実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第507回】DVD第3巻:Act.12の巻(15)

1. フラガールと犬のチョコ



 祓川学『フラガールと犬のチョコ 東日本大震災で被災した犬の物語』(2012年、ハート出版)は、実話に基づくノンフィクション・ノベルである。
 福島県いわき市の「スパリゾートハワイアンズ」(私くらいの世代には昔の「常磐ハワイアンセンター」という呼び名のほうがなじむ)のフラダンスチームといえば、ちょっと前に映画『フラガール』(2006年、李相日、シネカノン)でも評判になった。この物語のヒロインもフラガールになるのが夢で、フラガールの宝塚「常磐音楽舞踊学院」に入り、厳しいレッスンもこなして頑張っていた。でも2011年3月の震災で福島第一原発の事故が起こり、あわただしい緊急避難のなかで、大の仲良しだった愛犬のチョコと離れ離れになってしまう。
 震災で飼い主家族とはぐれたペットは数多くて、ベリル様が被災地を回ってそういう子を引き取っているという話はみんなも知っているよね。


 
 常磐のハワイアンチームはその後、地元の復興を願う「フラガール全国きずなキャラバン」を展開する。主人公もフラガールの一員として全国各地を巡る。ダンスショーのかたわら地元物産のプロモーションをやっても、放射能汚染を気味悪がられ、ネットでは、被災したのにハワイアンなんかやっているお気楽さを揶揄されて傷つくけど、とにかく前に向かって歩かなくては、という内容である。
 そんなノンフィクションを原作に、震災から4年後の2014年3月11日、テレビ東京でドラマスペシャル『フラガールと犬のチョコ』が放送された。



 ヒロインを演じるのは瀧本美織。2010年秋〜2011年春のNHK朝の連続テレビ小説『てっぱん』のヒロインだが、この『てっぱん』は震災後、特別報道番組体制の影響で2011年3月11日から1週間ほど放送が中断されている。そのとき、ドラマが再開した翌週の脚本を担当した関えり香が、今回『フラガールと犬のチョコ』の脚本を手がけているというのも何かの因縁か。そういえば瀧本美織はNHK教育の『東北発☆未来塾』という復興支援番組でもナレーターをやっていた。


 
 というわけで、見どころはやはり、瀧本美織がレッスンを積んで挑んだフラダンスということになる。実際、さすが元SweetSという感じで、「激しく腰を振る瀧本美織」ねらいでチャンネルを合わせた人々にも、満足できる映像になっていたと思う。そしてそういう人々に、しっかり福島の現状を訴える、という番組の目的(推定)も果たせていたんじゃないか。さすがテレビ東京はブレがない。



 SweetSは、2003年にテレビ東京のバラエティ番組『プラチナチケット』(モー娘。を生んだASAYANの後継番組)から生まれたアイドルグループで、プロデュースを手がけたのが、後に河辺千恵子のダンナになるおちまさとだった。
 当時はポストSPEED(1996年〜2000年)をめざす「ダンス・アンド・ボーカル・グループ」がいろいろ活躍していた時期で、ほかにもFolder5とかEARTHとかDream(DRM)とかいろいろあったが、2005年あたりを境にきれいさっぱり消えてしまった。ただDreamだけがE-Girlsに吸収合併されて現在も生き延びているのは凄い。
 SweetSのMIORI(瀧本美織)は、SPEEDでいえば上原多香子と同じような「美人担当」だった。





 解散後の2008年、スターダスト・プロモーションに移籍してから、地元の高校を卒業するまで目立った動きはなかったみたいだが、ミニライブ&握手会のたぐいには顔を出して、人気急上昇中だったももクロやエビ中のメンバーと抱き合わせになっても負けないくらいの(推定)支持を受けていた。




 その後は上京して、本格的に女優として売り出されてからは、けっこうトントン拍子に成功した。 ただ、これは私の個人的な印象だが、グループの活動期間も短かったし、彼女はまだ歌と踊りをやりたい気持ちが、かなりあるんじゃないかと思う。そのあたり、たとえばFolder5のHIKARI(満島ひかり)とはだいぶ違うよね。
 だから今回の「フラダンスで自分やみんなに前向きの力を与えたいと思っている女の子」なんていうのは、彼女としてはすごく気持ちを入れやすい役だったんじゃなかったかな。とにかく良かったです。
 


 というわけで、なかなか小池里奈まで話が進まない。困ったな。
 小池里奈の役どころは、養成学校で瀧本美織と同期だったフラガールの一人であるが、さほど深く物語には絡んでこない。だから映るにしてもアップになった瀧本美織の背景だったりしてセリフもない。舞台のシーンでも、立ち位置はわりと端っこの方で、引きの画面では映るが、カメラが少しセンターの瀧本美織によると、すぐ切れてしまう。要するにあまり出番が多くないのだ。ただ『少林少女』の沢井美優よりは多かったかな(いつの話だよ)。



 まあしかし、ここまで書いたところで、『M14の追憶』を見に行ったら、きっちりしたレビューがアップされていたので(ここ)、『フラガールと犬のチョコ』の話はこのくらいにして、本題に入ることにしますね。

