実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第391回】北川景子@みをつくし料理帖の巻(後編)


始まりました『悪夢ちゃん』腹巻きはちゃんとラストの伏線になっている(笑)。


いやその話は次回。今回は『みをつくし料理帖』レビューの最終回です。



平岡祐太。といえば、アミューズ所属ってこともあって『僕は妹に恋をする』(2007年)、『the波乗りレストラン』(2008年)、『NECK』(2010年)といった作品で小松彩夏と縁があり、さらに『真夏のオリオン』(2009年)『LADY 〜最後の犯罪プロファイル〜』(2011年)と、北川景子との共演歴もある。
『僕は妹に恋をする』の後半、屋上から降りる階段の踊り場で小松彩夏に睨まれるシーンとか、『LADY 〜最後の犯罪プロファイル〜』で北川景子に睨まれるシーンとか、セーラー戦士にガンを飛ばされることに関しては日本一の役者といえよう。





そんな彼も今回のドラマの主要登場人物なんですが、めんどうくさいからこのブログではずっとスルーしてしまって悪かった。
えーとこの『みをつくし料理帖』という物語は、大坂から江戸にやってきたヒロインが、人々に支えられながら、料理人の夢に向かって成長していく、というグルメ時代劇ヒューマンドラマです。で、こういう話には、だいたいヒロインの恋人候補が二人出てくるものなんですね。一人は、『エースをねらえ!』で言えば(なぜ『エースをねらえ!』なのかと聞かれても困るが)宗像コーチのタイプ。つまり主人公を時に厳しく突き放しながらも温かく見守る指導者役で、大人で、ミステリアス。もう一人が藤堂さんタイプで、宗像コーチよりも主人公に年齢が近く、ヒロインがへこんでいるとき、近くにいて励ましたり支えたりしてくれる優しいタイプの人ね。今回のドラマでいうと当然、松岡君が宗像コーチ。で、もう一方の藤堂さんタイプを演じるのが平岡祐太君。



裕太君の役はお医者さんの永田源斉先生という。澪と一緒に暮らしている、もと「天満一兆庵」のおかみ、芳(原田美枝子)が具合を悪くしたとき、居合わせて介抱したのが縁で、以降も何かと二人を気にかけている。料理には素人だが、職人の多い江戸では塩気の濃い味が好まれるとか、けっこうヒントになるようなことも言ってくれる存在だ。だもんだから、小松原の指摘を受けて、だしの研究に余念がない澪にも付き合って、味見などする。


  


 澪 「昆布だしのうま味は、まろやかで口の中にふんわり広がります。けど、鰹だしは鋭くて、舌に集まってくるような気がするのです」
源 斉「澪さんはたいしたもんだなぁ。私はものの味を、そんなふうに表現できません。ふんわり広がる昆布だしと、鋭く舌に集まる鰹だしか……」


澪はただ、そのまま感想を述べただけなんだけど、源斉先生はふたつの味を対照的に表現した澪に感心する。で、それを聞いた澪はふと、好対照をなす両者の長所を組み合わせれば、口の中にふんわりと広がりながら鋭く舌に集まる、最高のだしを作れるのではないかと思いつく。こうして澪は、かつおだしと昆布だしの合わせだしの研究に没頭して、そして開発に成功するのだった。そしてついに完成。


  


 澪 「けど、これで何をつくったらええんか」


  


 芳 「茶碗蒸し。茶碗蒸しはどやろか」


と、前回ここまで紹介させていただきましたところ、当PGSM研究所の非常勤研究員のこっちよ!さんが、すかさず「茶碗蒸しって」と突っ込みを入れた。そのとおりで、この時代、今日知られているような、だしと卵を合わせた茶碗蒸しは江戸には伝えられていない。



研究員が聞いた話では、江戸時代には長崎卓袱のひとつであったという。つまり元は中華かオランダか、外国料理が和食化したものなのかも知れないが、そのへんはよく分かりません。ともかく江戸では珍しい。
そろそろ秋も深まり鰹の季節も終わる頃合いとあって、つる屋では「はてなの飯」ことカツオ飯に代わる店の目玉として、この茶碗蒸しを大々的に売り出すことに決まった。まずは恒例、店頭で無料の試食会だ。



われ先にと口にしたお客たちはその未知の味に思わず手を止める「こりゃ何だい」。そして恍惚とした表情で「とろとろっとよ、口の中でとろけちまったよ」「まるで極楽の味だ」などとつぶやく。


