実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第403回】DVD第3巻:Act.10の巻(8)

『ブザー・ビート〜崖っぷちのヒーロー〜』(2009年)第8話より


いささか遅い話で申し訳ないが、昨年12月のなかばにこんなニュースが流れたね。

これまで大胆な濡れ場シーンを演じたことがない女優・相武紗季(27)だが、決意のオールヌードにチャレンジすることが明らかになった。この衝撃情報と前後してささやかれているのが、相武の芸能活動休止情報。なんと、来年にアメリカ・ハリウッドに行き、留学するという。

今回、囁かれている彼女の全裸企画は日本での女優活動に一つのピリオドを打つ為。来年で28歳になる彼女が自分で出した結論だ。事務所関係者も渋々認めるしかなかった。

そして、そのオールヌードが拝める作品というのが、ハリウッドのリメーク企画。07年から全米で放映され、現在シーズン6まで制作された人気ドラマ「ゴシップガール」の映画化だ。

(「Stevieの注目!ニュース芸能Factory」2012年12月14日)


なんかイマイチ信憑性が感じられないというか、薄っぺらい感じの記事だけど、ただあれかな、トップ女優の動向が、同じ事務所に所属するその他の女優さんの方向性になんらかのかたちで波及するとか、そういうこともあるんだろうか。稼ぎ頭の抜けた穴を急遽セクシー路線で補うとか。まあ、この件に関してはよく分からないね。本題へ行こう。


1. タカラトミーへの過激な挑戦状


どこまで話が進んだんだっけ。ゾイサイトの作りだした妖魔がピアノに合わせて歌い始める。するとレイが色を塗っていた紙芝居の、かぐや姫の絵が燃えあがる。



まことが家の片付けをしながらふとテレビを見ると、来日したエストア国のプリンセスが急に体調不良を起こした様子がはからずも生中継となっている。



前回はこのへんまでだったね。
次の場面は、どこかの公園の片隅でかな。ふたりの少女がベンチでお人形遊びをしていると、その人形が不意に燃え上がってしまう。


  


少 女「私はキラキラ姫」


  


少 女「あっ」


人形から、パッと花火みたいな火焔が噴き出す様子が、ちょっとアクシデントではないかと思うくらい女の子の顔に迫っていてヒヤリとさせられる。女の子もけっこう本気で人形を投げ出しているように見えるし。
いずれにせよ、女の子の着せ替え人形といえば「リカちゃん」と「バービー」(タカラジェニー)、つまりバンダイのライバル某社に集中する。もちろんアニメの人気がピークだったころ(異論もあると思うが、ピークとは「R」「S」あたりね)を中心に、バンダイもセーラームーンの着せ替え人形なるものを出してはいた。変身前の制服姿とか、セレニティのドレスとか、別売の服もあった。なぜかレイの巫女さんの衣裳だけは商品化されなかったように思うが、違ったかな。


 



とはいえやはり、アニメ全盛期から実写版まで、セーラームーンといえばロッドなどの変身グッズ、および「なりきり」コスプレといったあたりが玩具化のメインで、人形は主力商品ではなかったはずだ。これって仮面ライダーと一緒だ。前にも書いたけど、円谷プロだと、玩具の主軸はウルトラマンや怪獣のソフビ人形で、ベータカプセルとかの変身グッズではそれほどでもない。ところが仮面ライダーの場合は逆で、変身ベルトこそが主力商品になっている。セーラームーンも同じ傾向なわけで、つまりこれが東映という会社のカラーなのかなぁ。
まあともかく、そのようなことも考えると「人形が燃えあがり、子供に放り出される」というこのシーンの演出には「(タカラトミーの)着せ替え人形なんかで遊んでちゃだめだめ、(バンダイの)変身グッズでセーラームーンごっこしなくちゃ!」的なサブリミナル・メッセージが込められていると考えてよかろう(本当か?)


