実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第712回】不安もあるし悔やみもしますの巻(小松彩夏『白衣の戦士!』第3話)


 『賭ケグルイ Season2』は第4話を終えて、えっ次がもう最終回? 第1シーズンは全10話だったけど、今度は5話プラス劇場版という『咲 -Saki-』と同じ構成なのだ。なんか去年と話のテンポが違うなあと思ったら、そういうことだったのか。今シーズンは松田るかがぐっと前に出て嬉しい反面、森川葵と高杉真宙の活躍は劇場版まで持ち越しだ。岡本夏美はどうかなあ。ゴクドルズのリーダーだったし、仕方ないか。



 なんて、のんびり書き始めたけど、私、池袋の暴走事故が身にしみているんですよ。うちの父も同じくらいの年齢で、自動車を運転している。そろそろやめられればいいのだが、一気に免許を返上するところまでは、なかなかいかない。一昨年に家族で話し合い「必要なとき以外は運転しない」「特に暗くなったら厳禁」などと約束したくらいのところだ。
 ひとつには、うちの実家のあたりが、自家用車なしには生活しづらい、っていうことがある。商店街もなくなり、コンビニも撤退した。でも、どうしてもクルマがなきゃ無理ってほど田舎でもない。もうひとつ理由があって、私や姉が帰省すると、父はよく一緒にドライブに出たがるのだ。母が存命だったころ、ドライブが日課だった時期があって、その想い出に浸りたいのである。私が運転して乗せてあげられればいいのだが、私は運転免許を取らないまま今日まで来てしまった。助手席で注意して見ていると、ハンドルを握る父は、瞬時の判断力や観察眼が、やはりほんの少しずつ衰えている。本人も自覚して、運転は慎重になったが、いずれは全面的に止めなきゃいけない。事故が起こってからでは遅いもんな。
 亡くなった母は晩年の三年間くらい、化学療法で闘病していたのだけれど、副作用がつらくて、ふさぎ込むことがよくあって、父はそんな母を連れて自動車であたりをひと廻りした。そうすると母の機嫌が良くなるので、抗がん剤より自分とのドライブのほうが効き目がある、と父は自慢した。
 それは確かにその通りで、実際、母の病気に化学療法はたいして効果がなかった。これについては担当医からも説明を受けていて、あまり副作用がきついなら、むしろ止めちゃったほうが良いと私も思っていた。でもそれは、治療を諦めて、より良い人生のエンディングを考える、という意味なので、「薬で治す」と信じていた両親には最後まで提案できなかった。もちろん、両親が本当に治せると信じていたのか、そう思いたかっただけかは分からないし、今さら考えても仕方がない。
 腫瘍の転移が複数見つかり、母が入院することになったときも、父も母も、いずれ治して退院する、という意気込みだった。それはほぼあり得ない話なので、もう、すべての治療を拒否して、残された日々を、副作用の苦しみや検査の負担なしに過したほうが良いんじゃないか、と私は思い、姉とも少しそんな話をしたが、やはり両親には最後まで言えなかった。そしていまは、帰省するたびに後期高齢者の父の想い出のドライブに付き合って、「そろそろ運転免許を返上したらでどうですか」と切り出せないでいる。優柔不断ですね。
 すみません『白衣の戦士』の話をしようと思ったら、いきなり話がへんな方向に飛び出した。今回のエピソードは思いだすことが多いうえに、個人的に池袋の事件まで結びついてしまった。



