実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第390回】北川景子@みをつくし料理帖の巻(中編)



ももクロのレッドから主演ドラマの主題歌を聴かせてもらうセーラー戦士のレッド。背景もレッド。
そういえば、昨年リリースされたももいろクローバーZのシングル曲「猛烈宇宙交響曲」の中にこんな歌詞があった。


星屑のクズとなりて 君に恋し続けよう
想いは燃えてる 赤く赤く光るアンタレスのように
  (作詞・作曲:前山田健一「猛烈宇宙交響曲・第七楽章 無限の愛」)


ももいろクローバーZの歌には、セルフパロディ的な要素が少なくないと思うが、上の曲の「星屑のクズとなりて」というフレーズは、彼女たちが一時期よく自虐ネタとして語っていた「私たちの事務所(スターダスト・プロモーション)のタレントはスター組とダスト組に分かれていて、私たちはダスト組」という発言にちなんでいる。では「赤く赤く光るアンタレスのように」とは何を意味するか。
アンタレスはサソリ座の恒星で、その名称はギリシア語の「反・火星」(アンチ・アレス)から来ている。「火星の向こうを張るほど赤く強く輝く星」という意味である。
というわけで上の歌詞は「スターダストのダスト組の私にとって、あこがれはスター組のトップに輝く火星の戦士さん。私もいつか、火星さんに負けないくらい赤く赤く光る星になりたい、想いは熱く燃えています」という意味に解釈して良いと思う。(良いのか?)
このシングル「猛烈宇宙交響曲」がリリースされたのが2011年11月だからあれからおよそ1年、ついにももクロも北川景子と肩を並べたな。おめでとう。





さて本題だ。スペシャルドラマ「みをつくし料理帖 天涯孤独の女料理人現る!!今は亡き人々への想いを胸に…江戸の粋と心をつなぐ奇跡の料理!!190万部の大ベストセラー映像化」(新聞のテレビ欄に載ったタイトル全文)のレビュー。中篇。


前回のあらすじ】享和二年(1802)の淀川大洪水で両親を喪い、天涯孤独の身の上となった少女、澪(北川景子)は、めぐりあわせから名高い料亭「天満一兆庵」のおかみ、芳(原田美枝子)の元に引き取られる。天満一兆庵の主人(笹野高史)は、この少女が確かな味覚と料理への情熱を秘めていることを見抜き、包丁を与え、幼い頃から奉公人として板場に立つことを許す。こうして澪は、女だてらに料理人の道を歩み始めるのだった。
そして10年後、その間、大坂の店は焼失し、主人は失意のうちに世を去る。亡くなる間際、江戸出店の夢を語っていた主人の想いをかなえるべく、澪はおかみと二人で上京し、長屋暮らしをしながら、小さなそば処「つる屋」の奉公人として、江戸での料理人修業を始めた。


前回は、澪が初めて料理を任されて作った深川牡蠣の土手鍋が不評で、常連のヒンシュクを買う、というところまでだった。その晩、つるやの主人、種市は、殻ごと炙った牡蠣にさっと醤油をかけて、澪に食べさせる。


  


種 市「お澪坊、食べてみな」


  


種 市「手は込んじゃいねえがちょいと旨いだろう」


   


種 市「江戸じゃあ小ぶりで味の濃い深川牡蠣は、こうやって食うもんだと思い込んでいるんだ」


なるほど醤油味か、上方風の白味噌ではだめか、ということで、次は牡蠣の時雨煮でリターンマッチをはかるが、しかしこれも大不評。とうとう客から「ここで手ぇ突いて謝んな。食えねえ料理を出してすいませんと謝れってんだよ」とまで言われて土下座をする始末。




で、ここから先は「ふりかかる災難→つる屋存続の危機→ヒロイン閃く→再び大繁盛」というパターンが2、3回繰り返される。いやそのこと自体は悪くない。お約束通りに話が進む安心感もあるし、脚本も撮影も演出も、定番の物語を、妙な技巧やケレンにも走らず端正に描いていて、しっかりした職人芸を見る気持ちの良さがあった。ただ、えーと、あえて言ってしまうと、中盤のプロットがあまりにも同じパターンの繰り返しで、ちょっと朝の連続テレビ小説とか昼の帯ドラの1ヶ月ぶんくらいを総集編で見せられているような感じがなくもなかったよね。


