実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第582回】北川景子in『家売るオンナ』中間総括の巻



 なんだかんだと北川さんの誕生日だな。おめでとうございます。
 さて、DVDレビューが再開したばかりだけど、あんまり時間はないし、今回はほったらかしの『家売るオンナ』をちょっとだけ振り返りたい。



 幸いにして『家売るオンナ』(水曜夜10時/日テレ/チーフプロデューサー:伊藤響)は現在、視聴率2桁をキープ。やや失速気味の『仰げば尊し』を抑え、今シーズンのトップを走っている。こういうのサプライズって言うんだな。嬉しい。
 内容的にも、少なくとも私は満足している。このまま行って欲しい。ただちょっとここんところ会社の同僚たち、足立王子(千葉雄大)とか白州美加(イモトアヤコ)にスポットがあたる、いわゆる「キャラ廻し」エピソードが続いて、そこでチラチラ、ヒロインの三軒屋万智(北川景子)が謎に包まれたプライバシーを小出しにしている感があって、そこが心配っちゃ心配だ。



 あくまで私個人の希望だが、もうこれ以上、あまり人間味のあるエピソードを出さないで欲しい。これまでの展開から予想できるいちばんありがちなオチは、実は彼女は未来のテイコー不動産から送り込まれてきた社員教育用アンドロイドで、最終回、みんながやる気になったテイコー不動産新宿営業所を「ミッション完了」と去って行く万智の後ろ姿が、白い光になって空に吸い込まれていく、というものだろうが、私はそのくらいベタな終わり方でも構わないと思う。
 

1. 第5話:アリとキリギリス


 第5話「独身女に家爆売り!女一人で生きてみろ!GO」(2016年8月10日OA/脚本:大石静/撮影:二之宮行弘/演出:猪股隆)。フリーのジャーナリストとして、これまで数々の政治家の不正や醜聞を暴き、タフな現場を力強く生き抜いてきためちゃくちゃ強気なライター、日向詩文 (ともさかりえ)と、 新都心出版社校閲部で、文章校正という比較的地味な仕事をコツコツ続けてきたOLの歩子 (山田真歩)。







 詩文は新都心出版社の『週刊ファクト』と契約して記事を書いているんだけど、プライドが高くて、自分の記事に校閲部の歩子が容赦なく朱を入れることを快く思っていない。校正の仕事を、他人が苦労して書いた文章に難癖つけて給料を貰っているタカリぐらいにしか思っていない。もちろん歩子も、そういう高飛車な詩文に反感をいだき、その見栄っ張りな生き方を密かに軽蔑している。



 この二人がたまたま同じマンションの同じ部屋を希望したから大変だ。詩文は、永田町の一頭地のマンションは、ここを主戦場とする私のような人間にこそふさわしいと主張し、歩子も、これまで地道に努力を積んできた自分へのご褒美なので妥協はしない、この高級マンションが良いと、お互い一歩も退かずに意地を張り合う。困った庭野(工藤阿須加) は苦労のすえ、マンション住人を口説いて売却を勧め、まったく同じ間取りの、別の階の部屋をもうひとつ確保する。これで二人とも希望物件に住めるようになったわけだ。めでたしめでたし。



 と思ったら、歩子は本契約の直前になって、10年がかりで貯めた2,000万円を一気に頭金として吐き出すことに尻込みして、購入は止めると言い出す。



 詩文も詩文で、頭金もないので長期ローンを組んだけど大丈夫だろうかと、明日の知れないフリー・ライターの我が身を思い、ふと将来が心配になってきて、やはり土壇場で辞退を申し出る。ヘコむ庭野。



 というわけで、庭野に代わってこのふたりを同時に口説き落とし、マンションを売りつけるというのが今回の三軒屋万智(北川景子)のミッションだ。まず乗り込んだのは、歩が勤務する新都心出版社の校閲部。突然の乱入者に怪訝な表情の部長(小田純也)。



