実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第722回】週末は出張続きの巻

 今週末も土日が臨時の仕事で、満足な更新ができない。小ネタをひとつふたつ。

1. おめでとう、中の人



 すでに『M14の追憶』で御案内のように、円谷プロダクション所属の岩田栄慶さんが結婚された。岩田さんの本職はスーツアクターだが、一昨年の『ウルトラマンジード』(2017年、テレビ東京系)ではウルトラマンの「中の人」だけでなく、秘密組織AIB所属のシャドー星人ゼナも演じていた。このMIBならぬAIBとは、星間規模で展開しているらしい宇宙人による宇宙人の犯罪取り締まり組織だが、唯一の地球人メンバーに愛崎モアがいた。その愛崎モアを演じていた長谷川眞優さんが先日、芸能界引退を表明して、やっぱりウルトラマンで活躍された女優さんはほとんど長続きしないなあ、とファンを嘆息させていたんだが、なんと岩田さんの結婚相手が長谷川眞優さんということが明らかになって、つまり、実はウルトラ婚による寿引退だったのである。これはめでたい。



 スーツアクターの岩田栄慶が『ジード』でゼナ役に起用された背景には、坂本浩一監督の強い推薦があったという。そのおかげでこのウルトラ婚というか異星間婚が成ったわけで、坂本監督もいいことするじゃないか。ウルトラマンは今シーズン、新たに『ウルトラタイガ』が始まり、もちろん岩田栄慶は主役のウルトラマンタイガを演じている。坂本浩一は今シーズンは『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(沢井美優はまだか)の監督ローテーションに入っているので、ちょっと参加は無理かも知れない。ただし脚本とシリーズ構成には中野貴雄が復帰している。中野貴雄は『ギンガS』で脚本・シリーズ構成に加わって以来、ジード以外の全作品にかかわっていて、すっかりウルトラマン・シリーズ制作陣の顔となった。


『ウルトラマンギンガS』より、最上もがと小池里奈


 中野貴雄は1990年代、「特殊AV監督」という肩書きで映像業界に登場し、濃い特撮ネタを仕込んだアダルトビデオやVシネで、ごく一部のオタクを喜ばせてくれた。





 『花弁の忍者 桃影』とか『アクメくん 妖艶大戦争』とか『海底轟姦』とか『巨乳ドラゴン 温泉ゾンビVSストリッパー5』なんてタイトルの作品を撮る方も撮る方だし、ここまで実用性に難のあるAVを売る方も売る方だが、それを全て観ている私も私だ。将来が危ぶまれたが、ウルトラマンシリーズの脚本家としてみごとに更生した。



 『海底軍艦』ならぬ特殊AV『海底轟姦』。先端部はモーター音を立ててクネクネする。
 失礼しました。で、その中野監督に『美巨乳コスプレ戦士クインビーハニー』(2000年)という、まあタイトル通りのエロ系Vシネがある。



 ビデオジャケットは、ラス・メイヤーのカルトムービー『ファスター・プッシーキャット・キル・キル』へのオマージュ。主演のクインビー・ハニーを演じたのは「びとら」こと平石一美。



 一方こちらは『ロイヤル戦士クイーンQ』。ドラマ『謎解きはディナーのあとで』第3話「二股にはお気をつけください」(フジテレビ、2011年11月1日放送)に劇中劇のかたちで出てくる特撮ヒーローだ。影山(櫻井翔)は、実はクイーンQの大ファンなのである。



影 山「旦那さまから、お嬢さまの働く姿を写真で送ってほしいという 依頼がございましたので」
麗 子「珍しくちゃんと仕事してるじゃない」



影 山「おかげさまでこのような作品が」
麗 子「これ私いないよね」



影 山「ええ、まさかこのような場所で、クイーンQの等身大パネルに出合えるとは」
麗 子「クイーンQ? 」



影 山「英国王室をモチーフとした特撮ヒーローでございます」



影 山「身長はヒーロー史上、最も低い159cm。必殺技はフィッシュ&キック」



影 山「その優雅な戦いぶりから、マニアの間では伝説として……」



麗 子「私を撮りなさい私を」


 さて、この『謎解きはディナーのあとで』第3話のエンドクレジットを見ると、丸田聡美と、今回結婚した岩田栄慶の名前が出てくるのだ。



 丸田聡美さんも岩田さん同様、円谷プロのスーツアクターで、女性で小柄なので、ピグモンとか、あと『ウルトラマンジード』ではペガッサ星人ベガとか、そういう「お友達系怪獣&星人」をもっぱら演じている。



 てことは、丸田聡美さんがクイーンQの中の人だね。じゃあもう一方の岩田栄慶さんはどこに出てくるのか。改めて第3話を観たけれど、考えられるのはこれしかない。



 このクイーンQのキックを浴びている怪人。これだよね。これ以外には考えられないや。
 『謎解きはディナーのあとで』が放送されていた2011年当時、岩田さんも丸田さんも、すでにスーツアクターとしては主役級であった。そういう意味では、さすが櫻井翔と北川景子のドラマだけあって、贅沢なのだ。
 まあとにかく、改めまして岩田さん長谷川さん、ご結婚おめでとうございます。


2. 少数者の権利


 しばらく前に、日清のCMでテニスの大阪なおみ選手をアニメ化したら、肌の色が実際よりうんと白くなっていて、「ホワイト・ウォッシング」だと非難されて、放送を自粛したことがあった。このブログでも取り上げたので憶えている方が居るかも知れない。



