実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第526回】小松彩夏生誕29周年祭/がんばれ北川景子『探偵の探偵』第3話の巻(えっ?)




 小松彩夏さまお誕生日おめでとうございます。
 いやもう、女は30代からが食べごろですよ……って何の話だ。
 あと原史奈さんが再婚されたらしいが、お幸せに(ちょっと投げやりな言い方かな)。




 さて「小松彩夏さま七月生誕」という事実を念頭に、ずーっと『ネオン蝶』レビューをお送りし続けていた当ブログだが、肝心の今回はお休み。すまんな。
 それもこれもひとえに『探偵の探偵』支援のためであるので、許されよ。



 北川さんの『探偵の探偵』は第3話で視聴率をわずかに回復、次回で第1部(原作の第1巻)ユースケ・サンタマリア編が終了、引き続き第2部、という運びになるようだ。ここ、数字的には最初の勝負どころという気もする。劇場版『HERO』のヒットも追い風になって欲しい。がんばれ北川景子。



 というわけで本日は、原作第1巻の抜粋とドラマ版の画像で、前回の見どころをまとめてみました。
 これまで言ってきたとおり、このドラマ版は、原作を惜しみなく消費する方向でガンガン話を進めているところが長所である。そのへんのニュアンスをもう少し具体的に検証してみたい。そこで原作からの引用文とドラマの画像を組み合わせて、どれだけ原作とドラマがシンクロしているかを確認してみよう、という趣旨です。
 ちょっとだけ原作にない描写がドラマにある。それは北川さんの暴力行為がエスカレートするシーンだ(笑)。でも名古屋支部の解釈では、そこにはちゃんとした理由がある。
 ま、そんなことで始めます。

1. 横浜シークエンス


 まずは横浜に情報収集に赴くシーン。いいよな。横浜、私立探偵……といえば松田優作だ。北川景子は『探偵物語』とか『ヨコハマBJブルース』とか観ているのかな。別に観てなくてもいいけど。でも小松彩夏さんには『蘇る金狼』の風吹ジュンを観ていただいて、これを参考に、今後も女優としてやっていくなら、身の振り方をどうすべきか熟慮してほしいと思う。



 いや横浜でした。「追いかけてヨコハマ」とか「湊のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」とか「横浜ホンキートンクブルース」とか、まあ人捜しというか、私立探偵の似合う街である。ちなみに、韓国人がもっとも良く知っている日本の歌謡曲は、いしだあゆみの「ブルーライト・ヨコハマ」らしいが、べつに関係ないか。



正午すぎ、玲奈は横浜中華街の関帝廟裏、雑居ビルに足を踏み入れた。




薮沼探偵事務所と記されたガラス戸を押しあける。



「でね、お客さんのお目当ての彼氏が、女とどこでデートするかを、まずこちらで突きとめます。それからうちのスタッフが工作員となって、女を彼氏から引き離すんです」



「引き離すって、具体的にはどう……」



「企業秘密なんで、細かいことは説明できませんけどね。男女が互いに愛想を尽かしあうように、うまく運ぶんです」



玲奈は静かにいった。「別れさせ屋って探偵業の職業倫理上、禁止されてるんだけど。そもそも男女の仲を裂く工作なんて、探偵の仕事じゃないし」



「別れさせ屋を謳ってるけど業務の実態はない。工作員なんてひとりもいない。依頼を受けて二、三ヶ月後に工作完了の連絡を寄こし、請求書を送りつけるだけ。どうせカップルが別れるかどうかなんて五分五分だし」



希美の姿が扉の向こうに消えると、薮沼は憤然としてソファに身を沈めた。
舌打ちをして薮沼はぼやいた。「対探偵課なら、うちみたいな零細じゃなくてもっと大手を懲らしめろよ。中華街だけでも悪質なのが五人以上いるだろが」