  


 客 「これは、何て言う名の料理なんだい」


  


 澪 「はい、とろとろ茶碗蒸しでございます」


今日「江戸風茶碗蒸し」というと、すり下ろした山芋を生地に用いた蒸し料理が出される。そういうものなのか、ただ具を茶碗に入れて蒸しただけのものなのか、ともかく「茶碗蒸し」といっただけでは、そういう関東風茶碗蒸しを連想されてしまって、話題性に乏しい。澪はとっさに機転を利かせて、この西日本風茶碗蒸しを「とろとろ茶碗蒸し」と命名。そのネーミングの妙もあって、あっという間に江戸中の評判になる。そればかりではない。


  


ナレーション「当時の江戸には、世界初と言われる料理本や店案内がすでに存在していた。そればかりか、なかには相撲の番付になぞらえた、料理番付まで作られていたのである。


これも紹介していなかったが、ドラマのナレーターはなぜか吹越満。特撮ファンにとっては、『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(1993年)の「フライドチキン男」としてお馴染みの方である。


  


『有言実行三姉妹シュシュトリアン』は東映不思議コメディシリーズの第14作目。先輩にあたるシリーズ第11作目の『美少女仮面ポワトリン』(1990年)は、アニメ化された『美少女戦士セーラームーン』(1992年)に影響を与えた作品といわれているが、そのセーラームーンのアニメ版が、一気に爆発的なブームとなったために、玩具売り上げの落ちた不思議コメディ路線は1993年のシュシュトリアンをもって打ち切りとなったという、なかなか因縁のある関係。さらにシュシュトリアン三姉妹は、放送終了の翌年『忍者戦隊カクレンジャー』第35話「おしおき三姉妹」にそろってゲスト出演したのだが、演じた役柄が「おしおきセーラーシスターズ」という、シュシュトリアンとセーラームーンをマッシュアップしたようなキャラクターだったことも、なんかますます因縁を感じますね。



いや吹越満の話だった。吹越さんは同じく東映関係で、ご存じ「警視庁捜査一課9系シリーズ」のレギュラー刑事なので、沢井美優や小松彩夏や泉里香や渋江譲二などなどとの共演歴はあるが、意外なことにこれまで北川景子との共演作がない。



と思っていたが、調べてみたら『真夏のオリオン』に出演していた。すまん。
私個人としては、映画『ホワイトアウト』(2000年)でダムを占拠するテロリストの一員を演じていたのが、今もすごく印象に残っている。黄川田将也も同じテロリストグループのメンバーでちょこっと出ていたな。



しまったここは吹越満を語るスレではなかった。北川さんとよく共演していそうで実はほとんどしていない人ということで道草を食った。
ともかくナレーションで語られているように、当時の江戸にはすでに相撲取りの番付になぞらえた「うまいもの番付」なるものが出ていたという。グルメガイドである。ちなみにフランスのミシュランガイドは1900年のパリ万博のときに作られた旅行者ガイドが起源なので、この手の出版物に関していえば江戸の方がざっと100年は早い。で、つる屋の「とろとろ茶碗蒸し」はいきなり関脇をとってしまったわけだね。つる屋の関係者はもう大興奮。



でもそれが、江戸一番と評される大関の名店、登龍楼を怒らせてしまった。高級店だった登龍楼は、なりふり構わず、つるやの近くに採算を度外視した庶民向けの店舗を出し、メニューに、鰹と昆布の合わせだしの茶碗蒸しを加えた。しかも具には、つる屋よりも高級な食材を用いたので、客はそちらへ流れて、つる屋にまたまた閑古鳥が鳴く。
そんな或る夜、今日もお客はそんなに来ないし、そろそろ暖簾を降ろそうかなという頃合いに、ふらりと店を訪れたのが小早川。



「うわさの茶碗蒸しとやら、貰おうか」いちばん食べて欲しかった人がようやく来た。いそいそと用意する澪。


  
  
  


小早川「どうしようもねぇなあ」


  


小早川「どうしようもなく、うめえじゃねえか」


  
  
  
  
  


小早川「どうした?」


  


 澪 「せやかて、嬉しいんです。お褒めの言葉をいただいたのは初めてですから」


  


小早川「初登場で関脇をとっちまったんだ。妬み嫉みは買って当然、よってたかって引きずり降ろそうとするのが世の常だ」


  


