実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


最新記事〕 〔過去記事〕 〔サイト説明〕 〔管理人

【第239回】筆談ホステス本論の巻(前編)


「撮影から帰ってなにげなくつけた深夜のテレビに、メジャーリーグで活躍している長谷川投手がインタビューを受けていました。その中で、とても衝撃的だった言葉を紹介したいと思います。 『成功とは何か。それは、他人が成功したと言ったら成功なのではなく、自分が定めた目標を達成したところで成功だ。成功は人が決めるんじゃない。自分自身が決めるものだと思うんです』 正直驚きました。人の評価は関係ない、大切なのは自分の頑張りなんだって、大切だけど、とても簡単なことに気付きました。すると、なんだかすっきりしました(^.^)b 」(「美少女日記」2003年12月30日)

CBC実写版セーラームーンの公式ホームページの「美少女日記」より(まだ読めるよ→ここ)。久しぶりに読んでいると、もう6年も前から、北川景子は北川景子だったんだなあ、と感心する。いまや彼女自身がメジャーリーグにいっちゃった感があるけれど、こういうところは、今のブログもぜんぜん変わっていないですね。

1. 好きで長いわけじゃないんだ、決して。

 

整形した玉木宏ではなくて転生したクンツァイト。ひろみんみんむしさんによると、窪寺昭さんは、先日1月20日に、33歳のお誕生日を迎えられて、一度は脱退された劇団アンドエンドレスに戻られたそうだ。退団の理由はよく知らないし(退団後も、けっこう仲良さそうだったし)今度の復縁の理由も、やっぱりよく知らない。まあいいや。映画にドラマに、ぼつぼつ出番が増え始めているので、実写版セーラームーンでは実現しなかった窪寺君と黄川田君の共演も、きっとそのうちあるだろう。待ち遠しいですね。遅くなりましたが、誕生日おめでとうございます。
さて、上の画像に話を戻すと、これはセーラームーンの翌年、2005年の10月から12月にかけてTBSの「愛の劇場」枠で放送された昼の帯ドラマ『貞操問答』のオープニングだ。

タイトルもすごいが、原作が菊池寛というのもすごい。まあご存知の通り、ヒット作となった東海テレビの『真珠夫人』(2002年)にあやかったってことなんだろうけどね。
私は、文庫で復刊された『真珠夫人』と『貞操問答』は読んだけど(面白かったよ)昼ドラマの方は鑑賞する機会に恵まれないまま終わってしまった。原作の方も、昭和初期を舞台に、運命に翻弄される美人姉妹を描いた、わりと派手な筋立ての読み物だったが、この2005年テレビ版も、さらにどぎつくアレンジされた、愛憎入り乱れる波瀾万丈のドラマだようです。観たかったなあ。

特に亜美ママの筒井真理子は、ヒロインをとことんイジメ抜く貿易会社社長夫人という役で、これがとんでもないことになっていたらしい。当時書かれた石肉さんの「さわいみゆうのこえのつや」の記事を読んでも、その盛り上がりぶりは伝わってくるし、オープニング主題歌の映像だけでも、相当いっちゃってます。
しかしこうして書いていると、亜美ママ(筒井真理子)とクンツァイト(窪寺昭)と、ついでに言えばアバレイエロー(いとうあいこ)が入り乱れる愛憎のメロドラマって、なかなかの人選だ。ちょっと観てみたい、と思っても、DVDも出ていないし、残念である。

左から、<風見鶏>こと子爵の古賀逸郎(窪寺昭)、<メデューサ>こと前川綾子(筒井真理子)、<野良猫>こと前川路子(いとうあいこ)。風見鶏だのメデューサだの野良猫だのっていうのは、ぜんぶ筒井真理子が劇中でつけたあだ名だそうだ。で、じゃあ残る一人は誰だ、ということだが、これは筒井真理子のお屋敷のお抱え運転手の杉山仙吉(福士誠治)である。