2. 講談社ブックフェア


一方、亜美のいる図書館でも異変が起こっていた。やはり女の子の読んでいた童話の絵本の、お姫様が描かれたページが燃えちゃうんである。



と思ったんだが、よく見たらこれって、お姫様じゃないよな。



名古屋支部の調査によれば、ここで燃えている本は、1984年に講談社から刊行された「いわさきちひろ・おはなしえほん」というシリーズの第4冊「しらゆきひめ」である。有名なグリム童話、というか、あの沢井美優もミュージカルで演じたことのある白雪姫、ですね。でも開かれているページは物語の冒頭部分で、燃えている人は白雪姫じゃなくて、「おきさき」である。


  


おしろの へやの まどぎわで、
おきさきは ぬいものを していました。
せっせと ぬっているうちに、
ちくっ、はりで ゆびを
さしてしまったのです。
「まぁ、たいへん。
ぬいものに しみがついてしまうわ」
おきさきは いそいで まどを あけると、
てを そとに だしました。
まっかな ちが ひとしずく、
ゆきの うえに こぼれます。
「なんて きれいなんでしょう」
おきさきは、まっしろい ゆきと、
まっかな しずくに みとれました。
(立原えりか・いわさきちひろ『しらゆきひめ』講談社1984年)


黒炭でできた窓枠の外にひろがる白い雪景色、そこに一滴したたった紅い血。お后は思わず「この黒炭のように黒く、雪のように白く、血のように赤く、私のように美しい娘が欲しい」と願い、まもなく懐胎する。こうして生まれたのが、黒炭のように黒い髪と雪のように白い肌と血のように紅い唇をもつ美しい娘セーラーマーズ、ではなくて白雪姫であるが、ともかくそういうわけで、この絵はまったく「姫」ではないのだが燃え上がってしまうのだ。妖魔の攻撃はターゲットの設定がかなりズサンであると言わざるをえない。
ちなみに、その様子を目撃している亜美の手にある本は、瀬山士郎『ゼロから学ぶ数学の1、2、3 算数から微分積分まで』(2002年講談社)。アマゾンのユーザーレビューで見かけた評を借りると「高校から大学教養レベルの微積分を概観するのによい。この本を読んで本格的な概論書をという方向よりも概論書を読みながら、この本を息抜き的に楽しんで読むとよいです」ということです。亜美はセーラーVのこととか調べようと思って図書館に行ったんだけど、この本をちらっと見たら数学好きの虫がうずき出して、楽しく読んでいたってところであろうか。



レイの回想に出てきたかぐや姫の絵本が講談社で、さっきの白雪姫の絵本も講談社、ここで亜美が読んでいる数学の本も講談社。そういえば、初登場となるAct.2で、亜美が屋上でおにぎり食べながら読んでいた本も、「水道方式」で有名な数学教育界の異端児、遠山啓『新数学勉強法』(講談社ブルーバックス)だった。もっとも私は遠山先生のことをほとんど知らなくて、M14さんやこっちよ!さんからコメント欄で教えていただいたのである。今回の瀬山士郎先生という方のこともまったく存じ上げない。永らく群馬大学の教授をお勤めになって、先年ご退職されたそうである。瀬山先生の本は早川書房が文庫化してくれているので、この本もそのうちハヤカワ文庫NFに入るかも知れない。

3. 袋とじに守られたプリンセス



そして再び場面は火川神社に戻る。さっきはレイの塗っていた紙芝居が燃えていただけだが(「だけ」ってこともないが)、今度はエリカちゃんがやばい感じでうなされている。

  
  


レ イ「エリカ、しっかりして!」


  


うさぎ「どうしたの?」
レ イ「妖魔よ。聞こえるでしょう。この声」


  


うさぎ「どうなってるの?かぐや姫が狙われてるの?」


  


ル ナ「つまり、プリンセスってことかも」


  
  


