今日も用事があるのでサクサク終えるね。いろいろあったが『帰ってきた家売るオンナ』本編も大団円である。
アパート取り壊しで立ち退きを迫られているシングルマザーの淀川水樹(芦名星)は、息子の莉生(鳥越壮真)に残すためにも、次の住まいは賃貸ではなくて自分のものにしたいと思っている。でもフリーのイラストレーターをやっている彼女の収入では、無理なくローンを組める物件は簡単に見つからない。足立は当面の間、一ノ瀬(笑福亭鶴瓶)が万智から買い取った「人の行き交う交差点」に住んでもらうことにする。
水 樹「いま住んでいる家の退去日がいよいよ迫っていて、どうしようかと思っていたんです」
足 立「正直言って、お買いいただける物件はなかなかありません。でも賃貸の格安アパートを見つけました」
水 樹「やっぱり賃貸……」
足 立「いいえ、取りあえずの家です。淀川様のご予算に合う物件を見つけるまでの間、そこで待っていていただけませんか?」
足 立「大家さんは以前、住もう君の中に入っていた方で、僕もよく知っている良い方です」
足 立「必ず僕が水樹さんにとって最高の物件をみつけますから、時間をください」
水 樹「足立さんのおっしゃるようにします」
足 立「ありがとうございます」
足 立「莉生君、住もう君とお母さんと一緒に写真撮ろっか」莉 生「うん」
いい感じだねえ。このとき芦名星は33歳で千葉雄大は28歳だったかな。水樹と足立もだいたいそんな関係で、あの足立王子が、懸命に生きる歳上の美しいシングルマザーを、人生かけて守りたくなってしまう、という趣旨でいいんだよね。千葉雄大が童顔すぎて両者の関係がイマイチ分かりにくいってのもあるんだけど。
N 「たった二週間でテーコー不動産新宿営業所の売上げを五倍に増やし」
N 「お客に様々な幸せを届けて三軒屋万智は東京を去った」
三軒屋万智は自分が家を売って売上を伸ばしただけではなく、足立や庭野や鍵村をしっかり教育してくれてもいたのである。鍵村(草川拓弥)なんかすっかり「住もう君」としてのプロモーション活動にハマりきっている。
鍵 村「課長、チラシ配りの後、本社のイベント行ってきます。その後、目黒営業所の現地販売、その後、世田谷営業所の現地販売です」
布 施「おおぅ、頼む」
鍵 村「かしこまりました。行ってきます」
布 施「行ってらっしゃい」
布 施「あいつ、不動産屋より着ぐるみタレントの方が向いているんじゃないか?」
布 施「何だかなぁ……あ、俺トイレ行くけど、お前行く?」
足 立「お供します」布 施「ああそう」
なぜここで連れションなのか意味がわからない。てかメイキングによれば、もとの台本の布施課長のセリフは「何だかな……トイレ行って来よ(出て行く)」なのだが、梶原善がアドリブで千葉雄大に「俺トイレ行くけど、お前行く?」と振って、千葉君が「お供します」と悪ノリしている。
正直、こういうのは私はあまり感心しないけどな。ちゃんと台本通りのテイクも撮っておいて、最終的にはそっちを使うべきだと思う。でもこのドラマはそういう現場の空気の楽しさを本編に活かす方向で撮られているみたいだ。笑福亭鶴瓶がメインゲストだからかもね。その鶴瓶のラストシーン。
一ノ瀬「さあどんどん食べてや。ぎょうさん作ったからな」
足 立「考えましたね。週一回のバーベキュー参加を条件に部屋を安くするなんて」
一ノ瀬「三軒屋万智に言うといてや。俺は大家に向いてたって」
足 立「わかりました。伝えます」
水 樹「材料費もぜんぶ大家さんもちで、ホントに助かるんですよ」
莉 生「ぼく毎日バーベキューでもいい」
一ノ瀬「毎日やったらこっちがもたんわ」
庭 野「もうちょっと待ってくださいね。いい物件探しますから」
葉 山「大家さんに良くしてもらってるんで、ずっとここでも良いような気がしてしまいますよ」