「把握してる」玲奈は冷静にいった。「けど、きょう来たのは大物をやっつけたいから。阿比留佳則の近況について教えて」


 原作だとこの後、薮沼は玲奈の脅し文句にあっさり兜を脱いで必要な情報を吐く。でもドラマ版は、ここからがちょっと違う。



薮 沼「そこまでおれにしゃべらせる気?」



玲 奈「元町署の刑事たちが、別れさせ工作について興味示しているんだけど」



薮 沼「ふふん。弱小のおれもさあ、少しは有名になったもんだよね」

 
 馴れ馴れしく玲奈の肩に手をかける薮沼。しかし薮沼に触れた瞬間、玲奈の脳裏には前世の記憶が戻ってきた。
 いまからざっと200年ほど以前、玲奈は澪という名前で大阪にうまれ、やがて江戸の町に出て「つる家」という料理屋を営むようになった。当時は女料理人が珍しく、また江戸でははかなか食べられない上方の味を伝える彼女の料理は、あっという間に江戸中の評判になった。このあたりの事情は『みをつくし料理帖』に詳しい。



 だがそれを気にくわない老舗料理店の「登竜樓」は、あれこれアコギな手を使って「つる家」を潰しに来る。その登龍楼の主、采女宗馬こそ、薮沼(宅間孝行)の前世の姿であった。




 陰湿ないやがらせの数々に堪忍袋の緒が切れた澪(北川景子)は、采女宗馬(宅間孝行)と直接対決に赴くが、登龍楼の若い衆に阻まれ、あちこち触られるだけ触られて引き返さざるを得なかった。



 澪 「卑怯者、外へ出ろ、卑怯者、顔を出しなはれ、卑怯者!」






釆 女「これは一体なんの騒ぎだね?」



 澪 「恥を知りなはれ」



釆 女「恥?」


その時の記憶が一瞬よみがえり、時空を超えた怒りを爆発させる玲奈。いやホント。






薮 沼「痛い痛い痛い痛い痛い」



玲 奈「今あなたにかまっているヒマはないの。早く話して」


 まこともって因果は巡る糸車である。

2. 告白


 ともあれ、薮沼から得た情報で、阿比留(ユースケ・サンタマリア)の狙いはほぼ明らかになった。
 ラスベガスやマカオには、専任の探偵社があって、金銭トラブルやいざござの処理を一手に担っているという。 いわば公認の用心棒である。東京都が現在ひそかに進めているカジノ法案のなかにも、特定の民間業者にカジノ特区全体の治安維持をまかせる構想が折り込まれている。
 いま起こっている日銀総裁の孫娘誘拐事件は、阿比留自身の仕込んだ狂言だ。その解決に貢献し、警察の絶大な信頼を得て、カジノ特区構想の莫大な利益にあずかろうという魂胆である。
 玲奈は、阿比留たちが企む自作自演の救出劇を出し抜いてやろうと、日銀総裁の孫娘が拉致監禁されているという空き家に忍び込もうとする。
 ここで、このけっこう危険な潜入に、新人の琴葉が同行することを主張する。原作ではそのあたりが、こんな感じで描かれている。


 琴葉がなぜ同行を望むのか、玲奈にはわかる気がした。一緒にいけば玲奈が無謀な行為におよばない、琴葉の安全のためにも抑制をきかせる。そう信じているのだろう。
 本当は怖いにちがいない。わたしの身を案じてつき添うことを決意している。
 玲奈は微笑してみせた。「しょうがないな。動きにくそうに見えて、本当は動きやすい服を選んで」


 わりとふつうのOLっぽい新人の琴葉がなぜ、それまで頑なに閉ざされていたハードな玲奈の心に入り込めたのか。原作は、玲奈のなかで失った妹と琴葉がイメージを重なる様子が描かれるが、ドラマ版は、琴葉は実は高校時代に玲奈の妹と同じクラスで親友だった、という設定を付け加えた。玲奈の妹がストーカーに殺された日も、ほんとうは琴葉と出かける約束をした日だった。
 ちょっと出来過ぎという気もするが、ドラマだったらこのくらいのアレンジはいいだろう。それに、この場面でそのことを北川景子に告白する川口春奈の芝居は良かった。



