実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第97回】DVD第1巻:Act.3の巻(その4)

1. [PG-12指定]小学校のお友だちは、保護者の方と一緒に読んでね


 田崎竜太が『仮面ライダー電王』に還ってきた。メイン監督だったはずが、パイロット2話を手がけた後はどこへ行っちゃったかと思ったら、黄川田将也主演の劇場公開作品『仮面ライダー THE NEXT』の監督をやっていた。その撮影が終わったのだ。これからは舞原監督ともども『電王』にどんどん参加して欲しい。そして、しつこいようだが、ゲストでいいから沢井美優を出してやってくれ。
 ご存知とは思うが、『仮面ライダー THE NEXT』は、2005年に公開された『仮面ライダー THE FIRST』の続編で、テレビの平成ライダーシリーズとは別の、本郷猛と一文字隼人が登場する原点回帰シリーズの2作目である。前作ではすでに故人となった天本英世の死神博士がデジタル合成で出演したり、立花藤兵衛役に宮内洋が起用されたりしてオールド・ファンの注目を集めた。が、白倉プロデューサーは制作発表で「今度のライダーは『冬ソナ』だ」などと宣言して、実際、中身はラブ・ストーリーがメインだったらしい。古幡がヨン様か。私はまだ未見だが、そのうち観てみるつもりです。
 今回の『THE NEXT』は、前作の1号ライダー、2号ライダーに続いて、V3が復活するということでまず注目を集め、次に作品がPG-12指定を受けたことが話題になった。私はちょっとドキッとしましたね。ひょっとして珠純子が登場するのではないだろうか、なんて。

 珠純子(小野ひずる)とはオリジナル『仮面ライダー V3』のヒロインだが、第1話で怪人に襲われたところをV3=風見志郎に助けられて以来、とにかくやたらと襲われていた。襲われるばかりでなく、しょっちゅう縛られて人質にとられていた。第10話では猿轡をかまされたうえで十字架にはりつけにされ、第23話では人体実験のために手術台に拘束され、第36話では縛られて蒸気機関車が迫る線路に放り出され、第38話では両手を縛って吊るされて火あぶりにされそうになり、最終回の第52話では橋から逆さ吊りにされて、水責めにされかかっていた。あまりにも隙だらけで、この女の人は、本当はそういうプレイがまんざらではないのではないか、と幼心に思ったお友だちも多かったことだろう。いや私じゃなくて。

 『仮面ライダー V3』が放送されていたのは1973年2月から1974年2月にかけてだ。ちなみに、日活が団鬼六原作ものの1作目、谷ナオミ主演『花と蛇』を公開するのは1974年6月である。ロマンポルノのSM路線に先んじて、ライダーではすでにそういう世界をやっていたのである。これがきっかけでめざめてしまった全国の少年仮面ライダー隊員(当時)はいたはずだ。いや、だから私は違うってば。
 そして今回、V3の復活する『仮面ライダー THE NEXT』がPG-12指定を受けたのである。PG-12といえば、小松さんの『僕は妹に恋をする』と同じ指定である。エロだ。いや暴力か。田崎監督は「ショッカーのバイオレンス性を逃げずに描写したらPG-12になってしまった」とコメントしておられる。「ショッカーのバイオレンス性を逃げずに描写した」って、つまり囚われの身となったヒロインを、ショッカーが「イー」とか言いながら縛ったり吊したり叩いたり、そういうV3の世界……。
 なんて、のっけからおかしな話を始めたのは他でもない。かつてAct.3の再放送レビューをやった際に、うっかり「触手に巻きつかれ、両手両足の自由を奪われ宙づりにされるセーラームーン」だの「足首に触手が巻きついて悲鳴をあげながら引きずられるセーラームーン」だのと、要らぬことを書いてしまったばっかりに、そういう表現に引っかかってこのブログに辿りつかれる方が、いまだにぼちぼちいらっしゃるのである。
 当ブログのアクセス数を粉飾しているもうひとつの人気キーワードに「巨大女」があるが、こちらに関しては、一応【第61回】に、それなりに中身のあるコンテンツを用意したつもりだ。しかし「セーラームーン」「触手」「緊縛」などというキーワードで検索をかけてお見えになった来訪者の方々にとっては、まったく空振りというか、純粋に無駄足を踏ませてしまって、つねづね済まない思いでいっぱいだった。
 そこで、いま再びAct.3のDVDレビューをやっているこの機会を借りて、今回の記事は、そういう方々にも、せめて多少はお喜びいただけそうな素材を無理やりにでも織り交ぜながら話を進めていきたい。といっても得意分野ではないので、そんなに期待しないでくださいね。記事そのものは大したことないので、お急ぎの方は本文を飛ばして、画像だけをお楽しみ下さい。でもそれも、ダイレクトに刺激的なものではないですよ。後はみなさんの想像力次第だ。これが私の限度です。すみません。

