実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第524回】小松彩夏主演『ネオン蝶 第三幕』レビューの巻(その3)


 
 とにかく良かったよな『探偵の探偵』第1話。けれん味たっぷりの冒頭に「えっ、オドロオドロしいサイコホラーっぽい仕様にするつもり?」とちょっと不安がよぎったが、本編に入るとテキパキと話が進んで緩みがない。そんな進行にあわせて、ヒロイン北川景子は、正味一時間弱の本編を、緊張感をもったまま駆け抜けた。



 これまでの北川景子なら、これだけテンションを上げると、ときどき芝居に無駄な力が入りすぎて、観ているこっちまで肩が凝ってしまうようなことがあったが、それもない。主役を張るにふさわしいスケールの女優さんになってくれて、しかもまだまだ発展途上である。ほんとうに応援し甲斐のある人だ。



 前回のコメント欄にも書いたが、もともと展開の早い話をそのままのテンポで映像化していて、今回の第1話で、現在第3巻まで刊行されている原作のうち、第1巻の半分近くまで進んでしまった。ヒロインが「探偵の探偵」になったいきさつ、新人の少女がヒロインの相方になるまでの成り行き、ヒロインのハードボイルドな「裏探偵」ぶり、そして原作第1巻のラスボスの登場というあたりまでだ。まあ初回スペシャルで尺は長いし、基本設定と見どころをひととおり紹介しようと思えば、どうしてもこうなるだろう。次からは少し速度を落とすとは思うが、しかしそれで、ドラマ3回で原作1冊くらいの消化ペースになるんじゃないかな。で、原作は完結していないので、第9話あたりで原作のストックを使いはたし、最終回スペシャルはテレビ版オリジナルのエンディングに……なったりして。回想シーンで、ちょっとそういう雰囲気を匂わせる描写もあったし。



 数字は初回が10%を行ったので、名古屋支部的にはじゅうぶん満足。あともう一回、二桁を達成できれば大成功だ。万が一、平均が二ケタを超えれば、原作はまだまだ続くみたいだし、ドラマ最終回は続編への含みを残した感じのものになるかも知れませんね。個人的にはあそういう終わり方は好きではないが。



 いままで「北川景子主演」と聞くと、いつだって保護者でもないのにハラハラドキドキ見守っていた私たちだけど、もうそんな大きなお世話は必要なく、ふつうに楽しんでいれば良い時期に入ったのかも知れない。しつこく言うが、とにかく今回の「主演」としての彼女の風格に、私は感激した。ひょっとすると『HERO』で、チームリーダーとしての主演の心得のようなものを、木村拓哉から学んだのかも知れない。勉強する女優だもんな。



 さて、実は土曜も日曜もマジで仕事で、そろそろ出かけなきゃならない。でも『ネオン蝶』レビューも、できれば少し進めておきたい。やれるだけやってみます。



 なぜか懐かしさを感じて心寄せていた常連客の高杉さん(小沢和義)が、なんと自分の父親だった。しかも、叔母さんだけどほんとうは母親の佳代(大島葉子)が、銀座に返り咲いて始めた店『トレゾール』のオーナーだった。ということは、お父さんの資金援助でお母さんが店を開いて、娘の勤め先にプレッシャーを与えているわけだ。
 しかもお父さんの高杉は『トレゾール』に娘を引き抜くために『手毬』の常連になったんだという。引き抜いて親子三人、水入らずで暮らそうって思っていたのか?



 裏切られたというか、もう何だかわからないドロドロの状況に置かれたショックに落ち込む桜子だが、北川景子が成長したように、小松彩夏だってもう凹んでいるばかりではない。「私あの人たちと話がしたい」と、開店前のクラブ『トレゾール』に単身乗り込んだのでありました。
 というわけで父と母と娘の三者面談。三者のうちでいちばん立場が弱いのは、女が身ごもったと知ったとたん逃げてしまったお父さん。こういう情けない味は、こわもてすぎる小沢仁志アニキには、ひょっとしたら出せないかもな。小沢和義の方が芝居の幅が広い(笑)。



桜 子「知ってますから。私があなたたちの娘だって」
佳 代「そう。節子ママから聞いたのね」
桜 子「心配しないでください。親だなんて思ってませんから。本当の親が借金のカタに娘の体を売りますか?」
高 杉「え?」
桜 子「私その時が初めてだったんです。この人はそういう人なんです」
佳 代「そうね。母親失格。でもね桜子、あなたはそういう人間から生れてきたの。あなたの中にはその血が流れているの」