2. 嗚呼、勘違い


 Act.12のCパート。いよいよ妖魔対セーラー戦士の対決だ。
 前回のシーンが、台本では「28. 観覧車・下(夕方)」で、このシーンは「29. 広場(夕方)」だが、放送ではここでCMが入った。「CM明けはいきなり夜になる」という実写版の法則が発動されて、あたりはすっかり暗くなっている。東京ドームシティあたりを逃げる齋藤社長と、後を追うマーズとマーキュリー。そこへうさぎが合流する。
 このAct.12は、偶然うさぎに救われた美奈子が「ひょっとしてプリンセスは妖魔の存在を察知したのかも」と勘違いするところから始まる。うさぎはうさぎで、妖魔に襲われた美奈子のことを、たんにアイドルが自由を求めて逃避行しているだけと勘違いしているし、美奈子のファンは、帽子をかぶって逃げ出したうさぎを美奈子と勘違いして追いかける。そしてそもそも、うさぎも亜美もレイもまことも、セーラーVこそがプリンセスだと勘違いしている。とにかく「勘違い」が全編を貫くテーマとなっていて、ここは、目の前の齋藤社長が実は妖魔であることに気づかないうさぎと、うさぎが実は自分の狙うプリンセスであることに気づかない社長(妖魔)というすれ違い劇になっている。



マーズ「待ちなさい!」



マーキュリー「うさぎちゃん!」



うさぎ「妖魔は?!」



マーキュリー「え?」
マーズ「そこにいるじゃない!」



齋 藤「プリンセスはどこだ!」



うさぎ「うそ、社長さん?!」



マーズ「妖魔に操られてるのよ! 早く変身して!」



うさぎ「ムーンプリズムパワー! メイクアップ!」


 最近ちょっとGIFアニメ作りをあれこれ試しているので、ここも変身シーンのGIFを作ってみますね。閲覧していてちゃんと動かないとか不具合があれば、コメント欄でご指摘いただけるとありがたい。デバイスやブラウザを選ばず、普通に見られていろいろ楽しいサイトをめざしています。



 なお当サイトは、ネパール、インドおよびアフガニスタンでサクサク閲覧するには重すぎる。それは私自身が現地で実験ずみだが(何のための海外出張だか)まあ正直そこまでサポートしようとは思わない。欧米諸国ではちゃんと見えているでしょうか?



セーラームーン「愛と正義のセーラー服美少女戦士セーラームーン! 月にかわって!」



三 人「おしおきよ!」






齋 藤「お前たちに用はない」




 「お前たちに用はない」と言いつつ、どっちかというと「この社長にはもう用はない」という感じで、社長の肉体を脱ぎ捨て、姿を現す妖魔。

3. 戦闘シーン分析


 この妖魔なんですが、まあAct.11から出ていますけれど、改めて仔細に観察すると、これはAct.10の妖魔と同様、性別は女性タイプみたいだ。美白で胸もあって、たぶんそうですよね。


 
よく見るとAct.10の妖魔と、顔のあたりなんか似すぎである。けっこうパーツを使い回しているような気もいや別になんでもありません。



 で、ここから戦闘シーンに入る。流れとしては、まずセーラームーンとマーズが仕掛け、続いてマーキュリーがカカト落としを決めようとするが、かわされる。




 で、妖魔が「蜘蛛の糸」(台本の設定ではそういうことになっている)を放ってマーキュリーをがんじがらめにするが、セーラームーンがすぐさまティアラを飛ばしてカット。






 でもそれが台本ではこうなっている。


  マーズ「(牽制技)!」
  セーラームーン「ムーンティアラブーメラン!」


  蜘蛛の糸を焼く炎、断ち切るブーメラン。
  斬りかかってくる妖魔を避けるマーキュリー。


 つまりですね、妖魔が放った蜘蛛の糸を、マーズは炎で焼ききり、セーラームーンはムーンティアラブーメランで断ち切り、マーキュリーは持ち前の素早さで攻撃を避ける、というふうに三者三様それぞれの特徴を活かした攻防を繰り広げているのです。
 そしてここでマーズのセリフが「(牽制技)!」となっている点も、もちろんチェックポイントだ。
 もともと原作のセーラーマーズは、ほかの戦士に較べると、あんまり技の名前をもっていないですよね。だいたいは「悪霊退散」の御札で済ませている。だからアニメ版は「ファイヤーソウル」や「ファイヤーソウル・バード」など、ちょっと派手なオリジナル技を作った。
 小林靖子はAct.8のクライマックスでマーズに「ファイヤーソウル!」と言わせた。北川景子の口の動きもそうなっている。でも完成作品では「妖魔退散!」というセリフがアフレコされた。武内先生が認めなかったんでしょうかね。じゃあ決め技は「妖魔退散!」でいいけど、しかしやはり、なんかやっぱりこう、技っぽい名前の技がもうひとつ欲しいよなぁ。ま、今はとりあえず「(牽制技)!」としておこう。
 ……なんて小林靖子先生が考えたかどうかは知らないが、考えるとあれこれ妄想が膨らみますね。
 と、私の体力も限界に近づいたので本日はこれまで。今回は「縄跳び」まで行くつもりだったが、残念。