実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第240回】筆談ホステス本論の巻(中編)


だいぶ前に流した予想を、その後の情報に基づいて修正しておくね。

『瞬(またたき)』  2010年7月公開予定
 原作・脚本:河原れん
 撮影:柴主高秀
 監督:磯村一路
 出演:北川景子・岡田将生
 製作:アルタミラピクチャーズ S.D.P

撮影に関しては、昨年の5月から6月にかけて、北海道(札幌・小樽)や島根県(出雲)でのロケが確認されている。ここらへんまでは間違いないはず。私が新しく思いついた予想では「主題歌:GReeeN」なんだが、ただの思いつきです。これをまことしやかに書いてしまうと、またどこかの掲示板に「ガセか?」などと書かれてしまうしね。
いや、上のリストだって、あくまで予想は予想です。確実な情報を素早く供給してくれるサイトをお求めの方は、そうだなあ、今だったら「北川景子を応援する」あたりを常に注目すべし。私のはあくまで「ガセか?」ってことで。

さて、『瞬』の正式なプレスリリースはまだないが、こちらも以前から噂ばかり流れていたアップルの新型デバイス「iPad」は、ついに正式に春の発売が発表された。その実体は(だいたい大方の予想通りだったけど)B5変形サイズのマルチタッチパネル型PDAであった。って皆さんそんなに関心ないかな。
昨年、中国の方々と会話する必要があったんだけど、私は中国語が話せないので、通訳さんがいない場合は英語になる。でも英会話がぺらぺらというわけでもないので、漢字の筆談になったりするわけね。そんなとき「そういやアップルから近々タブレットが出るって話だけど、そういうのがあると、筆談には便利だろうな」なんて思ったりしたわけだ。

でも悪筆で書き損じの多い私ならともかく、筆談ホステスさんには、こんなアイテムは要らない。ドラマを見た限り「メモに手書き」というスタイルこそ彼女の武器であることが分かる。私もそういう経験はほとんどないのでアレだが、普通にホステスさんにもてなされるより、メモに手書きの筆談で語りかけられる方が親密な感じがしますよね。タブレットPCなんかだと、こういう「温もり」みたいなものはちょっと伝わらない。夜の銀座で遊ぶ紳士は、ハートフルなコミュニケーションを求めているのだ(想像)。
それに、里恵さんは字も上手いし、やっぱりiPadなんか要らないよな。これはドラマでもいちばん大きなポイントになっている。里恵の母親は「何でもいいから、一番になりなさい。一番になれば、耳が聞こえなくても、みんなが認めてくれる」と、娘が子どもの頃から、いろんな習い事をさせた。とりわけ習字に関しては、里恵はかなりの才能を示して、母を喜ばせていた。

北川さんみたいに複雑な子の母親になってしまって、このドラマの田中好子は、終始、複雑な表情を崩さないが、この回想シーンでは数少ない「スーちゃんの笑顔」を見せてくれるのがたまりません。
 はい、じゃあここでクイズです。かなり難問だぞ。本物のキャンディーズはどっちだ!

すまん話が脱線した。ともかく、そういう母親の指導方針がプレッシャーになって、里恵はだんだん、学校をさぼったり夜遊びに行くようになっちゃうんですね。だけれども、銀座に出て「筆談ホステス」として評判になってから、これもお母さんが小さい頃から習字を習わせてくれて、きれいな字がかけるようになったおかげだ、と、今度は感謝の気持ちが芽生えて行く。
って、いつもはなかなか本題に入れないのに、今回はイントロのつもりが、いつのまにか本題に入ってしまっているなあ。えーと、じゃあ仕切り直して、前回の続きから始めよう。

1. 戦士の力にめざめる


クラスメートや恋人との関係が壊れてしまって、ずっと突っ張って生きてきた気持ちが折れて、高校を退学しちゃった里恵(北川景子)。学校を辞めたはいいが、さてどうしていいかも分からず、街をふらふら歩いていると、そこへ運命の出会い、という再会がやってくる。里恵を万引きと誤解した、でも警察沙汰にせず穏便に処理してくれたブティック(古着屋?)の店長、小島史生(井上順)だ。この再会シーンの演出は楽しい。

自転車に乗っていた井上順は、商店街を歩く里恵に「あっ」とブレーキをかける。

だけど、急なことだったので、バランスを崩してしまう。

北川さんは耳が聞こえないので、背後で派手な音を立てて転倒する井上順に気づかない。

でも他の通行人が振り向くので、何だろうと思って、ワンテンポ遅れて振り返ると、自転車を立て直しつつフレーム・インした井上順が、ちょっとバツが悪そうに「よっ!」という感じで手をあげる。
そして、軽く挨拶をかわして立ち去ろうとする里恵に「洋服、好き?」と話しかけるのだ。ちょっといいでしょ。
こういうきっかけがあって、里恵は万引きの疑惑をかけられた小島の店「Jack Pot」で店員としてバイトを始めることになる。これが里恵と接客業との出会いであった。

最初は、言葉が喋れないので、接客どころか、意思疎通もままならない、そりゃそうだよな。でも里恵はめげずに、最近のトレンドや、客の好みの傾向などを分析して、おすすめ商品を分類整理した手作りのカタログを準備したりしている。わりとファッションセンスが豊かなのだ。

