの働きを阻害する。ヘパリンの酸性ムコ多糖も血栓を溶解させる。ヒスタミンは血管を拡張させ出血を促進させるうえ、堪えがたい激痛をもたらす。


 ナットウキナーゼは血をサラサラにするっていうけどな。そういえばうちの父が数年前、何か心臓を患ったとき、脳血栓や心筋梗塞を防止するワーファリンという薬を飲んでいて、服用期間中は納豆を食べてはダメといわれていた。なにか関係があるんでしょうね。
 ちょっと前に戻って、この変態男の家に乗り込んだ北川さんが、奥の部屋で拉致されたカグラ(トッキュウ5号)を解放するシーン、カッコ良いですね。変態男がイタズラ目的でそろえた医療器具からメスを選び、それに薬やナットウをまぶして刺す、という趣向を、もう少し「必殺!」シリーズふうになんとかできないものか、という声もあるだろうが、こういうNHKの教養番組みたいな雑学を利用した攻撃が、このシリーズの(というかこの作者の)持ち味なので、我慢するしかない(なぜ我慢しなくてはいけないのか)。

















 東映特撮(しかも小林靖子作品)の後輩トッキュウ5号(森高愛)を慮る北川景子姐さん。カッコ良いですね。
 でも東映ピンキーバイオレンスは、やっちまう姐さんとやられる姐さんを同等くらいの比率で描くのが常道である。今回はちらっと出てきただけだが、視聴された方はもうお気づきだろう。北川さんは、川口春奈の見舞いにいったとき、川口春奈の姉(中村ゆり)とその旦那(柏原収史)とその友人たちに、可愛い川口春奈を傷つけたことを土下座して謝罪させられたうえ、あれこれの目に会っていたのである。その模様を姉が撮影した動画を見たときから、川口春奈の姉に対する気持ちに大きな変化がやってくる。
 お姉ちゃんの礼奈を演じている中村ゆりは、わたしはあまり覚えていないが『月の恋人』ですでに北川さんと共演ずみ、その旦那、哲哉役の柏原収史は、『ドリフト』シリーズで小松彩夏の相手役だった。




  開いたウインドウに動画が映しだされる。ひどい手振れと雑音だが、撮影場所は室内だった。退院パーティーと同じく、リビングのようだ。顔ぶれまで共通していた。哲哉と彼の遊び仲間が確認できる。



 ところが次の瞬間、カメラは玲奈の顔を大写しにした。玲奈は目を真っ赤に泣き腫らしている。豪雨に打たれたようにずぶ濡れで、髪が頭皮に貼りついている。



 琴葉は息を飲んだ。玲奈がこの部屋に来たなんてきいていない。
 スピーカーから彩音の声が響いた。ひどくぶっきらぼうで、吐き捨てるような物言いだった。「ほら。カメラまわったよ。もういちど最初から」



 玲奈は床にひざまずいていた。なぜか室内が汚れている。フローリングに水たまりがひろがり、食器から生ごみまで散乱していた。玲奈の服も染みだらけだった。
 「早く」彩音の声が急かした。カメラをまわしているのは彩音のようだった。「きちんとあやまれっていってんの」
 見開いた瞳に涙が膨れあがり、大粒の雫になって頬を流れ落ちる。玲奈は泣きながら、震える声でささやいた。「ごめんなさい、琴葉」
 すると、フレームの外から誰かが碗を投げつけた。玲奈は味噌汁を頭からかぶった。
 荒々しい男の声がまくしたてる。「態度がでけえんだよ。琴葉さんだろ。敬語つかえ」
 玲奈の表情は悲哀に満ち、耐えるように唇を噛みしめていた。「琴葉さん、申し訳ありません。わたしのせいで怪我させてごめんなさい」
 男の足が玲奈の頭を踏みつける。「反省してんのなら土下座しろよ、ブス」
 琴葉はぞっとする寒気を覚えた。いまの声は耳に覚えがあった。
 カメラが上方に向けられる。得意げにたたずんでいるのは姉の夫、哲哉だった。


北川さんは三日間続けて川口春奈の姉の家に謝罪に通う。初日はあと、生卵をぶつけて終わりで、二日目は琴葉のお姉ちゃんが、浴室でシャワーの噴水を執拗に浴びせて北川さんを水責め。三日目はお姉ちゃんの旦那の仲間が北川さんの服をハサミで切り刻んで半裸にしてから、顔がパンパンになるまで交替でビンタ、というメニュー。原作の琴葉はこの三つの動画をぜんぶ姉のパソコンで見てしまうわけだが、ドラマの川口春奈は、たぶん三パターンも動画を見ないんじゃないかと思う。
 もう一回整理します。(1)正座で土下座で頭を踏みつけられて生卵をぶつけられる。(2)風呂場で息ができないほどシャワー浴びせられて水責め、(3)半裸で顔が膨れるまで連続ビンタ。皆さんが見たいのはどれ?別にどれも見たくないか。
 というわけで今日はこのくらいで。



貞子じゃないよ



【作品データ】『探偵の探偵』第4話「第1章完結!炎の中の死闘」2015年7月30日放送<スタッフ>プロデュース:渡辺恒也、草ヶ谷大輔/プロデュース補:國安馨/制作担当:増子美和、片岡俊哉/スケジュール:森本和史/制作管理:曳地克之/記録:渡辺美恵/原作:松岡圭祐『探偵の探偵』『探偵の探偵』『探偵の探偵II』『探偵の探偵III』(講談社文庫刊)/脚本:徳永友一/演出補:楢木野礼/演出:石井祐介/撮影:北山義弘、船橋正成/照明:清喜博二/音声:塩瀬昌彦/映像:植木康弘、青田保夫/音楽:Nima Fakhrara/主題歌:「Beautiful Chaser」 (超特急 feat.マーティ・フリードマン)/編集:小泉義明/美術プロデュース:宮粼かおる/美術デザイン:𥔎木陽次/メイク:外山隼人/スタイリスト(北川景子・高岡早紀担当):野村昌司/メイク(北川景子担当):佐藤郁江/スタントコーディーネーター:劔持誠/スタント:つちださゆり、上野山浩<キャスト>紗崎玲奈:北川景子/峰森琴葉:川口春奈/窪塚悠馬:三浦貴大/桐嶋颯太:DEAN FUJIOKA/土井修三:伊藤正之/佐伯祐司:六角慎司/伊根涼子:高山侑子/長谷部憲保:渋谷謙人/船瀬卓:阪田マサノブ/堤暢男:松尾諭/坂東志郎:相島一之/織田彩音:中村ゆり/藤戸俊久:佐戸井けん太/入山陽介:尾上寛之/木梶愛莉:森高愛/中垣啓二:田口主将/阿比留佳則:ユースケ・サンタマリア/天田暦/玉置玲央/玉野るな/佐藤旭/日野出清/松木研也/ゴブリン/牧原俊幸(フジテレビアナウンサー)/藤村さおり(フジテレビアナウンサー)/矢吹洋子:高岡早紀/須磨康臣:井浦新