ただの運転手なんだが、なかなかどうして、オープニングの配役リストでは、ちゃっかり窪寺君の前に出いるくらい重要な登場人物である。しかも、亜美ママに命令されてヒロインを手込めにしようとしたり(実はヒロインに惚れちゃっているので出来ないが)亜美ママにピストルで腹を撃たれても、脱兎のごとくその場から逃げ出したりと、八面六臂の大活躍である。

 

まあ何だかんだ言って、このお抱え運転手、ヒロインの新子(さくら)に惚れてはいるが、身分の違いもわきまえていて、ずっと影のようによりそってヒロインを守っていこうという、基本的には心優しい青年である……。
さて『貞操問答』は昭和8年(1933年)の物語であったが、それからおよそ半世紀後、彼は、やはり同じように「心優しくヒロインを見守る役」で青森に転生していた。

斉藤悟志、後に筆談ホステスとして銀座で有名になる斉藤里恵の兄である。
と、以上は、お誕生日を迎えられた窪寺君から、『筆談ホステス』で北川さんのお兄さん役を演じられた福士誠治さんへと話題をつないで、前回に引き続き『筆談ホステス』本編レビューを書こうという、いわばイントロダクションだったのである。が、ここからが本題というところで、すでになかば力尽きている私であった。

2. 淡々とあらすじを


読書界の例で言うと、「方法序説」「研究序説」「批判序説」というタイトルの本を書いておきながら、結局「序説」に対応する「本論」が出版されないことって多いし、最初から出すつもりもなさそうな書き手もざらにいる。「序説」というのは、何かのレトリックなんでしょうか。
私もそういう含みで、前回の記事のタイトルは「筆談ホステス序説の巻」にした。もう本編はいいか、と思っていたんだけど、根が真面目なもんだから、やはり本編に突入した。Act.6レビューの続きとか、火野家の墓の問題とかは、いずれ必ずやるから待っててくれ。じゃ始めるね。

「筆談ホステス」こと斉藤里恵が女子高生だったころの話。友達とクラブへ踊りに行って、聴覚障害でよく喋れないことを、ゲスな男どもにからかわれた彼女は、つい『Dear Friends』でリナだったころのことを思い出してカッとなって大暴れ。店に迷惑をかけることになって、結局、友達からもひんしゅくを買ってしまう。その翌日、学校が終わって、いつもの仲間に、いつものように携帯の画面で「一緒に帰ろう」と話しかけた里恵は、冷たい拒絶にあって、黒板にひどいことを書かれてしまう。

傷心の里恵はつきあっている彼氏の元へ転がり込むが、彼氏は彼氏で、ここをチャンスと、優しい言葉でなぐさめながら、結局はおそいかかるんだね。で、里恵が本気で抵抗していることを知ると「ったくやってらんねえよ。お前みたいな口もきけない女、やる以外なにがあんだよ!」と捨てゼリフを吐いて里恵を追い出す。

友人も恋人も一気に失って、呆然と夜の街を歩く里恵は、通りかかった古着店「JackPot」(古着屋なんだろうな、看板に「BUY&SELL」って書いてあるから)の店員に呼び止められる。ショーウインドウの自分の姿に見入っていたところを勘違いされたのだ「どうぞ、中でご覧下さい」。店員は、里恵の耳が聴こえないことにも気づかず、ウインドウに飾ってあった服を里恵に押し付けて、別の客の相手をしている。
今日一日のことが再び思い出されて、いたたまれなくなった里恵は店を飛び出すが、うっかり、さっき押し付けられた服を手にしたままだったので、万引きと間違えられてしまう。もう踏んだり蹴ったりだ。

店員はさっそく警察に通報する。でも幸い、店長の小島史生(井上順)が、里恵が聴覚障害であることと、なにかワケあり風であることを察知して、やってきたお巡りさんを返す「どうも申し訳ありません。あの、じつはこちらの間違いでして、どうもわざわざ来ていただいてすいません」。この店長がいいね。井上順、友情出演だってさ。本来チョイ役で使ってはいけないようなクラスの俳優をワンポイントリリーフで使うとき、それなりの出演料が発生する場合には「特別出演」、申し訳ないんだけど予算がなくて、とかなんとか、本当にチョイ役なみのギャラで泣いてもらう場合に使う、せめてもの心づくしの肩書きが「友情出演」である。

