実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


最新記事〕 〔過去記事〕 〔サイト説明〕 〔管理人

【第1017回】面接で何がわかるの?の巻(北川景子『あなたを奪ったその日から』レビューその12)

1. “It's Super, man!”



 『スーパーマン』(2025年)早く観たいけど、最近の休日は家でぐったりしているので、劇場までは行かないと思う。この手のスーパーヒーロー映画ってわりと早く配信に落ちてくるから、それを待ってダウンロード購入する。それまでレビューは読まずにスルーしよう。
 で、ネットニュースによれば、監督が「スーパーマンは移民だ」という発言をして物議をかもしているそうだが、そんなのスーパーマンのファンにとっては当たり前の事実なので、何をいまさら騒いでいるのか分からない。ていうか、本当に騒動になっているのか? 



 ジェームズ・ガン監督が新作映画『スーパーマン』を「移民の物語」と表現したことで、批評家たちはガン監督がスーパーマンを政治利用していると非難した。だが、真実は政治化できない。スーパーマンは87年間、「不法移民」であり続けてきた。(中略)スーパーマンの生みの親であるジェリー・シーゲルとジョー・シャスターはユダヤ人移民の子で、強制移住者の痛みを理解していた。1938年、ヒトラーが台頭するなかで彼らが創造したのは、「アメリカン・ドリーム」を体現するヒーロー ——見捨てられた者の苦しみを知っているからこそ、弱き者を守る力を持った人物であった。
(Andrew Slack, Jose Antonio Vargas ‘Yes, Superman Has Always Been an Immigration Story’ “The Hollywood Reporter”, July 12, 2025; 和田萌 抄訳「スーパーマンは移民の物語」『ハリウッド・レポーター・ジャパン』2025年7月14日


 そもそもアメリカは先住民族のいる大陸に移民が入って創った国である。その後も自由と平等を求め、アメリカンドリームにあこがれて移住してきた沢山の人々によって歴史と文化が紡がれてきた。だからこそスーパーマンの守るべきは「正義と真実とアメリカン・ウェイ」なのであり、戦時中はアメリカのため、ナチスの軍隊とか、日本軍のゼロ戦を叩きつぶしてきたのである。(まあ当時のアメコミヒーローは、だいたいナチスや日本軍と戦っていたか。)



 今度の2025年版『スーパーマン』ではこの「正義と真実とアメリカン・ウェイ」(truth, justice, and the American way)という標語が「正義と真実とよりよい明日」(truth, justice and a better Tomorrow)に変わったということで、これについてもあれこれ言う人もいるようだ(というネットの報道)。



 「正義と真実とアメリカン・ウェイのため」というスーパーマンのモットーは(たぶん)原作コミックではなくジョージ・リーブス主演のテレビシリーズ『スーパーマンの冒険』(1952年–1958年)で使われ、有名になったが、1970年代にハンナ・バーベラが制作したテレビアニメ『スーパー・フレンズ』(『ジャスティス・リーグ』の先駆け)では、すでにこのキャッチフレーズは「正義と真実と全人類の平和」(truth, justice and peace for all mankind)に変わっている。



 1978年のリチャード・ドナー監督『スーパーマン』では、クリストファー・リーブが「正義と真実とアメリカン・ウェイのため」と真顔で言って、ロイス(マーゴット・キダー)に失笑された。



 そのクリストファー・リーブ版を意識したブライアン・シンガーの『スーパーマン・リターンズ』(2006年)では「正義と真実とそれらのすべて」(で良いのかな? truth, justice and all that stuff)に変えられた。要するに「スーパーマンは移民だ」という発言や、彼のモットーから「アメリカン・ウェイ」が消されたこと自体は、スーパーマンの歴史を辿れば当然の成り行きなのである。



 いらぬ話をしてしまった。もっと大切な話をしよう。先日、手首の骨折でライブが中止となった伊藤蘭さんだが、10月の振り替え公演の日程が発表された。順調に回復中とのことで、良かったです。

