実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第911回】やはり長くなりそうです。北川景子in『まつもtoなかい』の巻(その1)

 

香 取「SMAPが解散して、そこからそれぞれの道を歩むときに、テレビという場所でのお仕事が減ってしまうかもしれないなか『新しいことをやってみたい』という方向に近かったのが三人。中居くんはテレビのなかでやって行きたい、という話があったので、進む道が違うって。それで実際にテレビのお仕事がなかなか無いなかで、テレビで活躍する中居くんを観ていたし。話があればテレビも出たいという思いもありながら、だからちょっと、違うところにいるなという」


 たとえば『踊る!さんま御殿』の司会者は王様みたいで、居並ぶゲストに話題を振っては、それぞれのトーク力を吟味し、自分の一存で善し悪しを決める。『A-Studio』の司会者は、事前に関係者に聞き込み調査をしておいて、その日のストーリーを固めてしまっており、ゲストは終始(話のテーマは自分なのに)受け身である。最後に司会者が締めのトークを述べる。ゲストは舞台ソデでそれを託宣みたいに神妙な面持ちで聞いている。『徹子の部屋』に至っては、ゲストはホストに気を使う義務が課されているようでもある。日本のトーク番組では、司会者の専制君主制を徹底したほうが人気が出るのかな。



 『ダウンタウンDX』(日テレ)は、今から30年前の1993年に始まった。放送当初は、毎回ゲストは一人もしくは一組ぽっきりで、合間にコントやクイズなど息抜き的なコーナーもあったけど、基本構成は、前半ではゲストからじっくり話を引き出し、後半からゲストを良く知る知人が一人二人加わって、話を広げていく、という感じだった。初回ゲストは菅原文太で、後半から山城新伍と川谷拓三が加わった。しかしだんだん番組のスタイルが変わり、何組ものゲストを入れて、浜田雅功の仕切りでテーマごとに面白トークを競うような形式になって、私はあまり観なくなった。



 『まつもtoなかい』レギュラー放送の第1回(2023年4月30日 フジテレビ)を観て、私は昔の『ダウンタウンDX』を思い出した。メインの司会が大物二人なので分かりにくいけど、これは司会がメインのトーク番組ではない。司会者のすぐれた話術は、ゲストからその場その時しか聞けないような話を引き出すために駆使される。実際、第1回目には香取慎吾を呼び、中居正広がそこにいるからこそ出来るような話を、松本人志が引き出していた。そういう意味で非凡な番組だと思ったわけです。



 そして第2回(2023年5月7日 フジテレビ)は「北川景子があこがれの上沼恵美子に会う」という内容だった。こういう企画って『しゃべくり007』や『行列の出来る法律法談所』にもある。「芸能人が憧れの人と初対面」みたいなコーナーだ。しかし上に挙げた番組の場合だったら、だいたい、まず北川景子が登場、周囲から感嘆の声と「綺麗」だとか「顔小っちゃ」だとかの言葉がひとしきり飛び交ったあと、「実は北川さん、コテコテの関西人で、子供の頃からテレビで観ていた上沼恵美子さんの大ファンだそうです」という流れで進む。「夫が上沼さんの料理番組を引き継いだので、上沼さんにひとこと御挨拶したいと思いながら、まだお会いできていないんです」「さあ、北川さんが子供の頃から憧れていた上沼さんは、本日このカーテンの向こうに、お越しになっていらっしゃるでしょうか。なかなか東京には来てくださらない方ですからね。どうでしょう、御対面!」こんな感じになるよね。ここから始まるトークって、なんとなくもう、だいたい想像できちゃいませんか?



 でも『まつもtoなかい』第2回(2023年5月7日 フジテレビ)では逆に、上沼恵美子がまずスタジオに現れる。この時点でもう普通じゃない。北川さんが上沼さんに会いたいって言っているのに、上沼さんのほうが先に出てきてしまうのである。で、松本人志と上沼恵美子といえば「M-1グランプリ」の審査員席を誰もが連想するよね。なのでまずは、そのへんから話が始まる。



松 本「この距離も、最近あんまり」
上 沼「初めてですね」
松 本「そうかも知れないですね、あの、M-1の」



上 沼「こう横並び、こうやからね」
松 本「あるんですけどね、はい」



中 居「面と向かうってなかなかないですよね」



上 沼「あの、しゃべらないですよね、松本さん寡黙でしょ」



松 本「いやいやいやいや、違うんですよ。上沼さんがあんまり喋ってくれない……」
上 沼違う違う違う!



松 本(笑)



中 居「だって、お隣で、『はい、じゃあCM入ります』って言ったときとか、『最近どうしてんの?』とか」
上 沼「いえいえ、あのM-1の審査員においては、みんなピリピリしていて、審査員みんなもう機嫌悪いんですね」
松 本「なんかあんまり喋らない」



上 沼「イヤな仕事ですわ」



松 本「いや僕は、そうじゃないんですよ、上沼さんと紳助さんの前では、僕やっぱりちょっと、やっぱりね、自然体にはなれないところがあって」



中 居「数少ない一人ってことですよね」



上 沼「いやもうありがとうございます。私はもうダウンタウンさんの本当にファンなの。言うの初めてなんだけど」


 という感じで、松本人志が上沼恵美子をリスペクトすると、お返しにと上沼が、生意気盛りだったダウンタウンの昔話を暴露したり、関西テレビに勤めていた上沼恵美子の夫が、ダウンタウン初のレギュラー番組を担当していたことををちょっと自慢げに紹介したりして、徐々に会話が温まってゆく。さらに上沼は中居正広に向かって、最近レンタルビデオで中居主演の『砂の器』(2004年、TBS)を観て感動した話題を振る。



