実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第33回】豆乳パワー全開!まこと・まこと・まことの巻(Act.21)

1. 秋の模様替えでございます


 前回の日記で勝手に「総本山」なんて呼んでしまった長茄子さんから、いやそんな大層なもんじゃないからいつでもカキコしてね、という趣旨のコメントをいただいたらしい。ところが何度やってもコメント欄に書き込みができないという。それで私も自分で試してみたら、確かにできない。あれ〜?
 先日、過去の日記もだいぶ増えたので、月別カレンダーをヘッダに加えた。どうもその時のタグの記述に手落ちがあったのが原因らしい。なんてことが分かったのはずっと後の話で、色々やってもダメだった無知な私は、とりあえずデザインをデフォルトに戻して、改めてヘッダやスタイルシートに一項目ずつ設定を書きながら動作確認をする、という最も原始的な方法をとった。
 で、どうせだったらデザインテーマも今までと違うのにしちゃえ、ついでに色も変えてしまえ、前のままのデザインだと、また不具合とか起こるかも知れないしな、という、ほとんど厄落としみたいな考え方で、けっこう気に入っていたフォーマットを改めることにした。その結果が今みなさんのご覧になっているコレです。
 というわけで、理由なき(というか、トホホな理由の)秋の全面リニューアルですが、もちろんコンテンツに変わりはありません。何か不都合な点がありましたら、コメント欄からでもメールからでもご連絡ください。まあこんな私なので対応しきれる自信があるわけじゃないが、善処します。


 さあて、2週間のブランクを挟んでAct.21である。クンツァイトの魔手に堕ちた亜美ちゃんの運命やいかに⁉……って、分かってますよもちろん再放送です。DVDだって持ってます。でもやっぱり、毎週一回の放送を待っているという臨場感は違うんだよなあ。ねえ親方さん。ところで親方さんは、今週は無事に録画できましたか?
 今週は『アキハバラ@DEEP』がお休みで、朝刊のテレビ欄を確認したら、実写版は深夜2時40分開始となっていた。ところが夕刊ではこれが3時10分にずれ込んでいる(中日新聞調べ)。どうしてそうなったか、朝刊と番組編成を較べると、けっこう複雑で話が長くなるので省略するが、結論としてはおそらくあれだ、ここんところプリンセス続きだった我が国に、この日は久しぶりにプリンス、スーパーちびエンディミオンが誕生した。それで昼間の番組編成もだいぶ動いて、こういう結果になったのではないかと思います。で、念のために2時過ぎからテレビをつけて待機していたのですが、やっぱり放送開始時間は正しく3時10分。来週も同じ時間の予定です。
 まあしょうがないや。当初は、この再放送が番組の再評価につながれば、とリターンマッチの気分で意気込んでいたものだが、いまはもう、放送してくれればそれでいいんだという、祈るような気持ちである。

2.「オムレツ全リスト」誰かやってみませんか?


