実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第519回】小松彩夏主演『ネオン蝶 第二幕』レビューの巻(ウルトラの妾編)



 百日紅さんが前回コメント欄に書いてくださっていたとおり、ヴィジュアル解禁。いよいよ盛り上がってまいりました。『なかよし60周年記念公演 ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」‐Un Nouveau Voyage-(アン ヌーヴォー ヴォヤージュ)』。今回はサターンとウラヌスとネプチューンが登場。サターンはPrizmmy☆、ウラネプはどちらも元タカラジェンヌだ。
 この三人の外部戦士が出るということは、原作はデス・バスター編。ということはカオリナイト、ミストレス9、ウィッチーズ5も出るってことか。楽しみですね。9月18日〜27日がAiiA 2.5 Theater Tokyo(東京)、10月2日〜4日は大阪・サンケイホールブリーゼ(大阪)だそうである。
 ただ5人の内部戦士がこれで見納めと思うと、寂しい。とても悲しい。

1. 仁義なき戦い


 さて今日も時間がないからちゃっちゃと行こう。『ネオン蝶 第二幕』レビュー。結局前編・中編・後編の3回になりそうだ。今日はその中編。
 初対面の森田会長からいきなり迫られ、とまどう桜子。だが桜子も負けていない。とんでもないストレート球を返す。



森 田「桜子……私が面倒をみようか」
桜 子「そんな……今日会ったばかりなのに……」



森 田「桜子とは今日初めて会った気がしないんだ。懐かしい気がする」



桜 子「叔母さんは、会長の愛人だったんですか?」


 「叔母さんは、会長の愛人だったんですか?」なんて、夜の世界のマナーとして聞いていい質問なのかどうか。ともかく、たじろいた森田会長は「私は先に失礼するよ」と一時退却する。よく分からない展開だが、後に残された桜子と高畠。



桜 子「いろいろありがとうございました。会長のような方を紹介していただいて感謝しています」
高 畠「気にしなくていいよ」



桜 子「でもどうしてこんなに私のことを応援してくれるんですか?それが分からなくて……」
高 畠「昔、佳代に世話になったんだよ。十五年前、おれが親のスネをかじって銀座で遊び回っていたころ、放蕩が過ぎて親に勘当されたんだ。店のツケが払えなくて、ホステスにも迷惑かけて、そんな時、佳代が店の売り掛けを全部、自分で被ってくれたんだ。『遊ばした私にも責任がある』って。それだけじゃない。『他の店の売り掛けも全部、払っときなさい』って金を貸してくれた。恩を返す前に佳代は銀座から姿を消した。何年かして池袋で店を出したと聞いたが、おれには『来てくれるな』の一点張りでさ。まだ恩を返していないんだ。だから桜子を応援しようと思った」



桜 子「……ぜんぶ叔母さんのおかげ。本物のネオン蝶になるには、加奈さんみたいにならないと……」




高 畠「それは違う。あいつは蝶のように見えるが、本質は蛾だ。蝶と蛾は似ているけどぜんぜん違う。あいつは毒蛾だ。」



桜 子「毒蛾?」
高 畠「(フッと笑って)そのうち分かるよ」



 その加奈は、暗い顔をしてモジモジしているだけの桜子が、どうしてこんなに大口の客を次々とゲットできるのか、腹立たしくて仕方がない。まあ確かにそうだよな。



 ロッカールームでは、加奈と取り巻きのホステスたちが口々に「会長にちやほやされたからっていい気になってんじゃないよ」「あんたみたいなカマトトぶってるのは虫酸が走るのよ」などと桜子をいたぶる。ほかの仲間たちが桜子をかばうと、批判は桜子をヒイキする節子ママにまで及んで、ついには独立宣言まで飛び出した。


加 奈「私、この子辞めさせて欲しい。この子辞めさせないんだったら、あたしが辞めるわ」



加 奈「私が辞めたらヒロミ、カオリも一緒に辞めるよ」


 お店を辞めてよそに移るというならともかく、ここのホステスを引き抜いて、自分の店を開こうというのだからおだやかではない。「そんなルール破りしても良いと思ってるの?」という仲間の制止も、もう耳に入らない。



