1. みんなで大入りにできるくらいの客席数
せめて一週間は上映してくれないかなぁ。
12月6日(土)が、午後8時25分から10時5分までの上映、12月7日(日)から12月10日(水)までの4日間が、9時10分から10時50分までの上映。料金は1500円均一。仕事あがりに毎晩通えるレイトショーである.
シネマート新宿のスクリーン2は座席数62名。つまり60人ほどのファンが毎晩通えば、もしくは120人ほどのファンが交替で通えば連日大入満員。100人のファンが力を合わせれば客が入りきれずに急遽ロングラン決定も夢ではない。どうだ東京のVIP諸君。やってくれないか?最近ようやく映画女優の自覚にめざめた小松彩夏のために、一肌脱いではくれないか?
と名古屋から無責任なことを言ってみました。
2.「ジャージ」問題
というわけでそそくさと本題です。
ペンキで服を汚してしまった美奈子が、うさぎの案内で店に入り、ちょこっとファッションショーふうにいろいろ着替えた末に、新しい服を決めたところまででしたね。
でもそのころには、店の前に人だかりが出来ていた。
店 員「お客さま、外に気づいたファンが結構集まってしまっていますが……」
うさぎ「え!」美奈子「あ、そうですか」
この人たちはいつの間に湧いて出たのか。悪いけどちょっと話を巻き戻してみたい。
妖魔の手を逃れ、病院からタクシーで脱出した美奈子とうさぎ。だが美奈子は、借りたくもないうさぎの手を借りることになってしまって、ちょっと不機嫌。タクシーを降りて、うさぎを置き去りにスタスタ歩き出す。
ところが、うさぎがあとをついてくるので、後ろを向いて「シッシッ」と追い払っていたら、前方不注意で服にペンキがついてしまった。
それでうさぎに頼んでお店を紹介してもらい、何着か試着した後に選んだのがこれ。
ここのところが台本でどうなっているかというと「美奈子が、目深に被れる帽子と服を試着。うさぎはもう嬉しくて溜まらず見ている」とある。これ、ニュアンスとしては、服よりも、顔を隠す帽子をゲットすることが主目的で店に入ったという意味に読み取れる。
で、そのあとはこう続く。
着替えの終わった美奈子が、汚れたジャージを店員に渡す。
美奈子「捨てといて下さい」
うさぎ「え! じゃ私がもらいます」
美奈子「いいけど……。 汚れてるし」
うさぎ「そこがいいんです! うわぁ!」
ジャージを抱きしめるうさぎ。
さっきの、ペンキがついたシーンのト書きは「美奈子の服にべったりつくペンキ」としか書かれていなかったのに、この場面の台本は「汚れたジャージ」と、服の種類が指定されている。
ジャージっていったら、体育の授業とか、学校の先生の定番ファッションとか、そんなイメージしか思い浮かばない。でも私がオジサンだから知らないだけかも知れない。美奈子が着るようなオシャレでファッショナブルなジャージもあるんだったら、教えてください。
でも小林靖子は、本当に、トレーニングウェアみたいな「ジャージ」を想定して台本を書いたんじゃないだろうか。
そう考えると、台本では、美奈子は病室で、ジャージなんか着てくつろいでいたところを妖魔(社長)に襲われ、そのまま逃げ出しちゃったことになる。しかし愛野美奈子ともあろう者が、そんな格好で外を歩いちゃいけない。ジャージだもん。
だからモール街でタクシーを停めさせた。すぐに飛び込んで適当な洋服屋を見つけて服を買おう。つまり台本の美奈子は、着ていた服をペンキで汚す前から、そもそも買い替えるつもりでいたんだと思う。
ところが、後からストーカーみたいにうさぎがついてきて、そっちに気を取られていたら、今度は前方不注意で「ペンキ塗り立て」の看板に突っ込んでしまった。そんな騒ぎを起していれば、周りを行き来する人々の視線も、おのずと集まってくる。なにしろいつもと違って、目深に帽子をかぶってもいなければ、サングラスも、マスクもしていないのだ。(あれ、ひょっとして……)なんて声がちらほら聞こえてきたに違いない。