琴 葉「私も知りたいんです。咲良のこと。五年前、咲良に何があったのか」



玲 奈「知ってるの?咲良のこと」
琴 葉「咲良と同じ高校に通ってました」



琴 葉「このポーレット、咲良と一緒に買いに行ったんです。咲良、いつもは家に真っすぐ帰らなきゃいけないのに、どうしてもこれが欲しいって……親戚のおじさんに頼んで、一緒に近くのデパートに連れていってもらったんです。初めて学校帰りに遊んで、それがすごく楽しくて、だからまた一緒に遊びたいねって二人で話してて……」





琴 葉「あの事件の日、私が咲良を連れだしたんです。だけど、何時間待っても、待ち合わせ場所に咲良は来ませんでした。結局みつかったのは翌朝で……」



琴 葉「私が誘ったりなんかしなければ、咲良は……すいません。ずっと黙ってて、本当にすみません」
玲 奈「私が咲良の姉だって知っててスマ・リサーチに?」
琴 葉「いえ、入社したときは知りませんでした。この家に来て、ここに置かれているアルバムを見て、最初はすごい驚きました。こんなことあるのかって。けど思ったんです。きっとこれは咲良が引き合わせたんじゃないかって。“お姉ちゃんを守って”って、咲良が私と先輩を……」


 いいじゃないか。抑えが効いて、とてもいいじゃない。みんなが川口春奈さんのことをいろいろ言うので、私は応援するぞ。名古屋支部は北川景子ともども川口春奈を激しく応援する所存である。

3. 「北川景子、拘束され泣き叫ぶ」(ネットのニュース記事)


 というわけで、咲良を連れて、日銀総裁の孫娘が拉致されているという場所へ向かう玲奈。だが、情報をリークしてきた女医の矢吹洋子(高岡早紀)は、実は阿比留側の人間で、すべては罠だった。






 乗り込んだとき車に待機させていた琴葉も、阿比留傘下の半グレ探偵、霜田(山中聡)の手によって囚われの身になってしまっていた。この霜田は、第2話の冒頭で、大型トレーラーを使って玲奈を車ごと海に突き落とした犯人であった。




数メートルの距離がある。男はフィレナイフを手放さない。玲奈が駆け寄ろうとも、ナイフが振り下ろされるほうが速い。どうにもならなかった。



視界が涙に揺らぎだした。玲奈は震える声で訴えた。「お願いだからやめて」
すると男が壁ぎわを指さした。落ち着き払った声を室内に響かせる。「手枷を嵌めろ。自分でやれ」



枷のひとつを右手首に嵌めた。鍵がなければ外せない構造だった。内径は、玲奈の手首より若干細い。締めつける痛みに指先が痺れだす。すでに五指は変色しだしていた。引っぱっても金具は、壁から抜けそうになかった。





玲奈は挑発する物言いできいた。「女医さんとできてんの?」



霜田は問いかけを無視し、琴葉のもとにしゃがみこんだ。「みなよ、このふともも。しゃぶりつきたくなるな」



フィレナイフが勢いよく振り下ろされ、琴葉の大腿部に突き刺さった。琴葉はのけぞって、ひときわ高い声で唸った。



玲奈は泣きながら訴えた。「やめてってば! お願いだから。琴葉を傷つけないで」




洋子が近づいてきた。洋子の手には小さな注射器があった。玲奈の腕に注射針を突き立てる。




 暴力シーンに関していうと、原作よりドラマ版の方が一品多い。ここでも、原作は女医さんに注射されて意識を失うだけなのに、ドラマではその前に、琴葉の護身用スタンガンを霜田が奪い、それを玲奈に押し付けて、ぐったりしたところを女医が注射する、という段取りになっている(その前にビンタもしていたな)。なんだかスタッフも北川さんも乗っているんじゃないだろうか。「北川君、ここ原作ではただ注射するだけだけど、その前にもう一発スタンガンで悶絶してみようか」「はいっ!がんばります」とか。