第1週:郷に入れば郷にしたがえ
 板場を任されたものの、出す料理出す料理が不評で、とうとう客に土下座までした澪。なぜか。上方育ちの彼女の料理の基本は昆布だしなんだけど、江戸の水では思うような味がどうしても出せない。だからお客に「うすぼんやりとした味」と評されてしまうのだ。こうなったらいさぎよく昆布をやめて、カツオだしに挑戦するしかない。加えて「つる屋」の客は汗を流す職人が多い。総じて塩気の強い味付けを好むはずだ。澪は熟慮の結果、カツオだしベースで濃い醤油味の里芋煮を作り、ようやくお客さんたちから高評価を得る。



第2週〜第3週:はてなの飯
 つる屋の主人、種市(大杉漣)が持病の腰を悪化させて寝込む。もう蕎麦は打てないと覚悟した種市は、澪に店をまかせたい、と申し出る。澪は蕎麦屋のかわりに、定食屋のような感じで「つる屋」をリニューアルするが、おやじの蕎麦を期待してきた常連からまたまた総スカン。閑古鳥が鳴く店内で、起死回生の新メニューを模索していた澪は、安く手に入る「戻り鰹」をカツオ飯にして売ることを考える。味は上々だったが、初物好きの江戸っ子は、戻り鰹と聞いただけで手を出さない。て言うかこの時代、カツオと言えば初鰹、マグロといえば赤身で、戻り鰹とか鮪のトロとか、そういう脂の乗ったものは下魚だった。



 種市でさえ、戻り鰹じゃ売れっこねえとサジを投げたが、でも澪は、味に自信があった。だからとにかく一度みんなに食べさせたい。どうやって食べさせるか思案したあげく、店先に飛び出して、中身を告げず「はてなの飯」と銘打ち、ひとまず無料でカツオの握り飯を振る舞ったところ、あんのじょうこれが大評判。中身が「戻り鰹」と分かった後も、洒落ということで怒る者もおらず、店はふたたび軌道に乗る。


このエピソードの中で印象に残ったのは、魚屋の少年が料亭の店先で板前にどなり飛ばされるシーン。その様子を遠目に見た澪が、近寄って「何を売ってるの?」と声をかける。見てみると脂の乗った鰹。江戸っ子だったら見向きもしない戻り鰹を料亭に持ち込んだので、ふざけるなとぶっ飛ばされちゃったんだけど、澪はぴかぴかの鰹に、おおいにインスパイアされる。



ここのところで、少年に近寄る澪をカメラがロングで捕らえると、手前の川をすーっと花売り舟が流れていくのね。けっこう細かいところに手間ひま(そして金を)かけて画面を作り込んでいるなぁと感心した。そのあとの鰹を見た北川景子の「これだ!」という表情もかわいい。



そして鰹をさばいてみせるカット。ここは手もとのアップも吹き替えではなさそうだ。



たぶん練習したのでしょうね『ブザー・ビート』のバイオリンみたいに。クレジットには、フードコーディネーターに深沢えり子、料理協力として辻調理師学校の名前があった。さて次。


第4週:料理の基本
料理に対する見識がただものではない謎のお侍、小松原(松岡昌宏)がある晩ひさびさに「つる屋」に姿を見せる。カツオ飯はすでに売り切れで、あり合わせの酒肴とすまし汁を出した澪だが、小松原に「お前はこの味に得心しているのか?」と、内心の迷いをずばりと指摘される。



 小松原は「本筋に戻れ、そしてお前のいちばんの欠点から目をそらすな。料理の基本がなっていない」と叱責して去って行く。これまで澪は、昆布で思うようなだしが取れないので、仕方なくカツオだしを取っていた。納得のいく味が出せたわけではないが、客が濃い味を好むので、醤油を多めに加えて煮物にしてごまかしていた。評判になった里芋もカツオもそうだ。なるほど、だしが決まっていないようでは「料理の基本がなっていない」と言われても仕方がない。本筋に戻って、まず自分のだし作りからはじめなければならない。澪は一からカツオだしの勉強を始めた。そして、そもそも彼女が「つる屋」で学んだ鰹だしの取り方が(血合いの混じった鰹節を使い、ぐらぐらに煮立ててじっくりだしを出す)そばつゆ用の特別な方法で、吸い物などにするには風味がきつすぎることも知った。