いつもと較べるとハダカで歩いているみたいな恥ずかしさ。その恥ずかしさと照れを隠したくて、美奈子はとっさにうさぎに話しかけたのである。そう解釈できると思う。
美奈子の服にべったりつくペンキ。
うさぎは感動している。
うさぎ「うわぁ、美奈子もドジ踏むんだぁ」
美奈子、決まり悪さを隠して、うさぎに歩み寄る。
美奈子「この辺詳しくなくて。服、換えられるようなお店、あるかな」
うさぎ「ありますあります! スッゴクいいとこ!」
興奮して意気込むうさぎ。
そうすると、この段階で、周囲では(ねえ、あのペンキ塗り立ての看板に突っ込んだ子)(あのジャージのスッピンの子)(ひょっとして愛野美奈子?)みたいなヒソヒソ声が起こっていておかしくない。で、美奈子は顔から火の出るような思いで、うさぎに小走りに歩み寄って助けを求める。私が演出家だったら、基本的にはそういう演出プランにするなぁ。
だってそういう流れでないと、試着が終わったところで、いきなり店の前にファンが群がっている、という展開が不自然なんじゃないだろうか。それに台本どおりジャージの方が、続く「捨てといて下さい」「え! じゃ私がもらいます」のやり取りも自然に聞こえる。と思うのは私の貧乏性のせいか。
このエピソードは、小林靖子の脚本も、もう台本そのものが文句なしの傑作! という感じじゃなくて、いろいろ解釈したり工夫をしなきゃいけないテキストになっているし、小松彩夏も、まだ何をどう演技するかよく呑み込めていない感じが随所に見られる。
だから本当は、もう少し脚本の意図を読み込んで画面を構成し、それを少女たちにきちんと説明し、演技指導する演出家がいれば良かったと思う。はっきり言えば田崎竜太。高丸監督は、わりとムードでいっちゃう人なので、こういう回には不向きだ。
3. ヒゲ武者騒動
すみませんが、これから喫煙問題とか処女問題とか、いろいろ考えなきゃいかんので(ウソ)本日の考察はこのくらいで。師走に入って毎回の記事が短めになりますが、ご容赦ください。長くない方が喜んでいただけるとは思うが。もうちょい進んで終わりにします。
店員が「お客さま、外に、気づいたファンが結構集まってしまっていますが」と言われたが、自分のペースに戻ったスーパーアイドル愛野美奈子はもはや動じない。店の外ではファンが携帯やサイン帳を手に大騒ぎだが、こんなのは日常茶飯事なので、平然と「そう」とつぶやくだけ。
が、しかしここで顔色を変えたのがうさぎ。すかさず髪を解く。うさぎがお団子を解けば、それはもうプリンセス。本物のプリンセスが本物のプリンセスの姿に戻って、ニセモノのプリンセスの影武者をやるという、何だかややこしいけど面白い趣向が、このエピソードの眼目である。ただ、さっきも書いたように、今回のエピソードは台本をただ漫然と映像化しただけではダメで、これをどう料理するか、ある意味、演出家の腕のみせどころとも言える回なんだけどなぁ。ま、多くは言うまい。
美奈子「何するの?」うさぎ「私が引きつけますから、その間に出て下さい」
沢井美優はバスケットボールをやっていたというけれど、この時の美奈子をガードするような動作が思いっきりそういう感じで、見ていて楽しい。キャプチャしようと思ったけれど、動きが早過ぎてブレてしまう。沢井さんも乗っているし、こういうのは、役者の自然体とムードを大切にする高丸演出の長所であります。
さすがバスケ少女である。このAct.12は「動」のうさぎと「静」の美奈子という対比で成り立っているんだけど、それを象徴するような場面ですね。ようやくこの監督のいいところが出たので、今回はこのへんで。先へ進むと再びちょっとアレなんでね。ではまた。