加 奈「そんな古くさいルールに縛られてちゃ、この先やっていけないわ。もうママのやり方は時代遅れなのよ」



マ マ「じゃあ辞めればいいだろう。私のやり方に文句があるんだったら、何人でも連れて出て行きな。」
加 奈「ええそうさせていただきます。いくよ」



加 奈「もうママが若いころの銀座とは違うんです。ママみたいに古き良き銀座を懐かしがっていたら、新しい客はつかめないわ。時代は変わったの。これからは私たち若い世代のやり方でこの銀座を引っ張って行きますから」



╳    ╳    ╳



桜 子「私のせいでこんなことになってしまって……申し訳ありません」



マ マ「別に桜子のせいじゃないよ。加奈はね、辞めるきっかけを待っていただけ。そこにちょうど桜子が現れたってわけよ」



桜 子「……」
マ マ「ウミは出した方が良いんだ。当分このメンバーでやって行くから、みんなでしっかりと頑張ってちょうだい」
全 員「はい」


 ということで気を取り直した『手毬』のメンバーだが、まもなく加奈が『手毬』の近くに自分の店を開くと、あからさまに客足が減っていった。なにしろ『加奈』の方は、ホステスさんの「お触り」「お持ち帰り」も、わりと開けっ広げに自由、という体当たりスタイルの営業である。






加 奈「この世界は客を呼んだもの勝ち。そうでしょ」



加 奈「うちらはみんながナンバーワンのホステス。序列なんかない。全員で身体を張るの」


 一方『手毬』は閑古鳥でかなりやばい。



 みなお得意さまに電話をかけるが、ホステスの肉体目当てだったお馴染みさんは、『加奈』へ流れこんでいる。




高 畠「結局男は肉欲に負けるか。色仕掛けにやられやがって。粋な遊びはどこにいったのかね」



森 田「相当加奈に食われてるな」


 そこで桜子は決意する。この窮状を救ってもらうには森田会長を頼るしかない。売るべきときに最も高く自分を売る、いまがそのチャンスだ。



桜 子「会長。この間のお話なんですが、私に会長のお世話をさせてください」
森 田「本当にそれでいいのかい?」



桜 子「会長の愛人にさせてください」


 だからその「愛人にさせてください」なんてセリフは、夜の世界では常識的なのか?私は一生分からなそうな問題なので、ご存知の方は教えてください。

2. マイ・フェア・レディ


 さあこうして小松彩夏を囲うことになったモロボシ・ダンは、やはりけっこう嬉しそう。



 まず愛の巣作りだが、これはもう、都内にビルを何件も所有している会社のオーナーさんである。さっさと確保して入居。ていうか、前から2号さん用に物件をもっていたようにも見える。
 次はワードローブ。森田会長のお見立てで服や靴を大人買いして、キレイな服をそろえる。







 さらに、マンションには部下にどっさり本をとどけさせる。



森 田「政治経済の本だ。毎日一冊読みなさい」



森 田「外見が美しくても男はすぐに飽きる。内面を磨き上げてこそ本物のネオン蝶になるんだ」



桜 子「はい」


そして息が掛かった建設会社の社長や重役を『手毬』に招待して、店を盛り上げる呼び水とする。





桜 子「こんなににぎやかなのは久しぶりです」



森 田「桜子も向こうへ行って自分を売り込んできなさい」



桜 子「でも……」
森 田「いいから」
桜 子「はい」



森 田「あちょっと待ちなさい。……あの菊地」



森 田「あいつは身体のどこでもいいから誉めてあげなさい。指先でもまつ毛でもどこでもいいから」



森 田「地位のある奴は金で買えるものを誉められても喜ばない。それに岩田」



森 田「アイツは背も低いし髪の毛も薄い」



森 田「容姿にコンプレックスのある奴はポリシーを誉めなさい」
桜 子「ポリシー?」
森 田「ものの見方や考え方だ。見た目よりも中身を誉めてやるんだ。そうすれば喜ぶはずだ」



