実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第394回】絶好調だぜ『悪夢ちゃん』の巻





 
どうしようか。
っていきなりすみません。


どうしても毎週末の更新となってしまう当ブログにとって、『悪夢ちゃん』のレビューはホントに難しい。前回の録画を再鑑賞しながら、気になる箇所のセリフを書き起こし、キャプチャ画像をとっているうちに、次の回が始まってしまう。そうすると、次回以降の流れを予想しながら書いた部分は使えなくなっちゃうから書き直し。だったら最初から次回予想などせずに書けば良さそうなものだが、なかなかどうして。

なんて考えてもラチが開かないので、もう今回は、第1話から第3話までのなかで、気になったシーンを順不同にクリップしておく。面白い場面はいろいろあるが、今回は、物語の大筋を追う上で重要な伏線となっているのかな、と思えるところを中心に選んだので、優香さんと北川さんの掛け合いとか、そういうパートは泣く泣く省いた。そのうちやってみましょうか。

1. とりあえず第1話から


第1話はなんつっても、ヒロインの彩未が最初に夢を見るシーンである。ここで彩未が、夢と現実をきっちり区別していることが示され、そのための一種のテクニックとして、眠るときに、40分後にオーディオがタイマー再生されるようにセットしておく、という技が披露される。REM睡眠の脳に優雅な音楽を流すことによって、よりエレガントな夢を見ようという魂胆だ。



まあそれはいいんだが、彩未が使うオーディオにひときわ大きくソニーのロゴが目立つことについて、やはりスポンサーとの関係に律義な北川さんだなあ、と感心しますね。


  彩 未「夢王子、イヤなことをぜんぶ忘れさせて」
  夢王子「彩未の願いは何だって叶えてやるさ」


  


  夢王子「まったく、いつまでたっても子供だな」
  彩 未「いいじゃない。いつまでたってもこれは夢なんだから」


そういう、それなりに安定している(ように見える)彩未の生き方に介入してきたのが、彩未のクラスに転校してきた少女、古藤結衣子(木村真那月)、通称「悪夢ちゃん」(彩未がそう呼ぶだけだが)。いったいこの子にどういう特殊能力があるのか。それは結衣子の祖父、古藤万之介によって語られる。万之介を演じているのは、今回のレギュラー陣の中ではめずらしく北川景子との連ドラ共演経験のある小日向文世。


  


  万之介「孫はどうやら、他人の無意識とつながることができるらしい」
  彩 未「はい?」
  万之介「孫の無意識が、外からやって来る他人の無意識に感応してしまうのだからこれは防ぎようがない。眠るとその無意識が目覚め、孫に予知夢を見せてしまうのだ」
  彩 未「予知夢……」


  


  万之介「それはおそらく、この町に引っ越してきたときであろう」


  
  
  


  万之介「その老人の無意識とつながってしまったんだ。他人の無意識とつながることは、他人の夢を盗み見るのと同じだ。そこに結衣子は悲惨な未来、悪夢を見てしまうんだ。それで孫は怖くて学校にも行けず、家に引きこもるようになった」
  彩 未「どうして、うちの学校に転校してきたんですか?どうして……私なんですか?」
 万之介「結衣子の夢にあなたが現われたからだ」


  


  彩 未「えっ?」
  万之介「結衣子と私はずっとその悪夢を、悲惨な未来を変えられないかと願ってきた。そこにあなたが救世主として、夢の中に現われたんだ」


  


  結衣子「彩未先生、私と一緒に私の夢札を見て。見なくちゃいけないの、昨日の夜、悪夢に先生が出てきたから」
  彩 未「えっ」
  結衣子「彩未先生が生徒を殺しちゃうの」


  


  結衣子「お祖父ちゃんだいじょうぶ私じゃないから」
  彩 未「誰よ。私が誰を殺すっていうの?」
  結衣子「名前は分からない。その子がなにか書いたから」
  彩 未「ブログ、あなた犯人を見たの?誰、誰が書いたの?」


  


  万乃介「悪夢を思い出すとこうなる。夢を見ているときのREM睡眠時のように眼球が動くのだ」


  


  結衣子「先生は赤いワニに食べられる」
  万乃介「夢の出来事は何かの象徴に置き換えられる」


  