うさぎ「そうか……でもエリカちゃんは」
レ イ「たぶんエリカはかぐや姫に自分を重ねてたから」


  


うさぎ「ひどい……早く妖魔たおさなきゃ」


ルナの「つまり、プリンセスってことかも」というセリフは、つまり敵は「プリンセス」というキーワードに関わるものをとりあえず無差別攻撃しているのかも、という意味だろう。それでお姫様の絵本や人形や、かぐや姫に思い入れのある少女にまで害が及ぶというのだから、かなり強力な攻撃に見えるが、かんじんのうさぎがケロリとしているところを見ると、強力だが精度は高くない、という考え方もできる。いちばんのターゲットを外してしまったわけだ。例えて言えば、『EX大衆』を燃やしたのに、袋とじだけはそのまま燃えずに残っていた、みたいな(何が「例えて言えば」だよ)。

ただ、エストア国のプリンセスがかなりのダメージを受けているところを見ると、妖魔のレクイエムは、けっこう「プリンセス」に対する強い毒性をもっているようにも思える。それで、なのにうさぎはなぜ元気なのか、という疑問がやっぱり浮上してくる。
最も妥当な解釈は、こっちよ!さんが前回のコメント欄で書かれていたように、「うさぎは銀水晶に護られていたから」というものだろう。このエピソードの後半で、セーラームーンを庇ったマーズも、あとから加勢に駆けつけたジュピターもマーキュリーも、妖魔の音符攻撃の前に、あっという間に倒されてしまう。でも特に戦闘能力がずば抜けているとも思えないセーラームーンはほとんど無傷で、ムーンスティックの力を借りてすぐさま敵を殲滅、みんなの元気も取り戻す。そういう展開も、やはり銀水晶の力の強大さを示唆する。
ただその場合、セーラームーンが銀水晶の力で特別に護られており、しかも銀水晶の力の「使い手」であることを、ゾイサイトもベリルも、今回ちらっとでも気づかなかったのかな、という疑問は残る。そう思いませんか。ゾイサイトだったら、今回の自信作とも言える妖魔が簡単に返り討ちにあって「もしかしたらあいつに銀水晶の力が宿っているのか……ということは?」くらいの疑惑を抱いてもいいはずだし、そういう描写を入れて「真のプリンセスは誰だ?」という謎の伏線にしても良いはずなんだが(バレバレだけど)そんなそぶりはまったく見られない。
それで私はもう少し別の解釈を考えてみた。このレクイエムはある種の思念に反応して、つまり「プリンセス」に対する強い想いを感知して、そこへピンポイント攻撃を加えるという特性があるのではないか。
自分とかぐや姫を重ねるエリカちゃんとか、お人形遊びのお姫様ごっこや白雪姫の童話が大好きな女の子、彼女たちに共通するのは「プリンセスへの想い(あこがれ)」である。それが人一倍強かったがゆえに、みんなひどい攻撃を受けたのではないか。エストア国のプリンセスだって、親善旅行か外交上の目的か、ともかく旅行中は「一国の王女である」という公的立場をイヤというほど自覚させられているだろうし、テレビレポーターたちは、彼女がプリンセスだからこそ群がるのである。こういう、人々の「プリンセスってステキ」という想念が磁場のように強く発生しているところに、レクイエム妖魔の歌声は吸い寄せられて、その想いの対象となっているターゲットに向かって熱や炎を放つ、そういうことではないのかなぁ。
美奈子がロンドンに行っているという設定も、これで活きてくる。もし美奈子が東京にいたら、影武者として本当のプリンセスをこれからどう護っていこうかとか、うさぎについて余計なことを考え、強い思念を発してしまって、うさぎの存在が妖魔に感づかれる結果になったかも知れない。でも妖魔のテレパシー能力は23区内くらいにしか及ばず、美奈子はたまたまロンドンに行っちゃっていた。テレパシー圏外である。そして東京のうさぎには、自分がプリンセスだという自覚がまったくない。そういう偶然のさいわいで、今回うさぎはノーマーク状態になった。私はこう解釈したんだけど、どうかな?

