実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第146回】Special Actの巻(14)

1. 小林靖子脚本の新作、ただいま公開中


『劇場版 仮面ライダー電王&キバ クライマックス刑事』(2008年、脚本: 小林靖子/監督: 金田治/撮影:倉田幸治)、私は親子ペアチケットを持っていたのだけれど、「これは私が連れて行くから」と妻に奪われた。けっこう佐藤健が好きなのだ。来週あたり行くそうだ。
ご覧になっている方はご存じの通り、テレビシリーズ「仮面ライダーキバ」は、バブル景気も華やかな1986年と現在すなわち2008年という両方を舞台に、親子二代にわたるライダーの戦いを並行して描いている。ここに「時の列車」デンライナーに乗る仮面ライダー電王が絡まるとなれば、電王がその二つの時代を往ったり来たりして、最後には『キバ』の紅(くれない)親子を引き合わせる、なんて展開も予想されるわけだ。そりゃ面白そうだ。そう思われた方も多かったことと思います。
でも、すでにご覧になった方の感想ブログを、ネタバレしない程度にちらちら斜め読みした範囲では、そういう話でもないらしいですね。どっちかっていうと、電王の1エピソードにキバがゲスト出演したようなニュアンスらしい。まあそれぞれ違う脚本家だから、しょうがないよな。小林先生も、現在進行中の『キバ』の世界観を壊さないように気を遣っただろうし。
いずれにせよ、私はこれを劇場に観に行くことについては初めから消極的であったので、妻にはあっさりチケットを譲った。だって元々Vシネの予定で撮られたものが急に劇場公開となったのだ。つまり『Special Act』を劇場にかけるようなものである。このブログは『Special Act』についてはそれなりに好意的だが、劇場の大スクリーンでも鑑賞に耐える作品かどうかと言うと、話がちょっと違ってくる。
いや、別にビデオ作品をサベツしているわけではない。というか、そもそも最近の「映画」はだいたいがキネコ(ビデオで撮影した映像を上映用にフィルムに変換した作品)である。はじめからフィルム撮りの作品なんて、そんなに多くない。コスト的にはその方がリーズナブルで、近年、邦画の制作本数が上がった一因も、たぶんそこにある。近い将来、山田洋次の時代劇以外のすべての「日本映画」がビデオ撮りになる日が来るかもね。
ただ同じビデオでも、劇場公開してもいい作品とそうではない作品の違いはあると思う。小松彩夏で言うと『ドリフト』『ドリフト2』は劇場でやってはいかんだろう。私は観てもいないのにそう断言する(笑)。『マスター・オブ・サンダー』はぎりぎりライン。千葉真一VS倉田保昭は大スクリーンで見たいが、ヒンズーシスターズはカンベンして欲しい。『恋文日和』も判断が難しい作品で、これ、個々のエピソードは劇場作品として観てもいいが、つなぎの部分にあたる便箋屋のエピソード、これの画面がいかにもビデオビデオしていて、ちょっと劇場で観るに耐えないのではないか、と思う。
ただこういう「劇場でやってもいいビデオ」と「家のモニタで観るべきビデオ」の区別の基準がどこにあるかというと、よく分からない。たぶん映画評論家と呼ばれる人々にも分からないんじゃないか。でも田崎竜太のように、実際に両方撮っている人は、おそらく肌で分かっているね。それから長石多可男のようにフィルム撮り時代から生きている人も(なんか失礼な言い方だ。サンショウウオじゃないんだから)。たとえば『仮面ライダー THE FIRST』『仮面ライダー THE NEXT』は「本来ビデオ企画なんだけど、劇場公開作品としても通用するように」とか、そういうことを考えて撮っているはずだ。で、金田治監督による今回の電王&キバは、なんとなーく「劇場っぽくない」感じがするのだ。ただの感じだが。そしてこの『Special Act』も、やはり劇場で観るには不向きな感じです。

