色々あってどうなるかと思ったが、NHKのスペシャルドラマ『正直不動産』は、かねてからの告知通り2024年1月3日に放送されて、泉里香が銀行内のワンシーンだけ出演して、良い味を出していた。同じく1月3日と翌1月4日にはテレビ朝日開局65周年記念番組として、どちらも松本清張原作の『顔』(1月3日)と『ガラスの城』(1月4日)が二夜連続で放送され、前者に沢井美優がピンポイント出演していた。
Wikipediaの「松本清張原作のドラマ一覧」を見ると、松本清張作品のテレビドラマ化は、1957年の『地方紙を買う女』(NHK)以降、2019年の『疑惑』(テレビ朝日開局60周年記念番組)・『砂の器』(フジテレビ開局60周年ドラマ)まで途切れたことがない。2020年代に入ると、今度はBS放送で『黒い画集 〜証言〜』(2020年、NHKBS)、『混声の森』(2022年、NHKBS)が制作されている。そして『目の壁』(2022年、WOWOW)と新作が続けている。さらに今回の2作である。没後30年も経つのにたいへんなものである。
さて今回からしばらく『セーラー戦士 20年目の同窓会』(2023年12月25日、CBC)徹底レビューにおつき合いいだたく。この番組の企画はCBCの岡﨑剛之で、演出はイースト・ファクトリーの高野裕樹。ちなみに岡﨑氏は実写版セーラームーン本編でCBCの代表としてチーフプロデューサーにクレジットされている人で、以後『ウルトラマンネクサス』『ウルトラマンマックス』『ウルトラマンメビウス』を手がけることになる。
また沢井美優のYouTubeによれば、現場には丸山眞哉プロデューサーと原作者の武内直子先生も立ち会っておられたということで、いったいどういう経緯で実現した番組なのか、考えれば謎である。あまり考えずに、いまだに実写版セーラームーンにこだわっている私たちのために与えられた20年目のプレゼントとして受け止めておきたい。
撮影のために準備された教室も、たぶん実写版で十番中学に使われた目白学園ではないと思うが、実際の学校を借りて、机と椅子の背板は実写版のドラマみたいにピンクにして、教室後ろのロッカーには撮影台本を並べて、北川景子がオーディションの時に披露した芋版とか、実際に撮影に使われたルナとアルテミスとか、制作発表時のスナップとか、5人の戦士のブロマイドがぺたぺた貼ってある。金はかかっていないが、かなりマジな同窓会で、やっぱりどのようにしてこの夢のような企画が実現したのか、気になる。
1. イントロ
教室にどしん、どしんとノックの音がして、番組が始まる。ノックした沢井に突っ込みが入り、口々に笑いさざめきながら5人の戦士が入ってくる。この時点でもう感無量である。
沢 井「入ってんの?」小 松「ノックするってどういうこと?」
沢 井「失礼しまーす。すごい」
沢 井「あ、これね、これってこと」北 川「これだ。あ、台本がある」
沢 井「うわぁちょっと待って」
北 川「あ~っ。すごぉい」
沢 井「恥ずかしい。どうしよどうしよ」
小 松「これうちに貼ってある。実家に持ってる写真」沢 井「ないよぉ。どうしたの?」
小 松「なんか普通に、たぶん」北 川「貰ったの?」小 松「貰ったのかなぁ」
沢 井「いやぁあああ」北 川「可愛い」安座間「パツパツだよ」一 同(笑)
沢 井「ほんとパツパツ」里 香「パツパツ(笑)」
安座間「すごい」北 川「え?ホンモノ?」泉 「当時の?」安座間「え?(本物は)もっと……」
沢 井「ホンモノだ。ホンモノ。あの」泉 「人形のやつ?」安座間「入るの?」
小 松「手が入るやつ?」安座間「え?(本物は)もっと大きくなかった?」
沢 井「良い感じに飾ってくれているもん」
ただのぬいぐるみではなく「手が入って動かせるやつ」だから本物だという話がちょっとおかしい。いや実に女子会らしいにぎやかさ。みんな一斉にしゃべり出すので、誰がなにをしゃべっているのか、ちょっとよく聞き取れないところも多いが、やは沢井美優の声だけはしっかり入ってくるね。
