実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第439回】前世で何があったのか(ミュージカル2013)の巻

月の王国の廃墟から呼びかけるクイーン・セレニティの声に応え、戦士たちはセーラーテレポートする。



今週末も新幹線で移動である。先日買ったMacBookAir11インチは、軽いしバッテリーは長持ちだし、こういうとき車中で作業をするのにすごく良い。ただ表示サイズがひとまわり小さくなるのと、軽いぶん振動も伝わりやすいのが原因で(推定)長時間やっていると気分が悪くなっちゃいます。表示サイズなんか大きくすれば良いようなものだが、いい年したおじさんがセーラームーンについて長い文章を書いているなんて、不意に覗きこまれたら恥ずかしすぎるじゃないか。
というわけで今回は、東京−名古屋間を往復する間に採録した(何やってんだか)シルバー・ミレニアムでの会話内容をしっかりチェックしてみたい。


前回、今回のセラミュの特徴のひとつとして「原作どおり」ということを挙げた。要するに、アニメ版を下敷きにしていたかつてのセラミュとは異なり、今回は武内直子リスペクトというか、実写版と同様、原作を最大限尊重する立場をとったわけである。実写版は「原作原理主義」をうたいながら、原作の物語をそのままなぞっているわけでもなかったが、今回のセラミュは実写版よりさらに原作寄りと言える。ただしアニメ版のイメージもところどころ取り入れられていて、しかもそれが自然に馴染んでいてなかなかに心地よい。たとえばセーラー戦士たちの口上。かつてアニメ版は読者公募で、マーキュリーが「水でもかぶって反省しなさい」と言ったり、マーズが「火星にかわってせっかんよ」と言ったり、にぎやかだった。しかし実写版は原作どおり、セーラームーン以外の戦士たちも、決めゼリフは「おしおきよ」で統一されていた。今回はどうか。基本アニメ版に準拠しているけど、でも私にはちょっと、今回のキャストのために用意したオリジナル台詞のようにも聞こえた。つまりそのくらい、五人のキャラクターにしっくりハマっている。ということで、「揃い踏み!白月五人女」で、そのあたりを確認いただきたい。特にヴィーナスは、「いかにも美奈子らしい」と思いつつ「いや、ちょっとこういう美奈子はかつて誰も演じてなかったんじゃない?」という感じのプリティーなはじけっぷりなんで、ぜひご鑑賞ください(でもオチは小悪魔の亜美がかっさらう)。



いやほんと、このヴィーナス好きです。
話を戻して、原作のイメージの再現ということで言えば、一幕の最後と二幕の最初がいちばん興味深かった。一幕の最後で戦士たちがセーラーテレポートして月へ飛び、かつての王国シルバー・ミレニアムの廃墟に深々と突き刺さった「プリンセスを守る伝説の聖剣」を発見する。この剣を引き抜くと、クイーン・セレニティの残像があらわれ、戦士たちに前世の物語を語って聞かせる、という一幕である。この場面は実写版の「Special ACT.」でも部分的に再現されたけど、予算とか色々と事情があったのだろう、月を舞台にとらず、クイーン・セレニティの残像は地球まで届いて投影される。



聖剣も地球上に転送されて、その役目も「四年後の元セーラー戦士たちに、一日限定で変身能力を与える」というものに変更されている。引き抜くのがヴィーナス中心であるところは原作と一緒だ。



でも今回のセラミュでは、ジュピターが一人で「スポーン」と聖剣を引き抜いてしまう。まあ確かに、メンバー中で最も力持ちなんだし、舞台の場合は、メンバーがダンゴ状態に固まって剣を引き抜くより、代表一人がオーバーアクション気味に引っこ抜いた方が、後ろの席のお客さんまで分かりやすい、良い演出だとは思うんだけど、でもちょっと楽しいね。



その代わり(代わりってのも何だが)セーラーテレポートで月に着いたとき「これがホントの月のうさぎ」とベタなダジャレを言うのは、原作ではジュピターだったのに、ミュージカル版ではセーラームーン本人になっている。大した変更ではないが、原作のセーラームーンは、月に来てしまってちょっとびびっている「泣き虫うさぎ」なんだけど、舞台版はベタなダジャレをかませるくらいあっけらかんとしているわけね。ややアニメ版寄りのキャラクターというべきか。



こんな細かいことをごちゃごちゃ書いていたらキリがないな。ともかく今回は第一幕の最後で語られる前世の話を採録しておきたい。
前世で起こった事件については、原作では第1部の第9話から第11話あたりで語られていて、アニメ版では無印第44話「うさぎの覚醒!超過去のメッセージ」を観ればだいたい分かるようになっている。でも実写版ではよく分からない。最も前世の記憶が明確な美奈子ですら、必ずしもすべてを鮮明に憶えているというわけではなさそうだ。しかし、そこが分からないと、実写版Act.36から登場するプリンセス・ムーンの行動の意味が分からなくなってしまう。なので実写版マニアとしては、他のバージョンで語られる前世の内容をもとにあれこれ邪推するしかない……という実情をふまえ、今回のミュージカル版のなかで語られる前世の物語も、採録しておきます。
まあ概略、原作と同じようなものと言えば言えるのだが、舞台版のミソは、セレニティとベリルの二人が、それぞれの立場からそれぞれの思いを込めて前世の悲劇を語っている点だ。演出的なことを言うと、客席から見て舞台の右端に、ゾイサイトと恋に落ちたせいでダーク・キングダムに拉致された亜美がいる(ダーク化はしていない。念のため)。真ん中がダーク・キングダムの本殿というか、いわゆる「ベリルの間」である。うさぎを護るために亜美と同じく囚われの人となった地場衛は、ベリルの趣味で、前世のエンディミオンをほうふつとさせるコスプレ姿にされたうえ、薬か催眠術か分からないが昏睡状態。そして左側が月にセーラーテレポートした戦士たち。ジュピターがかつての王国の廃墟で見つけた伝説の聖剣を引き抜くと、クイーン・セレニティが現れる。