はるか「初めての夜勤かぁ。なんか一人前のナースになったみたいで嬉しいな!」



夏 美「はぁ? 何が一人前よ。今日は私たち指導係について勉強するんだからね」



貴 子「そうそう、まだまだ若葉マークの試運転みたいなもんよ」



斎 藤「はい!」



はるか「また差つけるようなこと、しないでよね。いっつも新人どうし較べられて迷惑なんだから!」



斎 藤「そんなこと言われても……」



本 城「いよいよ夜勤デビューか。二人とも頑張ってよ」



斎 藤「はい 頑張ります」
はるか「気合入れて15時間も寝て来たのでバッチリです!」



夏 美「そんなに寝たの? 寝る子は育つってホントだね」



雪 乃「寝だめなんかしなくても、夜勤には仮眠する時間もあるのに」
絵里奈「夜食タイムも」



はるか「夜食?お~、楽しみだな~!」

 さてさて、『白衣の戦士』第3話「新米ナースの涙!!限りある命と向き合う」(日本テレビ、2019年4月24日放送、脚本:梅田みか/照明:北條誠/撮影:坂本誠/演出:本多繁勝)。中条あやみの新米ナースが末期患者を看取る話で、クライマックスは、長らく会わなかった息子が、中条あやみのはからいでお見舞いにやってくる場面だった。私は別に母と絶交していたわけではないが、看護師さんから、母がいつも私に会いたがっていると聞かされ、それから亡くなるまでの半年ほど、週末ごとに新幹線に乗って名古屋と埼玉を往来していた、なんて想い出もあって、つい見入ってしまった。
 いちおう自分の気持ちを整理したところで今回のエピソードを振り返ると、台本は、ドラマによくあるプロットを三つほどつなげたかたちになっていた。

1. どうしてあんなに詳しいんですかね?



 新しい入院患者の中村加奈(財前直見)が、実はベテランのナースで、新人のはるか(中条あやみ)はもちろん、中堅の夏美(水川あさみ)にも次々と、安全確認の欠如や患者への配慮不足を指摘し、教育的指導を与える。そのひとつひとつが理にかなっているので、二人ともグウの音もでない。



はるか「まったく、何なんですかあのオバさん?」



夏 美「患者さんのことオバさんなんて言わないの」



はるか「だって入院して来てから検査行くまでに、もういくつダメ出しされたか」
夏 美「はいはい もう分かったから」



本 城「でもさ、その中村さんの言うこと、ぜんぶ正しいんだよね?」



夏 美「確かに… どうしてあんなに詳しいんですかね?」



斎 藤「入院慣れでもしてるんですかね?」



はるか「いくら正しくったって、あんなの新手のナースいじめですよ!」



雪 乃「あ〜、わたし担当じゃなくてよかった」
絵里奈「ですよね」


 こういう話って、伝説のコンシェルジュが身分を隠して主人公が働くホテルに宿泊していろいろダメ出しするとか、フランス仕込みのギャルソンが評判のレストランを試しにやってきたとか、職業ものドラマにありがちな設定である。

2. 生きてる間にひと目会いたかった



 加奈には、三年前に親子ゲンカをして出て行ったきりの一人息子がいる。「あれから私も、息子はいないもんだと思って、ひとりで生きて来たの。かえってせいせいしてるのよ」と強がっている。でも、すでに夫をなくした彼女にとっては唯一の肉親である。それに加奈の病状はかなり深刻で、予後の見通しは良くない。病気のことを知らないままお母さんが亡くなったとしたら、息子はどう思うだろう。



はるか「もしかしたら、本当は息子さんに会いたいんじゃないか、って思ったんですけど、中村さんが知らせなくていいって言うなら、そうするのがいいんですよね?」



夏 美「そうね……でも息子さんはどうなんだろう」



はるか「えっ?」



夏 美「今までたっくさん見て来たんだよね。患者さんの死に目に会えなかったご家族を」



夏 美「生きてる間にひと目会いたかった、最後にもう一度だけ話したかったって」



夏 美「だから、中村さんの息子さんも病気のことを知らないままお母さんが亡くなったら、きっと後悔するんじゃないかな」



夏 美「とにかく 後で師長に報告しよう」



はるか「はい」


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本 城「皆さん お疲れさまでした」
看護師たち「お疲れさまでした」



雪 乃「疲れた~!」



雪 乃「夏美さん今日は『なすまま』行きます?」



夏 美「うん、行く」



絵里奈「立花さんも行くでしょ?」



はるか「あっ、私、ちょっと忘れ物しちゃったんで」



 はるかはいつもの飲み屋「なすがまま」には行かず、病院に残って加奈の息子探しを始める。



 ガンコに子供の見舞いを拒む入院患者と、おせっかいを焼いて子供を連れてくる善良な主人公、そして親子の和解。こういうのもよくある話だが、主人公がどうやって出て行った家族を見つけ出し、どういうふうに説得して連れてくるかは、脚本家の腕のみせどころである。