4. 河童リターンズ



で、何か薬を注射されて意識を失った玲奈が、ふと目覚めると、そこはなぜか交番であった。



男の声がきいた。「その阿比留って探偵は現場にいた?」



ふと我にかえった。玲奈はぼんやりと、間近にいる男の顔を眺めた。巡査だった。



玲奈は外の暗がりに目を向けた「ここどこ」



「交番ですよ」
「どこの交番?」
「西多摩日の出町」巡査はため息をついた。「まいったな。あなたはさっきも同じ質問をしたよ。次は、どうしてここにいるかききたい?」 
「はい」
「付近をパトロールしてたら悲鳴がきこえて、駆けつけたところ、不審な男女二人が逃げていった。私が救急車を呼び、峰森琴葉さんは病院へ搬送されました。あなたは、私と一緒にここへ来たんです。そう希望されたので」



記憶の断片だけでも想起できるだろうか。まるで思い出せない。洋子に注射されてから、朦朧と意識が遠のく実感すらなかった。瞬時に別の場所へ移動したかのようだ。



指先が動くかどうか試してみる。痺れは残っているが、かろうじて感覚はあった。ゆっくり両手を持ちあげ、ノートパソコンへと伸ばした。



巡査が笑った。「無理なさらなくても、私が入力しますよ」
玲奈の両手がパソコンに達した。
次の瞬間、玲奈はパソコンをつかみあげ、水平に力いっぱい振って巡査の顔面を殴り飛ばした。



巡査が椅子から転げ落ちた。だがすぐに大勢を建て直そうとする。玲奈はノートパソコンを折りたたみ、縦方向に保持した。巡査が腰から引き抜いた警棒で打撃を加えてくる。パソコンを盾にして防ぐ。


玲奈は息を弾ませながらつぶやいた。「神奈川や埼玉とちがって、都内の交番にはパソコンがない。調書も紙ベース」
ここは偽交番にちがいなかった。巡査を見おろすと、制服が細部で本物と異なっているのがわかる。腰のホルスターには、なにも入っていない。



で、このニセ巡査だけど、これ河童だね。いや森下能幸さんなんだけど、前にも書いたことがあるように、『悪夢ちゃん』第6話(2012年11月、日本テレビ)の「河童」のハマリ具合に驚いてからというもの、私にはこの人が河童に見えてしまうんだ。すみません。






 森下能幸は、セーラー戦士の出演するドラマによく出てくるので、「またこの人だ」と思った実写版ファンも多かったのではないかと思う。私の記憶する限りでは、北川さんとの共演はこれで三度目。最初は『モップガール』第1話(2007年10月、テレビ朝日)で、この時もやはり巡査の役だった。で、北川さんの学生時代の恩師(小倉久寛)を撃ってしまい、北川さんがタイムリープをするきっかけをつくる。





 で、二度目がさっきの『悪夢ちゃん』の河童、そして今回である。それでやっぱり、なんか見たことのある顔だ、怪しい、とか思ったんでしょうね。玲奈は容赦なくパソコンでガンガン殴りつけて、この河童、いやニセ警官を倒して、戦っている間に割れた花瓶の破片をその足に突き刺す。


 

床に這いつくばった偽巡査に、玲奈はきいた。「琴葉はどこ」
偽巡査が汗だくの顔で吐き捨てた。「うるせえクソ女」



玲奈は偽巡査の膝に刺さった破片を靴で踏み、いっそう体内にめりこませた。偽巡査は絶叫とともに両手で宙を掻きむしった。






 というわけで、ニセ巡査から警棒を奪い、ポケットにあったデジカメも頂戴した玲奈は、ポーズを決めてニセ交番を出て行く。いや、この前髪をぴゅって吹くのって、北川さんの決めポーズだよね。そうじゃないのか?
 私がわりと好きなのは、『LADY 〜最後の犯罪プロファイル〜』第9話(2011年3月、TBS)で、風間俊介に説教かます前にひゅ〜っと前髪を吹き上げるシーン。



