実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第424回】DVD第3巻:Act.11の巻(5)

神戸みゆき(1984年5月7日〜2008年6月18日)享年24


あなたがいなくなって、もう5年の歳月が経ちました。今年はセラミュが復活します。




黙祷






1. いきなり何の話が始まるのか



関東大震災の余韻も残る大正十三年(1924年)夏に、いまの銀座5丁目にカフェー・タイガーはオープンした。当時のカフェーは、女性たちがお酒の相手をする、今でいうバーやクラブみたいなものだ。
銀座では明治四十四年(1911年)開店のカフェー・ライオンが代表格だったが、ここの女の子はわりと知的で上品なサービスを身上としていたそうだ。かたや、その筋向かいに開店した新興のカフェー・タイガーは、もっとダイレクトで殿方の劣情に訴える接客態度で対抗した。カフェー・タイガーの女給たちは着物も派手なら化粧も濃く、客とのスキンシップにも積極的で、衣装の方も、芸者風・女学生風・奥様風と各種コスプレを取り揃えていたらしい。
そういう男好きのする女給さんたち三十名ほどをチーム分けして、「赤組」「青組」「紫組」で売り上げを競わせたというんだから、これはもうモダン東京のAKBである、というのは強引か。



実際、昭和四年(1929年)には「総選挙」も行われている。ビールを1本注文すると投票券が1枚ついてきて、自分の好きな女給に1票を投じられるというシステムだ。これに燃えたのが菊池寛で、自分の推しメンを1位にするためにひとりで150票も入れた。だけどビール150本も飲みきれないから、投票した翌日に車で家に持ち帰った……という話を永井荷風が日記に書いて「これだからイナカモンのやることは」とバカにしたせいで、この話はたいへん有名になっちゃった。


(昭和四年)四月初五。昨夜酒館太牙にて聞きたる事をこゝに追記す。酒館の女給仕人美人投票の催ありて両三日前投票〆切となれり。投票は麦酒一壜を以て一票となしたれば、一票を投ずるに金六拾銭を要するなり。菊池寛某女のために百五拾票を投ぜし故麦酒百五拾壜を購ひ、投票〆切の翌日これを自働車に積み其家に持帰りしと云ふ。是にて田舎者の本性を露したり。(永井荷風『断腸亭日乗』岩波文庫上巻、196頁)


荷風によるとビール1本60銭、てことは150票=150本だと総額90円。大卒の平均初任給がだいたい60円と言われていた時代(現在は平均20万円強)だから、いまの30万円くらい。ビール1本およそ2,000円ということになる。まあ銀座で飲んでいると思えば安い方か(経験不足につき不明)。
菊池寛は大正十二年(1923年)に『文藝春秋』を創刊して成功をおさめ、大金持ちになっているから、あるいは遊びの範囲に入る金額だったのかも知れない。いつもフトコロに現金を無造作に突っ込んでいて、川端康成とか井伏鱒二とか尾崎士郎とかの売れない文士に「カネ無いんだろう」とか言いながら、めぐんでやっていたという。荷風はそういう菊池寛が大嫌いで、なにかにつけて悪口を書いていた。
けど永井荷風という人も、ピーク時は月に20回くらいカフェー・タイガーに通いつめていたというから、なかなかどーして。しかもそういう綿密な取材をもとに『つゆのあとさき』なんて面白い小説も書いてしまうのだから、文豪はすごい。


  

つゆのあとさき (岩波文庫 緑 41-4)

つゆのあとさき (岩波文庫 緑 41-4)


いつものことだが、話がのっけからズレた。この間のAKB総選挙の話である。今回も女給の人気投票に文化人が大騒ぎして、昭和初期から続く日本のサブカルチャーの伝統を見せつけてくれた。
私はAKB48について何か意見を言えるほど知識をもたないが、指原莉乃がダントツの得票数で新女王という結果は、シロウト目には、たいへん納得のゆくものに思えた。ところが世評はそう単純でもなくて、指原さんはセンターにふさわしくない、なんて声まで起こっているそうだ。これはちょっと意外だなあ、というのが率直な感想である。