森 田「いろんな男をつかまえてきなさい……でも帰ってくるのは私のところだぞ」
桜 子「はい」


 こうして、モロボシ・ダンが理想とする「夜の蝶」に育てあげられていく桜子。桜子の会長への感謝の想いは、次第に本格的な愛情へと発展していく。でも前回言っていたように、森田会長は数年前心臓をやられてからドクターストップがかかって、飲むのはいつもオレンジジュースだし、夜は添い寝するのが精いっぱい。それがまあ不満といえば不満だ。



森 田「こうやってそばにいるだけでいいんだ。若い桜子には酷か……」
桜 子「いえ」

3. 銀座カンカン娘


 一方、身体を張った営業で一時は飛ぶ鳥を落とす勢いだった「加奈」だが、その品のないやり方に反撥した銀座の老舗クラブが結託して営業妨害したために、急速に客足を落としてしまった。



 そんな中、桜子はばったり加奈と再会する。「ちょっと話さない?」と誘われるまま「加奈」の店内に入る。そこで桜子は、『手毬』にいたときは気づかなかった加奈の意外な一面と、彼女なりの哲学を知る。



加 奈「何か飲む?」
桜 子「いいです」



加 奈「遠慮するなって」
桜 子「じゃあお水を」



桜 子「大きいんですね」
加 奈「ちょっと無理したからね」
桜 子「スポンサーがいるんですよね」



加 奈「この店は私だけのものにしたかったの。十六からお水やって貯めたお金、全部この店に投資したの」



桜 子「お客さん、入ってるんですか?」
加 奈「ここんところ減っているわ。なんか変なウワサ聞かない?加奈の店に来ると病気が移るとかなんとか。あそこのホステスは病気持ちで、やると移っちゃうよって、銀座のママたちが、あることないことウワサ広めてんのよ。うちは身体で勝負しているぶん、そういうことには人一倍、気を遣っているっていうのに……。大人のやることはえげつないわ。節子ママだけは、正々堂々と勝負しようって、ウワサ広めるの反対してくれてるらしいけど……私のやり方、間違ってんのかな……」
桜 子「高畠さんは、銀座のクラブは会話を楽しんだり、恋の駆け引きをしたり、粋な大人の男が集まる場所だって言ってました」



加 奈「みんなそう言うけどね。それが銀座の遊び方だって」


 でも加奈に言わせれば、銀座のネオン街の始まりはそんなにきれいなもんじゃない。と、ここでいきなり話は、敗戦後まもなく「日本の婦女子を守る防波堤」として設置された「特殊慰安施設協会」(RAA)に及ぶ。まさかこんなドラマが戦後史の勉強モードになるとは。


加 奈「私のお祖母ちゃんも若いころ銀座で働いてたの。パンパンだったの」
桜 子「パンパン?」


加 奈「立ちんぼのこと……戦争が終わってすぐに進駐軍が日本を占領したでしょ」



加 奈「そのあとに、アメリカ兵に日本の女たちが犯されるのを怖れた国が、セックスの防波堤として売春婦を雇ったの」



加 奈「私のお祖母ちゃんもその一人。お祖母ちゃんは日本の女たちを守るために自らの身体を犠牲にした」



加 奈「だけど、それもすぐに、性病が蔓延するからって理由で廃止させられたんだけどね」



加 奈「国からの補償もなくて、行き場を失って、銀座に流れてパンパンになったの。そしてバラックを建てて商売を始めたの。銀座の街を作ったのは、パンパンと呼ばれてバカにされてきた女たちだった。まあ言ってみればお祖母ちゃんが最初のネオン蝶なんだから」



桜 子「最初のネオン蝶?」



加 奈「そう。身体を張って勝負してきた女たち」
桜 子「ごめんなさい、私なんにも知らなくて」
加 奈「いいよ。しようがないよ」
桜 子「でも私だってもったいぶっているわけじゃありません。ここぞって時には身体も張ります」


