『破裏拳ポリマー』が実写映画になって五月に公開される。
オリジナルはタツノコプロが『科学忍者隊ガッチャマン』(1972年)『新造人間キャシャーン』(1973年)に続いて1974年に制作したアニメで……って時点で、すでにやばいよね。実写版『ガッチャマン』(2013年)も『CASSHERN』(2004年)も、興行的には大惨事だったと思う(『ガッチャマン』は、チーム内部の人間関係のゴタゴタぶりが『カイジ』や『ST』の佐藤東弥監督らしくて、個人的には面白かったんだけど、ちょっと他人に薦めづらい作品でした)。それを今さら実写版『破裏拳ポリマー』って、なんでそんな地雷を踏みに行くかな。
もし本気で成功させようと思ったら、三池崇史の『ヤッターマン』(2009年)みたいに、出来るだけ原作アニメをリスペクトしないといけないよね、と思っていた矢先に公開されたのが、原幹恵のビジュアルだ。
誰だよ。こんな女の子のキャラクター、元のアニメにいなかったよ。原幹恵がこんなコスチュームでアクションする時点で、すでにオリジナル版へのリスペクトとか、そういう作品ではないことが分かりますね。
しかも結局、戦闘スーツ脱いじゃっているし。でもこういうことをやる人って、監督ってひょっとして、と思ったら案の定だったよ。
ほんとにもう。まあでもStreamKatoさんのお気に入りの原幹恵さん、私も『キューティーハニー The LIVE』も好きだし、今回もアクションに期待します。
ってことで本題です。
1. 事件
本日のお題は、前回予告したとおり『科捜研の女』第16シーズン第15話「七枚の迷宮」(2017年2月23日放送、フジテレビ・東映/脚本:戸田山雅司/撮影:田中勇二/監督:西片友樹)だ。
このドラマは数年前から塚田英明さんがチーフプロデューサーなので、東映特撮ファンは要チェックである。実際、現在のレギュラー陣には渡部秀や山本ひかるといった仮面ライダー勢が入っている。さらに主演は最もリッツな東宝シンデレラ沢口靖子。平成ゴジラとか『竹取物語』の印象が強くて、なんか東映と東宝の特撮大集合みたいで楽しいです。そこへ我らが小松彩夏のお目見えだ。
京都の鷹桐山(架空の地名です)の登山道を歩いていた男たちの前に、ふらふらと現れる姫。腕を負傷しているらしい。
枝 織「助けて……」
男A 「どないしたんや、しっかりしい」
男B 「大丈夫か!?」
女の名前は野宮枝織さん28歳(小松彩夏)。京都市内の結婚式場でブライダル・アシスタントとして働いている。
腕の傷口からは拳銃弾が摘出された。改造銃から撃たれたもののようだが、枝織は衰弱が激しく、搬送された京都中央病院で、鎮静剤で眠っている。
本人からの聞き取り調査は後回しとして、ひとまず現場周辺を調べていた捜査班は、かなり奥まった山中のコテージで射殺された死体を発見。
男はブライダル・プランナーの萩野優介(大迫一平)。枝織が勤める結婚式場の上司で、恋人でもある。
二人は、週末に鷹桐山へ遊びに行くからと言って、式場の備品のインスタントカメラを借りたそうだ。実際、枝織のリュックと荻野の死んでいた山小屋から、計7枚のチェキ写真が回収される。
枝織が撮ったと思われる写真には、枝織の友人の山崎紗代子(内田慈)と優介、そして迷彩服を着てライフルやサブマシンガンを構えた男二人が写っている。
京都府警科学捜査研究所(科捜研)で映像データの解析を担当している湧田研究員(山本ひかる)が山崎紗代子のSNSをチェックすると、彼女が最近サバゲー(サバイバル・ゲーム)愛好家の情報交換サイトに頻繁に出入りしていることが明らかになる。
そしてそのサイトで、週末に鷹桐山でサバゲーをやろうという呼びかけがあった。
つまりこのメンバーでサバイバル・ゲームを楽しんでいた結果、一人が山小屋の中で実弾に撃ち殺されたわけだ。いったい何が起こったのか。そこへ病院から、枝織が意識を回復したという知らせが届き、捜査一課の土門刑事(内藤剛志)と科捜研の榊マリコ(沢口靖子)が駆けつける。
土 門「おととい鷹桐山で何が起きたか、話してもらえますか」
担当医「ショックな出来事に遭遇したせいで、乖離性の健忘に陥っている可能性も考えられます」
マリコ「つまり、断片的な記憶しかないということ?」担当医「はい」
マリコ「あなたが、萩野さんと山崎紗代子さんと、鷹桐山のキャンプ場に行ったのは間違いありませんね?」
枝 織「はい。紗代子が私と優介さんを誘って……」土 門「優介さん?萩野さんとお付き合いを?」
枝 織(黙って頷く)
