実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第173回】白い椅子は別れの予感の巻


すまん。予告したAct.5のDVDレビューはまだ始まらない。もう私のことは狼少年、いや狼おじさんと呼んでくれ。
別に引き延ばしているつもりはないんだが、先日のM14さんのブログを読んで思うところがあった。スキーウェアの小松彩夏というレアな広告写真が紹介されていた回だ(2008年10月14日)。ファンは何もビキニばかりでなく、こういう着衣の魅力だって求めているはずなのに、昨今のアイドル写真集はどれも「脱がせりゃ喜ぶんでしょ」と言わんばかりのワンパターンぶり。これでいいのか、ニッポン!という硬派なメッセージだったが、いや内容はいいんだ(なら書くなよ)。
大判の写真を何枚か載せたことで、ご本人は冒頭で「思ったより写真がでかくて、携帯電話では見られないかもしれない」と心配されていた。しかし結局、携帯でも問題なく閲覧できたようだ。それにひきかえ、ウチは「文字だけでこのページよりでかい容量になって携帯で見られなくなるLeo16さん」なんて言われようである。こっちよ!さんも「某所に比べれば羽根のような軽さ」なんてコメントを書き込んでいたよ。
そこで、日ごろは携帯で苦労して読んでくださっている方々のことなんかツユほども気にかけない私が「そうか、それじゃ今回は、画像を何点か並べて文章は少なめの、サックリ楽しく見られるブログにしてやろうじゃないか」と思い立ったわけだ。ちょうどおあつらえ向きの、画像がらみのネタもあるし。そういうわけで、携帯をお持ちの方は、本日のブログをぜひ通勤途中などにお読みくだされ。
本日のお題は「Act.47におけるクラウンの椅子の問題」だ。まずはAct.45の冒頭より。美奈子が初めてクラウンに姿を見せる記念すべき回だ。戦士がついに集結!と思いきや、前世の使命に命をなげうつ覚悟の美奈子と、前世なんかより今を生きろと主張するレイのガチンコ対決があって、とうとうレイはクラウンを出ていってしまう。レイが去ったドアを見上げる亜美、まこと、美奈子、そしてルナ、というカットがこれだが、椅子の色に注目して欲しい。
手前の二つの椅子の色は、この画像ではちょっと見分けづらいかも知れないが、向かって右側、美奈子の横にある椅子はパープル。これがもともとレイのもので、左側の、亜美の前にあるのがうさぎ用のピンクの椅子である。亜美のは後ろにある青い椅子で、まことのは、背後に隠れてほとんど見えないが、グリーンというか、竹色っぽいカラー。
レイの椅子がなぜパープルかというと、全体的にパステル調で統一してあるので、真っ赤だとそれだけ妙に目立ってしまうからだと思う。かといって赤をパステルっぽくすると、うさぎのピンクと似たり寄ったりになる。それでマーズの胸のリボンの色である紫をソフトにしてパープル、ということではないかな。ただそれでも、やっぱりうさぎの椅子と混同しやすい。そういえばアニメのレイの長い黒髪は紫色混じりであった。
ということはさておき、問題は、人ルナの背後にある白い椅子。これが主人の来訪をずうっと待っていた、美奈子の指定席であることは言うまでもない。
さて次はちょっとエピソードを遡って、Act.13です。Act.12のラストで、セーラーVはマスクを外してセーラーヴィーナスとなり、プリンセスの名乗りをあげる(ついでに病弱なゾイサイトを一撃に倒す)。続いてAct.13の冒頭。正体を明かした以上、これからは行動を共にしてくれるかと期待する戦士たちに、ヴィーナスはなぜか「私には、プリンセスとしてどうしてもやらなきゃいけないことがあるの。私は大丈夫だから、みんなは敵から地球を守って」と、これからも単独行動を続けることを宣言する。
という回想シーンがあって、場面はクラウンに戻る。四人は、プリンセスの言うことなんだから、何か理由があるのだろう。私たちは命じられた通り、しっかり妖魔から地球を守ろう、とうなずきあう。するとカメラはスーッと、誰も座っていない白い椅子の方に振られる。それはこの椅子が、美奈子の座るべき場所であることをはっきりと物語っている。ではなぜ白なのか。Act.25のラストで目ざめる「本当の」プリンセスは純白のドレスを着ている。つまり、白はプリンセスの象徴なのかも知れない。常に美奈子と行動を共にするアルテミスが白い猫なのも、そのことと関係しているのかもね。ひとまずそんなふうに考えておこう。ともかく、美奈子の来訪を待ち続けている椅子は、Act.2で初めてクラウンの秘密の部屋が紹介されたときから、ついに美奈子がクラウンにやって来るAct.45にいたるまで、ずっと白なのだ。
続いてAct.46。ジュピターは「たとえ命を捨てても、前世の使命をはたす」と、M妖魔と自爆心中を試みる。その瞬間、古幡元基は、まことのために買ったお守りを落として壊してしまい、誰もいないクラウンに一人残っていたうさぎの、胸のペンダントが光を放つ「まこちゃん!」。この時も、美奈子の椅子は白いままですね。しかし並び順は、ほとんど回ごとに変わっている。
プリンセスとして覚醒したうさぎの力が何らかの影響を及ぼしたのか、古幡の祈りが通じたのか、結局まことは危うく一命をとりとめる。付き添う美奈子は、そんな無茶をやったまことに自分自身を見いだして動揺し、さらに、アルテミスに連れられてレイの神社に行く。そこには、妖魔にエナジーを奪われた人々の子どもたちが、「C'est la vie」を歌って励まし合う姿があった。美奈子の心に変化が起こり、歌手・愛野美奈子として今を生きようという意志が芽生える。一方、黒木ミオに連れられてダーク・キングダムの地場衛に会うことになったレイは、今を生きるためにこそ、前世に決着をつけようとしている衛の態度に強く心を打たれる。