 「ホワイト・ウォッシング」というのはもともとハリウッド用語らしい。「本来は有色人種が演じるべき役を白人が演じること」という意味である。古くは映画のなかで白人が顔を黒塗りして黒人役を演じたこともあったようだ。



 あと『ウェストサイド物語』(1961年)でナタリー・ウッドが演じたマリア(プエルトリカンという設定)や、エリザベス・テイラー主演の『クレオパトラ』(1963年)なんかもそういうものなんだって。昨年末のバラエティで、ダウンタウンの浜田雅功が『ビバリーヒルズ・コップ』のエディ・マーフィーの扮装をして顔を黒塗りにしたら海外の人から非難されたが、黄色人種が黒人の扮装をするのは何と呼ぶのだろうか。
 で、今回は「ストレート・ウォッシング」の話題。こちらは本来は同性愛的な表現を、いわゆる「ノーマル」な表現に変えてしまうことを言う。性的マイノリティへの差別になるとのことである。



 日本の漫画やアニメを販売する米国のViz Mediaが、待望の吹き替え版最終シーズンとなる限定版『美少女戦士セーラームーン セーラースターズ』シーズン5 セット1での間違いについて正式に謝罪した。Viz Mediaによると、同性愛者で恋愛の意味でのパートナーであるセーラーネプチューンとセーラーウラヌスを、そうではないように表現していたとのことだ。
 エピソード中の間違いというわけではなく、Blu-rayとDVDのシーズン5 セット1の限定版に付いているブックレットに書かれた歌詞のローマ字に問題があった。



 「『セーラームーン』をローカライズするという名誉を、特にセーラーネプチューンとセーラーウラヌスが友達ではなくパートナーであるという事実を認めることをVIZのチームはとても嬉しく思っています。『美少女戦士セーラームーン セーラースターズ』のブックレットに間違いを載せてしまったことを心からお詫びいたします」(「IGN JAPAN」2019年6月27日)


 「歌詞のローマ字に間違いがあった」という意味がイマイチ分からないが、要するに『セーラースターズ』ボックスセットに封入したブックレットで、ネプチューンとウラヌスを「お友達」としているのが、二人の関係を隠している、つまり同性愛差別になるという指摘があって、メーカーがお詫びして訂正したという話だ。同記事によると、1990年代、最初にセーラームーンが北米で放送されたときも、吹き替えでこの二人は「イトコ」という設定にされていて、後あと議論の的となったらしい。



 このあたりのニュアンスが、正直ちょっと分からない。そもそも日本では歴史的に同性愛をタブー視したり抑圧する伝統がなくて、その点は、同性愛を神の意志に背く重罪とみなすキリスト教文化とは根本的に異なっている。(なんかおおげさな話になっちゃったな。)武家社会では衆道はけっこう当たり前で、フランシスコ・ザビエルが日本に布教に来て驚いたのもそのことだった。大名たちが「男色は罪」と言われて怒り出すとは想像もしていなかったそうだ。マイケル・ジャクソンは1990年代前半に男子児童への性的虐待疑惑をかけられ、裁判で無罪を勝ち取ったにもかかわらず、相当なスキャンダルでダメージを受けた。1990年代の終わり頃『週刊文春』が、ジャニー喜多川の所属タレントに対する性的虐待疑惑を報道して訴えられた。裁判はいちおうジャニーズ側の勝訴に終わったが、「一緒にお風呂に入るように言われて逆らえなかった」という元所属タレントの証言そのものは事実と認定され、文春に課せられた損害賠償額は880万円から120万円へとおおきく減額された。イギリスのBBCは、先日のジャニー喜多川の訃報を報道する際、このスキャンダルもきちんと押さえていたが、私が見かけた限り、国内でいろいろ流れた「ジャニーさん」の追悼番組で、そのことに触れた報道は一件もなかった。



 申し訳ない、話がヘンな方向に行った。未成年への性的虐待はまた別の犯罪問題だ。すみませんでした。
 とにかく、我々は同性愛への抑圧が少ない文化的伝統に生きていて、そのうえで宝塚だとか百合だとか、やおいというようなオタク文化が育っている。美少女同士がいちゃいちゃする漫画やアニメを好む男性ヲタもいれば、BLに邁進する腐女子もいる。そういう緩さのなかで、天王はるかと海王みちるについても、原作本の淡い雰囲気を好む人もいれば、二人の関係性をハードコアに追及した同人誌に突き進む人もいる。どの程度のレベルで受け取るかはこっちの妄想次第、という程度がいちばん良いと私は思うんだ。日本の場合は。それがこう、公式ブックレットにおおっぴらに「同性愛者で恋愛の意味でのパートナー」って書かれると、日本人的にはちょっとどうもなあ、と思うのだが、そんなこと言うとアメリカのリベラル層からは性的マイノリティへの差別と受け止められてしまうかもな。気をつけよう。



 それで気になるのが実写版の亜美だ。彼女のうさぎちゃんへの一途な思いも、アメリカでは同性愛として認識されるのだろうか。だとするとあれだな、はてなブログに移行してからの『M14の追憶』のトップには、ブログタイトルのとなりに「いやじゃないかも。わたし月野さんと一緒に戦いたい!」というフレーズが掲げてあるけど、人によっては、あれは「ウチはLGBT支援サイトです」というバナーに見えるのかも知れない。進歩的ですね。




 いやなんか変な話題ですみません。時間もなくなってきたので、本日はこんなところで。来週末もちょっと名古屋を離れなくちゃいけないんだけど、ぼちぼち『指定弁護士』レビューを再開したいと思っています。