 鰹だしの奥深さに目覚めた澪は、さらにそこに昆布だしを加え、自分ならではのオリジナル「合わせだし」の創造に挑戦するのだった。


なんか単発ドラマじゃないよなぁ。ぜったい連ドラっぽい話の構成である。そういう意味で言えば、北川景子はヒロインとしてはキリッと男前すぎるかな、という気もする。原作の澪は、ふだんはそんなにしゃっきりしていなくて、しかし料理のことになると見違えたように輝き出す、というタイプのようだ。そうすると確かにちょっとイメージが違う。
けど、北川景子は「役に応じて変幻自在」というタイプの器用な女優さんではないので、無理して原作寄りのキャラクターにすれば本来の持ち味が消える。でも成長しましたね。無理にならない範囲で、それでも原作の澪に自分を重ねて北川景子なりの澪をつくって、今までの彼女にない味を出せた。いや身びいきかも知れないので、原作ファンの方、カンベンしてください。


他方、役に応じて変幻自在な一種の天才が貫地谷しほり。今回の役は吉原でも評判の花魁、あさひ太夫だ。その正体は後半に明らかになるが、まあ最初から観ていれば、アバン・タイトルに出てきた澪の幼い頃の親友、野江であることは誰にでも分かる。
淀川の大洪水以来、消息も知れなかった野江と、澪がそうとは知らずに再会を果たしたのは8月1日中秋の入り、八朔の日だ。
八朔というと、京都では祗園の芸妓や舞妓が、自分たちの師匠のお宅や日頃お世話になっているお茶屋さんを回ってご挨拶挨をすることで知られている。吉原でもこの日は特別で、遊女たちが白無垢を着て、いろいろアトラクションを用意する。それを見物するために、この日だけは女も吉原に入ることができたらしい。それで種市に連れられて初めて吉原を訪れた澪は、花吹雪の散る夢まぼろしのような光景のはるか遠方に、吉原一の花魁あさひ太夫の姿をちらりと垣間見るのだ。



ほんの一瞬、横顔を覗かせて再びキツネの面をかぶる。いやあお見事ですね。
話が行ったり来たりしてすまん。なんだっけ。
昆布だしと鰹だしを合わせたオリジナルの合わせだしの開発に成功した澪。種市やおかみさんも、味見をするなり太鼓判を押す。さあ、この自信作の味を最大限に発揮できる料理は何か。ここが思案のしどころだ。
そしてついに「これだ!」という、つる屋の看板メニューが完成する。



すまないな、こんなベタなボケで長々と引っ張って。
いや、ただアレだ。この映画『チェリーパイ』の公開時(2006年)北川景子は20歳。撮影時点では19歳ではなかったかな。
今回の『みをつくし料理帖』のヒロインの年齢設定は原作どおり18歳のようで、人によっては現在の北川景子さんを18歳に見立てるのにそれなりに苦労した方もおられたと聞く。そういう方はこのあたりの画像を参照し、各自の責任で脳内補正をかけていただきたい。
えーと話を戻して、ついに懸案だった澪の味、昆布と鰹の合わせだしが完成した。


  
  

 芳 「なんて典雅な」


  

種 市「お澪坊、よくここまで頑張りとおしたな」


  


種 市「とんでもねえ。これはとんでもねえものができちまったぜ」


  


 澪 「けど、これで何をつくったらええんか」


  


 芳 「茶碗蒸し。茶碗蒸しはどやろか」


すまん、本当はこのシーン、平岡祐太くんもいるんだけど、セリフから何から全面カットしてしまった。ま、とにかくそういうおかみさんのアイデアで、料理は、だしの魅力を最大限に引き出す蒸し料理、上方風茶碗蒸しに決定。




そしてこの茶碗蒸しが、離ればなれでお互いの行方も知らなかった幼なじみの少女二人、澪とあさひ太夫に奇跡の再会をもたらすのだった。というわけで次回完結編。


ドラマ出演を機に、北川景子さんが考案したという「冷やし茶碗蒸し」のレシピはこちら