  彩 未「見せて、その夢を」


というわけで一行は、帝帝都工科大学人間科学研究所夢研究分室に向かう。研究所のロケ地は特徴ある八王子セミナーハウス。



ここに「夢を第三者が映像として見ることができる」システムがある。眠るときにヘッドセットを装着すると、見た夢の内容が「夢札」という記憶媒体に記録される。そして夢札を「バク」という装置にかざすと、「バク」はデータを読み取って、スクリーンの上に夢の映像を再現する。


  


  万乃介「これが、バクと呼ばれる夢の読み出し機だ」
  彩 未「バク……夢を食べる動物って、ずいぶんのどかなネーミングですね」
  万乃介「孫の悪夢を食べて欲しいからな」
  彩 未「お孫さんのためだけに作ったのですか?」
  万乃介「今のところ世界にこれ一台だ、ではまず、夕べの夢札から呼び出してみよう」


  
  
  
  

2. これはわりと良い先生だと私は思う


以上が基本設定。エピソードごとに、5年2組の生徒の誰かと悪夢ちゃんの無意識がリンクして、その子の悪夢を見てしまう。原因はだいたい家庭にある。まあ実際、問題をかかえる子供って、ほとんど親が原因なのではないかね。
悪夢ちゃんは彩未先生を信頼していて、しかも担任のクラスにまつわることでもあるので、悪夢を見るたびに相談をもちかけるのだが、彩未先生の基本スタンスは「私に相談するな。子供だからって甘えるな。自分で道をみつけて解決しろ」というところにある。
たとえば第3話。悪夢ちゃんは、よその組の少女(浅見姫香)が死んでしまう予知夢を見る。鉄棒で足首をひねって倒れ、その拍子に頭も鉄棒で強く打つんだけど、保健室の琴葉先生(優香)が足の手当しかしなかったせいで、後に容態が急変して死んでしまうのだ。悪夢ちゃんはさっそく彩未先生に報告。でも逆に屋上で諭される。


  


彩 未「知らないわよそんなこと。だいたい、その子はうちのクラスじゃないんでしょう。だったら私には関係ない」
結衣子「えーっ、だけどぉ」
彩 未「だけど何? 悪夢ちゃんが気になるなら、自分で保健室の先生に言えば?」
結衣子「どうやって?」
彩 未「それは自分で考える。もっと自分を出せって言ったでしょ」
結衣子「えーっ、でもぉ…」
彩 未「でも鉄棒を禁止するわけにも撤去するわけにもいかないでしょうからね、無駄だと思うけど。こっちはそれどころじゃないのよ」
結衣子「何かあったの?」


  


彩 未「また変なブログが更新されてたの!あなたが犯人を見つけないからよ!よけいな悪夢なんか見ていないでブログの犯人でも当てたらどうなの、この役立たず!!」


  


結衣子「なんだか感情が激しくなっている……」


この「自分を出せ」「自分をぶつけろ」が彩未先生の、まあ言うなれば基本的教育方針である。たとえば第2話。


彩 未「悪夢ちゃんさあ、また悪夢をみたんだって?悪いけどさ、学校に悪夢を持ち込まないでくれる? 私もう、そういうのに関わり合いたくないのよ」


  


結衣子「生徒がどうなってもいいの?」


  


彩 未「私を脅すのか?」


  


結衣子「先生、信じているのに」
彩 未「簡単に信じるな。人を信じるから人を怖くなるんだよ。この世は始めから悪夢だと思えば怖くはないでしょ」


  


琴 葉「悪夢って何の話だ?」
彩 未「あなたね、もっと自分を出してごらんなさいよ。そうすれば何、他人の無意識とか余計なものを感じなくて済むわよ。こっちからお断りしてやるの。悪夢なんか見るもんかよって。もっと自分を出せ」
結衣子「言葉が、うまく出てこない」


  


彩 未「だったら手を出せ。とにかく自分をぶつけるのよ」


  


琴 葉「暴力を諭してる」
彩 未「それがきっと、良い悪夢払いになるわよ」


  


結衣子「もう遅い」
彩 未「だから私にぶつけるなって」


  
  