╳ ╳ ╳
枝 織「優介さん、こっち向いて」
枝 織(みんなでサバイバルゲームをするからって……)
枝 織「撮りますよ。はいチーズ」
╳ ╳ ╳
マリコ「やはりこの2枚はあなたが撮った……」
土 門「この二人の男性は何者ですか?」枝 織「紗代子、バイトでクラブに勤めてて、そこの常連さんとか言ってたけど、私は初めてで……」
マリコ「コテージから他に5枚の写真が見つかりました。あなたが写っているものもありました。誰が撮ったんですか?」
枝 織「カメラ奪われたから……」
土 門「誰にですか?」
枝 織「この人……」
マリコ「どうして?」
枝 織「優介さんが拳銃を見つけてしまって……」
土 門「萩野さんが拳銃を……あなたはどうしたんですか?」
枝 織「逃げました。優介さんと……」
枝 織「暗い洞窟みたいなところに隠れたけど、捕まってしまって」
枝 織「そしたら優介さんが、優介さんが撃たれて」
土 門「誰にですか?」
枝 織「ああ、ああ」
研修医「野宮さん、どうされました?」担当医「大丈夫? 落ち着いて」
担当医「これ以上の聴取は……」
というわけで最初の事情聴取はここまで。病院を出た土門刑事の携帯に連絡が届く。
土 門「蒲原か、どうした? ……わかった」
土 門「サバイバルゲームのサイトの常連2人の身元が割れた」
正直言って、ここまでのドラマの空気で、小松彩夏の怪しさはビンビンである。特に最後の取り乱すあたり、小松彩夏がこういうことをやるだけで「薄倖そうに見えるからってヘタな芝居はよせ!」とか、つい刑事風に突っ込みたくなる。でもこの段階で、後半もこまっちゃんの出番が多いことが予想できて、それはそれで嬉しい。
2. 推理
事件の発端となったサバゲーサイトの管理人は八代澄夫35歳。広告代理店に勤務しており、ハンドルネームは「アサルト」。そしてここの常連が元陸上自衛官の警備員、木村武文37歳。ハンドルネームは「MP5」。どちらもさっきの写真で手にしていた銃の名前をHNに使っている。
捜査チームはさっそく「アサルト」こと元自衛隊員の木村の家にガサ入れをかける。部屋はモデルガンだらけ。
マリコは驚いているようで、実はけっこう楽しそうだったりする。やってみたかったのかな。
家捜しで手に入れたデータから、二人がサイトの裏掲示板で密談していた内容が明らかになる。
「本物ゲット」「ヤバイよ違法だし」「撃ちてえ」「狩りやるっきゃないっしょ」「生贄は?」「やっぱ素人?」「サバゲーのフリして集めるとか」
というようなデータから、マリコたち捜査チームは、ネットで違法に入手した実弾を試したい二人の銃器オタクが、いつものサバイバル・ゲームを装って「人狩り」を企てた、という筋書きを見立てた。科捜研に戻り、枝織の所持品とログハウスに残されていたインスタントカメラの写真七枚を並べながら、マリコ、日野和正(斎藤曉:『電磁戦隊メガレンジャー』)、橋口呂太(渡辺秀:『仮面ライダーOOO』)、湧田亜美(山本ひかる:『仮面ライダーW』)、宇佐見(風間トオル)という、東映特撮レギュラー経験者が異常に多い科捜研捜査チームが推理を組み立てていく。
マリコ「これであの山で何が起きたか、分かったわ」
マリコ「最初の2枚は野宮枝織さんが撮ったもの」
マリコ「枝織さんは、同級生の山崎紗代子さんに誘われて、萩野さんと共に鷹桐山のキャンプ場に向かった。この時点では、ただ単純にサバイバルゲームを楽しむつもりだったはず」
呂 太「確かに和気あいあいと記念撮影してる感じ」日 野「サブマシンガンとライフルを持って?」マリコ「当然ゲームだから、使う銃もエアソフトガンなど危険ではないもののはずだった……ところが……」
荻 野「ウソ……」
木 村「あらら、見つかっちゃったよ」八 代「せっかくだから記念に一枚、いきますか」
荻 野「まさか本物じゃないんですよね?」
木 村「試してみる?あんたの体で」
マリコ「萩野さんが発砲可能な改造拳銃を見つけた瞬間から、ゲームはただのゲームではなくなった」
マリコ「危険を察した二人は逃げ出して……」
日 野「逃げ込んだのが、ひょっとしてここ?」
マリコ「だけど最後はこの2人に見つかってしまい……」
亜 美「それで枝織さんと萩野さんは狩りの獲物になった」
呂 太「で、縛られて連れ戻されて」
呂 太「で、こんな写真撮られちゃったんだ」
亜 美「で、そのあと萩野さんが撃たれて」
宇佐見「再び逃げようとした枝織さんが腕を撃たれた」
マリコ「枝織さんは、萩野さんが撃たれた事も知っていたようだから、恐らくこの順番で間違いないはず」