指原莉乃は昨年『ミューズの鏡』で連続ドラマ初主演をはたして、このドラマは劇場版にもなった。ヒロインは演技が大好きで貧乏な娘、向田マキ。「幸華」という中華料理店で働きながら未来の女優をめざすけど、劇団では先輩女優からいじめにあったりとか、まあいろいろあって全24話。その後番組が小嶋陽菜主演『メグたんって魔法使えるの』で、第6話には、劇場版の宣伝も兼ねて指原莉乃が「向田マキ」役でゲスト出演している。
メグたんがマキに「演技がうまくなる魔法」をかけてあげて「もう大丈夫、手始めに、ゴリラの演技をしてください」とむちゃブリする。マキがゴリラの芝居をすると、店にやってきた浪人生のヒロトは、そのあまりの迫力に本物と間違えてパニック状態。自分の魔法の力に満足そうなメグたん。



マ キ「うおぉぉおおおおう」
ヒロト「うわっ、ゴリラが出たぞー!マウンテンゴリラが出た、出たぞ〜」


これがバラエティ番組のコントの一場面ではなく、いちおうドラマのワンシーンだというのがなによりの驚きだが、ともかく、『ミューズの鏡』と『メグたんって魔法使えるの』の脚本・演出を手がけた福田雄一は、その後『コドモ警察』『勇者ヨシヒコと悪霊の鍵』そして間もなく公開される映画『俺はまだ本気出していないだけ』と、自作に次々と指原莉乃を起用し、あちこちでその「屈折した負のオーラ」の魅力を熱く語っていた。
私も指原さんには、そういう負のオーラの魅力をびんびん感じる。そしてその点で、指原さんとAKB48の先代の女王とは非常によく似ていると思う。

2. まだ本題ではない


前にもレビューした『太陽と海の教室』第6話より。



真 由「私って気持ち悪いでしょ。ブスだし、汚くて……」
朔太郎「どうしてそんな風に思うんだ」
真 由「父と母に毎日そう言われているから。あの人たちは、私の本当の両親じゃないから」



真 由「でももう大丈夫。39時間後、地球は破滅して、UFOが私を迎えに来るの。本当のお父さんとお母さんが住んでいる星に、私を連れて帰ってくれるの。見てるんじゃないよ、見せてるの。本当のお父さんとお母さんに私を見せているの」



真 由(天を仰いで、大きな声で)「ここだよ。ここにいるよ。ここだよお。ここにいるよ」



北川景子目当てにこのドラマを観ていた私みたいな人のまえに、前田敦子はまったく予備知識なく、こんなセリフと共に、強烈な「負のオーラ」をまとって登場してきた。以降、『Q10』『花ざかりの君たちへ〜イケメン☆パラダイス〜2011』『エンディング・プランナー』『幽かな彼女』(これは第1話しか観てないんだけど)といったドラマや、映画『もし高校野球の女子マネージャーが(以下略)』をちょこちょこ観た範囲でも、そのイメージに変更はなかった。演じるキャラクターが屈折していればいるほど、味わいの出て来る女優さんである。だからこの人が中田秀夫の映画に出ると聞いたときには納得がいった。どんな物語で、どんな役かは、まだ観ていないんで知らないですが(内容については大家さんの「生涯のワースト3が更新された」を参照)とにかくホラー映画のヒロインにふさわしい人だ。



真 由「ねえ白崎さん、人間はどうして泣きながら生まれてくるか知ってる?」
凜 久「?」



真 由「生まれてくるのが嫌だからだよ」


表情や仕草のあちこちに見えかくれする、何かコンプレックスのような見てはいけないもの。そういう意味で私にとって、前田敦子とは天地真理の再来である。



前田敦子は、日本アイドル界が天地真理以来、およそ40年近くかかってようやく見いだした、笑顔の裏に強力なネガティブオーラをためこんだ「国民的アイドル」である。そして天地真理や前田敦子に較べれば、ややあっけらかんとして小粒とはいえ、この流れの継承者を現在のAKBグループに求めるならば、指原莉乃を措いてはありえないのではないか。
と考えて、私は今回の総選挙の結果を、まあ妥当なセンとして受けとめていたのだが、でも世間の反応はそういう感じでもないみたいなので、試しに私の意見を述べてみた。が、なんかファンの方に怒られそうな気もしてきた。勝手なこと書いてごめんなさい。


