実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第370回】がんばれ非公認の巻

 



5月8日付の安座間ブログより。名古屋駅東口の待合スポット通称「金の時計」。左上が安座間美優。
この翌日の5月9日にcypさんが仕事で名古屋に来られて、晩に少し時間が作れそうなので一度お会いしませんか、と誘ってくださった。私は当然ここを待ち合い場所に選んだのだが、タッチの差でこの広告は撤収されたあとだった。
cypさんとはいろいろお話できて楽しかったんだけど、この件だけはちょっと残念でした。デジカメも持参したのに。



これは2008年春、栄の交差点。本当だったらこのくらい巨大な北川景子の下でcypさんをお迎えしたかったのであるが。



さて、前回もタイトルだけちらっと触れましたが、深夜枠のパロディ番組『非公認戦隊アキバレンジャー』(BS朝日:毎週金曜日 25:30/東京MX:毎週月曜日25:00放送)みんな観てますか?
私は事前情報をまったく得ていなかったので、タイトルを聞いた時には、何かのパチもんかと思っていた。そしたら、ちゃんと「本家」東映の制作である。ていうかプロデューサーに日笠淳、脚本に荒川稔久、撮影に菊地亘、音楽に川井憲次と、本物すぎる陣容で、作品のクオリティも深夜とは思えないほど高水準という、困った特撮ドラマである。



特撮的には、主人公の乗り回す痛車が変形してロボットになる「イタッシャーロボ」なんて、本家シリーズよりも大きいお友達好みのデザインだし、本家では『炎神戦隊ゴーオンジャー』のケガレシア(及川奈央)以来ご無沙汰だった「セクシーな敵の女幹部」もちゃんといる。邪団法人「ステマ乙」のマルシーナ(穂花)。



内容の方も、ヴァーチャル空間での「リアル」との戦いという設定が、かつての東映の深夜特撮番組『Sh15ubya(シブヤフィフティーン)』を連想させて、「あっちがシブヤで今度はアキバか」と思っていたら、回を追うごとに伏線や仕掛けが巧妙になってきて、ちょっと目が離せない展開になっている。それに監督を田崎竜太と鈴村展弘のお二方が交互にやっておられるので、当ブログでも採り上げなくちゃいけないところなんだが、なかなか余裕がなくて。
小林靖子が脚本を担当している「公認」の方の『特命戦隊ゴーバスターズ』ともども、いずれきちんとレビューしたい。とは思っているんだけど、約束はできません。


で、「非公認」といえば、昨年の暮れごろYoutubeにアップされた、原作者も東映もバンダイも非公認の実写版『セーラームーン・ザ・ムービー』(Sailor Moon the Movie, 2011)、皆さんはご覧になりましたか?(現物はここ


これは、アメリカのセーラームーン好きな方々が作った、完全に自主制作のファンムービーなんだが、スタッフはまったくの素人さんではないらくしくて、これまたクオリティがやたらと高い(監督:Elana A. Mugdan、脚本:Eric Pietrangolare・Kris Woodside、撮影:Marian Dealy)。
非公認なのに、金も時間も手間ひまもかけて作られていて、正味15分ほどのパイロット版だが見応えがある。原作に忠実なぶん、主人公たちが(当然ながら)アメリカ人、舞台もアメリカという設定が、日本人にとっては不思議な雰囲気を醸し出すが、でもよくぞここまでやってくれたなあ。



構成的には、アバン・タイトルに月の王国シルバーミレニアムの崩壊をもってきてしまった点が大胆である。だから地場衛が、かつては地球の王子で、うさぎが月のプリンセスであった、ということは、最初からネタバレしているわけだ。まあ大抵の人は分かっているわけだからいいんだけどね。



ベリル様(Liv Rose)もなかなかいい雰囲気です。一方、エンディミオンとプリンセスが、やたらとキスしまくって恥ずかしそうでもないあたりは、やっぱアメリカだよな。



でも結局、月の王国は崩壊する。銀水晶の力でいくつもの光点が地球に向かって飛散していく。このへんでタイトル。無許可のままで「原作:武内直子」とか。



それから1000年後。てことは、月の王国が崩壊したのは、日本でいえば平安時代。「超古代」と呼ぶほどの昔ではないが、まあ建国250年足らずのアメリカの人にとっては超古代なんだろう。



ともかく1000年。めざめるアメリカンな地場衛。城田優ではない。



ipodから聞こえる音楽に合わせて朝のトレーニングをする地場衛(Nick Uhas)。ジョギング開始。



その背景に、FBIの貼り紙が見える。「お尋ね者 行くぜっ!怪盗仮面少女」(WANTED Female Masked Bandit)とか書いてある。ということは、このアメリカ版ではセーラーVが宝石泥棒なの?