2. 妖魔プロペラ登場



 Act.3の妖魔は「プロペラ」である。頭部と耳の部分に大小のプロペラがついていて、これで強風を起こすと、木枯らしのように枯れ葉が舞う。手はジャバラのように伸びて、空中に開けた異次元空間に通じる穴から、少女をつかんで引きずり込むのである。前々からこの妖魔の存在を霊感でキャッチしていたレイは、しかし正体を突き止めた瞬間、自身もジャバラの手につかまれて、異空間にひきずりこまれる。それを引き戻そうとしたうさぎも後を追い、不思議な森のような異次元空間で戦闘が始まる。
 「レイちゃん、隠れてて」と言い、セーラームーンに変身して戦いを挑むうさぎ。でも妖魔は地中からツタのようなつる草のようなものを伸ばし、胴と両手、両足にするすると巻きつけ、セーラームーンの自由を奪って宙づりにしてしまう。それからレイに向かってプロペラを回す。すると突風で吹き飛ばされた枯れ葉がレイに襲いかかる。でもその直後、レイはマーズに初変身して「妖魔、退散!」の一撃。妖魔はあえなくやられてしまう。
 それにしてもこの戦闘シーン、演出がアナだらけで困ったものである。何しろうさぎは「レイちゃん、隠れてて」と叫ぶなり、まだレイがそこにいるというのに、さっさとメイクアップしてしまうのである。でもこの時点では、まだレイが仲間だとは判明してはいないのだ。だから特撮モノのセオリーとしては、うさぎはまず、レイが木の陰かなんかに隠れるまで待つ、でもレイは、いったいこの人はどうするつもりなんだろうと不審に思い、こっそりうさぎの様子を伺っている。そしてセーラームーンに変身するうさぎを見て「何なの」とつぶやく、という展開になるはずだ。でも高丸監督はそういうことは気にしない。どうせすぐにレイもセーラーマーズに変身しちゃうんだから、細かいことはいいんじゃないっすかあ、というノリである。

 そして、ツタに絡まれて宙づりにされたセーラームーンが「レイちゃん、逃げて!」と言ったときも、レイは「うん」と素直に逃げ出してしまう。でもレイはずっとこの妖魔の存在を霊感で察知して、追跡調査していたのである。だからここは「うん」とうなずいて後じさりぐらいはするものの、セーラームーンを見捨てて逃げ出したりはできない。でも「妖魔退散」のお札を投げつける程度では、とても勝てそうな相手ではない。悔しい、私にもっと力があれば、と唇をかみしめたとき、レイの内なる力がめざめて、ブレスレッドが光り出す。そういう演出じゃなくてはね。でも高丸監督はそういうことも気にしない。どうせすぐにレイもセーラーマーズに変身しちゃうんだから、細かいことはいいんじゃないっすかあ、というノリである。
 さらに首をかしげざるを得ないのが妖魔だ。プロペラとかジャバラとか、無機質なパーツで固めたメカニックな外装のわりに、ツタ攻撃とか枯れ葉攻撃とか、戦闘で出す技は植物系というミスマッチ。そしてマーズにあっさりと倒されるヘタレっぷり。本日の記事のメインテーマは、どうしてAct.3の妖魔が、こういうちぐはぐなものになってしまったか、という点を検証することにある。だがそっちの話題に行く前に「触手」という概念について一言ふれておきたい。

3. 「触手」とは何か?