というわけで、9月6日(水)深夜午前3時10分、アートネイチャーのCM に続いてAct.21放送開始である。これまでもマツケン主演の映画タイアップCMなどで、ずっと実写版再放送をサポートしてくれていたアートネイチャーだが、今回は番組開始直前の1回に加え、AパートとBパートの間に4回、BパートとCパートの間に5回、実に計10回と、大半のCM時間を占領していた。もちろん、だからといって主題歌の最後の方、くるくる回りながらにこやかに歌うセーラーマーズの下に出てくる「ウィッグ制作協力 アデランス」のクレジットにモザイクをかけるような真似もしない。関係者が誰も気づいてないだけかも知れないが、立派だ、アートネイチャーは。
 今回Act.21と次回Act.22は、実写版ファンが最も信頼を置く舞原賢三監督、三巡目の登場である。佐藤健光監督の新規加入によってちょっとローテーションに間が空いたわけだが、実写版の世界を把握しきった確かな舞原演出は、そんなブランクにはびくともしない。
 Act.21は、同じく舞原監督が演出したAct.6以来、ひさびさに木野まことが全面的にフィーチャーされた回である。最初から最後まで、物語の進行の中心にいるのはまことだ。そして舞原監督は、Act.6のときと同様、安座間美優を強力にサポートする。主題歌終了直後の冒頭から、もう徹底して木野まこと=安座間美優の魅力一本で話を引っ張っていく。
 トップシーンは朝、ひとり登校するまこと。すっごく悩んだり、後悔したりしながら歩いている。それはそうだ。陽菜がいるから衛をあきらめようとしたうさぎに対して「彼女だって、どの程度つき合っているか分からないんだし」なんて無責任に励まして、頼まれもしないのに「私が調べてくる」とうさぎへの協力を買って出て、調べたら婚約者だった。で、それをうさぎに告げられないまま、うさぎは本人たちから直接、そのことを聞いてしまった。どれほど落ち込んでいるか分からないし、どんなふうに声をかけたらいいかもわからない。いつも後先のことが考えられないわたしのバカバカバカ、といった心境である。
 この、あれこれ悩んで歩くまことを、その心情に寄り添うように描写すればけっこうシリアスになるはずだが、でも舞原演出は、まこと自身の気持ちからはちょっと距離を置いて、ここはコミカルに描く。前回の、うさぎが衛と陽菜の関係を知った瞬間の回想シーンと短く切り替えながら「はぁ〜」とか「う〜ん」とか、やや大げさに溜息をつくまことの表情アップを3カット入れるのだ。これがどれも可愛くて、しかも安座間美優ならではのとぼけた味があって、本人は悩んでいるのだけれど、見ている側としては、ちょっと微笑ましくさえ思える。こういう演出の機微というのが、舞原監督だと思う。
 でもまこちゃんは、うさぎと顔を合わせるのが気まずいからと逃げるような、そんな子じゃない。だから、どうやっていいかは分からないけど、とにかく会って励まそうとうさぎの家を訪ねる。出てきたママは、初対面なのにまこちゃんのことが一発で分かる。いつもうさぎから話を聞いているからだ。
 ピコンピコン。ここで地震速報。月野家の玄関先で向かい合うまこととママにかぶせて「午前3時06分、関東地方で地震がありました」だって。震源地は千葉県北東部、旭市が震度3。M14さんのところはどうだったかな、と思ったが、出張中でしたね。夜中の地震っていやだなあ。
 物語に戻ろう。まことは「たまには一緒に行こうかと思って」なんて迎えに来たのだけれど、うさぎはショックで寝込んでいて、今日は学校を休むという。だから会えずじまい。代わりにうさぎのママから、せっかく来てくれたんだから、と無理やり朝ご飯に誘われそうになる。このあたりも、そういう親の愛を知らないまことの生い立ちを思えば、けっこう複雑なシチュエーションではあるのだが、舞原監督はコメディ調を崩さずにさらりと流す。まあ、このママで、しかも朝ご飯が「塩辛入りのオムレツ」だというのだから、コミカルな演出以外やりようがなかったとも言えるが。
 しかし塩辛入りねえ。誰か実写版のファンサイトで「月野育子ママのオムレツ全リスト&人気投票」なんてやった人はいないのかなあ。たぶん今回のはインパクト的に上位に来ると思うのだが。ただし投票するのは20人くらいかも知れない。
 まあいいや、舞原監督はだいたいこの辺までをコミカルなタッチで進めて、ママを振り切って、今度は地場衛のことを考えながら歩くまこと、というあたりからは、キリッとしたまこちゃんに戻す。
 地場衛。彼がタキシード仮面だった。そしてその目的は、幻の銀水晶とプリンセスについて知ることにあった。「あんたそのためにうさぎを利用したのか?」と問いかけたまことに、衛は開き直ったように「だったら?」と問い返した。そういう態度は何よりも許せない。だからまことは一発お見舞いしてやった。「あんた、最低だよ。うさぎには黙っておくけど、二度とあの子に近づくな」
 腰の入った一発で衛をぶん殴るまことの怒りをメインに組み立てる以上、このシークエンスはさっきのコミック調ではいけない。「もう一発ぐらい殴ればよかった」と言いながらジャブを飛ばすまことに、マンガチックな擬音をつけるという微調整はしながらも、こっちはシャープな感じでまとめる。非常に的確にメリハリをつけながら、舞原監督、今回も快調な滑り出しである。