 まあどうでもいいことでした。すみません。

5. エンディング


 ニセ交番を脱出した玲奈は、琴葉救出に向かうが、その前に何か、武器になるものはないかと、隣にあった何か倉庫みたいなところをすばやく物色する。
 



警棒以外にも武器になる物が必要だ。屈強そうな霜田に、女の腕力でまともにぶつかって勝てる見こみはない。



だが、物置のなかにめぼしい物はなかった。角張ったアルミ缶や、ボトル洗剤、箱いりの釘。雑多な品々が詰めこんであるだけだ。



とはいえ、材料がこれだけしかないのなら、最大限に生かす方法を考えればいい。


 さあそしてここからは、この原作者の作品でおなじみの(といっても私は、この人の小説は『万能鑑定士Q』と『探偵の探偵』両シリーズしか知らないのだが)「つくってわくわく」の時間だ。ここは当然、映像化されない。


玲奈はすぐに、精製鉱物油を主成分とする切削液の缶を見つけだした。塩素系と酸性のボトル洗剤も役だちそうだった。
一分どころか一秒も惜しい。玲奈は手早く作業した。塩素系から酸性のボトルへ半分ほど移し替える。塩素ガスが発生しだした。立ちのぼる異臭に胸がむかつく。塩素系の残りを切削液の缶へ注ぐ。缶からも悪臭がたちこめだした。切削液に含まれる硫黄系極圧剤との化学反応により、硫化水素ガスが噴出している。
落ちていたペットボトルを拾い、小さな釘を三分の一ほど注ぎこむ。それからいったん平らに潰し、空気を抜く。ペットボトルを酸性ボトルの口に近づけて握力を緩め、形状を半分ほど元へ戻す。次に缶の口にあてがい、完全に形状を回復させた。二種類の気体をほぼ均等な割合で、ペットボトルに吸引させたことになる。蓋を固く閉め、脇の下にたずさえた。玲奈は物置をあとにした。


 というわけで(実は私、なんだか分からないが)手製の武器もできた。さあいよいよ霜田と最終決戦をして、琴葉を奪回するのだ!


ペットボトルを自分と霜田の中間地点に放り投げる。



ペットボトルが地面に転がると、玲奈は怒鳴った。「霜田!」



霜田が振りかえる。かっと目を剥いて睨みつけてきた。



霜田はフィレナイフを引き抜き、身を翻し突進してきた。




玲奈はその場に留まった。向かってくる霜田をカメラで狙いすます。ペットボトルの落ちたあたりに、霜田が差しかかった。その瞬間、玲奈はすかさずシャッターを切った。




青白い閃光が辺りを照らした。ストロボに含まれる紫外線が、塩素ガスと硫化水素ガスの混合気体に反応する。



鼓膜が破れそうなほどの破裂音が響き、ペットボトルが勢いよく弾けた。釘が飛散し、霜田は悲鳴をあげ立ち止まった。下腹部から脚にかけ無数の釘が突き刺さり、血だらけになっている。



 うん。私は父親が薬剤師だったわりには化学の成績がさっぱりなので、原理が理解できちゃいないんだが、たぶんストロボを炊けば、そのとおりに爆発するんだろうな。ただ、だからといってペットボトルの中に仕込んだ釘がちょうど都合よく散弾銃のようにターゲットの脚をずたずたにできるかというと、ちょっとどうかなと思うので、良い子のみんなはマネしないようにね。






玲奈は霜田めがけて走り、勢いをつけて頭部を警棒で殴打した。霜田は突っ伏したままだった。その側頭部を、玲奈は容赦なく水平に殴り飛ばした。満身の力をこめ、左右に往復して打撃を加えつづけた。




 よっしゃあ。で、ようやく琴葉を救出にいく玲奈。かまされていた猿轡で刺された足を縛って止血したりするが、もうだいぶ痛めつけられて出血も進んで、虫の息である。






 川口春奈がやられちゃえばいいと思ってたみなさんは、さぞやご満足だろうな。まあいい。あとは一気にエンディングだ。



やがて琴葉が、小声でささやいてきた。「玲奈さんは、ひとりじゃないよ」





琴葉の吐息が途絶えがちになり、やがて消えていった。はっとして玲奈は身体を起した。琴葉のまぶたは、いつしか閉じていた。



「だめ」玲奈は呼びかけた。「起きてよ。琴葉!」



琴葉の胸に手を這わせる。心臓の鼓動をさぐりあてられない。呼吸も失われていた。



視界にあふれる涙に、ぼやけたヘッドライトの光が乱反射し、絶えず滲ませる。玲奈は声をあげて泣きながら、両手の指を組みあわせて琴葉の胸にあてがった。肘をまっすぐに伸ばし、体重をかける。強く沈みこむまで圧迫しては力を緩めた。蘇生措置を果てしなく繰りかえす。



