実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第369回】景子の稽古 居合い篇の巻(NHKドキュメンタリー『輝く女 北川景子』大完結編)

1. この際『アキバレンジャー』に出演させて、懺悔させるというのはどうか。



昨年の『海賊戦隊ゴーカイジャー』第25話(2011年8月14日放送、監督はセーラームーンの理科の加藤先生)より、忍風戦隊ハリケンジャーのみなさん。真ん中がハリケンレッドこと椎名鷹介(塩谷瞬)。
ハリケンレッドの塩谷瞬が、二人の女の人に同時にプロポーズしたとかで、ある意味大ブレイク中だ。ふつうだったら「どーしよーもない奴だなこいつ」と思うんだろうけど、今回、気がつけば自分がなぜか塩谷君に同情的になっちゃっている(おいおい)理由は、やはり相手が冨永愛というところにあるのだろう。だって実写版デビルマン(2004年、東映、那須博之監督)のシレーヌ役だぜ。
いまだにWikipediaの「デビルマン(映画)」という項目には「シレーヌのデザインは多くの批判を浴びた。これは演ずる冨永が本来のシレーヌの衣装を、スタッフ陣の必死の説得にも拘らず最後まで拒絶し、製作スタッフが折れざるを得なくなり、新たにデザインを起こしてようやく冨永を承諾させたことによる」という恨み言が書いてある(笑)。
そんなわけで、実写版のシレーヌはデビルマンでもないのに人間体(富永さんがようやく納得した衣裳)からデーモン体(後でCG加工したオリジナルに近いスタイル)に変身することになってしまった。


(上)オリジナルデザインを拒否した富永さんのために作った新バージョン。
(下)スタッフが顔をのぞく全てをCG処理した復元バージョン


まあ私だって社会人ですから、いや社会人とかそういう問題じゃなくて、二股かけたあげく、両方の女性に求婚とか、当然ダメだろう、とは思いますよ。ただ塩谷瞬はスーパー戦隊シリーズの中でも指折りのレッド。



ハリケンジャーはセーラームーン同様、戦隊ものとしては例外的に顔出しシーンがよくあって、そのためアクションもスタントにお任せしきれない場合が多く、塩谷君は途中で骨折したり、あれこれ苦労もしたらしい。でも決して休むことなく一年間やりとおした。それに較べると冨永愛は東映に多大な迷惑をかけていて、あまり良い印象がない。東映特撮オタク的には、ちょっと世間のモラルとは反対方向に感情が動いてしまうね。塩谷おまえ冨永愛なんかナンパすんなよ、みたいな。
いまシレーヌをやらせるなら、やっぱりレディー・ガガかなぁ。あ、でも私ガガさんの写真もってないです、すみません。



ちなみに、実写版『デビルマン』はセーラームーンと因縁浅からぬ作品だ。久しぶりなので復習しておくと、もともとセーラームーンの実写化は、モーニング娘。主演の『ピンチランナー』(2000年、那須博之監督)に続く「モー娘。主演映画」として、那須監督によって企画されたそうだ。でも結局その話はお流れになって、実写版セーラームーンは2003年にテレビシリーズとして放映され、那須監督はその替わり、同じ東映アニメのコンテンツである『デビルマン』(2004年)の実写版を任された。そういうことになっている。
もちろん以上はたんなるネット上の噂に過ぎない。ただし、武内直子が公式サイトにおいて以前「モー娘。でセーラムーンをやりたいという企画があった」と発言したこと、また那須監督が急逝された2005年に、白倉伸一郎プロデューサーがブログに「これだけは言いたい。那須監督なかりせば、『セーラームーン』を実写で、という発想はなかった」と追悼の言葉を書いたことは事実である(残念ながらどちらのサイトも現在リンク切れ)。こういった状況証拠から考えて、「モー娘。」版セーラームーンの噂は大筋で事実に沿っているのではないかというのが、名古屋支部の判断である。


いきなり道草喰ってごめんなさい。でも道草ついでにもう一つ(反省の色なし)。
毎回2人くらいの方がコメントを付けて下さるセーラームーンミュージカルのネタ。中居正広主演の『ATARU』って、これでもかというくらい顔の濃い役者が出てくるドラマだけど(栗山千明とか北村一輝とか嶋田久作とか市村正親とか千原せいじとか)このあいだ斉藤レイがナースのコスプレで出ていたよ。違う違う、ちゃんとしたナースの役で出ていました。



やっぱりこの人には、何か長いものを持たせて登場させるべきではなかったか。ちょっと手持ちぶさたっぽかった。


いや雑談で待たせて済まなかったね。連休だからちょっとサービスしようかと(サービスになっていない)。それでは本題、北川景子ドキュメンタリーの最終回だ。

2. 大一大万大吉



さて、舞台はひととき、米原市にある天台宗のお寺、観音寺に移動する。「三献の茶」とか「三碗の才」とか言われるエピソードの舞台である。どういう話か。かつて信長の臣下で長浜城主だった秀吉が、鷹狩りの途中でこの寺に立ち寄って茶を所望した。すると出てきた小姓が、一杯目には飲み干しやすいぬるめのお茶を運び、二杯目、三杯目と次第に熱いお茶を運んできた。秀吉は、自分が喉の渇きをおぼえていたことをよく心得た小姓の気配りに大いに感心した。で、この小姓こそ誰あろう後の石田三成で、これをきっかけに三成は秀吉に取り立てられ、出世していったのでありました、という伝説だ。



