高石あかりさんが次期の朝ドラ主演に決定したそうだ。本当は私にはその意議がイマイチ分からないのだが、とにかくおめでとう。
私が現在『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』以外でちゃんと観ているドラマというと『嘘解きレトリック』と『ウイングマン』くらいです。『嘘解きレトリック』について、どっかのレビューに「ミステリ味が薄い」みたいなことが書いてあって、「そうなのか」と思って、でも松本穂香と鈴鹿央士が主演なので見始めたんだけど、ちゃんとミステリだった。
松本穂香は「他人の嘘が分かる」超能力をもっているので、登場人物の誰かが嘘をついた時点ですぐにわかる。そこから「この人は何故そういう嘘をついたのか」を推理していくことで、事件の全貌が明らかになる。つまり倒叙推理の変形である。倒叙推理ドラマってどうしても『刑事コロンボ』のパターン(クセのある探偵役が犯人にしつこく付きまとってボロを出させる)を越えられないと思っていたので、新鮮でした。
第4話では片岡凜が登場。第5話まで続く前後編なので結末はまだわからないが、映像で表現するのは難しい一人称の叙述トリックも使ってあるようで、これも「嘘がわかる」という設定ならではのひっかけだと思う。
さてそれでは、NHK総合ドラマ10『正直不動産2』第9話レビューです。(2024年3月5日放送、原作:大谷アキラ・夏原武・水野光博/脚本:根本ノンジ/照明:長谷川誠/撮影:山﨑一央/演出:川村泰祐/プロデューサー:樋渡典英・室谷拡/制作:NHKエンタープライズ/制作・著作:NHK・テレパック)
相変わらず永瀬(山下智久)と美波(泉里香)の、同棲というのか、わけのわからない共同生活は続いている。本日の食事当番は永瀬。メニューは野菜カレー。今回のエピソードタイトルが「神木という男」というだけあって、最初から「神木はなぜ、どんな汚い手を使っても営業成績1位にこだわるのか」という話題から始まる。
美 波「んん~!おいしい。この福神漬けって?」
永 瀬「僕が作りました」
永 瀬「レンコンと大根を煮て一晩漬けこんだんですけど、どうですか?」美 波「めちゃくちゃ美味しいです」
美 波「え~今度作り方教えて下さい」永 瀬「もちろんっすよ」
美 波「にしても、そこまで1位って獲りたいものですか?」
永 瀬「え?」美 波「神木さんのことです」
永 瀬「ああ。……昔神木さんが旅行でマカオに行った時に、一度だけ僕が1位を取ったことがあるんですけど、そしたらあの人、次の日には辞表を」
社 長「理由は?」
神 木「1位ではなくなったからです」
美 波「辞めたって?一回1位を獲れなかっただけで?」永 瀬「神木さんにとってはそれが全てだったんでしょうね」
美 波「……永瀬さんはそんな風に思わないでくださいね」
永 瀬「え?」
美 波「1位を獲るより、もっと大切なものがあるんですから」
永 瀬「ついにですか……ありがとうございます」
永 瀬「違ったんすか……」
かなりいい感じである。さて今回の物語のお題はサブリース契約。これは大家さんが個別に部屋を貸し出すのではなく、サブリース会社に一括して貸し出す契約である。
サブリース会社は、入居者が入らず空室になっている分も大家に賃料を支払う。つまり部屋の「また貸し」で、いちいち管理する手間もなく家賃収入も安定している、というのが売りだ。しかしこの場合、サブリース会社は店子というかたちになる。だから家主から借り手を守る借地借家法が、この場合はサブリース会社を手厚く保護する。
ミネルヴァ不動産は土地持ち小金持ちをそそのかしてアパートやマンションを建てさせ、サブリース契約する。しかし入居者が少なく赤字と見れば家賃の大幅値下げを要求する。怒った大家たちが解約を申し出ても、大家が一方的に店子に解約を申し出る場合、家賃の1年半分にあたる違約金を払わなければいけない。
