実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第96回】DVD第1巻:Act.3の巻(その3)


七夕か。ipodで河辺千恵子の「☆に願いを」を聴きながら帰宅すると、家族の寝静まったダイニングのテーブルに、子供が幼稚園から持ち帰ってきた笹の枝と短冊が「お父さんが早く帰ってきますように」。明日は休みだから遊ぼうな。でもその前にブログの更新だ。

1. 寿がきや問題に関する続報


 さて【第93回】の最後におまけとして書いた「寿がきや」に動きがあったので、たぶん全国の皆様にはあまり関心がないと思うが書いておく。しかしこの会社は「寿がきや」なのか「すがきや」なのか「スガキヤ」なのかそれとも「Sugakiya」なのか。店舗部門とか販売部門とか、それぞれ名称が違うらしいのだがよく分からない。
 ラーメンフォークとにかくあの面妖なフォーク付きスプーンは「ラーメンフォーク」というのが正式名称だそうだ。ちなみにアニメのセーラーマーキュリーがつけている青いゴーグルは「マーキュリーゴーグル」という。いやそれは関係なくて、そのラーメンフォークがほとんど30年ぶりにデザインを一新するそうだ。今までの3本歯(写真右)より歯を1本増やして4本、しかも従来よりちょっと長め(写真左)。そしてこの、より麺を食べやすいようにバージョンアップしたラーメンフォークの導入を機に「スガキヤはチェーン店全体で年間2500万膳使っている割り箸を、2008年3月までに全廃する考え」というのだからスゴイ。ていうか、私が七海さんに言ったことは、やはり間違っていました。あれはやはり、箸なしで麺を食べるためのものだったんですよカシオペアさん。そしてそのココロは「割り箸の消費量を減らして環境に優しい」などそれらしいことも言ってはいるが、ここは名古屋だ。やはりメインテーマは経費削減であろう。実際、中日新聞の記事には、割り箸を全廃にするとどれだけ経費が減るかという数字が出ていたが、ちょっと記事の切り抜きがどこかへ行ってしまったので今は分かりません。
 まあともかく、寿がきやラーメンからは割り箸がリストラされるそうである。私も新しいフォークでちゃんと食べられるように訓練しておかないとな。