セレニティ「みんな、よく来てくれました。肉体は滅んでしまいましたが、この聖剣に私の遺志だけは残すことができました。私はここであなたたちを見守り、この時が来るのを待っていたのです」



ベリル「この時が来るのを待ちわびていました。憶えておいでか…」
セレニティ「…憶えていますか、この月の王国シルバーミレニアムが美しかったあのころを。ドームの中ではあったけれど、緑や風があったあのころを。あなたたちの前世の記憶を…」
セーラームーン「前世の記憶?」
セレニティ「そう。あなたが私の娘で月のプリンセス。そして美しい地球の王子エンディミオン様と恋に落ちた」



セーラームーン「エンディミオン様?」
ベリル「エンディミオン様、あなたは神の掟を破ったのです。子供のころからのいいなずけであった私には見向きもせずに、あんな小娘と……私はずっと見ていたのに」
セレニティ「あなたの幸せそうな顔を見るのが私の喜びでした。そう、月と地球が仲良く暮らしていたあの日までは…」
ベリル「…あの日、絶望に打ちひしがれていた私の頭上に恐ろしいほどの流星雨が降り注いできた」
セレニティ「そしてその流星雨に乗ってやって来た恐ろしい魔物、その名は」



セレニティ&ベリル「メタリア」



戦士たち「メタリア?」
ベリル「メタリアは人の弱さに入り込み、命のすべてを暗黒に変える魔物」
セレニティ「あの魔物は、美しい地球に目をつけただけでなく、無限の力をもつ月の聖石、幻の銀水晶の支配までもくろみました」
セーラームーン「幻の銀水晶!」
セレニティ「そして地球の王族の娘、クイン・ベリルを操り、人々を洗脳し、月を攻撃させたのです」
マーズ「クイン・ベリル?」
ジュピター「あいつか」
マーズ「でもどうしてこの時代に?」
セレニティ「あの時、私は幻の銀水晶でメタリアを封印し、クイン・ベリルを滅ぼした」
ベリル「私はあの幻の銀水晶の光で焼かれ、灰になった」
セレニティ「でも…」



ベリル「しかし…なんという宇宙の深淵!」
セレニティ「私が弱い心で銀水晶を使ってしまい、不完全な封印になってしまったから…」
ベリル「メタリア様は生きておられたのだ!私の魂は時を経て、メタリア様に再び生命を与えられ甦った。そして今…」
セレニティ&ベリル「月と地球の戦いが再び始まる!」



ゾイサイト「どうしたの?」
亜 美「何か、何か怖ろしいことが起こる気がする」
セレニティ「今度こそ強い力で、プリンセス、あの魔物を封印するのです!」



セーラームーン「私が……無理だよ。セレニティだって出来なかったのに」
セレニティ「いいえ。あなたにしか出来ないのです。あなたが持っている幻の銀水晶で」
戦士たち「セーラームーンが?」
セーラームーン「私が持っている?でもどこに?それは?」



セレニティ「これは過去の銀水晶です。あなたたちの時代では使えません。プリンセス、必ずあなたの前に銀水晶は現れます。憶えておいて、幻の銀水晶はすべてあなたの心次第」



ベリル「時は満ちた!」
セレニティ「マーズ、ジュピター、ヴィーナス」
戦士たち「はい」
セレニティ「そしてマーキュリー!聞こえますか?」



亜 美「誰かが呼んでいる。知ってる。この声」
ゾイサイト「亜美ちゃん」
セレニティ「全員で力をあわせプリンセスを守るのです。そしてこのシルバーミレニアムをもう一度復活させるのです。そのためにあなたたちは甦ったのですから」
戦士たち「セレニティ」
亜 美「セレニティ…」
セレニティ「宿命から逃げていては苦しいだけ。宿命に立ち向かった時に、初めて宿命は使命に変わるのです」
セーラームーン「宿命は……使命に」
ベリル「二度とあの屈辱は繰り返さない。エンディミオン様、今よりあなたは目ざめたら私のもの。儀式の呪文を!」



セレニティ「必ずあなたの前に銀水晶は現れます。それを守るために聖剣を使うのです」
セーラームーン「セレニティ!?」
セレニティ「自分を信じて、私を信じて、二度とあの悲劇を繰り返さないで!」
戦士たち「セレニティ」



ゾイサイト「月が、月の輝きが増した」
亜 美「うさぎちゃん…」
戦士たち「セーラームーン」
セーラームーン「まもちゃんにも同じこと言われた」
戦士たち「えっ?」
セーラームーン「自分を信じて、俺を信じてって」



セーラームーン「私もう逃げちゃダメなんだね」
マーズ「大丈夫、わたしたちがいるじゃない」
ジュピター「わたしたちのことも信じてよ。ずっと一緒だったんだから」
ヴィーナス「昔も今も、たぶん未来も」
マーズ「生まれ変わっても、きっとまたうさぎのそばにいる。亜美ちゃんだって同じ気持ちだよ」
セーラームーン「みんな……」
戦士たち「セーラームーン!」


「宿命を使命に変えて」良い台詞ですね。
ベリルが地球の王族の娘で、もともと前世ではエンディミオンの許嫁だった、というのが今回の新解釈。それにしてもベリル役の初風緑が圧倒的な存在感と声量とオーラで舞台を支配している。大丈夫かセーラームーン!


というあたりで、アニメ版や原作版との前世の比較とか、面倒になってきちゃったので今回はこれで終わり。いったいこのミュージカルレビュー、いつまで続くのだろうか。