4. 絢爛ダブルバウト


話を戻そう。エストア国のプリンセスが倒れたのも、図書館で絵本が燃えたのも、エリカちゃんがうなされているのもダーク・キングダムのプリンセス攻撃のせいだ。ルナの示唆でそう目星をつけたうさぎとレイは、怒り心頭で神社を飛び出す。


うさぎ「ムーンプリズムパワー」



レ イ「マーズパワー」



うさぎ&レイ「メイクアップ!」


Act.9のときにうっかりしていたが、「分割画面で複数の戦士たちが同時に変身する」スタイルが登場するのは、このAct.9とAct.10の2話からである。



ちなみに、これまでの変身パターンを振り返ってみよう。Act.1、Act.2、Act.3は、順次に増えていく戦士たちの変身バンク初お目見えである。Act.4は、最後のサボテン三兄弟を攻撃する必殺技バンクは分割画面だが、変身じたいは三者バラバラだった。うさぎなんか、クマの着ぐるみが脱げなくて変身が遅れたりしている。
Act.5の亜美は(うさぎとの仲が気まずくなって呼び出せず)単独で変身してポヨンと戦う。うさぎとレイがメイクアップする場面は出てこなくて、後からセーラームーンとマーズの姿で現場に駆けつける。戦士たちの変身バンクが省略されるのはこのAct.5が初めてである。
Act.6、セーラージュピター初登場。残りの三人はラストに変身後の姿で登場。Act.7、後楽園ゆうえんち、レイは妖魔の攻撃で変身できず、うさぎは鏡の間で変身したところを地場衛に目撃される、まことは変身してからセーラームーンの加勢に現われる。
Act.8は、いかにもレイとまことの同時変身シーンがありそうだが、実はない。ナコナコなりきりコンテストの会場でセーラームーンが苦戦しているところへ、変身後のマーズとジュピターが加勢に現われ、息の合った攻撃を見せる。
Act.9「にせタキシード仮面事件の回」になってようやく、分割画面の同時変身バンクが登場する。妖魔を使って、成田物産社長の邸宅から宝石を強奪したネフライト。そこへコスプレの亜美とまことが登場だ。レイはこの回、戦いに参加せず。
というわけで、前回がマーキュリーとジュピターだったから今回はセーラームーンとマーズ。スーパー戦隊ではお馴染みだった分割画面による同時変身の表現を、セーラームーンに導入したのは、Act.9とAct.10で始めてローテーションに加わった鈴村展弘監督なのでありました。


そんなことを考えているうち、ふとAct.1からFinal Actまで、誰が誰が組んで変身したり戦ったりするパターンが一番多いのかを調べて、セーラー戦士相互のタッグチームの相性度というものを明らかにできないか、という、やりたくないのに変なことを思いついてしまった。どうしようか。やってみようかなぁ。『M14の追憶』が最初期(2005年2月「セーラー戦士の勝率」)に似たような分析をすでにやっていらっしゃるが、あれは「つねにフィニッシュをセーラームーンが極めるアニメ版とは違って、実写版はセーラームーンの単独勝利も、様々あるフィニッシュ・パターンのひとつである」「まこと=ジュピターの単独勝利はきわめて少ない。しかしつねにアシスト的立場に接することによって、記録には残らないが我々視聴者の心に残る戦士となった」というような分析で、ちょっと観点が異なる。今回のはどういう組み合わせのタッグが多いのか(相性が良いのか)という興味である。でもやってみても面白くないかも知れないし、どうしようかな。
と考えているうちに、キーボードを叩く手が止まってしまった。それに、ちょうどこの変身シーンで、Act.10もAパート終了だ。キリが良いので今回はこのくらいで。次回どうするかは考え中です。