2. Act.2補遺:揺れるまなざし


 原作漫画第2話で初めて登場したときの亜美は、いかにも優等生っぽい感じでメガネをかけて問題集か何かを読んでいる(ぜんぜん関係ないが、それを見たうさぎは「ミス・レインかとおもっちゃった」などと楽屋ネタをつぶやいている)。アニメの亜美はメガネをかけていなかったが、マーキュリーに変身して着用する青いゴーグルは、原作よりもアニメの方が印象に残っている。原理はともかく、これで敵を見ると、戦力を分析して、内側にカシャカシャとドイツ語の文字が浮かぶ。私にはまず読めそうもないけれど、IQ300で医学部志望の亜美ちゃんならOKなんでしょうね。そうやって、時には敵の弱点なんかも見抜くという、チームの頭脳、作戦参謀のマーキュリーにふさわしいアイテムである。
 というように、漫画およびアニメにおいて、亜美のメガネは彼女の「知性」を象徴している。ほかにも意味があるのかも知れないが、私は「メガネっ娘萌え」ではないので、そのくらいしか分からない。『ウルトラマンメビウス』のコノミちゃんも、メガネなしの方が可愛いと思う。すみません。って誰にあやまってるんだ。
 一方、浜千咲の亜美がかけているメガネは、知性ではなく、彼女の内向的な性格を象徴している。実写版の亜美は、人と正面から見つめ合うことの出来ない子で、メガネはそんな彼女の瞳を、他者の視線から防御するアイテムだ。Act.2の前半は、そのことを克明に描き出すことだけに費やされているようにも思える。冒頭、中間考査の成績発表を見ていた亜美は、クラスメートに囲まれ、目のやり場に困ったようにうつむく。学校からの帰り道で、ルナを拾って、うさぎから声をかけられたときも、亜美はやはりうさぎの視線を受け止められず、そそくさと逃げ出そうとする。その次のアルトゼミナールのシーンでも、呼び止めた先生が近づいてくると、目を合わせようとしない。大好きなママと、成績表やホワイトボードだけを通じて「対話」しながら成長してきた亜美は、至近距離で目と目を交わすコミュニケーションに、まだ慣れていない。
 Act.2は、そういう亜美の心を、うさぎが文字どおり「のぞき込んで」開いていく「視線の物語」だった。試験結果の発表の場でも、教室でも、いつでもぽつんと浮いている亜美を遠くから見つめていたうさぎは、学校帰り、ルナに語りかけている亜美を見つけて、声をかけてみる「あのさあ、水野さんて、ぬいぐるみに敬語つかうんだ」。亜美が「え、あれは…知らない子だったから」と答えると、「知らない…子?あはっ、水野さんて面白いね」と言いながら亜美の前に回り込む。そうやって、亜美の正面から視線と笑顔を投げかけるのである。
 亜美はとまどい、思わず目をそらして歩き出すが、うさぎはずっと亜美にくっついて、何度も亜美の前に回っては、真っ直ぐに顔をのぞき込んであれこれ話しかける。初めはどうしていいか分からなかった亜美も、次第にその屈託のなさにつられて、少しずつうさぎの方を向くようになる。最後に愛野美奈子の曲のMDを渡される場面では、亜美はまだきょときょとしながらも、うさぎの視線を正面から受け止めて「それじゃ」と去っていく。他人の視線をふせいでいた亜美のメガネが、ただのガラスになって、まなざしを通して心が触れあう。だからこそAct.5で、亜美のメガネに「ほとんど度が入っていない」ことに最初に気づくのは、うさぎでなければならない。
 このAct.2前半の視線のドラマは、演じている沢井美優も、浜千咲もとても素晴らしいが、田崎監督の演出が、また効果的ですね。直後に、アルトゼミナールのシーンをもって来るのである。ロビーに入って来た亜美を先生がみつけて「水野さん、この間の模試、また最高得点よ」と嬉しそうに声をかける。でも亜美は軽くお辞儀をしただけで、やはりうつむく。すると先生は、亜美を追って一緒にエスカレーターに乗り、亜美の前に回り込み、振り返ってその顔をのぞき込むのである。この展開が、直前のうさぎのシーンの繰り返しに見えるのは、監督の計算だろう。先生の振るまいが、うさぎとまったく同じなのだ。
 春木みさよの先生も、いつも成績優秀なのに沈んだ表情の亜美がちょっとは気がかりで、その心に少しでも触れたいと思ったから、前に立って表情をのぞき込んだのだろう。だから亜美も、ここではほんのわずか、先生に向かって本心を洩らす。「私、勉強くらいしか取り柄ないですから」。でも先生は無意識のうちに、ひとつ失敗をした。昇りのエスカレーターで、前に立って亜美の方を向いてしまったのだ。エスカレーターだから二人は動かない。止まったままで、上の段から亜美を見下ろす格好になった。亜美にとってそれは、いつもメガネ越しに見上げている「教壇の上の先生」の立ち位置であり、自分を「優等生」という記号でしか見てくれない教師の視線だ。だからそれ以上、春木みさよに心を開くことはできなかった。
 でも「月野さん」は違った。ほとんど無視するように歩いていたのに、まるでじゃれるみたいにずっとついて歩いてきて、何度も何度も前に回って、同じ高さの目線で正面から笑いかけてきたのである。その温かい印象の余韻をかみしめるように、亜美はそっとカバンの中に手をいれて、うさぎから借りたピンクのMDを握りしめる。

3. うさぎ・亜美・レイ(ファースト・コンタクト)


 というわけでようやく本題のAct.3だ。冒頭、クラウンで亜美は古幡に、年間パスポートを見せながら「あの、こんなので本当にいいんですか」と問いかける。言葉こそ控えめだが、そのまなざしは真っ直ぐ元基をとらえている(ちょっとブリッ子ふうだが)。続くクイズのときも、大きな瞳で正面を見つめている(ちょっと不敵な輝きがあるが)。そして学校の昼休みに、いつものように屋上に行こうとしたところを、うさぎに呼び止められたときも、きちんとうさぎを見つめ返す。ここまで、自分から視線を落とす演技はほとんどない。亜美はやっぱり変わったんだ。と思わせておいて、背後のなるやカナミやモモコが視野に入ると、Act.2前半の、あのおどおどした伏し目がちの亜美に戻って「私、ちょっと予習があるから」と出て行ってしまうあたりの呼吸、さすが浜千咲である。
 でも学校の帰り道では、なるちゃんも行ってしまって、うさぎと二人きりになれたので、ここでは、亜美はひとつひとつのセリフを、うさぎの目を見ながら言っている。