3. 遊園地シーンにこだまする舞原監督心の叫び


 ところで、このまことと衛のツーショットという組み合わせが、Act.7のボート漕ぎのシーンで予告されていることは、すでにこの日記の【第13回】に書いたとおりだが、このAct.21には、微妙にAct.7を連想させる要素が他にもある。なんてもったいぶって言うまでもない、遊園地のシーンだ。
 「亜美ちゃんと相談して、うさぎ元気づける方法考えないと」と、学校へ来てさっそく教室に亜美を訪ねるまことだが、なるちゃんから、今日は亜美まで休みであると聞く。ここ、なるとまことの初ツーショットなんですが、それに気をとられて、直前にまことの前を走りすぎる山本ひこえもん君を見逃さないよう、ぜひよろしくお願いします。
 それで放課後、亜美ちゃんの家を訪ねたまことは、ぐったりと寝込む亜美を発見。あとはおかゆを作ってあげたり、かいがいしく世話をして、元気になった亜美が「遊園地に行きたい」と言い出し、まことがそれに付きそう、というみなさんご存じの展開です。その遊園地が亜美にとって、幼かったころ、なかなか休みのとれないママに遊びに連れて行ってもらえた数少ない、それだけに想い出深い場所であることが分かるのは、まだまだ先、ママがしみじみとアルバムを見つめるAct.34だ。
 というわけで遊園地のシーンなのだけど、遊園地といえばAct.7だ。うさぎとまこととレイと、衛と元基とカメ仲間の高井君のトリプルデートだ。たぶんあの回を観て舞原監督は「この回を演出してみたかったなあ」とすっごく思ったのではないだろうか。遊園地のいろんなアトラクションに乗って、半分くらい役を忘れて悲鳴を上げたりはしゃいだりする少女たちの表情を画面に収めるなんて、もう舞原監督だったらやりたくって仕方がないはずだ。
 で今回、ようやく遊園地で撮れるチャンスが巡ってきた。でも今回は物語の構成上、Act.7ほど遊園地で遊ぶシーンは入れることができない。でもやりたい。
 「本当はオレもAct.7みたいに、もっと遊園地で遊ぶところをいっぱいとりたかったんだ。でも今回はこれを入れるのが精一杯だ。田崎監督、ひとりで楽しんじゃってずるいよ〜」そういう熱い思いの結晶が、亜美とまことのジェットコースターのシーンだと思う。これストーリーの流れから言えば本当は余計なのだけれども、舞原監督の無言の心の叫びが画面中に響き渡っている気がして「このシーン要らないよ」とはちょっと言いづらいですね。
 それからもうひとつ、風船だ。遊園地で亜美は、まことのために緑の、自分のために青の風船を買う。クンツァイトの手に堕ちたとはいえ、まだ仲間を想って手袋を編んでいた記憶が消えてはいないのだ。だがメリーゴーラウンドで気を失ったとき、その最後の想いも消え、亜美の心は悪に染まってしまう。そのことを象徴するかのように、亜美の手を離れた青い風船が空の彼方に飛んで行くショット。
 Act.7のラスト(7時56分)で、うさぎは「タキシード仮面、いったい誰なの」と空を見上げる。すると空の彼方に小さく飛んでいく赤い風船。この赤い風船は、たまたまロケ現場で飛んでいたのを見つけて撮ったのではないかと思う。でも今回の青い風船、これは間違いなく意図的な演出だ。これが小林靖子の脚本に指定されていたのか、それとも舞原監督のアイデアなのかは分からないけれども、とにかく偶然の要素を取り入れて印象的な画面を構成した田崎監督に対して、それにインスパイアされてこういう場面をつくってみました、という、Act.7に対する返歌的な意味があるとは思うのだ。
 ちなみにAct.7のロケ地が東京ドームシティ、今回が横浜の八景島シーパラダイスのはずだが、例によって間違っているかもしれない。その場合は例によって、こっちよ!さんがコメント欄で訂正してくれるはずなので、正しくはそっちよ!

4. 元基!