2. オーディションではイモ判を彫ったが


 さあそれでは『あなたを奪ったその日から』第4話レビューの続きです(2025年5月12日放送、脚本:池田奈津子/撮影:白石利彦/照明:磯辺大和/演出:淵上正人/企画:水野綾子/プロデュース:三方祐人/制作:カンテレ・共同テレビ)。紘海(北川景子)はいよいよオーディション、もとい、「タイナス」中途採用試験の面接に臨む。いざ、出陣。



紘 海「中越紘海と申します。スイッチバック事業部の面接に参りました」
受 付「かしこまりました。少々お待ち下さい」


╳    ╳    ╳




担 当「中越紘海さん」



紘 海「はい」



担 当「お願いします」




担 当「こちらです」


 紘海を面接会場まで案内している社員を演じている俳優は辻川慶治。うちのデータベースによると、この人は2011年の『探偵の探偵』第6話(フジテレビ)で、北川景子を襲う半グレ集団の一人を演じているということだが、ちょっとよく分からなかった。



 この、後方に二人いる中の、黒服の人かな。それ以来の共演だろうか。私だったら「オレ北川景子とドラマで二度も共演しちゃったんだぜ」と自慢するところであるが。



紘 海(ノック)
面接官「どうぞ」



紘 海「失礼します」



面接官「そちらへ」



紘 海「はい」



紘 海「中越紘海と申します」
面接官「お掛けください」
紘 海「失礼します」



 というわけで、本日の面接官は向かって左から、人事部長の丸尾(渡部遼介)、役名は分からない面接官(鳥谷宏之)、旭(大森南朋)、望月(筒井道隆)、もう一人、の五人である。こっちから見て右端の人は、役名も演じている役者名も分からない。ごめんなさい。



丸 尾「人事部長の丸尾です。中越さん、まずは簡単に自己紹介からお願いします」

3. 法令遵守の圧迫面接


 雰囲気に呑まれたのと、憎い旭とあっさり対面して気持ちの整理がつかいないのとで、紘海はしばらく言葉を失ってしまう。



丸 尾「中越さん、自己紹介を」



紘 海「すみません、あの……(咳払い)……私は、中越紘海です。はちどり保育園で管理栄養士として働いております。子どもたちに喜んでもらえるような、彩り鮮やかなメニュー作りが得意です。たとえば……動物をかたどったハンバーグやコロッケ、磯辺揚げ、おやつなら……」
丸 尾「中越さん」



丸 尾「すみません。簡単でけっこうですので」



紘 海「すみません」
丸 尾「志望理由を聞かせていただけますか」


 「この男に復讐するためです」と言えるわけでもなく、いちおう答えは準備しておいたが、緊張もあって棒読みになってしまう。しかし、こういうのを見ているとつくづく思うが、面接で本当に、選ぶべき人とそうでない人が分かるのだろうかね。なんていったら人事のプロに失礼か。



紘 海「……ええ、私は、管理栄養士として、長年培ってきた経験を活かし、より広い世界で食を提供してみたいと思い、志望しました」



面接官「小売業の御経験はないようですが、あえて弊社を志望した理由を教えていただけますか」



紘 海「えぇ……スイッチバックは、スーパーマーケットタイナスの新業態ということで、えぇぇ……」



丸 尾「中越さん、あなた弊社で、御自分がどのような御活躍ができると思いますか」



紘 海「私は……」
丸 尾「御経験ないんですよね」



丸 尾「そんなあなたが、うちで通用すると思ったその理由は?」



望 月「……これって圧迫面接ですよね」



丸 尾「お答えできないようなので、ほかに質問のある方は」


4. 言いたいことは言っておけ


 ここで、(美人の)紘海が丸尾に詰められている様子を見かねて、望月が助け船を出す。が、詰めの甘さゆえに撃沈する。



望 月「あっ、では私から良いですか?」
丸 尾「どうぞ、望月さん」



望 月「あの、子ども向けの料理が得意ということですが、御自身もお子さんがいらっしゃるんですか?」
紘 海「あっ……」



丸 尾「それはタブーな質問では?」



丸 尾「ご存知とは思いますが、家庭環境に関する質問は、厚生労働省のガイドラインに抵触しますので」
望 月「ですよね。ごめんなさい。答えなくて結構ですから。すみません」



