実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第621回】サプライズ・プリンセスの巻(沢井美優in『あなたのことはそれほど』)


 いまネットで話題になっている記事、皆さんもお見かけになったんじゃないかな。2013年に出版された、メグたんこと小嶋陽菜の写真集『こじはる』に掲載された秋元康との対談「8年目の進路相談」だ。そのなかで、秋元先生が今話題の「AKBからの寿卒業」を小嶋陽菜に勧めていて、このたびの須藤凛々花さんのはそのパクリじゃないか(笑)という疑惑である。



秋 元 でもさ、一番かっこいいのは総選挙のステージで「私から発表があります」と言って、みんなが卒業発表かな?と思ったら「結婚します!」っていきなり宣言することだよね。
小 嶋 あはは。でも、みんなが認めて拍手してくれるような人じゃないと。
秋 元 結婚相手にもよるだろうな。
小 嶋 祝福される相手を見つけなきゃ!
秋 元 これでもし渋くて枯れているようなタイプとは真逆の、タンクトップを着て、身体だけはやたらと鍛えているようなギラギラした男だったら……。
小 嶋 やだぁ! ないない!
秋 元 とにかく、結婚するときはちゃんと相手を紹介してくれよ。


 ともかく、今回「結婚宣言」した当の須藤さんは「AKBって恋愛禁止じゃないの?」と言う疑問に「恋愛禁止と言われて我慢できるような恋愛は恋愛じゃない」と答えておられるというが、これは立派な正論である(補足:この発言も「原典」は秋元康の書いたAKB48の歌詞だそうである。コメント欄参照)。だがそんなことよりも、この人の「将来の夢は哲学者」というキャッチフレーズの方が、私はすっごく気になるなあ。



 「将来の夢は哲学者」このシュールな響きに、私はいろいろ考えてしまったが、しかし難しく考えなければ、今の日本で「哲学者」なんて言ったもん勝ちである。梅原猛も、池田晶子も、最近「11歳の哲学者」なる名目で自己啓発本を出している登校拒否の小学生も、自分で(もしくは出版社がキャッチフレーズとして)「哲学者」を名乗ったからそう呼ばれているわけで、須藤さんも「将来の夢」とか言わず、さっさと「哲学者」を名乗ったらいいのに。
 いやつまらない話をしてすまない。さて、ちょっと法事が出来てしまいまして、ただいま東武東上線沿線の実家に帰省しています。実は今週は仕事で京都に行ったり札幌に一泊したり、やたらと移動の多い一週間だった。なので出張モバイル版でコンパクトにまとめる。



 お題はもちろん言うまでもなく、いくえみ綾の漫画が原作のTBS火曜ドラマ『あなたのことはそれほど』最終回(第10話、2017年6月20日放送、脚本:吉澤智子/撮影:伊澤昭彦・川村有紀子・中村純一/演出:金子文紀)。ターゲットはプリンセス沢井美優。原作も読んでいなけりゃドラマを今まで一回も観ていない。誰が出演しているかも知らない状態で最終回だけ観るなんて初めての経験だが、それもこれも沢井美優のためだから仕方がない。時間もないので、予備知識ゼロのまま名古屋〜東京間の新幹線で見逃し配信を鑑賞。




 なのでこう、手さぐり状態でドラマを観ることになってしまったのだが、いきなり「離婚届、記入して郵送してくれたら出しておきます」とか「妊娠、していませんでした」とか不穏なメールのやりとりをしながら、波瑠がお店で一人、焼肉を食べているという、穏やかではない展開である。



 その一方で、鈴木伸之が仕事を終えて帰宅すると、奥さんの仲里依紗が赤ん坊を連れて実家に帰省しているという案件が勃発。原因は鈴木伸之の浮気のようだ。彼は仲里依紗に電話をかけて必死に詫びて、やり直そう、会いたいと訴えるが、実家の仲里依紗は冷静な中に怒りの炎を燃やしていて、取りつくシマもない。



 このあたりで回想シーンが入って、だいたい事情が明らかにある。波瑠と鈴木伸之の二人は不倫の関係にあったのだ。波瑠は、すごく真面目で誠実な東出昌大にプロポーズされ、結婚する。




 優しく愛してもらえたのに、なんか「コレジャナイ」感が拭えなかった。そこへ、昔あこがれていた同級生だか先輩だかの鈴木伸之とばったり再会し、火遊びに燃えてしまう。鈴木伸之も仲里依紗と結婚していたからダブル不倫だ。





 それがバレてどちらも関係が破綻した。主人公の波瑠は「不倫相手の子を妊娠したかもしれない」という疑惑(これは冒頭で陰性だったことが分かるが)をきっかけに、東出君と暮らしていた家を出て、安アパートで独り住まいを始める。鈴木伸之は、もう妻の仲里依紗とヨリを戻すことしか考えてなくて、波瑠とは一時の浮気で、二度と会わないと宣言している。一方、ダンナの東出君は、波瑠の不倫も認めたうえで、それでも離婚はしたくない、と言っている。だから波瑠も、反省してもう一度夫婦としてやり直す、という無難な選択肢があるのだ。それでもけじめとして離婚を決意した。