小早川「今は見栄と張りで、登龍楼へ流れているかも知れないが、味の分かる客はきっと戻ってくる。手を抜くな。お前はお前の味を突き詰めれば良いのだ」


  


ところで、おかみさんの芳にとって、茶碗蒸しというのは、たんなる思いつきではなく、実は非常に思い入れのある一品だった。かつて大坂で店をやっていたときの人気メニューで、懐かしい味なのだ。
そしてもう一人、とろとろ茶碗蒸しの評判を聞いて、ふるさとへの郷愁を募らせる人がいた。淀川の大洪水で身寄りを失い、その器量を買われて遊女として江戸に売られ、いまでは吉原一の花魁と評されるまでにいたった野江、あさひ太夫(貫地谷しほり)である。そのあさひ太夫の頼みを受けて、ある晩、吉原からつる屋に使いの者が現れた。名を又次(高橋一生)という。



又次は「ある人」のために茶碗蒸しを持ち帰ることを所望するが、茶碗を持って行かれるのは困る。又次のとっさの機転で、卓上に花をさしてあった竹筒を利用し、茶碗蒸しならぬ竹筒蒸しというか、テイクアウト用とろとろ茶碗蒸しを作ることになる。



料理が花魁の口に合ったようで、又次はそれからも、しばしばつる屋に重箱をもって現われた。しかし夜ともなれば茶碗蒸しは売り切れのときも多い。そんなときにも澪は、同郷の見知らぬ遊女に故郷の味を楽しんでもらうために、俵型おにぎりとか関西風味のだし巻き卵とか、それにおぼろ昆布とか、素朴ながら工夫をこらした一膳をこしらえるのだった。



で、それから、かの「あさひ太夫」こそ、幼い頃から澪と親友だった野江ちゃんであることが分かるまでの顛末とか、高級料亭「登龍楼」が、つる屋潰しのタチの悪い嫌がらせをしてくるとか、色々あるんだけど、まあいいや、ウチのレポは以上で終了(笑)。


いや実は、『悪夢ちゃん』の第1話を観て非常におもしろかったもんですから、もう気分はそっちへ行ってしまっていて。



ただ、最後にもうワンシーンだけ紹介しておきたい。いや、貫地谷しほりさん演じる花魁あさひ太夫との「涙の再会」の場面ではない。そこも悪くないが、もっと後の、実質的なラストシーン。
年の瀬の慌ただしいおり、つる屋の繁盛を妬んだ登龍楼の差し金で、店は放火されて全焼してしまう。完全にアパシー状態のオーナー種市。澪もうちひしがれ、何もかも諦めかける。この時の、町で思わず泣き崩れる場面は、北川景子一流の泣き芸であった。



でも事情を察したあさひ太夫からの資金援助とかもあって、澪の料理人魂は再び不死鳥の如く燃え上がる。
大晦日。澪は焼け跡で屋台を開き、初詣の客に粕汁を振る舞うことを思い立つ。これも当時はまだ、江戸ではポピュラーではなかった上方の味。




そして年が明けた。ボリュームもあり身体も温まる酒粕汁は大評判で、たちまち行列ができる。店が焼失したショックで無気力になってしまっていた種市も、その活況に意欲を取り戻し、あらためて澪に頭を下げる。


  


種 市「もう一度店をやっちゃあくれまいか。お澪坊や芳さんが懸命に屋台店に立っている姿を見ていたら、俺は、俺は……。もう一度、いや何度だってみんなで、やり直したいんだよ。頼む」


  


 芳 「旦那さん、頭をあげておくれやす、旦那さん」


  


 澪 「やらせてください。あたらしいお店。今年こそ、良い年にしましょう。いえ、きっと良い年にしてみせます!」

こういう表情のこういう芝居は、これまでの北川景子にはあまり見ることができなかったような気がする。私は先日、ようやく原作(高田郁『八朔の雪』ハルキ文庫)を買って一気に読んでみたのだが、なるほど抜群に面白い。ドラマの面白さの大部分が原作に由来していることはよく分かった。
ただ主人公のイメージは、多くの人がいうように北川景子とはちょっと違う。原作の澪は「さがり眉」だし、料理のことで夢中になってしまうとき以外はおっとりして、あまり前に出ることもない性格だ。北川さんも、このドラマではわりと控え目の芝居だけれども、何しろあのキリッとしたルックスなので、どうしても後ろに引っ込んでいる雰囲気ではない。でも、そのへんは北川景子の個性として積極的に活かし、ドラマならではの澪を作り出して見せた。そういうところが、いまのラストシーンの芝居によく出ている感じがして、いや北川さんは日々進歩しているなぁと、そういうことです。