まあしかし管理職のみなさん、どうですか?暑い日にも暑気払いのうまい茶を出してくれる部下や、寒い冬の日、外回りに出ようとすると、すかさずフトコロで暖めた靴を胸の谷間から差し出してくれるOL(いるかよ、そんなの)を見て、「むむ、こいつは出来る」と取り立てて、ビッグプロジェクトの担当責任に抜擢する度胸ってありますか?そういう小さな人間関係のなかで洞察力を発揮できる人間が(それ自体ひとつの才能だが)よりスケールの大きな場面でも同様に活躍できるかどうかは、簡単にはわからない。結局、問われているのは、部下の機転よりも、そこからそれぞれの資質と適性を判断できなきゃならない上司の観察力なのだ。と、私は何をマジメに考えているのか。



私なんか石田三成って言われても正直あまりイメージがないや。唯一思い浮かぶのは、みなもと太郎の漫画『風雲児たち』の第1巻、関ヶ原の合戦の巻である。ここでの石田三成は、家康に対して西軍の力を結集すべく奔走するものの、十九万石という中途半端なステータスがたたってリーダーシップを存分に発揮できず、自分のところの大将からも軽んじられて、それが結局、敗北へとつながる。そういう悲劇の武将として描かれていて、私はけっこうホロリとした。



まあそれは措いて、ここでは長浜城歴史博物館の学芸員、太田浩司さんのお話を伺おう。


太 田「石田三成っていうと、関ヶ原の合戦で徳川家康に敗れて、41歳で死んじゃったんですけれども、豊臣家のために忠儀を尽したところがとっても魅力的だって言われて。……今なんか、なかなか自分の意志を通すのが難しい世の中じゃないですか。そんな中、自分の想いを通して、死んでもそれを通そうってところがとっても魅力的だって、みなさんおっしゃいますね。意志が固いっていうか……」


寺の本堂に向かう参道(だと思うけど違ってたらすまん)を太田さんと二人で歩く北川さん。この番組の北川さんはここまで、ずっとスッピンに近いメイクと質素な道着が基本だったので、ほんの少しよそ行きっぽい格好でも華やかに感じますね。お見合いの散歩とかに見えなくもない、ちょっとうらやましいです。
欲を言えば、桜の花かなんか咲いていて、もうちょっと笑顔の方がいいけどな。こんな感じで。



また余計な話で済まない。石田三成をレクチャーするために呼び出された専門家の太田さんだが、結局カルチャーセンターの講座案内に書いてある程度の、ごくごく初歩的な話しかしていない。こういうのは番組の構成上の都合で仕方ないことなんだろうね。ちゃんと知りたい人は、太田浩司先生の本を読むように。私も買おうかな。


  

近江が生んだ知将 石田三成 (淡海文庫)

近江が生んだ知将 石田三成 (淡海文庫)


北川さんも「石田三成が好き」というわりには、そんなに知識があったわけではなかったようで、今回はじめてすこし学びました、という雰囲気だ。北川さんも太田先生の本を買うように。あ、本人から直接もらったかな。じゃ読むように。
本堂の前で合掌する北川景子。


  


北 川「すごい律義なところとか、真っ直ぐなところとか、義を重んじているところっていうのは、すごく、共感というか、格好いいなあって思って。そんな人になりたいなあとか思っていたし、石田三成って、すごく知ってみたいなあっていうか、なんか好きだなぁっていう人だったから……」


それから、「石田三成成陣跡」の祈念碑が建てられた笹尾山に登り、東西あわせて十五万の侍が刀を抜いたという「関ヶ原の合戦」の古戦場を一望する。
と、ちょうどそのとき「本日3月11日は、東日本大震災の発生した日です」というアナウンスと共に、あたりに黙祷の合図を告げるサイレンが鳴り響く。あれからちょうど一年。



これでだいたい本日の日程は終わった。あとは翌日に、練習の成果を師範代の前で披露するだけである。わずか数日だけど「武士道」の世界にどっぷり浸かってみて、感想は?


  


北 川「武士っていうのは、もっともっと凄い人たちであって、仲間のかっこ悪いところをなるべく見せないように、計らってやるというか、慮るというか、そういう優しさも武士はもっていたんだ、っていうのを今回あらためて知って……義を大事にする人でいたいとか思っても、なかなかできないじゃないですか、どうしても。昔の人ができたことがどうしてできないんだろうとか、もっと強くなりたいとか、もっと動じない人になりたいとか、いつもそんなふうに思ってますね、なんか。だから、義っていう言葉は、あこがれなのかも知れないですね。理想の姿なのかな、もしかして」

3. もうさばモグと言わない


さあ、明日はいよいよ撮影終了というわけで、軽く打ち上げのニュアンスも兼ねてスタッフと晩ご飯。中華料理のようだ。しかしよく喰う。今回はお酒も入ってちょっと頬に朱がさしている。ほろ酔いかげんの北川さんっていうのも、初めてではないだろうか。
月9のヒロインもやって美人女優の看板背負ってる人の1時間ドキュメンタリーに、がっつり食事をするシーンを3回も入れるって、どうよ。番組の構成に疑問がよぎらなくもないが、いや、いいのだ北川景子だから。
彼女なりの感謝の気持ちなのか、スタッフの仕草を真似たりして、楽しげに夜は更けていくのでありました。


(はじめてのドキュメンタリーですけど、どうですか?)