 以前Act.3の再放送レビューを書いたときは、このセーラームーンを縛り上げるツタのようなつる草のようなものを、何も考えず「触手」と呼んだ。しかしそれで正しかったのか、改めて考えるとよく分からない。だって触手と言ったら普通は(「普通」っていうのも分からないが)こう、自分の意志でくねくね動くヤツのことじゃないだろうか。それでアダルト系のゲームとかでは、自分の意志で女の子に絡みついて、上の口とか下の口とかに潜り込むんでしょう。なんて書いてて赤面してくるが、つまり特撮としての表現方法で言えば、『スパイダーマン2』のドック・オックの背中のタコ足みたいに、CGで滑らかに動いてなきゃいかんのではないか、と思ったわけです。その意味では、むしろAct.1の渡辺典子妖魔とかヴィーナス・ラブミー・チェーンの方が、触手っぽい動きであるとも言える。
 そういうくねくねの触手とセーラームーンと言えば、唐突ではあるが『鉄甲機ミカヅキ』である。特撮オタクには評判の高い実写の巨大ロボットものだが、ネーミングが「ミカヅキ」だからなのか、ミュージカルで2代目セーラームーンをつとめた原史奈が主演していて、第4話で触手に絡まれておられる。

原史奈さん、きれいですね。しかも「きれい+愛くるしい+エロい」の三拍子揃った小松彩夏と違って、エロ濃度の低いクールビューティーだから、触手に巻きつかれていてもそんなにイヤラシイ感じがしない。
 ご存知のとおり原史奈さんはこの春、元Jリーガーの方とご結婚の予定であることを公表された。そして最近のブログの写真は、自分の手料理の写真とか、エプロン姿とかばっかりで、いかにも幸せいっぱいの花嫁修行中という感じである。もちろん妊娠はされていない。芸能人のできちゃった結婚ばかりが報道される昨今、なんと爽やかであることか。
 話を触手に戻すが、実写版Act.3のツタは、そういうクネクネ系ではない。しかし、妖魔を倒し、捕らわれた少女たちを救ったセーラーマーズとセーラームーンがこの異空間を脱出しようとしたとき、再びセーラームーンの足に絡みついて、引きずり戻そうとするのだ。プロペラ妖魔は、すでにいないのに。ていうことは、このツタ自身にそれなりの個人的意志というものがあるのかな。それなら触手と言っていいかも知れない。でもやはり、ミミズとかタコ足とかに近い生物系で、表面に粘液とか分泌しているようでなくては「触手」とは呼べないのかなあ、とも思うのだ。ちょっとこれ以上の専門的なことは私には分からない。

4. Act.3の妖魔はもともと植物系(推定)


 これまで『M14の追憶』で紹介された様々なエピソードの台本比較によれば、小林靖子は、アクションシーンについても、けっこう詳しく戦いの流れを台本に書き込んでいる。そして現場サイドも、基本的にはそれをできるだけ活かすかたちで映像化している。Act.16のバトルなんて、台本と実作品とではかなり印象は異なるが、それでもだいたいの展開は台本どおりだ。流麗なダブルバウトのAct.35もそう。
 その一方で妖魔の造形について見てみると、台本には 「妖魔(金)」とか「妖魔・ゾイサイト配下」とか「泥妖魔」とか「M妖魔」とか、そもそも具体的な外観や特徴がほとんど指摘されていない例の方が目につく。要するに妖魔のデザインは、造形スタッフに裁量が委ねられた部分が大きかったようだ。それにしてもAct.16の「妖魔(金)」って何なのか。
 もっとも、Act.43の冒頭の噴水のシーンなんか「水が止まり、静かな水面。が、突然、その前で水と水がぶつかる」と格好よく始まる。この場合は「水の戦士マーキュリーVS水の妖魔」でなきゃならんわけで、だから台本も「妖魔(雫)」と、その特徴を指定している。あとAct.39なんかもそうなのではないか。

【こっちよ!研究員に指令】Act.39は、物語の展開上「妖魔が遠方からうさぎのママを狙撃する」必要があるので、台本にも「妖魔(ゴルゴ13)」というような指定があるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか?コメント欄でのご報告をお待ちしております。