彩 未「……その目で見ないでよ……もう……」


というわけで、なんだかんだと悪夢ちゃんの悪夢につきあって、最終的には事件の解決にかかわる結果となる。そしてその過程で、彩未先生が生徒たちと必要以上に関わろうとしないのは、単に面倒がっているだけではない、なにか大きな心理的な理由があるらしいことが明らかになってくる。
上のセリフにも「この世は始めから悪夢だと思えば怖くはないでしょ」とあるように、彼女は夢と現実を極端に区別して、現実世界では決して夢見ないと固く決意している。つまり彼女は現実に対して深く絶望している。それは彩未先生自身の孤独な少女時代の体験に根ざしている。まだすべては語られていないが。
第1話。いつも笑顔で明るくて、親も自慢の美少女の相沢美羽(木村葉月)。でもその表向きの顔の裏では、父親が赴任先で不倫していることも、その当てつけに母親まで若い男と付き合い始めたことも知っていて、両親に捨てられるのではないかという恐怖に怯えている。ところが母親は、そんな娘の悩みに気づかず、若いツバメと短い旅行に出ようとする。思い詰めて空港まで母親を追いかけ、コンパスの針で母親を刺そうする美羽と、予知夢の意味を分析してその場に駆けつけ、盾になって美羽を食い止めた彩未先生。


  


彩 未「あなたと私は似ている。先生も、いつも笑顔を絶やさなかった。施設でもどこでも。そうしないと行くところがないと思ったから。本当は少しも良い子じゃなかったのに。あなたは今、やっと自分を出せた。だから後悔するなよ」


あるいは第2話。自分のクラスの生徒の姉が、売れないミュージシャンで呑んだくれの父のために、中学2年なのに歳をごまかしてスナックのホステスのバイトをやっていた。悪夢ちゃんの見た光景をたよりに、そのスナックに辿りついた彩未は、スナックのママ(高橋ひとみ)にバイトを止めさせるよう警告するうちに、言い争いになる。


  


ナ ミ「あの子をここから放っぽり出してどうするのよ。施設にでも送るの?それでもあの子はあの父親を見捨てないわよ。施設を抜け出して、今度は身体を張って稼ぐしかなくなるわね。その意味わかる?私はね、そうならないようにここで保護しているの!」
彩 未「甘えてるだけでしょ。その気持ちにつけこんで」
ナ ミ「は?」
彩 未「その子もそうよ。父親に甘えているだけでしょ。それを断ち切らなければ、その子は本当に生きているとは言えない」


  


彩 未「親に恵まれなかった子供はね、自分で生きていくしかないのよ。他人に幸せを求めては、自分が傷つくだけなの。そういう自分を自分で助けていくしかないのよ。大人だったら大人らしく、そこに導いてやれよ!」


  


ナ ミ「……見かけによらず言うじゃない先生……分かった。明日まで待ってよ。あの子と話する」
彩 未「すみません。よろしくお願いします」


店の名前は「うわばみ」。それで悪夢ちゃんは、先生が大蛇に絡まれる悪夢を見るんだけど、なんか悪夢の内容から逆算して出て来た店名のようなのが笑える。それはそうと、店の前に貼ってあるホステス募集のチラシが気になりますね。



「年齢:65才くらい。国籍:問いません」って……。できれば「年齢:ウェザーガールズくらい」にしてくれないか。

3. 先生自身の問題


さて、彩未先生はこれまで、自分の欲望をすべて「明晰夢」のなかで処理して、精神の均衡を保ってきた。「明晰夢」とは何か。第2話を見てみよう。解説するのは、いつも彩未の夢に出てくる「夢王子」にそっくりな、古藤教授の夢研究室に所属する帝都工科大学の准教授、志岐貴(GACKT)。夢王子に似すぎているので、ついうっかり誘いにのった彩未は、自分の夢を実験材料に使われそうになり、激しく志岐に抗議する。どうでもいいが助手の山里を演ずるアキバレッド(和田正人)が必要以上にバカっぽく見える。


  


志 岐「僕はあなたが予知夢を見られる人間ではないかと調べさせてもらったんです」
彩 未「私が?予知夢を?」
志 岐「それで古藤教授があなたに近づいたのではないかと、そう想ったんです」
彩 未「まさか。違うわよ」
志 岐「ええ違いました。あなたが見ているのは明晰夢だ」
山 里「メイセキ夢?」


  


志 岐「そう。夢の中で、自分はいま夢を見ている、と完璧に自覚している夢。夢で願望を満たすように、夢の中身も操ることができる人間。それがあなただ」
彩 未「そうよ。私は、自分が見たい夢を見る方法を手に入れました」
志 岐「そこに僕が登場していた」


  