すみません実写版と関係ない話に力を入れ過ぎて。前回の続きに戻ります。

3. パパの職業(やっと本題)


美奈子が事故で負傷と聞き、情報集めのためにテレビをザッピングするうさぎ。このとき画面に映る番組は、ひとつは『すずYANのGEKITOTU!! ファッションハント』という、たぶんバラエティー番組のワンコーナー。担当は「すずYAN」なんだろうけど、これ鈴村展弘監督だろうか。茶髪に見えないし、どっちかと言えば五木寛之に近い(推定)。もうひとつはアニメ番組で、なんか見たことあるような印象ではあるのだが、よく分からない。こころ当たりのある方はぜひコメント欄にご一報ください。



そんなうさぎに呆れ気味のママと進悟。と、ここで、うさぎのパパの職業が明らかになる。



進 悟「うさぎ、がちゃがちゃ変えるなよ」
育 子「そうよ、落ち着きないんだから」
うさぎ「だって美奈子のこと何かやってるかも知れないじゃん」
育 子「十番病院に入院してるんでしょ」



うさぎ「何で知ってるの?」



育 子「パパは記者よ。それくらいの情報、入ってくるわよ。でも行っちゃダメだからね。内緒にしているらしいから」
うさぎ「分かっるって……」



うさぎ「……ぜんぜん関係ないけど、十番病院って南十番駅のそばだよね」
育 子「そうだけど?……ちょっと、うさぎ」


(そのまま出て行くうさぎ)




進 悟「行く気まんまんじゃん」


なんと、うさぎのパパの仕事は記者であった。……って原作やアニメと同じだ。じゃ名前も原作やアニメと同じ月野謙之かな。
白倉伸一郎や小林靖子が、そのうちチャンスがあれば実写版にもうさぎのパパを出すつもりがあったのか、ハナからそういう考えはなかったのか、ドラマ本編のうちにはほとんどヒントがなくて正直わからない。パパが記者なら、たとえばタキシード仮面のスクープを狙うとか、アイドル愛野美奈子に密着取材とかのかたちでゲスト出演するエピソードもつくれる。アニメ無印第22話「月下のロマンス!うさぎの初キッス」や原作第4話「Masquerade 仮面舞踏会」はまさしくそういう話だったが、実写版Act.4は、ストーリーが大幅に改作されてしまったためパパの出番はなかった。



Special Actも気になる。田崎監督にうさぎの父親役をオファーしたのは舞原監督だったというけれど、脚本の小林靖子は、どんな父親役を想定してあの結婚式のシーンを書いたのか、それとも最後まで父親不在で押し切るつもりだったのか。原作やアニメのパパがいまいち個性に乏しい人なので、想像しづらい。もう少しハバのあるキャラクターだと良かったのにね。



Special Actの安座間さんはとっても表情ゆたか。この人は一年ぐらいひとつの役柄に専心すれば、すっかり成りきって良い芝居が出来る。でも近年のドラマは、せいぜいワンクール10話か11話なので向かない。そういう自己判断のもと、女優業ではなくモデルの道を選んだ、というところもあると思う。聡明な人である。
その聡明さでみごと中田敦彦を破った安座間さんの『ヌメロン』2週目。



第一試合の相手はこの人


勝った


第二試合の相手はこの人


負けた


安座間さんの負けに喜ぶ芸人たち


安座間さんが負けてそんなに嬉しいか。温厚な私もちょっと腹が立った。腹が立ったので本日はこれまで。
またまた本編の紹介がごくわずかでごめんなさい。
しかし結局「ヌメロン」のルール分からずじまいだったな。