 こんなところでこんな話をするのもなんだが、戦中戦後の慰安婦の問題というのは、改めて言うまでもなく国内外に様々な禍根の種をばらまいて、どうしようもない。様々な見方が可能だろうが、私はこの「お祖母ちゃんは日本の女たちを守るために自らの身体を犠牲にした。そして夜の銀座を作った」なんていうふうにプライドをかけて宣言する加奈という子を、ちょっと偉いと感動したぞ。でも、だから当時の「特殊慰安施設協会」は正しかった、なんてことはぜんぜん思わないけどね。


4. ペーパームーン


 最初は店のためにと思って、森田会長の囲われものになった桜子。でも会長の優しさ(と資本力)に、次第に本当の愛情が湧いてくる。
 とはいうものの、あくまでメカケの身。会長には帰らなきゃならない家がある。



森 田「じゃ行ってくる」
桜 子「今晩は?」



森 田「今晩は……ダメだな。明日か明後日、また連絡する」


そして泊まってくれる夜も、心臓の病のせいで、決して抱いてはもらえない。



桜 子「抱きしめて。ただ抱きしめてくれるだけでいいの」



桜 子「淋しい」


 身体を求めるわけでもなく、なぜここまで自分にしてくれるのか。考えられる理由はただひとつ。会長は私を愛してくれているわけじゃない。かつて愛人だった叔母さんが忘れられなくて、叔母さんによく似た私を手もとに置きたいだけなんだ。


森 田「今夜は一緒に帰ろう」



森 田「嬉しくないのか」
桜 子「聞きたいことがあります」
森 田「どんなこと?」
桜 子「どうして叔母さんと別れることになったんですか?」



桜 子「……言いたくなければ言わなくてもいいです。すみません」
森 田「私を捨てて他の男の所へ行ったんだ」


 翌朝、森田会長は、ながらく仕舞いっぱなしだった一枚の着物を桜子の前に出して見せる。



森 田「今日は月初めだよな」
桜 子「はい?」
森 田「新調日の日じゃないか」
桜 子「新調日?」
森 田「知らないのか?毎月一日は新調日と言って必ず新しい服を着て出勤するんだ。古き良き銀座の習わし。これ、着て行くと良い」



桜 子「これって……叔母さんの着物ですか」
森 田「これだけは捨てきれなかった。頼む、一度で良いからこの着物姿を私に見せてくれ」


 そしてその夜の『手毬』で異変は起こる。着物姿も可愛いなあ小松彩夏は。しかしそんな私の感想をよそに、店の空気には微妙な緊張感が。



マ マ「おはよう」





マ マ「…佳代…」
支配人「ええ、私も驚きました。十五年前の佳代さんにそっくりです」



マ マ「いらっしゃいませ……会長、ちょっとお遊びが過ぎるんじゃございません?」
高 畠「ママ!……いやあ俺も驚きましたよ。あまりにも佳代に似てるから」



マ マ「あまり良い趣味とは言えませんよね」
桜 子「いいんです。会長は高畠さんに出会えたのも、ぜんぶ叔母さんのおかげですから」



桜 子「みんな叔母さんが好きだから私に優しくしてくれる」



桜 子「会長、究極の道楽の話おぼえてます?」



桜 子「無垢な娘を自分好みの女性に育て上げるって」



桜 子「会長の理想の女性は叔母さんなんですよね」



マ マ「桜子ちょっと待って」



森 田「いい、私が行く」


 といって更衣室に入ったモロボシ・ダンは、ここで驚くべき真相を桜子に告げる。だいたい観客には分かっていたと思うけど。





桜 子「私は叔母さんの身代わり。そうなんですよね。会長が愛しているのは私じゃなくて叔母さんでしょ」



森 田「桜子、お前は佳代の娘だ」



森 田「佳代はお前の母親なんだ」



 衝撃の告白。このあと物語はどう展開するのか?次回『ネオン蝶 第二幕』レビュー完結編、刮目して待て。