というわけで、語れなかった点はあまりにも多いが、もう私、気分は『悪夢ちゃん』モードなので、『みをつくし料理帖』レビューはここまで。中途半端ですまん。



最後の最後。この物語では、アバン・タイトルで「涙はコンコン」とか、朝日太夫が狐の面を被ったりとか、狐が意匠としてしばしば用いられるが、なかでも印象的なのが通称「化け物稲荷」。そういうふうに呼ばれていた、荒れ果てた小さなお稲荷さんを、澪は一人で整えて油揚げをお供えし、泣きそうになったとき、困難に直面したとき、しょっちゅう通っては手を合わせていた。
でまあ、北川さんにはやっぱり赤い鳥居がよく似合うなぁと。




【作品データ】『みをつくし料理帖』(サブタイトル)「天涯孤独の女料理人現る!!今は亡き人々への想いを胸に…江戸の粋と心をつなぐ奇跡の料理!! 190万部の大ベストセラー映像化」/2012年9月22日(土)21:00-23:21放送/製作著作:テレビ朝日、東映
<スタッフ>チーフプロデューサー:田中芳之(EX)/原作:高田郁「みをつくし料理帖」シリーズ(『八朔の雪』『花散らしの雨』角川春樹事務所刊)/原作責任者:鳥原龍平(角川春樹事務所)/脚本:吉田紀子/撮影:朝倉義人、日下誠/監督:片山修(EX)/音楽:神坂享輔/【製作】プロデューサー:河瀬光・榎本美華・小野川隆(東映)、中川 慎子(EX)/ラインプロデューサー:廣田成人/プロデューサー補:古草昌実(EX)/製作管理:安達勉/進行主任:芦田淳/演技事務:須賀章/【演出】監修:大原政光/助監督:茂山佳則/記録:谷恵子/【音楽・音響】音楽プロデューサー:志田博英/整音:桜田佳美/音響効果:荒木祥貴/和楽:中本哲/【撮影技術】照明:山中秋男/録音:立石良二/編集:松尾茂樹/VE:木子尚久/VTR編集:奥村裕介/CG:山本貴歳/高井梓(EX)、オムニバス・ジャパン、4b、キルアフィルム/【美術】美術:倉田智子/装置:佐藤政義/背景・塗装:小林正敏/装飾:長谷川優市呂/建具:中島英來/持道具:井上充/小道具:高津商会/衣装:古賀 博隆/美粧:櫨川芳昭(東和美粧)/メイク:穐田ミカ(北川景子担当)、石田伸(原田美枝子・室井滋担当)結髪:福本るみ(東和美粧)/かつら:山崎かつら【そのほか】編成:西山隆一、尾木 晴佳(EX)/営業:横井隆(EX)/宣伝:平野三和、大川希(EX)/コンテンツビジネス:新井麻実、林祐実(EX)/ホームページ:太田早香(EX)/スチール:入江信隆/方言指導:一木美貴子/所作指導:星野美恵子/花魁指導:あきやまりこ/舞踊振付:猿若加於理/殺陣:菅原俊夫/クッキングスタイリスト:深沢えり子/料理協力:辻調理師専門学校/
<キャスト>澪: 北川景子/少女時代の澪:小林星蘭/芳:原田美枝子/嘉兵衛:笹野高史/永田源斉:平岡祐太/小松原:松岡昌宏/あさひ太夫:貫地谷しほり/野江(少女時代のあさひ太夫):谷花音 /翁屋の又次:高橋一生/おりょう:室井滋/伊佐三(おりょうの亭主):浜田学/鰹節問屋の手代:野間口徹/大坂の易者:六平直政/采女宗馬:宅間孝行/長屋の女:池津祥子/つる家の客:飯田基祐、潟山セイキ/ まつむら眞弓、中道裕子 園 英子、いわすとおる、 西村匡生、空田浩志、川鶴晃裕 野々村仁、木村康志、吉田輝生、大内飛河 、室井滋、佐々木卓馬、西山清孝 小谷浩三、床尾賢一 、細川純一、井上久男、石川栄二、木谷邦臣 金子栄章、山根誠示、上村厚文、児玉雅紀 /種市:大杉漣/ 語り:吹越満