上 沼「この間ね、この間『砂の器』を観てしまったんですよ、だいぶ前のドラマって分かってるんですが」



中 居「すっ『砂の器』ってずいぶん前……」
上 沼「はい、GEOで借りてきて」
松 本「ずいぶん前ですね」
中 居「15年以上前ですよね」



上 沼「はい、それを拝見しまして。でもちろん松本清張さんのファンでぜんぶ読みあさって」
中 居「はい」
上 沼「和賀英良。映画、ドラマ、いろいろ全部観ました。もう和賀英良、いろんな方がされましたね。加藤剛さん、いちばん最初で……いっちゃん良かった!」



松 本「いっちゃん良かった」
上 沼「はい。もう最高でした」



中 居「本当に言ってます?」
上 沼「ただね、あの」



松 本「上沼さんあのね、6分くらい前から、北川さんを出してくれって」



中 居「(笑)それ言わなくていいんですよ。気持ちよくお話されているのに」



上 沼「ちょっと待ってください。私ボケたおばはんやないねんから、気持ちよく喋っとんのに」
中 居「冒頭はね、こんぐらいあってもいいじゃないですか」



松 本「いやいやいや、ありがたいですけれども……」


 ずっと控えていたらしい北川景子の姿が映って、これで登場かと思うと、まだである。上沼恵美子はこんなふうに、初対面の相手をきちっと褒める如才なさもあるが、一方で「大阪の女帝」みたいな話も多い。なので北川さんはまだ措いといて、今度は中居正広がそのあたりの話題に切り込んでゆく。俳優としての才能を褒められたお返しがこれって、中居正広もすごいね。



中 居「僕もだから、さっきも話しましたけど、関東で。関東育ちなんで」



上 沼「そうですよね」



中 居「やっぱりこう、上沼さんもあんまり面識なかったもんで、あんまり(普段は)見ないんですけど、こう調べてみて、でいろいろと拾ってから今日来ようかなと思ってたんですよ」



中 居「で、インターネットで『上沼恵美子』で調べていたら、一発目に『シャネルでキレる』って出てきたんですよ。だからもう止めようと思って。怖い怖い怖い怖いって」



上 沼「ええシャネルでキレましたよ。パリのね」
松 本「簡単に言うとどういうことなんですか?」



上 沼「まあ簡単に言うと、パリのシャネルに行きました。そしたら、日本人だから、日本人の店員を呼んで来るわけ。トモヨ言うたかな。で、『トモヨが対応しなさい』て、そのトモヨの対応が悪かった、で、お前いいかげんにせえよ、ということですね」



松 本「パリで『お前ええかげんにせえよ』って言葉が」
上 沼「そりゃ言いませんけど」



中 居「あ、そ、いや本当だと思わなくて……」
上 沼「いや本当です本当です」



松 本「じゃシャネルが悪いんじゃなくて、店員さんがちょっと」
中 居「対応ね」
上 沼「そうですそうです。買ったものを包めと言っているのに、中々出てけえへんから聞いたら『ランチに行った』言いよんねん」



上 沼「ひとの対応の途中にランチって、昼ご飯食べに行くって、どんなことやって、そんでまあ、向こうのフランスの店員さんが包んでくれて」



松 本「北川景子さん出してくれって言われてから12分経ちました」



 ここでようやく北川景子の話題に移行するが、本人はまだ登場しない。「しゃべり上手」「相手を持ち上げるのも上手」「でも毒舌でおっかない」という順序で上沼恵美子のキャラが仕上がったところで、今回、自分が北川景子に指名されたことに対する見識を披露するのだ。



上 沼「あのね、私はね、信じられないわ。さっきもスタッフに聞いたんですが、本当に北川景子さんってこの世にいらっしゃるのかな、と思ってるんです」
松 本「ああなるほど、そっか」



中 居「僕はもう何回かありますけど」



松 本「僕も1回ぐらい、あるぐらいなんですよ。大昔です」



中 居「でもまあ、こんなこと言っちゃ失礼ですけど」



中 居「北川景子さんは、上沼恵美子さんと会いたい」



上 沼「女優さん、おっしゃいます。あのね、私を言うとなんかちょうど感じ、いいんだと思うんです」
中 居「ちょうど、いい(笑)」



松 本「ああ~なんとなくこう」



上 沼「なぜかって言うと、ちょっとマニアックじゃないですか、上沼恵美子って。そして畑が違う。で、まあなんか、ええとこ衝いてるんですよ」
中 居「安牌、安牌ってことですか?」



上 沼「安牌、そうそうそう」



松 本「今日ちょっと聞いてみましょうよ。本当にどういう気持ちなのか」



中 居「さあそれではお呼びしましょう、この方です」


 「本当に北川景子さんってこの世にいらっしゃるのかな」と持ち上げつつ「私を言うとなんかちょうど感じ」と、敵の魂胆を見抜いたようなことを言って、さあどうなるか、御対面という運びである。この番組のトークバラエティとしての非凡さを説明しようと思ったら、ぜんぜん北川さんが出てこないうちに、なんかだいぶ字数を費やしてしまった。予想されたことではあったが、以下次回に続く(笑)。