  


北 川「そうか……結局まあ、普通でいるしかなくなっちゃうからドキュメンタリーなんでしょうけど、こんな(沢山)撮るの?」
(でも覚悟はしてましたよね)

北 川「いやしてました。聞いてもいるし」


  


北 川「楽しいですよね。スタッフさん見ると。汗かいている感よくないですか?やってる感。駆けずり回っている感かっこいいよねスタッフさんの」


  


北 川「カンペ出すとかね。私コレが(マイク)やっぱりやりたいですね」


  


北 川「“まだ……まだ……まだ……ここ!”みたいな。“ちょっと確認してもらっていいですか”みたいな、“それ以上さげたら(画面に)入るよ”みたいな」


  
  


「かっこいい」それが北川景子の最高の賞賛の言葉なのであった。



翌日、最終日。粉雪が舞っている。
最後は、これまで習得した技を、富田師範代の前で披露する演舞会である。

4. 一本目「前」



富 田「それではこれから演舞会を始めます。入場」



富 田「一本目、前。位置について。用意……初め」














5. 二本目「受流」



富 田「二本目、受流。位置について。用意……初め」












富 田「演舞やめ」



私は『ブザー・ビート』でバイオリンを弾いている時の彼女を思い出した。最初から勉強して、何とかここまできました。今のところここまでです。



ブザー・ビートの莉子は、音大を卒業してプロを目指しているという設定なのだから、本当は自分の指先を目線で追っているような弾き方ではおかしい(と、こっちよ!さんに教えていただいたと思う)。そこを、実際には弾けないのに、さも上手そうに見せかけるのが、プロの俳優としての、正しい芝居の組み立て方なのだろう。でも北川景子はそういうことができないし、あまりする気もなさそう。バイオリニストの役なのでバイオリンの練習をしました、ここまで弾けるようになりました、というのを、ナマで見せてしまう。だからドラマのここの部分だけ、我々は白河莉子ではなく、「莉子を演じるためにバイオリンを勉強した女優北川景子のドキュメンタリー」を見せられることになる。不器用というのはこういうところだ。そして、こういうところを受け入れられるかどうかが、あなたが北川景子のファンになれるかどうかのリトマス試験紙だ。っていうか、こんなの読んでるあなたはとっくにファンなんだろうが。


6. エピローグ


富 田「じゃあ、あの、緊張を解いてください。大変ご苦労さまでした」


  


富 田「最後に居合道の概念として、“居合いは鞘の内にある”ということばがあります。できれば鞘の内のままで勝負をつけてしまいたいということと、それから逆に、もう抜き放つまでに、鞘の内にある間に、もう勝負は決まっている、という二つの意味があるんです。この“居合いは鞘の内にある”という言葉で、最後の締めくくりとさせていただきます。ではお互いの礼」


  


二 人「ありがとうございました」


  


北 川「かっこよく出来なかったけど、すごくやり甲斐があって、もっと追求したいなって想いが今あるんですけど……大変でしたけど、すっきりしました、やっていて」


はい、ということで、思いのほか長くなってしまいましたが、なかなか面白いドキュメンタリーだったので、つい丁寧にレビューしちゃいました。cypさんありがとうございました。「M14さんがレビューをやるかも」ということで動画データを提供していただいたのですが、M14 さんがやりそうもないので(笑)名古屋支部の方で下請けしました。


北 川「自分のことをまだ、ちゃんとした女優だと思ったことは一度もないので、いつなれるんだろう、っていう、まだなんか、走り出したばっかりなのかな、っていう、すごく難しい仕事だなぁって思うんですけれども、でも難しくなかったら挑戦する意味がないから、やっぱり、これでいいんだと思います」



【作品データ】『輝く女 北川景子』2012年4月7日(土)23時15分〜0時15分放送/制作:NHK、共同テレビ
<スタッフ>プロデューサー:萩原かおり/制作統括:松井径、大林龍彦/ディレクター:桃井隆宏、小林裕季子/撮影:白石利彦/照明:助川美穂/音声:中道涼子、塩釜亮平/編集:伊藤次郎/映像技術:加藤武志/音響効果:長澤佑樹/リサーチャー:藤井千絵/取材:宇野宇、栗子じょん/資料提供:朝日新聞、西宮市震災写真情報館
<キャスト>語り:奥田民義/北川景子/富田幸児(無双直伝英信流師範代)/北川宗暢(龍潭寺住職)/太田浩司(長浜城歴史博物館)/ひこにゃん