万 智「草壁歩子様、しばしの時間を私に下さい」



部 長「誰だね君は」



万 智「不動産屋です」



万 智「草壁様、アリとキリギリスの話をご存知ですか」




万 智「庭野、話す」
庭 野「自分がですか?」



万 智「アリとキリギリス、スタート」


 命じられたとおり、イソップ童話「アリとキリギリス」のあらすじを話す庭野。



 『探偵の探偵』第1話より。お笑いコンビ「アリtoキリギリス」は現在事実上の活動休止状態らしい。
 それは別にいいですね。というわけで「アリとキリギリス」だ。



万 智「そうです。草壁様、あなたはアリとキリギリスの、アリなんです」



歩 子「……アリ……」



万 智「校閲の仕事を10年、コツコツと続けて貯金を作った草壁様はまさにアリです」



万 智「校閲部の地道なお仕事もまた、アリそのものではないでしょうか。真面目にコツコツ働くアリの姿は、勤勉な我々日本人の美徳そのものです」



万 智「みなさまのおかげで日本語は未だ死なず、活字文化は守り育てられています。ありがたいことです」



万 智「書籍を愛する読者でさえ、校閲の方の存在を知る者は少ないでしょう」



万 智「スポットライトのあたる作家の裏に、かけがえのない校閲部の仕事があることを誰も知りません。感謝もしません。書籍のあとがきで、著者にお礼を言われることはありません」



万 智「しかーし、みなさまはそんなことは気にもかけず、コツコツと作品の質を守り続けておられます」



万 智「素晴らしいです。感動します。頭が下がります。いまこそ、ご自分の勤勉さを誇りに思うときです」



万 智「ご清聴ありがとうございました」



万 智「草壁様、お仕事中おじゃまいたしました。これで失礼します」




 続いて大物代議士の贈収賄スキャンダルを取材中の詩文を訪ねる二人。今度はさっきと正反対の理屈で彼女を持ち上げる。



詩 文「何の用なの? マンションは買わないわよ」



万 智「アリとキリギリスの話をご存じですよね。庭野、話す」




庭 野「アリは毎日コツコツ働いて……」
詩 文「そんな話知っているわよ」



万 智「あの話はヨーロッパの一部では、アリとキリギリスではなく、アリとコオロギだったそうです」



詩 文「だから何?」



万 智「飢えているコオロギを見て、貯蔵食糧のいっぱいあるアリはあざ笑う。いつも歌ばかり歌っていたからだと馬鹿にする」



万 智「するとコオロギは答える。お前たちは、歌うべき歌を歌ってきたか? 命を謳歌して生きてきたか? ただ食料を貯めこんでいるだけで、生きたと言えるのか」
詩 文「私がコオロギだと言いたいの?」



万 智「そうです。コオロギのように、いまこの瞬間を謳歌するのもまた人生です」



万 智「いま欲しいなら、いま家を買う。苦しくなったら、売ればいいのです。誇り高く使命を果たし、人生を謳歌するのが日向様です」



詩 文「苦しくなったら売る……」



万 智「そうです。コオロギです。キリギリスです」



詩 文「私はコオロギ、私はキリギリス」



万 智「そうです。ローンという不安を買って、それを糧にますます仕事に邁進する。それでこそ日向様です」



詩 文「強引ね。私に似て」



万 智「光栄です」



詩 文「(笑)一緒に来て」




万 智(……落ちた……)


 これ、最初はともさかりえが、いかにも高飛車な感じで出てくるから、この人が「悪役」で、結局、頭金も何も用意できなくて家を買えず、反対にコツコツお金を貯めていた山田真歩が、お目当てのマンションをゲットする、ぐらいの感じで終わるかなと思っていた。でも北川景子は、同じ「アリとキリギリス」のお話で双方を強引に説得してしまう。確かに不動産屋としては両方に家を売るのが正解である。結果的に二人とも新居で楽しく生活しているからいいんだけど、それはそれとして、万智の目的はあくまで「家を売る」という軸から一ミリもぶれていない。

2. 第6話:悩める王子


 次。第6話「愛人&変人に家を売れ!恐怖の事故物件へGO」(2016年8月17日OA/脚本:大石静/撮影:二之宮行弘/演出:山田信義)。



 万智が来るまではテイコー不動産新宿店の売り上げナンバーワンだった足立聡(千葉雄大)。女性顧客に人気の「足立王子」と呼ばれるルックスと愛想の良さが武器だが、中身は見かけにくらべてドライでクール(のようで意外と人情家)。



 彼がかつて家を売った客、老舗の和菓子屋の五代目当主、宮澤(東根作寿英)が久しぶりにやって来て、家族に内緒で、若い女(小野ゆり子)のためにマンションを一つ買いたいと言ってきた。愛人だ。



 もちろん仕事なので引き受けた足立だが、浮かない顔。
 その晩、課長以下テイコー不動産の男どもの行きつけになりつつあるバー「ちちんぷいぷい」で、ママのこころ(臼田あさ美)相手に珍しくヘコんだ表情の足立王子。