 さて、以上の前提を踏まえて、Act.3の戦闘シーンも、基本的な展開は台本に準じていると仮定してみよう。つまり「セーラームーンがツタのような触手に巻きつかれて自由を奪われる」「突風のように木枯らしが吹いてレイを攻撃する」「亜美は戦闘に参加しない」「マーズの炎が一閃して妖魔はあっさり倒される」「しかしその後も触手は生きていてセーラームーンを引きずり戻そうとする」といった要素は、すべて台本にあったものだと考えてみる。そうするとここからイメージされる妖魔は、植物系のバイオ怪人である。つまり『電磁戦隊メガレンジャー』の第11話「あぶない!赤いバラの誘惑」(田崎竜太監督)に出てきたネジレジアみたいな感じ。このネジレジアは、ツタ状の触手でメガイエローこと城ヶ崎千里をしっかりぐるぐる巻きにする。


 


 田中恵理さん、可愛いね。
 これと同様に、Act.3の妖魔も、本来の台本では、異空間の森の木から生みだされた植物系のバケモノで、強風で枯れ葉をまき散らしながら空中にぽっかり穴を空け、そこからツタのような触手を伸ばして少女たちを引きずり込む、というものだったのではなかろうか。だから戦いの場面でも、その触手でセーラームーンをがんじがらめにして苦しめたわけだし、もともとが木であるから、マーズの炎攻撃にやられれば一発で燃え上がってしまって、炎の戦士の初バトルを華々しく飾ることができる。本体が倒されたあと、触手だけがずるずると動くのも、なんか雑草魂を感じさせる(なんだよそれは)。そしてマーキュリーに活躍の機会がなかったのも説明できる。植物に水を撒いたら成長しちゃうもんね。
 ところが妖魔の造形スタッフは、「強風を起こす」という描写からプロペラを連想し、ジャバラのような腕をもつ、全体的にメカっぽい仕様の妖魔を作ってしまった。でもアクションシーンそのものは台本の流れに沿って演出された。そのために、無機質な外観の妖魔が、植物系の触手を繰り出すという、ちぐはぐな展開になったのではないでしょうか。まあ想像では何とでも言えるが、そんなふうに名古屋支部は推定している。
 

5. オジサンの本音



 ただ、セーラームーンが縛られて宙づりにされる、というシチュエーションを考えたのは脚本家だろうか、というと、どうもそうではないような気がする。私は、小林靖子がその手の「ヒロインのピンチ」をほかにも書いているかどうか、セーラームーン以前の代表作である『時空戦隊タイムレンジャー』を少し調べてみたのだが、この作品は戦隊ものでは珍しく女性のタイムピンクがリーダーで、かなり強いから、そんなにしょっちゅうアブナイ場面はなかったようである。でもいつも強気だから、窮地に陥って弱々しく見えるエピソードがかえって映える、という点では、美奈子を連想させる。第34話 「暗・殺・者」なんか、タイムピンクが、かつて彼女のストーカーをやっていた元未来刑事に精神コントロールガスを吸わされ、身体の自由を奪われて思い通りに操られる、なんていう、なかなかアダルトなエピソードで、いろいろと妄想のふくらむ場面もある。私はつい、ヴィーナスとゾイサイトの関係を連想した。別にゾイサイトは美奈子のストーカーじゃないんだけど、でもAct.8の印象が強くてさ。

 『タイムレンジャー』のタイムピンクに関しては、あと第41話「預言者を暴け」で、悪い新興宗教の団体につかまって、柱に縛りつけられるという場面もあった。ですが、まあそんなものかな。だから今回のセーラームーン縛りは、小林靖子のアイデアではなくて、実際に執筆に取りかかる前の、プロット出しの会議でスタッフから出てきて、小林靖子はその方針に沿って書いただけなのではないかと思う。
 アニメ版の熱心なファンによる怒濤の非難もあって「実写とアニメはぜんぜん別」という先入観ができてしまっているが、実際には、実写版はところどころで、アニメ版への目配せと思われる要素を取り入れている。それはこれまでもときどき書いてきた。今回の、ツタの絡まるセーラームーンというヴィジュアルも、アニメのシリーズでしばしば出てきたそういう場面を、一度は実写版でやってみよう、というスタッフの意見が反映されたものではないだろうか。私が具体的に連想したのは、アニメの第15話である。
 アニメ版には、レイと衛が一時期つきあっていたという独自の設定がある。無印第15話「うさぎアセる!レイちゃん初デート」は、ちょうど実写版のAct.7のうさぎと古幡のように、レイと衛が公園の池で、二人でボートに乗ったりして、デートする話である。うさぎは「あれは不純異性交遊よ!生徒手帳にも絶対いけないって書いてあるんだから!とにかく、レイちゃんが危ないわ!」と二人の後をつけて公園にやって来る。亜美は亜美で、その公園で読書をするのが日課だ。で、公園の管理人に取り憑いた妖魔ペタソスと、セーラームーンとマーキュリーが戦うのである。