2. やや不満の多い中盤の展開


ところで、実は私、この週末にちょっと熱が出てしまいまして、金曜日に早めに帰宅してフトンにもぐり込み、土曜日もずう〜っと寝たり醒めたりだったんですね。それで、目がさめるたびに、枕元のノートパソコンを引き寄せてパタパタ叩いては、また寝るもんだから、一向に調子が出ない。キバの話を簡単にするつもりが、ビデオがどうこうなんて方向に、話が迷走しちゃいました。さらに加えて、もうひとつ困った話がある。

(1)「プロローグ・あれから4年」
(2)「うさぎと衛の喧嘩」
(3)「黒木ミオの降臨」
(4)「囚われの二人」
(5)「戦士再結集」
(6)「最後の変身〜決戦」
(7)「エピローグ・結婚式」

『Special Act』のプロットをざっくりまとめると、だいたいこんな感じだろう。で、このブログは、延々とレビューをやりながら、ようやく(1)(2)(3)をクリアして、(4)に入ったわけだ。物語的には、ようやく前半の定番的な手続きを終えて、お話が盛り上がってくるはずの部分である。ところが実際には、どうもこの(4)と、それから次の(5)が弱い。『Special Act』というお話のアキレス腱はこの部分である。それで、体調不良を押しても頑張って書かなくては、と奮起する気に、どうしてもなれないのだ。
厳密に言えば(4)つまり「うさぎと衛が囚われの身となり、衛がミオに結婚を迫られる」話と、(5)「敵の妨害に会いながらも、まこと・亜美・美奈子が再結集する」過程は、交互に並列的に描かれる。

(4)アイアイモールでうさぎと衛が囚われの身となる
           ↓
(5)知らせを聞いたまこと・亜美・美奈子が行動開始
           ↓
(4)ロックハート城、衛は黒木ミオに結婚を迫られる
           ↓
(5)いらだつまことの前にクイーン・セレニティ登場
           ↓
(4)花婿を迎えに来た四天王の隙をついてうさぎ脱出
           ↓
(5)それぞれ敵に襲われながらも集結する元戦士たち

パチモン四天王がうさぎと衛を拉致する。それを目の当たりにしたルナがまこと・亜美・美奈子に連絡して、元戦士たちが動き出す。ここまではいいよね。次は、衛がミオに結婚を迫られる場面。これについては前回、これだとミオがただの性悪女になってしまうので、うさぎに対するその屈折した嫉妬心をもう少し丁寧に描いてほしかった、と述べた。まあ個人的な感想にもとづく勝手な注文だが、だいたいこの辺から、少しずつ不満が募り出すのも事実である。たとえば次の、オリの中でのうさぎと衛の会話がそうだ。
囚われの身となっても、一応ケンカ中なので、同じオリの中で距離をとって背を向け合って座る二人。うさぎが手錠をがちゃがちゃさせながら、ちらりと様子をうかがえば、衛は苦悩の表情を浮かべた様子で、押し黙っている。
(衛、四天王がまた敵になっちゃって、つらいよね)とその心中を察して、少し衛に気持が寄り添ううさぎだが、衛はぽつりとつぶやく。

 衛 「同じだな…」
うさぎ「え?」
 衛 「女って、どんな風になっても、結婚式には色々やりたがるんだと思ってさ」
うさぎ(立ち上がり)「いっしょにしないでよ。何よ、こんなときまでいやみ言わなくたっていいでしょう」
 衛 「べつにいやみじゃあ」
うさぎ「いいよ。私とはどうせ結婚しないんだし。ミオちゃんと結婚しちゃえばいいよ」
 衛 (あきれたようにため息)
うさぎ「あ〜あ、前なら変身して、こんなとこすぐに出られたのに……みんなとも一緒だったし、衛だって、もうちょっと優しかったよ」
 衛 「おい、怒ると体力無駄にするだけだぞ」
うさぎ「ほっといてよ(と座り込んだ途端にお腹がグー)なによ!」
 衛 「何も言ってないだろ。ほんっとお前、子供だな」
うさぎ「どうせそうです(お腹がグー)あっ」