うさぎ「なんでいっしょにお弁当食べないの?せっかく仲間になったのに」
亜 美「うん…でも、私たちが戦士ってことは内緒だし、それにほら、急に仲良くなったら、やっぱり変だよ」
うさぎ「そうかなあ」
亜 美「そんなことより、行方不明事件のことなんだけど、あれ、もしかして妖魔かも」
うさぎ「えっ…そうか、あり得るよね。ようし、ルナがいない間に、私たちだけでパパ〜っと妖魔をやっつけちゃおうか。なーんかルナってば私のこと…」
亜 美「あ、危ない!」
うさぎ「ごめんなさい!」

 「ルナがいない間に、私たちだけで妖魔をやっつけちゃおう」というアイデアが浮かんだとたん、うさぎは目を輝かせて、それまで並んで歩いていた亜美の前に回り込み、亜美に語りかけながら、つまり進行方向に背を向けて、歩き出す。すると向こうからレイがやって来る。物思いに耽っているようにみえるのは、ここ数日の不吉な予兆と謎の少女失踪事件のことを、あれこれ考えているせいであろう。だからこちらもあまり前を見ていない。お互いに相手のことが目に入っていなくて、それで二人は、すれ違いざまにぶつかり合ってしまうわけだ。
 この時うさぎは、Act.2で初めて亜美と話した時と同じ「相手の前へ回り込む」しぐさを繰り返している。でも今回の亜美は、以前のように視線をそらそうとはせず、しっかりうさぎの方に顔を向けているのだから、本当はうさぎがわざわざ亜美の前に回って顔をのぞき込む必要はない。うさぎと亜美が、互いの方を向いてしゃべりながら歩いていて、レイはレイであれこれ考えながら反対側から歩いて来て、双方とも前方不注意だったので衝突してしまう、ということでもいいのだ。
 ただそうすると、亜美はどうしてレイの姿を見逃したのか、という点がちょっと不自然になる。亜美は常に周囲を観察し、状況を冷静に把握しているタイプの子である。それにこの道はそんなに広くもないし、ほかに人影もない。普通だったら、うさぎの話に耳を傾けながらも、向こう側からに近づいてくるレイの姿に気づいて、うさぎに「危ない」と言っていたはずだからね。そのために「うさぎが亜美の前に回り込む」動作は必要だった。うさぎが正面に立つことによって、亜美の視線はさえぎられ、その背後からやって来るレイに気づけなかった、そしてうさぎは完全にレイの方向に背を向けていたので、もちろん気づかなかった。それでごっつんこ、ということだ。
 そういう意味で、ここでうさぎが亜美の前に回り込む動作には、Act.2とはまた異なる、画面構成上の必然性がある。しかし、ただの当て推量だが、このうさぎの動作は、沢井美優の出したアイデアなんじゃないか、という気がしてならない。つまり台本や、あるいは演出家の当初のプランでは、このシーンは「亜美と肩を並べて歩きながらおしゃべりに熱中していたうさぎが、うっかりレイにぶつかる」というものだった。そこへ沢井美優が、Act.2の時のように「話しているうちに亜美の前に回り込むうさぎ」という動作を思いついて、高丸監督もそれをそのまま採用したのではないかなあ、と思えるのである。でも根拠は特にないです。