 木野まことは「誰かのためにとことん行動する」ときに、いちばん光るキャラクターだ。Act.8では、パパの側近に無理やり連れ去られるレイを見て、後先考えずに追いかける。Act.17でも、カラ元気を出しているうさぎを心配して、保護者のようについて回る。ところがそういう性格の良さが災いして、いつもおいしい場面を、その「誰か」にもっていかれてしまうのが、まことの可哀想なところである。美しくドレスアップしたレイが、ホテルの一室で父との確執を告白するとき、あるいは、強がっていたうさぎが、陽菜と仲むつまじそうな衛を目撃して、堪えきれず衛への思いを告白するとき、まことの立ち位置と視線は、ドラマの中というよりも、むしろそういう告白にじっと耳を傾ける我々視聴者に同化している。こちら側の人間になってしまうので、ドラマの登場人物としての印象が弱くなってしまうのである。
 Act.21も、そういう意味では同じパターンの構成だ。前回の最後でクンツァイトの術に堕ちた亜美が、いよいよ悪の化身ダークマーキュリーとして覚醒する、というのがメインとなるストーリーで、まことは我々視聴者と共にその成り行きを見守る立場にある。これだけだったら、結局またまことは、亜美のドラマの引き立て役で終わってしまったことだろう。しかし今回、脚本はもうひとつの視点として、元基を出してきた。うさぎもレイも自分の抱える問題でどこかへ行ってしまっているとき、たったひとり亜美を心配してつきそうまこと、そのまことの優しさを理解し、控えめに見守る人物が登場したのである。元基の視線によって、まこと自身の物語が、ドラマのなかで始まるのだ。
 しかも小林靖子は、その元基を、前々回と前回で、ただの単純で脳天気な奴と思わせておいて、今回のエピソードでそれをひっくり返す、というかなりトリッキーな技を繰り出す。
 メリーゴーラウンドの木馬に乗って、子供みたいにはしゃぐ亜美。さすがにまことはつき合いきれず、外からそんな亜美を見つめている。そこへ元基がやって来る。カメ吉に外の空気を吸わせるために、たまたま遊びに来ていた元基が、そんなまことを見つけて、話しかける。だが二人が話をしているうちに、亜美はいつのまにか意識を失い、ぐったりと木馬にもたれかかっていた。慌てる二人。
 次のシーンは自動車の中だ。運転する元基と、後部座席で心配そうに、意識不明の亜美を抱きかかえるまこと。

 元基「病院すぐそこだから。……亜美ちゃん大丈夫?」
まこと「うん。寝てるみたい。……ごめんね、つき合わせて」
 元基「いいっていいって(マフラーを示し)これのお礼。まこちゃんだけだよ、バレンタインにくれたの」
まこと「そんなのは別に大したもんじゃ……」
 元基「ああ、義理っていうのは分かっているから。それでも嬉しいんだよね」
 かすかに微笑むまこと。心配そうに亜美の方へ視線をやる。

 前々回、Act.19で、マフラーをもらって大喜びの元基を、まことは「いいなあ、悩みがなくて」の一言であっさり片づける。前回Act.20での元基は、クラウンのカウンターでひとり「ラブラブなのはお前だけじゃないぞ」とカメ吉に向かってルンルン気分で、すっかり勘違いの脳天気男に見える。でも彼は勘違いしていたわけではない。「義理っていうのは分かっている」。マフラーが、バレンタインに「何もなし」で落ち込んでいた自分に対する、ただの思いやりであることは百も承知で、それでもそういうまことの優しさが嬉しかった。それを表現しようと、精一杯はしゃいでいたのである。
 この人は悩みのない単純男なんかじゃなくて、案外、他人の気持ちをよく分かっている人なんだ。柔らかな表情で運転している元基を見つめるまこと。まことのなかで、元基のイメージが変わる瞬間である。でも亜美のことが心配なので、視線をすぐに亜美に戻す。ダーク・マーキュリー変身シーン以上の、今回のエピソードで一番の名場面だと思います。
 いやもうひとつあったな。病院のロビーだ。なかなか意識を取り戻さない亜美に、まことは付き添うことにする。長期戦になりそうなのを察した元基が、コーヒーとかお菓子とか雑誌とか、いろいろ買ってまことに渡す。それで去って行こうとするんだけど、本当は元基も、そんなまことに付き添っていたい。なかなか帰れずもじもじして、おまけに大事なカメ吉まで忘れそうになる。そういう仕草で、元基が確実にまことに惹かれ始めていることを表現する。そして我々も二人が一緒になればいいなあと思わずにはいられない。いつも自分よりも友だちのことを気づかって突っ走って、でもそのわりにみんなからそれを気づかれもしないまこと、そういうまことの優しさを一番よく理解できるのは、たぶん元基なのだから。Act.34で、父の目を避けてクラウンに泊まるレイのためにお弁当を作り、休息室で夜通しレイを見守るまこと、そのまことを見守るのは元基だ。
 まことも、他人にしたことはあっても、自分がそんな気づかいを受けたのは初めてだものだから、今はちょっとびっくりしたような、でもとても温かい気持ちで元基を見送る。元基に気をとられたまま、コーヒーを飲もうとして「あちっ」と言い、もう一度視線を元基に戻す。今回のベストシーンはこっちかな。
 しかしそのとき、まことの背後では、黒い花びらがはらはらと落ちている。いよいよ亜美のダーキュリー化が始まってしまったのだ。そして亜美は姿を消す。