この会話はこれでいいのかなあ。次に話がここに戻ってくるのは、ジェダイトとネフライトが、衛をミオの花婿として迎えに来る朝だ。うさぎは(だめだよ。ケンカなんかしている場合じゃない。なんとかして……)と、とっさにジェダイトに体当たりをかけて「逃げて!」と叫ぶ。しかし衛も同じ考えで、ネフライトを押さえ込んでうさぎに「逃げろ!」。
「ちょっと、逃げてよ」「バカ、お前が逃げろよ」とあいかわらず言い争いになりかかるが、衛の「早くしろ、一人逃げればなんとかなる」という言葉に背中を押されて、うさぎはひとまず脱出する。
このとき衛は信頼のあかしに、突っ返された婚約指輪をうさぎの服のポケットに落としておく。脱出してからそれに気づいたうさぎは、指輪を手に取り、それを衛から渡されたときの嬉しさを思い出す。そういえば、あのときの衛もむっつりした表情のままだった。いつもひねくれ者で、素直に自分の感情を表そうとしない。というか、そういうことが下手なヤツなのだ。それは分かっていて、それでも好きになったはずなのに「昔を忘れてたのは、私の方かも」。
と考えると、お話として筋は通ってはいる。しかしこれ、うさぎはそれなりに、結婚式が近づいてはしゃぎすぎて、ちょっとわがままでもあった自分を反省しているが、衛は一向にそういう様子がない。で、囚われの身になっても「女って、どんな風になっても、結婚式には色々やりたがるんだと思ってさ」なんて、相変わらずイヤミなことを言う。いや本人は否定しているが、うさぎの言うとおり、これはイヤミにしか聞こえない。
うさぎが「昔を忘れてたのは、私の方かも」と反省したように、衛も、うさぎに対して素直に優しくなれない自分自身を反省しなくてはいけない。それである程度、ちゃんとそういう気持をうさぎに告白しなくちゃいけないね。とにかく今どきの若いモンは、相手に自分を受けいれてもらうことばかり考えているが、結婚して一緒になるということは、自分が折れて、相手のために少しだけ変わることなのだ。
何か説教しているみたいだが、そういう意味で、この場面でせっかく衛とうさぎは牢屋に二人きりで閉じこめられたのだから、ケンカばかりでなく、もうちょっと、心を通い合わせるきっかけとなるような言葉のやりとりをして欲しかったのである。ここにそういう、互いの絆を確かめ合う描写が入れば、この後の二人の描写も、もっとすんなり受けいれられたように思うのだ。つまり、ここでしっかり気持が結ばれていたからこそ、うさぎは衛を置き去りに、ひとまず自分だけ逃げ出す勇気をもてたのだし、衛は衛で、ミオの催眠術にかかっても、うさぎの声ですぐに元に戻れたのである。
これに対して、いや、いくらケンカしていても、いざとなれば二人の心は結ばれているということで、これはこれでいいのだ、という意見があるかも知れない。まあそれも分からなくもない。でも話の発端として「結婚やめる」を出したのだから、その危機がどんなふうに回避されて、元のサヤに収まるかを、うさぎと衛、二人の心境の変化、行き違った感情の結び直しを通して描かなきゃいけないと思う。で、うさぎの方はそこそこ描かれているのだが、衛の心理描写は、明らかに足りないと思う。

3. だめだ、力尽きた


それから、次にまことがクイーン・セレニティと出会うシーンがあって、今度こそ、このセレニティが何であるのか、ルナの口から説明があると思ったら、ぜんぜんなかったとか、いったい亜美や美奈子は、結局どうやって妖魔たちを煙に巻いて戦いの場に再結集できたのか、とか、アルテミスは全然出てこないじゃないかとか、このあたり、いろいろ疑問が集中するので、今回そのへんの問題をぜんぶまとめておこうと思ったのだが、すみません。今日はちょっと力尽きた。また来週。