 でもこのドラマの場合、はるかが「息子はいちご園でいちご栽培をするために会社を辞めて母親とケンカになった」「名前は太一」という二つの情報を聞き出して、Googleに「いちご園 中村太一」と入れたら、すぐ本人がいるいちご園のサイトが引っかかった。



 ちょっと安易でないか? しかも、はるかがそのいちご園を直撃すると、太一も二つ返事で母を見舞いにやって来る。



雪 乃「失礼します。中村さんにお見舞いの方がいらっしゃってます」



加 奈「お見舞い?」





太 一「母さん……」



加 奈「太一……」


 この太一(白洲迅)って『ゴクドルズ』の主役で、この人が整形すると岡本夏美になる。




 やっぱあれだけの美少女に整形するには土台がイケメンでないとな。ということはさておき、太一は自分のいちご園で採れたいちごを持参して見舞いに駆けつけ、母に食べさせる。




 そしてその翌朝、母は息を引き取り、はるかは看護師のくせにボロ泣きする。あざといといえばあざといが、それは新米ナースの通過儀礼みたいに描かれていて、中条あやみのマンガ的なキャラクター設定のせいか、私はあまり気にならなかった。

3. ナースにとって何より大切なこと


 加奈は特に新人ナースのはるかに厳しくあたる。最初はちょっと凹むけど、はるかもめげない。でも本当はとても可愛がっていたことが、死後、息子の太一の口から語られる。これもけっこうベタだなあ。
 (次のシーンの最初のところ、新米ナースに注意を与えたあと、優しく微笑んでみせる小松彩夏の細かい芝居を見てやってください。)



雪 乃「立花さん!」
はるか「はい!」



雪 乃「307の関根さんに頼まれた洗髪は?」



はるか「すいません、すぐ!」



絵里奈「立花さん」
はるか「はい!」



絵里奈「午後の尿測は?」
はるか「すいません、いま!」



夏 美「も~う、『すぐ』とか『いま』とか、そば屋の出前じゃないんだからさ。結局、なにもできてないじゃない!」



はるか「すいません」



真 由「まったく、伝説のナースにしごかれて少しはマシになったと思ったら」




はるか「何 ジロジロ見てんのよ!」



斎 藤「別に……」



夏 美「あっ」





太 一「お二人には本当に、よくしていただいてありがとうございました」



夏 美「いえ、私たちのほうこそ、中村さんからいろいろ教えてもらいました」



はるか「私は中村さんに叱られてばかりで……」



太 一「母が言っていました。立花さんを見ていると、看護師になりたてだった頃の自分を思い出すって」



はるか「えっ?」



加 奈「看護師としては全然ダメ」



加 奈「でもね、あの子の笑顔は、患者さんたちの心を明るくする」



加 奈「それはね、ナースにとって何より大切なことなのよ」



はるか「中村さんが、そんなことを……」


 というふうに、ベタな材料の寄せ集めみたいな話だけど、やっぱり泣けるよな。まあ泣ける話がイイ話とは限らない。「泣きながら『全然おもしろくなかった』と言ってもいいのに」とナンシー関も『小耳にはさもう』で書いていた。私は自分の母のことを思い出したり、看護師という職業のあり方について考えたり、いろんなことを考えてしまって、今回はいろいろ複雑だったな。日本は世界でも真っ先に超高齢社会に突入しているのに、医療と看護をめぐる基本的な問題への取り組みがぜんぜん遅れている。医療と看護ばかりではないか。
 以上、今回は本題に入る前に書いたり消したりを繰り返してなかなか進まなかったので、もうひとネタ取り上げようと思っていたんだけど(AVソムリエの話とか、安座間美優の銀行ドラマとか)ここまでとしておく。みなさん良い連休を。