 舞原監督といえば、Act.5で、クラスメートに溶け込もうとして無理をする亜美を、遠くから心配そうに見守るレイ、Act.14で、クンツァイトの術で妖魔になりかかったうさぎを必死で解放する亜美というふうに、「誰かを思いやる人」を描かせたら、もう抜群である。それに、恋愛未満だった二人の気持ちが初めてぐっと近づく、という瞬間を演出するのがとても上手なことも、Act.13のうさぎと衛で証明済みだ。今回の脚本はそれが二つとも揃っていて、しかもちょっとだけ遊園地のシーンもある。さらにメイン・キャラクターが亜美とまことなのだから、これはもう傑作にならないはずがない。

5. 風と木の詩を聴く戦士(でもやおいじゃないよ)


 というわけで、ひょっとして「そろそろダーキュリーの話だな」と思っている方がおられるかも知れないが、すいません今回は木野まこと特集なのでこれで終わりです。ダーキュリーについては、初回放送時のレビューであまりにもいろんな人が書いているのだ。
 で、細かいことならあと色々あるのだが、最後にもうひとつ、舞原監督について、そのキャラクター把握の確かさ、ということを挙げておきたい。戦士それぞれの属性を、エピソードの中で一番きちんと表現しているのも、舞原監督である。Act.5の妖魔との戦闘シーンで、水の戦士マーキュリーは、目を閉じて耳を澄まし、水の流れと一体化することによって妖魔の所在を突き止める。そしてAct.6で初登場する木の戦士ジュピターは、つねに風にざわめく樹々のイメージと共にある。これは第11回目の日記のコメント欄でcap5lpさんにご指摘いただいたことだが、今回Act.21も、失踪した亜美を探すまことは、風の流れと、ささやくようにざわめく梢(こずえ)の響きに導かれて亜美の居所をつきとめる。
 いままで、たとえば舞原監督自身が担当したAct.14でも、失踪したうさぎを探すために飛び出していったまことが、いったいどうやってうさぎの眠る洞窟にたどり着いたのかはよく分からなかった。でもたぶん、今回みたいに樹々のざわめきが彼女を導いたのだ。あるいはAct.8で、無理やり黒塗りの車に押し込められるレイを見たまことはどうやって後を追ったのか、ということも不明だった。タクシーを利用して後をつけたのか?いや、まことがタクシーを停めるためにはセーラースタータンバリンが必要なはずだ(そうなのか?)。でも真相は、たぶん火川神社の豊かな緑がまことにレイの行き先を告げたのだろう。きっとそうだ。キャラクターの特徴が説明されるので、そんなふうに戦士の属性を考えながら、いろいろと他の、画面に映っていない場面を想像する楽しみも生まれてくるのである。
 だいぶ時間も経ったので今回はこのくらいにしておく。ここんとこまた仕事がどどっと立て込んできて、また更新がもたつくかも知れませんが、リニューアルしたこの日記、今後ともよろしくお願いします。


(放送データ「Act.21」2004年2月28日初放送 脚本:小林靖子/監督:舞原賢三/撮影:松村文雄)