いかにも同窓会な空気感が十分に醸し出されたところで、懐かしい映像が流れる。Act.46(2004年8月28日放送、監督:高丸雅隆)変身すらできなくなっていた美奈子が最高にかっこよくヴィーナスになって、5人で力を合わせて妖魔を倒すシーン。セーラームーンがちょっと憂い顔になるカットで終る。その直後、セーラームーンはPムーンになってハープを弾き出すんだけど、その手前まで。ほかの4人は字幕で名前が紹介されるのに、
ナレーション「セーラー戦士のみなさん、お久しぶり」
ナレーション「2023年はドラマ『美少女戦士セーラームーン』20周年」
ナレーション「この撮影で5人は1年以上もの時間を共にしました」
ナレーション「その後20年を経た現在も、5人は頻繁に集まり、交流が続いています」
ナレーション「そんな5人が今回、カメラの前で初めてのトーク」
ナレーション「セーラー戦士20年目の同窓会、始まります」
第1話の台本ぽく見えるが、オンエア日の表記が「12/25」になっていて(実際のAct.1の放送日は2003年10月4日)つまりこれはこの番組のタイトルということだ。ナレーターはCBCアナウンサーの加藤由香。いきなり「セーラー戦士のみなさん、お久しぶり」なんてナレーションから入るもんだから「ひょっとしてこの人、関係者?」なんて思って、実写版開始前にCBCで放送されたプロモーション番組「メイクアップ! 美少女戦士セーラームーン ~少女がセーラー戦士に変わるまで~」(2003年9月27日)のナレーターを確認してしまったが、あっちは同じくCBCの渡辺美香アナウンサーであった。
2. 提供バック
続いて5人揃ってポーズ。沢井さんはなぜかダンナさんの決め文句「やればできる」の握りこぶしを作っている。途中、本編のオンエア日が12月25日であることに気づいて、みんなが「メリー・クリスマス」と視聴者に手を振るが、実はこれ、沢井美優が自分のYouTubeで後日オフショットを公開するために休憩時間に撮っている動画なのであった。それを本編のスタッフが横から撮影しているという場面。正面からの動画は沢井のYouTubeで視聴できる。
北 川「これ写真?」沢 井「写真。動画も撮ってる」
泉 「今日はなんの日でした?」沢 井「今日はなんの日ですか?」小 松「メリークリスマス」
安座間「メリークリスマス」泉 「あ、そうなの」
沢 井「……言うてこれ私の(YouTubeの)オフショット用だから(笑)」
3. オーディション異聞
ということで同窓会だ。まずはオーディションの話題から。マーキュリーのオーディションが1回で決まらなかったという話は、私は初耳なような気もするが、知られていたのかな。いずれにせよ、こういうふうに当人たちの口から当時の様子が語られるのを直接聞けるのは嬉しい。でもみんな、記憶が曖昧。沢井さんの後日談によれば、丸山Pが立ち会って、子どもたちの記憶違いをチェックしてくれていたそうだが。
沢 井「20年だよ」泉 「ねー」安座間「すごいね」沢 井「20年!」北 川「20年、すごい」
沢 井「だからなんか、学校の同級生みたいな?」
北 川「本当は学校の友だちより会っているよね」
泉 「会ってる」安座間「家族より会ってる」沢 井「家族より(笑)」
北 川「節目ぜんぶ会ってるじゃん、ね」沢 井「そうだね」
沢 井「だって中学生だったもんね」北 川「そうだよ、里香……」
泉 「中学生だったから、みんなより本当に記憶がない」
沢 井「オーディション大変だったんだから(笑)」
泉 「すみません」北 川「そうだよね」
泉 「私もしたんだよ。オーディションはしたんだけど」北 川「亜美ちゃんだけ決まらなかったんだよね。その時に該当しなかったんだよね」小 松「うん」
北 川「でもう一回集め直しみたいになって」泉 「私もしたんだよ。オーディションはしたんだけど」
泉 「で一人でオーディション受けた」