丸 尾「では他に質問もないようですので、今日はこれで」



 旭 「私からいいですか?」



 旭 「うちの店舗はご覧になりましたか?」


 一瞬、凍りく紘海。その頭のなかでは先日の玖村(阿部亮平)の言葉にはじまり、過去にメディアや、あるいは直接出会った中で聞いた旭の言葉が渦巻く。



玖 村「狂ってますよね。人殺しが出世するなんて」



 旭 「一年前の事件とは何のことですか?」



 旭 「子どもの責任は親にある」




紘 海「灯、起きて」



景 吾「灯、おい、あかり!」



 旭 「仕事なんてやってらんないよ、こんな天気の良い日に。はははは」


 初めて経験する大企業の面接に萎縮していた紘海だが、旭を前にあれこれ思い出しているうち、がぜん闘志が湧いてくる。怖じ気づくな、せめて言いたいことは言いきってやれ。



 旭 「……ご覧になりましたか、うちの店舗を?」



紘 海「はい。拝見しました」
 旭 「どう思われましたか?」



紘 海「失礼ですが、残念に思いました」



紘 海「私は、保育園の管理栄養士として、長年働いてきました。沢山の子供たち、沢山の御家庭を知っています。そのうえで思ったのは、お店が今の家族向けになっていません」



紘 海「たとえば、簡単に調理できるミールキット、共働きで忙しい御家庭には、今すごく求められていると思います」



紘 海「でもスイッチバックには、普通の御家庭が毎日買いたくなるようなミールキットがほとんどありません。気取ったフレンチや、マニアックなエスニックばかりで、なんだか格好つけすぎだなと思いました」



紘 海「また、スーパースイッチバックのコンセプトは、ナチュラル・ヘルシー・サステナブルということですが、お総菜コーナーを目にしたところ、見かけがあまりにも寂し過ぎます」



紘 海「なるべくナチュラルに、地産地消を大切にというのは分かるのですが、子どもは味だけでなく、見た目でも食事を楽しみます。あれでは喜んでくれません」



紘 海「要するに、スイッチバックは」



紘 海「スイッチバックは全然楽しくないんです」



 旭 「楽しくない」
紘 海「はい」
 旭 「ひとつ聞かせてください」



 旭 「それほど残念なスーパーだと思うのに、なぜあなたは採用試験を受けたんですか?」



紘 海「後悔しないために……です」



紘 海「私は子どもたちに、おいしいだけでなく、食事を楽しんでもらえる自信があります。ですがスイッチバックには、食を楽しむという視点が欠けている。そのまま目を逸らしていたら、悔いが残ると思ったからです」




紘 海「私は母親です。子どもに与える食べ物には、誰よりも真剣に向き合ってきました」



紘 海「ここにいるみなさんにも負けません」


5. 出来過ぎお嬢さん



 面接を終え、会社のエントランスでスマートフォンを見ると、朝に口喧嘩した美海(一色香澄)から「面接どうだった?」のメッセージが届いていた。お母さん想いの子である。紘海は思わず美海に電話をかける。



美 海「もしもし」
紘 海「今どこ?」
美 海「……学校帰り」
紘 海「そう」



美 海「そっちは? 面接終わったの?」



紘 海「うん。終わった」
美 海「で?」
紘 海「たぶん駄目だった」



紘 海「お昼は? ちゃんと食べたの?」
美 海「コンビニで、おにぎりと菓子パン」



紘 海「そう」
美 海「……を、買おうと思ったんだけど」



美 海「なんか、うちに置いてきたお弁当のことを思い出しちゃって……なんか……買えなくて」



美 海「初芽ちゃんにも怒られた。『毎日お弁当作るのがどれだけ大変か知っているのか』って」



美 海「ごめん。お弁当、置いていって」



美 海「それと、キモイとか言ったことも」
紘 海「……やっとお母さんの偉大さに気づいたか。遅い」
美 海「何それ。ひとがせっかく……」



紘 海「……ありがとうね……」
美 海「えっ?」
紘 海「お腹すいたでしょ。夕飯なに食べたい? おいしいもの作ってあげるから」



美 海「やった。早く帰ってきて」



紘 海「了解」


 本当に良い娘さんですね。ついでに初芽ちゃん(小川李奈)もそういうとき、きちんと美海を𠮟れるのが偉いと思う。というわけで紘海は、面接、失敗したけどまあいいや、言いたいことは言ってやった。これで復讐は忘れて、また美海との生活に戻ろう、むしろこれで良かったんだ、と様々な想いを吹っ切ったわけです。