宇佐見「あの山で起きたのは、サバイバルゲームではなくマンハントだった……って事ですか」亜 美「人間を獲物にした狩り」
呂 太「7枚の写真だけで物語できちゃった」
日 野「それも恐ろしい物語が」
3. 再び病院
だいたいの整理ができたところで、マリコと土門は報告と再確認のために、再び入院中の枝織を訪れる。
マリコ「萩野さんとのお付き合いは長かったんですか?」枝 織「1年くらいです。でも二人とも忙しくて、なかなか一緒にどこかへ行く機会もなかったから……」
マリコ「萩野さんはどうしてこのカメラを?」
枝 織「ブライダルでいつも使ってるし、私も優介さんも、デジタルカメラよりこっちのほうが好きだから。その瞬間の、たった1枚だけの思い出が撮れるから」
枝 織「緊張で硬い顔をされてた花嫁さんがささいな事で笑い出して、やがて幸せいっぱいの笑顔になって……」
枝 織「大げさかもしれないけど、何枚かの写真から、小さな物語が紡げるみたいで」
枝 織「だから私たちも、そういう写真をいっぱい撮ろうねって……」
前回も少し書いたように、この事件は、写真を撮影した時の日時や場所の詳細なデータが簡単に分かっちゃうと、基本のトリックがなりたたないんです。それでデジカメではなく、理屈をつけてインスタントカメラということになっているんだけど、やっぱり説明に無理がある。それに迷彩服でキメてくるようなガンマニアのサバゲー二人組が、デジカメすら持参していないというのも、ちょっとオタクの生理を分かってない。ま、そんなこと言い出すと、サバゲー好きが昂じて実際に人を撃ちたくなって、本当にマンハントをしてしまうって筋書き自体、かなり苦しいんだけど。
土 門「お辛いでしょうが、お二人をこんな目に遭わせた犯人たちを一刻も早く逮捕するために、ご協力をお願いします」マリコ「彼らがどこに逃げたか、心当たりはありませんか?」
枝 織「確か夏目峠から下りれば、滋賀のほうへ抜けられるみたいなこと、言ってたような気が……」
土 門「藤倉部長にかけ合ってみる。逃走ルートが絞れれば山狩りも可能なはずだ。失礼。逃走中の三人は必ず私たちが見つけてみせます」
枝 織「三人って…紗代子も入ってるんですか?」
マリコ「山崎紗代子さんは、木村と八代のサバイバルゲームのサイトにも出入りしていました。二人に頼まれて、萩野さんとあなたを鷹桐山に誘ったとすれば……」
枝 織「違います! 紗代子はただのサバイバルゲームだって信じてて、私と優介さんを誘っただけです!」
マリコ「でもこの写真を撮ったのは紗代子さんですよね?」
枝 織「……この二人に脅されて……」
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八 代「早く撮れよ!ぐずぐずしてるとてめえも獲物にするぞ!」
枝 織「私が逃げ出したせいで、二人が紗代子に何をするのかわからないし……」
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枝 織「お願いです、紗代子を助けてください!」マリコ「枝織さん落ち着いて」
枝 織「紗代子は、いつだって私の味方で、優介さんとの仲もずっと応援してくれてたのに……」
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紗代子「もう! いっつも枝織ひとりにやらせて。萩野ちゃんもたまには手伝いなよ」
優 介「おれ何やればいい?」
枝 織「あ、じゃあ祝福メッセージお願い」
紗代子「初めての共同作業、頑張りなよ」
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枝 織「なのに私紗代子を置いて逃げることしか出来なくて……」
マリコ「ううん。あなたは頑張ったわ。1人で山を下りて…私たちに何が起きたかを教えてくれたんだから」
マリコ「今度は私が頑張る番。科学で紗代子さんを救ってみせる。あなたのためにも必ず」
え〜と、本来はもっとコンパクトにまとめてレビューすべき内容のドラマなんですけど、小松彩夏ひさびさの全国ネット+ゴールデン+メインゲストじゃないですか。出てくるシーンを洩れなくフォローしようと思ったら、一回ではまとまりきりませんでした。前後編にしたのはただそれだけの理由なので、次回で明らかになる事件の真相に、あっと驚くようなどんでん返しがあるとか、そういう期待はあまりしないでくださいね。
というわけで次回「後編」へ続く。