彩 未「誤解しないでよ。私は現実のなかでは決して夢は見ない。夢は夢の中だけで処理して生きています。それを覗く権利は誰にもない」


しかし悪夢ちゃんの登場によって現実(意識)と夢(無意識)の領域が浸食する。そして、互いに「表向きの笑顔」(意識)で付き合ってきたはずの生徒たちが抱える、不安や恐怖に満ちた「裏の顔」(無意識)につきあうはめになってしまった。その時の彩未先生の叱咤のキー・ワードは「自分を出せ」。でも誰よりも「自分を出して」いなくて、周囲の空気にあわせて自分を隠しているのは、ほかならぬ自分自身ではないか、そう彩未先生は気づいた。
だったら、本当は生徒たちのめんどうな問題に付き合いたくもないし、「自分で考えるべきことは自分で考えろ」と突っ放したい自分を解放しなくちゃ、かえって生徒たちに不誠実なことになるのではないだろうか。と、たぶんそのようなことを考えて、彩未先生は笑顔を捨てることにする。というところで、今回のブログの冒頭の大魔神にようやく話が戻ったよ。
でも人間の心は意識と無意識がひとつになって出来ている。いやこれ、私の意見なんだけどさ、みんな「意識と無意識」というと、ふだん隠されている無意識の方に真実があると考えがちでしょ。そんなことはないよ、意識だって立派な「私」だ。たまに泥酔したり夢を見たりして、自分の無意識を覗き込む機会があると、どろどろした欲望や嫉妬や不安だらけで、私ってなんて最低な人間だろうと落ち込むが、それをきちんと統御して日常生活ができているのは意識のおかげだ。だから酒を呑んで絡んだりスケベになったからといって、それを私の「本性」とか思わないでくれ。普段の品行方正な「私の意識」と、やたらと他人に絡んでだらしないエロ親父の「私の無意識」の総合得点で「私」を評価してくれよ、って、忘年会シーズンを目前に何を言い訳しているんだか。



ええとですね、そういうわけで、無理して笑わないことに決めた彩未先生の顔は、実は笑顔の彩未先生と同じくらい無理に見える。



私は第1話の感想として、笑顔の彩未先生の虚構性をきわだたせるために、北川景子はわざと下手な宝塚のマネっぽい演技をしているんじゃないか、と書いたけど、笑顔を捨てた第4話の彩未先生の表情は、やはり宝塚ネタではないかと。つまり『女王の教室』(2005年)の天海祐希のデッドコピーに見える(笑)。でも阿久津先生の完璧さと異なって、もの凄く不安定。むしろ「笑顔の彩未先生」で居たときの方が、普段の無愛想な彼女自身との折り合いというか、人格の統合ができていたように思う。
彼女は、「明晰夢を見る」というかたちで夢をコントロールできる能力を得てしまったために、自分の人格を「夢」と「現実」にきっぱり振り分けて、その結果、一種の二重人格(意識と無意識の乖離)に陥ってしまっているのではなかろうか。そしてその人格乖離を如実に物語るのは、第1話から出てくる、「わたしの先生はサイコパス 武戸井彩未の偽りの日常」というタイトルのブログなのだが、「無意識」サイドの彩未先生が「意識」サイドの彩未先生を挑発しているかのごときこのブログの作者が誰か、まあだいたい予想がつくよね。


  


 わたしの先生はサイコパス。

     武戸井彩未の偽りの日常。

 09月18日(水)2:30
 わたしの先生はサイコパスです。
 わたしの先生は、一度もわたしたちに向かって
 本当に笑ったことがないんです。
 先生は、ただわたしたちを飼い馴らすためだけに、
 わたしたちの興味を引くような話をする。
 だけど先生はわたしたちに興味なんてない。
 好きも嫌いもない。心がないのだから…
 武戸井彩未は異常者だ!サイコパスだ!
 わたしの先生は、人さえ見つからなければ
 平気で面倒臭い生徒は皆殺しにできる、殺人鬼だ!
 そんな先生は学校は放置していていいのだろうか?


  


彩 未(当たっている。サイコパスは言い過ぎだとしても、おおむね見抜かれている)


まだちょっと書きたいことはあるけど、そろそろ時間オーバーなので今回はこのへんで。
次回は渋江譲二さんご出演の『土曜ワイド劇場 西村京太郎トラベルミステリー山形新幹線つばさ129号の女』を取り上げます。「悪夢ちゃん」の続きも、たぶん。