 が、二人ともすぐに植物系妖魔のペタソスが放つツタにがんじがらめに縛られて、身動きがとれなくなってしまう。ここのところが面白くて、マーキュリーは、立ったまま四方八方から伸びてきたツタに締め上げられて苦しむのだが、セーラームーンは、ぐるぐる巻きにされて、その辺に放り出されてわめいているだけ。実に適当なのだ。幾原邦彦監督は、うさぎなんかどうでもよくて、緊縛されて苦悶する亜美ばっかり、時間をかけてじっくり描写するのである。趣味というのは怖ろしいですね。
 そこへ、衛とのデートを切り上げて変身したマーズが駆けつける。いきなり炎をセーラームーンとマーキュリーにぶつけて、彼女たちを束縛するツタを焼き切って救出するのである。かなり乱暴だが、マーキュリーはけろりとしている。水の戦士だから、ツタが焼き切られただけで、彼女自身は炎のパワーを中和してしまったということらしい。一方セーラームーンは「アジジ〜」と転げ回っている。そのスキに、マーキュリーとマーズが「月に代わっておしおきよ!」と二人でポーズを決める。「それ私のセリフ〜」とべそをかくセーラームーン。もう徹底的にうさぎが差別されている。繰り返すが監督は 幾原邦彦。趣味というのはやっぱり怖ろしいですね。

 こういうのを観ていると思うのだが、アニメのうさぎは、毎シリーズの最終回付近や、あるいは劇場版のクライマックスで、ボロボロになりながらもプリンセスとしての自覚をもって戦うとき以外は、悲壮感というものがないし、だからどれだけ敵に痛めつけられても、あまりSMチックな印象がない。このアニメの第15話みたいにギャグになってしまうのだ。そういううさぎの陽性のキャラクターを、沢井美優はしっかり身につけている。だからやっぱり、ここで宙づりにされるのは、レイではなくて、ましてや亜美でもなくて、うさぎじゃなくてはいけなかったのだろうね。
 実写版Act.3における緊縛&宙づりは、ある種の観点から見た場合、実写版全編の中でも、もっともハードなシーンだ。こういうのをやらせるとしたら、やはり沢井美優しか選択肢はない。たとえば浜千咲が、アニメ版15話のマーキュリーのように、がんじがらめになって延々と苦悶しながら、例によって何やら妖しい、勝ち誇ったような微笑をうっすらと浮かべてごらんなさいよ。あるいは北川景子が「何でこんなシーンをやらなくちゃいけないの」と思いつつも、新人なのでワガママは言えない口惜しさを込めて、きりっとこちらを睨みつけ、唇をかみしめながら、ぎりぎり締め上げられる場面とかをご想像ください。どっちにしても土曜の朝からPG-12である。
 ともかく、何に対しても、体育会系のノリで「チャレンジしている」というイメージが先に立つ沢井美優だから、この宙づりシーンは子供番組の範囲内で成立しているのだ。そして彼女はシリーズ後半で、至近距離でナパームを爆発されたり、クレーンに載せられて空中をぐるぐる回されたり、という、伝説的な試練の道を歩んで行くのである。Act.3は、そのプロローグとして位置づけられるべきだろう。
 でも本音を言えば、こういうシチュエーションでも「やだ。はずれな〜い」と、とことん健全で明るい声の沢井美優こそ、オジサン的にはもっともたまらない存在なのである。ぷるぷる。