いずれも借地借家法によって定められているのだ。大家たちはアパートを建てるために組んだローンを引けばマイナスになるような月収しか入ってこない状況でも、解約すらできない。もちろんミネルヴァには毎月しっかり手数料が入る。
それにしてもミネルヴァ不動産は、いや神木(ディーン・フジオカ)は、なぜ法律違反スレスレの手法を使ってまで売り上げナンバーワンを維持しようとするのか。永瀬(山下智久)と咲良(福原遥)から神木のあくどいやり口を聞いた登坂社長(草刈正雄)は「昔はそんな男じゃなかった」とつぶやく。
かつて神木は、とりたてて営業成績が優秀というわけでもない、家族思いの温和なサラリーマンだったのだ。ある晩、家に帰ると息子の翔太(石塚陸翔)がしょげている。幼稚園の運動会の練習で転んでビリになったんだという。「本番は来週だろ、その時に1等賞になればいいじゃん」という神木に「ボクじゃ無理だよ」とすねる翔太。
「大丈夫だよ、いっぱい頑張れば、絶対一番になれる」と励ます神木を、傍らで妻の香織(藤井美菜)が「だったら、パパがまずは一番になって欲しいわよね」と混ぜっ返す。
神 木「分かった。だったらパパも、今月会社で1位になる。だからも翔太もパパと一緒に1位になろう」
翔 太「パパと一緒に?」
神 木「うん。約束だ」
けれども運動会が来る前に、翔太と香織は信号無視の車に轢かれて死んでしまう。
そして弔問にいった登坂社長の前で、神木はまるで目の前に妻と息子がいるかのように語りかけていたという。
神 木「……そんなことないよ。パパが絶対、会社で1位になるから」
神 木「嘘じゃないってママ。信じてよ」
神 木「翔太」
神 木「パパ絶対1位になるからな」
╳ ╳ ╳
社 長「その月、神木は本当に営業成績1位を獲った」
社 長「そして永瀬に抜かれるまで9年間、1位を獲り続けた」
╳ ╳ ╳
美 波「永瀬さん、お風呂行きましょうか」永 瀬「え?」
美 波「お風呂」永 瀬「お風呂……」
永 瀬「……今日ちょっと、いろいろあって」
美 波「だから行くんです」
美 波「ね」
╳ ╳ ╳
美 波「お風呂上がりにアイス食べましょうか」
永 瀬「いいっすね」
美 波「何味にします?私はレモン味」永 瀬「抹茶金時」
美 波「シブっ!」
ふふふ、またSさんが何かコメントしそうな羨ましい状況である(笑)。
あっ、そういえば関係ないけどムラタコウジ『高嶺のハナさん』11巻が出た。
新刊なのであまりネタバレしてもアレだが、とうとう華と弱木は同棲生活に入る。それでチャラ田の友人の津不呂国彦(つぶろ・くにひこ)という不動産屋の作戦にまんまとハマり、二人で暮らす愛の巣を、最初の内見で即、決めてしまうのだ。
その友人の不動産屋が、焼き肉屋でチャラ田とイチゴちゃんに語る「物件売りの方法論」とはこういうものだ。
あっ、このセオリーって『正直不動産』の原作マンガにも出てきたよな。単行本第19巻。
なるほどね。ただ、そんなことを知っても、私はもう、新しく家を買うなんて機会はないだろうな。
すみません、『高嶺のハナさん』原作本に戻ろう。それでバシッとふたりの住む家を決めてしまったハナだが、重大な過失に気づく。
もちろんこの二人のことだから、同棲に至る前に、お互いの両親に御挨拶とかいろいろあるのだ。
ともかく、あと4クールぐらいのドラマ化に最適な原作のストックはある。せめて1クール。メインキャストを再結集してシーズン3を制作することは、まだ可能だと思う。お願いしますBSテレ東さん。
話を戻します。ミネルヴァの口車に乗せられアパートを建てサブリース契約したものの、そう甘い話はないもので、借り手が少ないことを理由に家賃を大幅に引き下げられ、解約したくても法律をタテに断られ、もはや泣き寝入りするしかないオーナーたちをどう救済するか。現実的には厳しいわけだが、ここで、ドラマをファンタジー化して、永瀬財地をヒーローにしてしまうマジックがかけられる。このドラマの守護神、石田さん(山﨑努)の登場だ。