自分の涙が琴葉の寝顔に絶えず降りかかるのを、玲奈はまのあたりにした。神様。咲良ばかりか琴葉まで連れていくつもりなの。わたしはもう、ひとりになりたくない。



 というわけで、原作本文とドラマ画像のコラージュでレビューした第3話でした。
 北川さんもキャリアを重ねて、おなじみの共演俳優さんとか、どこかで見たことあるしぐさとかも増えてきて、私はとにかく楽しかった。川口春奈も良いし、なかなかそこまで触れる機会はないが、ARATAとかディーン・フジオカとかユースケ・サンタマリアとか、芸名が国籍不明な人ばっかり面白がって選んだような男性側キャストも、とても良い。それと三浦友和の息子な。
 『ネオン蝶』レビューも、あと一作というところまで来ているんだけど、ちょっと私、火がついてしまった。9月までこのブログは『探偵の探偵』全面支援体制で行こうかなぁ。


 あ、それとオマケ。原作第4巻読み終わりました。読後感を一言でいえば「あざとい」。
 第1巻から第3巻までで、だいたい話が完結していて、でもそこにちょっと「引き」が残してある。そしてこの第4巻は、第3巻までのラスボスの背後に、実は「裏のラスボス」がいて、それが表舞台に姿をあらわしたという話。クライマックスでは、これまでよりスケールアップした舞台で、その「裏のラスボス」とヒロインが対決する。要するに第1巻から第3巻までがドラマ版の原作、そしてこの第4巻は「スペシャル版」もしくは「劇場版」の原作となることを、たぶん意識していると思うよ。いや、あざとい。まあ実際SP版が制作されるかどうかは分かんないけどね。んじゃまた。


【作品データ】『探偵の探偵』第3話「真犯人現る!闇夜の決闘!」2015年7月23日放送<スタッフ>プロデュース:渡辺恒也、草ヶ谷大輔/プロデュース補:國安馨/制作担当:増子美和、片岡俊哉/原作:松岡圭祐『探偵の探偵』『探偵の探偵』『探偵の探偵II』『探偵の探偵III』(講談社文庫刊)/脚本:徳永友一/演出補:楢木野礼/演出:品田俊介/撮影:北山義弘、船橋正成/照明:清喜博二/音声:塩瀬昌彦/映像:植木康弘、青田保夫/音楽:Nima Fakhrara/主題歌:「Beautiful Chaser」 (超特急 feat.マーティ・フリードマン)/編集:小泉義明/美術プロデュース:宮粼かおる/美術デザイン:?木陽次/メイク:外山隼人/スタイリスト(北川景子・高岡早紀担当):野村昌司/メイク(北川景子担当):佐藤郁江/スタントコーディーネーター:劔持誠/スタント:つちださゆり、上野山浩<キャスト>紗崎玲奈:北川景子/峰森琴葉:川口春奈/窪塚悠馬:三浦貴大/桐嶋颯太:DEAN FUJIOKA/土井修三:伊藤正之/佐伯祐司:六角慎司/伊根涼子:高山侑子/長谷部憲保:渋谷謙人/船瀬卓:阪田マサノブ/紗崎咲良:芳根京子/坂東志郎:相島一之/藤戸俊久:佐戸井けん太/薮沼信吾:宅間孝行/岡尾芯也:岡田義徳/霜田辰哉:山中聡/警察官:森下能幸/阿比留佳則:ユースケ・サンタマリア/天田暦/松木研也/玉野るな/ゴブリン/あべまみ/藤村さおり(フジテレビアナウンサー)/矢吹洋子:高岡早紀/須磨康臣:井浦新