そしてAct.47。手術を受ける決心をした美奈子はクラウンを訪れ、ここでシークレットライブをやって、うさぎを驚かせてやろう、と提案する。楽しげに同意する三人。この時ようやく美奈子の椅子は、純白からオレンジのものに替わっている。が、ほんのわずか腰かけただけで、美奈子はすぐに立ち上がり、笑顔と共にその場を去る。見送りながら不吉な胸騒ぎを憶えたレイは、重苦しい表情でオレンジの椅子を見やる。そして手術の結果がどうなったのかは、みなさんご存じの通りだ。
すでに美奈子が本当のプリンセスでないことはとっくに明らかなのに、なぜ彼女の椅子はずっと白いままだったのだろう。そして最初にここにやって来たAct.45ではなく、なぜAct.47になって、突然この椅子は、ヴィーナスの戦士の色であるオレンジに変わったのか。
注意しておきたいのは、このAct.47のAパートが、実写版としては珍しく「その前日」という字幕つきで始まる点だ。Act.47は「美奈子が行ってしまった日」の物語であり、美奈子がクラウンを訪れ、オレンジの椅子に座るシーンは、ドラマの時制としては前日の出来事として回想されるのみである。したがって物語のなかの「いま・現在」において、美奈子がオレンジの椅子に腰をおろすシーンは、実は一度も出てこない。
そしてAct.47のCパート。妖魔との戦いを終え、マーズが泣き崩れ、みんなはクラウンに戻って「行ってしまった」美奈子からの手紙を受け取る。「さよなら〜sweet days」のメロディと共に、幻に終わった「美奈子ちゃんいってらっしゃいパーティー」のイメージが流れる。美奈子はカラオケステージで歌い終えた後、みんなが座っているテーブルの背後をぐるりと回って、仲間ひとりひとりに別れの挨拶を告げる。もう旅立ちの時だから、決して自分の席には座らない。そして我々は、彼女の椅子が前回までずっと純白だった本当の理由を知る。それはプリンセスのドレスの白なんかではなく、やがて来る別れの日のためにあらかじめ用意されていた、言わば「死に装束」の白だったのだ。だからこの椅子がヴィーナスのコスチュームカラーであるオレンジにかわったとき、彼女はそれと入れ替えに、いままでそこにあった「別れの白」をドレスとして身にまとい、物語から足ばやに退場しなければならなかった。オレンジの椅子にゆっくりと落ち着くことは、初めから許されない運命だったのだ、と。
ラストシーン。五つのカラーは揃った。でもオレンジの戦士はそこにいない。

このあと、次第に照明が暗くなり、テーブルの上に置かれた美奈子のCDにスポットライトが当たって、Act.47は終わる。さよなら美奈子、セーラーヴィーナス。

 

うっうっ。「通勤中にでも携帯で読んでね」なんて誘っておいて、うっかり実行した方々を電車のなかで泣かせてしまおうという魂胆だったんだが、なんだか書きながら自分が涙ぐんでしまって、バカだ。それにやっぱり文章量がけっこう多い。本当に携帯でも読めるのかなこれ。実験結果のご報告をお待ちしております。