まあとにかく、そんなこんながあって、もう学校をやめることにする里恵。ここは我々が長く慣れ親しんだ北川景子らしい泣きの芝居である。なんかちょっと、安心して鑑賞できますね。そして兄のナレーションが入る。

悟志のN「里恵のこんな姿を見たのは、初めてでした。この日以来、母は学校へ行けと言わなくなりました。里恵は高校を中退しました」

3. 投げやりなエンディング

 

このドラマ、冒頭で夜の銀座のリアルな光景が映し出され、本物の斉藤里恵さんの人気ホステスぶりが示される。そこへナレーションが流れる。

坂上みき「日本一の高級歓楽街と言われる銀座。立ち並ぶ高級クラブは400軒以上。そこで5,000人以上のホステスたちがしのぎを削っています。その銀座で、No.1ホステスの座にのぼり詰めた斉藤里恵さん。彼女は、耳が一切聴こえません。その障害を乗り越えるために始めた筆談が、多くの客の心をつかみ、癒していたのです……」

ふうん。ナレーターは坂上みきかあ、なんて思っていると、今度はドラマ本編が始まる。授業をサボって彼氏と遊び、放課後はクラスメートと夜の街で遊ぶ里恵。家族が心配して「晩ごはんどうするの?」とメールしてきても、うっとおしそうに携帯をちらっと見るだけで、返事をしようともしない。
一方、家では心配そうに里恵の帰りを待つお母さん(スーちゃん)と、仕事から帰ってきたばかりのお兄ちゃん。そこで場面は、里恵が発病したときの回想シーンに変わり、兄・斉藤悟志(福士誠治)のナレーションが入る。

悟志のN「妹の里恵の聴覚を奪ったのは、髄膜炎という病気だそうです。里恵がもうすぐ2歳になる夏の日のことでした。あの日を境に、ぼくたち家族の歯車は、少しずつずれて行ったのかもしれません……」

里恵の家族構成は両親とお兄ちゃんなんだけど、お兄ちゃんがほとんど父親代わりで、お父さんの影はものすごく薄い。番組が25分も過ぎて、里恵が耳の手術を受けるという場面で、ようやく登場するくらいだ。

この「お父さんの存在感の無さ」はどこかで経験済みだぞ、どこだっけ、実写版の月野うさぎの家か?と思っていたら、そうじゃなくて、『ブザー・ビート』の莉子の実家だった。第8話で実家に帰るシーンがあったけど、あそこの家も、お父さんの影が薄かったなあ。かわりにお母さん(手塚理美)が、出番は少ないわりに存在感があった。と思っていると手塚理美、この『筆談ホステス』でも、もう少し話が進んだところで、第二のママ的存在として登場するんだから油断がならない。
それはともかく、このドラマにおいて「お兄ちゃん」という存在は重要なんですね。結局、坂上みきは、冒頭とエンディングで、現実の銀座の現実の斉藤里恵さんを語るだけで、ドラマのナレーターは里恵のお兄ちゃんが担当している。北川さんみたいな強気の女の子には、このくらいマイルドで包容力があるお兄ちゃんの存在が必要なんだと思う。


今日はちょっと「北川景子主演ドラマにおける癒し系お兄ちゃんの効用」みたいな問題を、この『筆談ホステス』の斉藤悟志(福士誠治)と、『モップガール』における桃子の兄、長谷川圭吾(林泰文)を中心に考えたい、と思っていた。そのために前フリで、福士誠治の出演する『貞操問答』を長々とフィーチャーしたんですが、書いているうちに日曜日も昼近くなってしまった。仕方がないので例によって、考察に必要な二人の画像だけ置いて、今回はこれで終わります。みなさん各自で考えてください(なんだよ)。