地場衛が月野家の前を通り過ぎて、カメラはうさぎの部屋に移動する。



寝坊したアメリカンなうさぎ(Avery Danielle)は、台所でドーナツを一つだけつまんで家を飛び出す。



とまあ、そういうことは現物を観ていただければ良いのだが(繰り返すが現物はここ)、日本の実写版より優れている点は二つあると私は思う。まず、海野ぐりお(Eric Pietrangolare)を出したこと。「ぐりおがいない」これは日本の実写版に対する、私の数少ない不満のひとつであった。さもなくば、山本ひこえもんをもっと活躍させて欲しかった。



ついでになるちゃん(Kris Woodside)はこんな感じ。やっぱりアメリカン。



もうひとつ新しいと思ったのがルナ。学校帰りのうさぎとなるの前を、不思議な黒猫がサッと通り過ぎていく。この黒猫の語りかける声は、なるには届かず、うさぎにしか聞こえない(声:Olivia Luccardi)。



おそらく欧米世界において「黒猫」といえば、まずこういうイメージが連想されるのではないだろうか。
白倉伸一郎プロデューサーだったか、雑誌のインタビューに答えて、ルナを実写でどう表現するかについては最後まで迷ったし、あのぬいぐるみ案も絶対とは思っていない、もっと不気味な存在として描く方法もあったのではないか、というようなことを語っていらっしゃるのを読んだことがある。そういう意味も含めて、この北米版ルナの不気味なたたずまいは、セーラームーン実写化の新しい方向性を示したと私は思う。



血まみれの屍体からエナジーを吸収する妖魔、ホラーですね。



妖魔に襲われたうさぎに、暗闇から助け船を出すルナ。変身シーンは時間をかけてプロセスをみせたりせず、一瞬ピカッと輝いて終わる。このあたりのテンポはアメリカ映画である。



戸惑いながら切羽詰まってブーメランを出すあたりも、最近のアメコミのハリウッド実写版に近いノリ。なかなか楽しい。



この作品については、IMDB(Internet Movie Databese)にも情報は載っていて(ここ)、そこに記載されたスタッフのQ&Aには、だいたいこんなふうに書いてある。「自分たちはセーラームーンの版権をもっているわけでも、原作者やスタッフ、東映と商業的なつながりをもっているわけでもない。これは営利を目的としない、純粋なファンムービーである。台本は長編映画用(feature-length screenplay)に書き上げられているが、都合で最初の15分ぶんしか映像化できなかった。これはパイロット版である」どうも、これをきっかけに、正式に版権を取得して、完全版の制作に進みたいような言い方にも思える。まあそれはそれでけっこうだろう。頑張って下さい。



という感じのマクラを振ったあとに、DVDレビューを再開しようと思っていたのだが、どうも長くなりすぎたので今回はこれで終わり。
さっき紹介したとおり、これは劇場用長編映画として書かれた台本の冒頭を映像化した試作品だという。だとすると、すでに書き上がっている残りの部分のお話がどうなっているのかが気になります。最近のアメリカンコミックスの実写版なんかから類推するに、2時間くらいかかって、ヴィーナスまで出てきて、戦士5人で最初の勝利をおさめて終わり(続編への含みあり)というような感じでしょうね。今回、出てくる戦士はセーラームーンだけなのだが、ほかの戦士たちのヴィジュアルはどんなふうにイメージされているのか。
エンド・クレジットに出てくるイラストを観ると、タキシード仮面はシルクハットがないとか、マーキュリーはゴーグルをつけているとか、いろいろ興味は尽きませんが、特にマーズとジュピターが目を引きます。なかでもフードをかぶったマーズ。そもそも舞台がアメリカだと、神社の巫女のレイはどういう設定になるのだろうか。完全版の台本を読んでみたい。



なんか、小ネタのつもりが変なことになっちゃったな。じゃまた。次回こそDVDレビューに戻ります。