蓮 「駄目だよお父さん、あきらめちゃ」
葉 山「そうだったそうだった」庭 野「自分もお客様の人生をあきらめません」
一ノ瀬「ええこと言うなあ。あの女の教えやろ」
庭 野「はい、自分の師匠、三軒屋万智の教えです」
葉 山「あの相撲の強いきれいな人?」
一ノ瀬「伝説の家売るオンナや」
平和が戻って去って行くヒーロー。なんか西部劇のラストシーンみたいになってきましたね。それはそうと、要潤は香川県の出身で鶴瓶は河内出身の兵庫県在住。非常に雑な分類で悪いけどオフでの西日本ノリは一緒だね。メイキングより。
要 「ようしゃべりますね子供相手に」
鶴 瓶「自分もしゃべりたいから来たんちゃうの」
要 「家族に乾杯じゃないんですよ」
一般の人「あらっ、違うの?」要 「ほらやっぱりそう思ってる(笑)」
本編に戻る。そうこうしているうちにあたりは暗くなり、花火大会が始まる。
足立と水樹の関係は、ここまで足立の一方的な片思いかな、という感じもあったんだけど、ここでちょっと、水樹の視線にも情感がにじみ出てくる。こんなふうに見つめられちゃったら、落ちるよなあ(何言ってるんだか)。一方、同じ花火を見つめる屋代と万智はあいかわらずだ。
一ノ瀬「日本一!」
蓮 「すごいねお父さん」葉 山「ああ、すごいな」
庭 野「屋代課長、言えたかなぁ……言えないよなぁ」
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万 智「何ですか?」
屋 代「いや」
屋 代「きれいだねえ……花火」
万 智「きれいです」
なんとなく、でも万智も屋代課長の告白を待っている感じがなくもない。このシーンに続いて、お客さんから預かっていた赤ちゃんをお返ししたあとのサンチー不動産で、万智がベビーベッドに置き忘れられたガラガラを手にとって振ってみるシーンがある。
シリーズ中に婚活パーティーにも出席していたし、結婚して子供を産みたいという願望が万智にもあるのだろう。ただ、彼女の思考回路は、そういうプライベートな夢を「家を売ることです」という目的に力業で結びつけてしまう。たぶん、いま地元の社長と組んで老人ホームの計画を勧めている万智は、次には幼児とのからみで何か事業を始めるにちがいない。そしてそのために屋代の赤ん坊を産んでみる必然と意義はある……と考えているかどうかはちょっと分からないよね。
屋 代「門脇社長が君のことを絶賛していたよ。凄いアイデアマンだって」
(死んだ爺さん、婆さんは、きれいさっぱり忘れ去り、最後にヤンチャしませんか?)
(心も体も解き放て! 本番はこれからだ)
万 智「この国は、じじいばばあの国になります。じじいばばあの人生が輝かなければ、この国は輝きません」屋 代「そうだね……」
屋 代「三軒屋くん」
万 智「はい」
屋 代「実は君に、どうしても話したいことがあるんだ」
万 智「はい」
屋 代「言っとくけど家を売る話じゃないよ」
万 智「なんでしょう」
屋 代「僕と……」
屋 代「僕と……」
万 智「結婚、しますか」
屋 代「ええっ!マジ、本気?」万 智「本気です」
屋 代「あ、まさかそれ……」
万 智「そうです。家を売るためです」
屋 代「いやいやいや、いま一瞬納得しちゃったけど、いわゆるそれは口癖だよね。つまりそれは一生仕事をしていくってこと?」
屋 代「それとも結婚した方がさらに家が売れるってこと?」
屋 代「三軒屋くん、社長さん、社長サンチー!」
N 「独創的な手腕で家を売る。お客様に愛を届け続けてきた天才的不動産屋、三軒屋万智」
N 「孤独な彼女に当たりまえの春が来るのか、先のことは誰も知らない」
てなわけで、今回をもって『帰ってきた家売るオンナ』の本編レビューはおしまい。次回はメイキングビデオをさらっと観ていこう。じゃまたね。