6. 運命のスイッチバック



 ところが、そういうところでまた大きく運命が変わってゆくのがこのドラマ。ふと視線を感じて振り向くと、そこにはあの男が……。



 旭 「お嬢さんですか」
紘 海「え?」



 旭 「確か、あの時は三歳って言っていたようだが」



紘 海「うちは三歳が一人。そちらは?」



紘 海「憶えていたんですか」
 旭 「思い出したんです。話し始めて直ぐに」



紘 海「あの……何か」
 旭 「あ、そうでした、ひとつお伝えしたいことがあって」



 旭 「靴擦れ」



 旭 「合わない靴を選ぶから、そうなってしまうんですよ」



紘 海「入社までにはもう少し合うものを買っておいた方が良い」



 旭 「正式な採用の連絡は人事からさせますので」



 旭 「それじゃ」



 と、ここで紘海はあっという間に復讐モードにスイッチバックしてしまう。良くないって。一方、旭の表情もなにか含んでいる感じだったりする。

7. 全部は思い出していない。


 いや、もうすでに最終回まで終わってしまっているからアレですが、実は私、ここで旭の表情の意味を履き違えていた。つまり、10年以上も前の料理教室での会話を思い出したってことは、当然そこに至るまでの話の全体を憶えているんじゃないかって思ったわけね。第1話。



講 師「いいですか? お料理の一番の隠し味は愛情」



講 師「愛情が詰まっているから、ママやパパの作る料理は美味しいんです」



講 師「愛情たっぷり注ぎましょう」



紘 海「あっ、痛ぁ」
 旭 「え?」



紘 海「あ、いや、困りますよね、愛情を注いで、なんて言われても」



紘 海「いやあ、愛情だけなら私も三つ星級だと思うんですけどね」
 旭 「大丈夫ですか?」



紘 海「ああ、いつもこうなんです。玉ネギに嫌われているんですかね」



紘 海(笑)



紘 海「あ、私、中越です」



 旭 「あ、結城です」



紘 海「私、すっごい下手なんですよ。それで、うちの子ぜんぜん私の料理食べてくれなくって」
 旭 「ははは、うちもです」



紘 海「うちは三歳が一人。そちらは?」



 旭 「高校生と三歳」



紘 海「三歳、一緒!」
 旭 「ですね」



講 師「そこのお二人」



講 師「おしゃべりの前に手を動かしてくださいね」


 以上、あの時の紘海は「愛情だけはあるけれど、料理の腕前はからきし駄目」という設定で料理教室に忍び込んでいた。今回の紘海は「私は子どもたちに、おいしいだけでなく、食事を楽しんでもらえる自信があります」と言い切る真逆のキャラである。
 旭は驚異的な記憶力で、当時の会話の内容まで憶えていた。だったら「あのときは玉ネギも切れなかったのに、だいぶ努力されたんですね」ぐらいの一言があっても良いような気がする。いや、今回、応募してきた紘海の履歴書を見れば、当時からずっと「はちどり保育園」に管理栄養士として勤務していたことが書かれていたはずである。ただちに不審を抱くはずだ。
 だから私はてっきり、このときすでに旭は、紘海が何かの意図で自分に接近してきたと気づき、それを探るためにあえて採用したのではないかと思った。でもその読みは、もうぜんぜんハズレていた(笑)。



紘 海(人は私を道に外れた女というだろう)



紘 海(まっとうな道を踏み外してしまった悪女だと)



紘 海(だけど私は道を踏み外したんじゃない)



紘 海(私は自分からこの外れた道を選んだ)



紘 海(ただ母親であるために)



╳    ╳    ╳



紘 海「本日からお客さま相談室に配属となりました、中越紘海です」



紘 海「よろしくお願いいたします」



 2025年10月。こうしていよいよ物語は近未来に突入した。以上、第4話レビューはここまで。次は第5話である。続く。