4. 私の名前は沢井美優、職業は女優です


 私は前回の日記で、沢井美優という人は、理屈ではなく身体で意味をつかむタイプの女優さんで、最初にきちんと軌道に乗せてあげれば、あとは勝手に進化していく、というようなことを書いた。たとえばAct.2で、うさぎは「歩いて話しかけながら亜美の前に回り込む」という動作をした。さきほど書いたように、それはおそらく、他人の視線を受け止められない亜美という子を描くための、田崎監督の演出であった。一方、沢井美優は、そういう芝居を通して、うさぎのキャラクターをひとつ掴んだ。
 うさぎはなぜ亜美の前に回り込んだのか?亜美がなかなかこちらを見てくれないので、無理やりにでも視線と視線を合わせるためか?そうではない。うさぎは、相手が嫌がっていることを無理強いするような子じゃない。だからこそ戦士になりたくない亜美の気持ちを守ろうとしたのだ。では、なぜうさぎはこの時、亜美の顔をのぞき込んだのか。
 Act.2のうさぎは「水野さんて、ぬいぐるみに敬語つかうんだ」と問いかけて、それに亜美が「あれは知らない子だったから」と答えたのを聞いて「あはっ、水野さんて面白いね」と、すごく楽しそうな、打ち解けた笑顔をみせる。その時、よそよそしい亜美の態度にも構わず、亜美の正面に回り込む。つまり、月野うさぎは、何かに興味をもつと、周囲のことなんか目に入らずに、そのことにまっすぐ夢中になってしまう子なのだ。沢井美優はこの動作の意味をそのように捉えた。それも台本を読んで頭で理解したのではなく、監督の注文どおり「亜美の前に回り込む」芝居をしてみて、うさぎのそういうキャラクターを、身体で把握したのだ。
 ついでに書いておけば、これは原作やアニメとは一線を画する解釈だ。原作でもアニメ版でも、このシーンのうさぎの頭の中には「ここで水野さんと友だちになっておけば、これからのテストでヤマを教えてもらえるかも」という計算が少しばかりはたらいている。半ば冗談であるにせよ、普段は何かとそういうコソクなことを思いつくヤツ、というのが従来のうさぎのキャラクターで、その意味では『ドラえもん』ののび太や『ちびまる子ちゃん』と同類である。でも沢井美優の月野うさぎに、そういう打算的な性格はまったく見られない。だから実写版のうさぎが一番いいのだ。
 ということはともかく、沢井美優は、亜美と話しながら、思わず亜美の正面に回り込むうさぎの仕草を、そのストレートで純真な性格のあらわれとして捉えた。そしてAct.3である。
 冒頭のクイズ大会で、うさぎは完敗し、これまでけっこう頑張ってきたつもりだったのに、ルナに「もう、うさぎちゃんたらぜんぜん私の話聞いていないんだから」と言われてしまう。けっこう悔しい。そう思っていたら、ルナのいない間に、自分たちだけで妖魔退治の手柄をたてるチャンスが転がりこんできた。ここで戦士としてきちんとしたところを見せつければ、私をバカにしているルナも、見直してくれるかもね。
 そういう「いいこと思いついた!」という、うさぎの弾む心を表現するのが、この「亜美の前に回り込む」動作なのだ。沢井美優はAct.2で、この動きをそのように理解し、続くAct.3でそれを実践してみたのだ。私が前回の日記で、沢井美優は「最初にきちんと軌道に乗せてあげれば、あとはぐんぐん進化していく」女優だと書いたのは、そういう意味です。そして高丸監督は、そういうアイデアをけっこう取り入れてくれる人だった。
 という、以上は例によって私の臆断にすぎないわけだが、やはり高丸監督って、キャラクターの仕草についてはわりと俳優の自由に任せる人に思える。たとえばこのAct.3、Bパートの始めの方、亜美の呼び出しで結婚式場「万寿閣」にやってきたうさぎの動作をご覧ください。柱の影で中の様子をうかがう亜美、そこへうさぎが駆けつけ「亜美ちゃん、次に狙われる子って?」と言った後、二人で場所を移動する、そのときの沢井美優の動作、これはもう体育会系女子、バスケ部出身の沢井美優の動きである。
 高丸監督の演出作法というのは、基本的に放任主義なんだろう。でもそのお陰で、高丸組の回では、みんな巧拙を越えて、自分で自分の演技を組み立てる楽しさを学んだのだろうと、私は思っている。


 というわけで、例によって明け方になってきたのでこのへんで。ゲキレンジャーと電王とプリキュアの前にちょっとだけ寝ます。しかし結局、今回はほとんどワンシーンしか扱えなかったな。
 相変わらずの泣き言ですが、ここのところ連日、東海道新幹線を往ったり来たりしていて、激務のみなさまに較べれば大したことはないけどけっこう疲れるね。新型700系に乗ってみたいのだが、何しろ私の行き先は三島とか浜松とか、新幹線にしては近距離ばっかりなので、こだまか、せいぜいひかり。N700系については通り過ぎるのを一度見ただけである。この新車両、ぽんたさんが「私の都合で言わせてもらうとすべてヘンな時間ばかり走っている!」と叫んでいるのには大笑いしましたぞ。そして万丈さんは移動費用の削減のため、新幹線はほとんど利用されないそうだ。努力家である。