高 杉「よせよ……なあ桜子」
桜 子「あなたに何か言えるんですか?引き抜きのために娘に近づいて、人の気持ちを踏みにじって。……私あなたのことが本当に好きでした」
高 杉「桜子それは違う」
佳 代「やめて。もう言い訳なんか通らないでしょ。それにあなたは一度私たちから逃げたんだから。何も言う資格がないわ。私にも、桜子にも」
桜 子「どうして産んだんですか。ひとに預けるくらいならどうして……」



佳 代「母である前に女でいたかった。私の人生は私のもの、そういう思いが捨てられなかった」



桜 子「あなたたちの気持ちは分かりました。私、負けません。あなたたちには負けませんから」



 ここまでワンカット。
 佳代の大島葉子はなんか存在感があって魅せられる。
 この『ネオン蝶』シリーズよりちょっと前に、白倉伸一郎が制作した『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』(2013年1月東映)という映画が公開された。脚本が伊藤ちひろで監督が行定勲という『世界の中心で、愛をさけぶ』コンビで、主演の阿部寛の周りに、大竹しのぶ、小泉今日子、風吹ジュン、荻野目慶子、真木よう子、野波真帆などなどをはべらせて、非常に豪華なキャスティングを実現した作品だった。しかし女優さんたちが濃すぎたのか、同じ白倉伸一郎プロデュースで深田恭子と北川景子と並べた『ルームメイト』(2013年11月)同様、興行はふるわなかった。



 それはともかく、この映画の中心には「艶」(つや)という、結婚してもまた別な男と関係してしまうふしだらな、でも現在は病院で意識不明の女がいる。物語はその、いわば不在のヒロインをめぐる群像劇として進行する。
 艶の顔は最後まで画面に映らないが、歯形つきの乳房だけは映る。これを演じていたのが大島葉子で、顔が出ずハダカの胸だけという役を演じるのもすごい。でも、監督がこの人をそういう役に選んだ理由もわかるような気がする。ともかく独特の魅力がある。このへんのニュアンスはキャプチャ画像だけでは分からないかも知れないけど。
 話を戻します。



佳 代「ちょっと飲む?」



佳 代「これで良かったのよ。私を憎めば憎むほど、あの子は大きなネオン蝶に成長していく」



高 杉「お前本当にそう思っているか?おれにはもう一人のお前のささやきが聞こえるよ。自分こそが銀座ナンバーワンだって……お前はな、娘に嫉妬しているんだ。おれもな、トレゾールに引き抜くのが目的で桜子に近づいた。だけどそんなこと、すっかり忘れてたよ。桜子と過ごした時間は本当に楽しかった。おれたちにそういうふうに思わせる女になったんだ、桜子は」



佳 代「ひどい親ね、私たち」


 なんっつて、これはこれでちょっと良い感じ。
だがそこへ割り込んできたのが湯川。演じているのは2丁拳銃の修士。このレビューでは紹介しなかったけど、トレゾールの開店祝いパーティーのときも、店でいちばん可愛い子たちをはべらせてデカイ面をしていた謎の男だ。オーナーの高杉に対しては基本的に高圧的。どういう関係か。



湯 川「いい雰囲気ですね」
高 杉「湯川さん……」
湯 川「焼けぼっくいになんとやら、ですか?まぁ結構なことですけどね、こちらも急かされてまして、香港からの電話がひっきりなしですよ。」
高 杉「すいません……」
湯 川「あの子の引き抜きはともかく、ビルの方だけでもなんとかしてくれないと困るんです」
高 杉「もう少し時間もらえませんか?オーナーが頑固な男でして」
湯 川「(笑)やり方なんていくらでもあるでしょ。ガキの使いじゃあるまいし。こちらが今までこの店にいくら出したと思ってるんですか?いまさら退けないのはわかってるでしょ?」



湯 川「何ならこちらでやりますよ」
高 杉「分かりました。急いで動きます」
湯 川「頼みますよ」


 ということで、『トレゾール』が金に糸目をつけずにホステスの引き抜き工作を行なえる背景には、香港マフィアの資金があることが分かった。この湯川という男は、その窓口らしい。
 しかしこの店を足がかりに、香港マフィアたちは何を企んでいるのか。知らず知らずのうちに、高杉と佳代はやばいところまで足を踏み込んでしまった様子である。
 ……と、今日はここまでで、これからお仕事です。すみません。