 
 なぜ波瑠が東出君とやり直そうとしないのか、というと、東出君は真面目で優しいんだけど、波瑠のことが好きすぎて、ちょっとアブナイ時があるんですよね。たとえば、妻を寝とった鈴木伸之から謝罪を受けて、鈴木君も浮気の報いで仲里依紗に逃げられたことを知ると大喜びしたり、かと思うと涙目で睨みつけたり(気持ちは分かるが)。





 離婚届を出しましたと言うメールのあと、最後に波瑠と一緒に、もう一度 ごはんが食べたいという電話がかかってくる。





 つい情にほだされた波瑠が出て行くと、いい感じのおでんの屋台。
 




 離婚記念の乾杯をするんだけど、やっぱり目つきがやばい(気持ちは分かるが)。


 


 これはもう、この二人は無理だよなと思う。もちろん悪いのは、結婚しているのに鈴木伸之と恋に落ちてしまった波瑠だ。でも恋愛禁止と言われて我慢できるような恋愛は恋愛じゃないとAKB48の須藤さんもおっしゃってた。
 一方、鈴木伸之は仲里依紗とやり直すために八方手を尽くす……という、もう一組のカップルの物語があるんだが、しかし、物語の興味が、主人公たち破綻した二組の夫婦の行方はいかに、という方向にぐいぐい収斂していってしまうではないか。いや最終回だから当然なんだが、だんだんゲストが出る余地のない話の展開になってきたなぁ。最終回に沢井美優が出るはずだったのに、また前回の『捜査一課長』と『捜査一課9係』を間違えたたぐいかな、と自分に対する疑惑が浮かんで、ネットを確認してみた。あった。



 そうか。「最後の最後まで観て下さい」というのだから最後の最後まで観よう。



 で、ず〜っと観ていたんだけど、もう省略するね。結局、鈴木伸之と仲里依紗はヨリを戻し、東出昌大と波瑠は本当に本当の別れの握手、という対照的な結末。最後の握手で「でも私、この手は本当に好きだった」って独白されてもなぁ。



 そして離婚一年後。もう終わっちゃいそうだけどな。友人と待ち合わせたレストランに入る波瑠。



 このレストランは披露宴会場もやっているということで、向こうからは披露宴プランのパンフレットをかかえた、いかにも仲の良さそうなカップルが出てくる。





 出た。きました。沢井美優だ! 最後の最後まで観てくださいってこういう意味だったのか。東出昌大の新しい恋人だ。大丈夫だ、波瑠とタメを張れるぞ。




美 都「久しぶり」



涼 太「うん、元気そうだね」







美 都「うん、それじゃ」



涼 太「それじゃ」



 で、元夫にあんだけひどい仕打ちをして自分から別れたくせに「再婚かぁ」と落ち込む波瑠。ところが、実はこれもドラマの引っ掛けだった。東出昌大はインテリア関係の会社に勤めていて、同僚とこのレストランの改装の相談に来ていて、沢井美優(たぶん役名なし)はこのレストラン側の業務担当者か何かで、要するに仕事しているだけだったのだ。



「あの窓の開口を大きくすれば、広間も一変できますね」



「そうですね」
「図面あるよね」


「はい」
「写真頼む」
「うん」


 セリフは「はい」だけか。
 一方、波瑠はこのレストランで、親友の大政絢と待ち合わせをしていたんだけど、大政絢はなんと、波瑠が勤めている眼科の眼科医(橋本じゅん)と、けっこうな齢の差を超えてラブラブ中。




 元ダンナが女連れのところを見たあと、この熱愛カップルに付き合う気も失せて「ごめん、ちょっと私急用思い出しちゃって、失礼します」って店を出てきてしまう。なんかワガママな女だな、波瑠は。




 その姿を見て、波瑠だということに気づいた東出君の同僚(よく見りゃ山崎育三郎)はこっそり「涼太、いいのか、放っておいて」と耳打ちするが、もう波瑠のことをすっかり吹っ切った東出君は「それほど」とにっこり。
 そこへ沢井美優が再登場。おっとまだ出番があったか。嬉しいサプライズ。



「すみません、私の仕事なのに」



「あ、ううん……あっちも写真撮っておく?」



「はい!」







「こちら三好美都。いまだ他人の幸せなんかぜんぜん喜べないバツイチ29歳」


というわけで、リアルっちゃリアルな、ありそうな話なんだけど、特に最終回だけ観てしまったせいで、基本的にどのキャラクターにも共感できなくて、しかも最も感情移入しづらかったのがメインの波瑠という、困った事態になっちゃっただけに、沢井美優の登場はもう一服の清涼剤でした。いや我慢していて最後まで観ていてよかったなぁ、沢井さんはこんな周囲を傷つけるばかりの恋愛はしないよな、なんて勝手にテンション上がってしまって、およそドラマの見方としては間違っていますが、実によかった。ってことで今回はこれまで。