ちょっと意味が分かんないんだけど、1回目のオーディションで亜美役だけが決まらなかったので、再度オーディションが開催された。それで、すでに役が決まって撮影の準備に入っていた4人は参加しなかったけど、浜千咲だけはもう1回オーディションにチャレンジして、亜美役を手にしたと、そういう理解で良いのかな。
確かに、2話とかの台本を見たら、亜美役を誰にするかは、けっこう悩みどころになってしまうかもしれない。まして最有力候補の浜千咲は京都在住の中学3年生。う〜ん、これはもう1回オーディションやってみて、本当にこの子で良いか考えてみよう。そんな感じだったのかな。
4. それぞれの一芸
ここで泉里香から、オーディションの一芸披露で何をやったかという質問が出る。沢井美優以外みんなわりとよく憶えているのは、たぶんドラマのオーディションが初めてか、それに近い経験だったせいではないかと思う。そもそも、どういう子がセーラー戦士にふさわしいのか、戦隊ピンクとも『不思議少女シリーズ』ともちょっと違うみたいだし、ミュージカルともまた違うし、選ぶほうも受けるほうも、受けさせる事務所も、それぞれに手探りであったに違いない。そんななか、これだけのメンバーが揃ったのである。
泉 「え、みんな何やったの? みゅうちゃん何やったの」
安座間「私、開脚」
北 川「そういうこと。『アクターズで、踊れるから、一曲踊れますって』とか」
いや、あの、安座間さんはアクターズ出身で、歌も踊りもできる人なのに、その安座間さんが「私、開脚」と言った後に、「アクターズの人なら1曲踊る」とか、何を言っているんだ北川さんは。と私は思ったが、しかし特に突っ込む者も咎める者もなく話は進む。あと、泉里香が何をやったのかも分からない。小松彩夏は卓球をやったが、実際にやったのではない。
北 川「なんかラジカセみたいなものを持ってきて歌っている人が私の前にいたの」小 松「うんうんうん」
北 川「『終った』と思ったよね」
小 松「私も思ってた」
北 川「何やった?」小 松「私は卓球」北 川「ああそうだそうだ」
小 松「卓球の素振り。卓球部で特技が卓球しかなくて、ラケットを岩手から持ってきて」沢 井「持ってきたんだでも」
沢 井「素振りして、審査員の前にスマッシュ決めて『よ~し』って」泉 「ヘ~可愛い」
沢 井「カッコ良い。いいね」小 松「カッコ良くはない。いま思うとすごい恥ずかしいけど」
北 川「何やったの、何やったの? 演技?」沢 井「いや憶えてない。演技、演技できない……あ、バスケかも」
小 松「バスケとかじゃない?」沢 井「あ、バスケ。でも別にボール持っていかないから」小 松「エア」沢 井「エアバスケ」
北 川「ドリブルみたいな」
北川さんが沢井さんに「演技?」と聞いているのは、やはり北川さんの記憶の中で、当初は沢井美優の演技力が図抜けていた印象が残っているせいだろう。
沢井さんの場合、同じCBCの『キッズ・ウォー5 ~ざけんなよ~』が2003年7月~9月期で、その後すぐセーラームーンだったから、だーっと続いていて、よく憶えていないのではないかと思うが、何をやったのかはちょっと気になる。
北 川「『制限時間何分の間に自分の特技をやってください』みたいなやつだった気がする」沢 井「そうだったんだ」北 川「3分とか5分とか」
北 川「え? 3分もやったの、じゃ」小 松「えっ?……そんな持たない」北 川「持たないよね」小 松「1分かかんないと思う」
安座間「開脚3分やんないよね」泉 「3分(笑)」
安座間「『開脚しまぁす』って言って足をかーって抜いて『はい!』って終った気がする」
そりゃそうだ。この手のオーディションで「特技を」なんて言われたら、長時間歌ったり踊ったり、とにかく自分を印象づけるために手段を問わない子だっているに違いない。制限時間が設けられているのはそのためだ。しかしこの5人の戦士はみんな、そこまで貪欲に自分をアピールしなかった(笑)。まあ、そういう子が選ばれるわけだね。
さあそして話は北川景子の芋版伝説へと進むわけだが、今回はこのへんで。実際の芋版が公開されることが今回の番組の目玉のひとつだが、しかし、右側の「タケ」とはなんであろうか。ともかく、また次回。