そういう工夫などもあって、里恵はあれよあれよという間に、店の看板娘みたいな存在になっていく。ようやく自分の居場所が見つかって、表情が活き活きしてくる。そんな変化を嬉しそうに見守る店長の井上順、そしてお兄ちゃん。でも、通りすがりのウインドウ越しに娘の姿を見つめるお母さんは、ちょっと複雑な表情だ。「何でもいいから、一番になりなさい。一番になれば、耳が聞こえなくても、みんなが認めてくれる」というポリシーのお母さんとしては、頭を下げてナンボというか「他人様に仕える」仕事に娘が就くこと自体、ある種の屈辱なのだろう。

2時間ドラマという制約があるとはいえ、里恵が立ち直って行くプロセスがシンプルすぎる、という批評もあるかと思う。でも私の場合はあまり気にならなかった。だってこの子は、『あしたのジョー』の矢吹丈が、生まれつきの天才ボクサーだったみたいに、「接客の天才」だったのだ。いや、実際の斉藤里恵さんがそうだと言っているわけではない。ひょっとすると本物の斉藤さんは、もっともっと、挫折の繰り返しと、血のにじむような努力の果てに接客のテクニックを身につけられたのかも知れないよ。
でもこのドラマの北川景子のキャラクター設定としては、もう天性の接客のセンスに恵まれた子だったわけね(断言)。ところが、そんな業種に就くことを想定していないお母さんの教育方針のせいで、これまで自分の才能に気づかなかった。それが、井上順との偶然の再会で店員のバイトを始めてみて、接客業こそ天職だったんだと自覚する。とたんに、やがて銀座のNo.1ホステス(の定義は不明だが)の座にのぼりつめるほどのポテンシャルをもつ接客能力が、一気に開花したってことだからね。あっという間に仕事をスイスイこなすようになっても、別に描写としておかしくはない。

2. ベテランの味わい


そういう観点から言えば、むしろ井上順の店長の心情に、もうすこしフォーカスして欲しかったという気もする。そもそも彼女を雇おうとすぐに思い立った理由が、どうも曖昧である。
最初の出会いで、彼は警察に身柄を引き渡すことをやめたものの、最後に「二度とするなよ」と言って里恵を解放している。つまり万引き少女という誤解は解けていない。それにこの時、くわしい事情とか身の上話を聞いた様子もない。それが、次の出会いで、高校を退学したと聞いたとたん、自分の店で使おうとするのだ。ただの同情や憐憫でそこまでするだろうか。もしかしたらこの人、たいへんな慧眼の持ち主で、里恵の眠れる才能を一発で見抜いたのかもしれない。でもそれらしい描写もないしなあ。
この店で働くことによって里恵は接客業に開眼した。つまり彼女の才能を発掘した最大の功労者が井上順の店長なんだが、そのわりに行動が意味不明なのだ。退場の仕方も唐突である。

悟志のN「僕は、里恵に心からの笑顔が戻ったことが、嬉しくてなりませんでした。この笑顔がずっと続くことだけを願っていました。それが、あんなことが起きるなんて……」

街はねぶた祭がやってきてそわそわしている様子の8月。里恵が退学したのは、家の居間にクリスマスツリーが飾ってあったから12月のことで、その直後にJack Potの店長に再会したんだから、……つまり働き始めておよそ9ヶ月が経ち、仕事も板について、すべてが順調に回り出したかに思えた矢先のことだろう。通勤帰りらしい姿の悟志(お兄ちゃん)は、 Jack Potの店先で、小島店長がウインドウに閉店セールのチラシを貼っている姿をみて愕然とする。思わず店に近寄り、店長に語りかける悟志。

悟志「あの、これは……」
小島「あっ、どうも。……急なんだけど、今週いっぱいで店しめることになっちゃって
   …いや、なかなか売り上げ伸びなくて。お役に立てなくて、申し訳ない」
悟志「このこと、里恵は……?」

「申し訳ない」と頭を下げるなり、店長は閉店のチラシを貼るためにお兄ちゃんに背を向けてしまう。お兄ちゃんが「このことを里恵は知っているのか?」と問いかけても、背中を見せたまま無視である。
で、次のカットは、閉店の告知を見て茫然と店の前に立ち尽くす里恵。やっぱり店長から何も教えてもらっていなかったみたいだ。

里恵の才能の第一発見者でもあり、あれだけ親身に接してくれていたのに、いなくなるときは夜逃げ同然という、これいったいどういうことか。いや、原作を読めばそれなりの事情とかが書いてあると思うんだけど、ドラマだけ観ているとそう感じるよね。

それでも井上順は、まだまだ芝居の固い北川さんとは対照的な、その場の空気をほぐすような柔らかい演技で、なんとなく含みのある表情をしているので、観ているこっちは「時間の都合で多くは語ってくれないんだけど、この人にもこの人で、何か事情があるのだろうなあ」とか思わされてしまう。さすがベテランである。
全然関係ないが、井上順が『夜のヒットスタジオ』で芳村真理のパートナーをつとめたのは、1976年から1985年のおよそ10年近くである。その間にオンエアされた中で、第491回(1978年4月3日放送)はキャンディーズの後楽園球場解散コンサートの前日であり、キャンディーズは会場からの中継で「微笑みがえし」を歌った。本当に関係のない話ですみません。


そろそろタイムアップ。う〜ん。これでようやく全編の4分の1くらいのところまで来た。何やっているんだろう私。
次回は「後編」のはずなんだが、それでも終わらない場合は「おまけその1」「その2」と続いていく。そういえば先日、リアル「筆談ホステス」の斉藤里恵さんが、ご懐妊&シングルマザー宣言をされたそうだ。このレビューも、斉藤さんがご出産されるまでには必ず終わってみせます。


じゃ、またね〜。バイバ〜イ。