永 瀬「石田さん、どうしたんですか?」
石 田「神木って男、知ってるな?」
永 瀬「私の元上司です」
石 田「そいつのせいでこの町のオーナーたちが困り果てている。助けてやってくれないか」
永 瀬「そうしたい気持ちはやまやまなんですけど、何しろ相手が借地借家法っていう法律を逆手にとっていまして、手の出しようがないんです」
石 田「そんなものぶち壊せばいい」
永 瀬「ぶち壊すってそんな、無茶な」
石 田「昔から間違った法律はいくらでもあった。それをぶち壊して、作り直して、世のなか上手くやってんだ。やってやれないことはない」
石 田「永瀬君」
永 瀬「はい」
石 田「これができるのは君だけだよ」
永 瀬「私だけ」
石 田「ピース」
花瓶の花を手に取って戻す。最後の「ピース」。このへんはおそらく台本にない山﨑努のアドリブだね。
と、山﨑努が出てくるだけで、ありえない展開でも大丈夫って感じになってくる。タイミング的にも最終回手前で非常に良い。石田に背中を押され、勇気を得た永瀬の説得で、バラバラだったアパートやマンションのオーナーたちは一致団結して集団訴訟を起こす腹を固める。
もちろん、この件に関しては借地借家法があるから、家主側が不利な状況は変わらない。しかし集団でアクションを起こせば、世間やマスコミの注目は当然、ミネルヴァ不動産にも集まるし、そうなれば、直接今回の件に関わらないにしても、あれやこれやと不都合な過去の事実は出てくるであろう。
というわけで今回ミネルヴァ不動産は引き下がり、オーナーたちの解約要求に応じることになった。スピード解決。ただし十影(板垣瑞生)は目茶苦茶へこんでいる。
咲 良「榎本さんの愛妻弁当ですか?」
永 瀬「今日榎本さん当番だったから作ってくれただけ」
十 影「おつかれぇ〜す」永 瀬「なに十影、いま出勤?」
十 影「暗号資産、大暴落して大損しちゃって」
十 影「スーツも時計も全部売ったんすけど、ぜんぜん足んなくて」
永 瀬「だから言ったろ堅実に仕事しとけって」
十 影「……」
咲 良「そんなことより永瀬先輩、どうするんですか?」
永 瀬「?」
咲 良「榎本さんのことですよ。このままずっと同棲ってわけにはいかないですよね」
永 瀬「まあね。なんか居心地良いんだよね、あの人と居ると。自分を飾らないで良いっていうか、ありのままでいられるっていうか……こんな気持ち、初めてかもな」
咲 良「もしかして……それって……」
永 瀬「まぁ近々ちゃんと伝えようと思っている」
咲 良「え? え! えーっ!」
咲 良「永瀬先輩、わたし嬉しいです」永 瀬「いいから」
美 波「えっ?」
美 波「私が異動?」
美 波「しかも、ニューヨーク」
ちなみに『高嶺のハナさん』『正直不動産』ともに、原作でヒロインに海外異動の話が来ることはない。だからこれは「泉里香ドラマ」固有の現象ということだ。そもそも『正直不動産』の原作では、美波はまだ結婚相手を物色していろいろ試している最中で、永瀬財地を最終候補に決めてもいない(全巻読んでいないので間違っていたらすみません)。永瀬の知り合いと交際していた期間もある。
ともあれ、以上で第9話が終わり、次回はいよいよ最終回である。かなり良い感じになってきた永瀬と美波はどうなるのか。そして家族を失ってから凍てついたままの神木の魂を溶かすのはだれか。刮目して待て。
















































































