足 立「こころさんって、結婚したいと思います?」
こころ「う〜ん、分かんない」



足 立「僕の父親は、愛人つくって母と僕を捨てて出てったんで、結婚はしたくないんです」


こころ「そうなんだ。それで王子は、みんなの王子になったんだ」



足 立「三年前、あるお客様に新しい家を売ったんですよ。ご夫妻と、小さなお嬢さんが可愛くって。新しい家で本当に幸せそうだったんです」



足 立「それ以来、僕も家を売る仕事は素晴らしいなって、心から思うようになりました。その後、そのお宅には男のお子さんも生まれたんですよ」



足 立「それなのに、今日そのお客様がいらして、愛人のためにマンションを買いたい、って言うんです」



こころ「離婚するとかじゃなくって?」



足 立「不倫ですよ。奥さんも子供も愛してるし、愛人も愛してるって言うんですけど。そういうことに積極的に手を貸すの、何だかなぁって……」



こころ「まあそういうこともあると思うよ」



足 立「分かるんですか、こころさんにはこの男の気持ち?」



こころ「だって、愛に正しい形なんてないもん。どの愛が尊くて、どの愛が尊くないかなんて決められる?」



こころ「違うのはたった一つ。出会った順番だけじゃない?」



足 立「そうですけど、幸せそうな奥さんの顔を思うと、なんだかなぁ」



足 立「……なあんて言っているから、ナンバーワン奪われちゃうんですけどね……」



 かわいい顔してゴセイレッド、アラタも27歳。こういう芝居も板に着いてきた。ただゲキレッド、海堂ジャンはちょっと落ち着きすぎなのではないかと思う。



 まあ30代に入ったらこんなもんか。
 話を戻して、とにかく仕事は仕事である。愛人のためのマンションを物色していた足立だが、案の定この一件がバレてしまって、依頼人の奥様、昌代(田中美奈子)がテイコー不動産に乗り込んできた。ベビーフェイスの足立に裏切られた思いが強くて、とにかく王子を激しく糾弾。



昌 代「あなた何度も私に言ったわよね? 宮澤様ご一家の幸せをお祈りしています、って。今年の年賀状にも書いてきたわよね?」



昌 代「それなのに主人の女のために家を探すって、どういうこと?」



昌 代「みなさんも聞いてください。この人は、自分も宮澤様のような家庭を築きたい、と言ったんですよ」



昌 代「それがいつから、愛人の味方になったのでしょう?」



 何も言い返せない足立。さらに「私はあなたに裏切られたことが信じられないの。主人も許せないけど、あなたも許せないのよ」と追い打ちをかけられ、もうサンドバッグ状態。



昌 代「足立さん白状なさい。あの女はどういう女なの?名前は?」



足 立「僕からは申し上げられません」



昌 代「あそう。だったらこれだけは言っておくわ」



昌 代「あの女のために、主人にマンションを売るのはやめてちょうだい!」



万 智「それはできません。私たちの仕事は家を売ることです」


昌 代「だったら宮澤に女と別れるように言いなさい」


万 智「それは不動産屋の仕事ではありません」
昌 代「何なのこの人?」



万 智「不動産屋です」



万 智「お引き取りください。私どものお客様はあくまで宮澤社長とその女性。そのお二人に最適な家をご用意することが、私どもの仕事です。それ以上でもそれ以下でもございません」



昌 代「足立さん、うちの家族は崩壊したわ。私、宮澤と別れます。あなたのせいよ」



万 智「それも違います。ご家庭が壊れたのは私たちのせいではありません。宮澤様ご夫妻の問題です」


昌 代「分かりました。あなたたちは私たち家族がどうなろうと、家が売れればいいってことなのね」




 まあこの後の話としては、不倫がばれた宮澤はさっさと家庭に戻り、愛人には手切れ金代わりにマンションを買うから、選んでやってくれと足立に頼む。足立王子、踏んだり蹴ったりである。



 一方、庭野(工藤阿須加)は庭野で、担当している一戸建てが、あとひと押しで売れそうなんだけど、その隣に住んでいる初老の男が、ひょっとしたら変人ではないかと悩んでいる。これから長くお付き合いするお隣さんが変人だったら困る、と客が買うのをためらっているのだ。



 庭野は、ふだん足立が行かないような庶民的な餃子とビールの店に彼を誘う。万智の行きつけの店なので、いれば何かアドバイスでもくれるかという魂胆である。
 そういえば北川さんも、行きつけの「餃子の王将」がある(あった)らしいしな。
 




 これは2012年4月7日にNHKで放送されたドキュメンタリー『輝く女 北川景子』より。「餃子の王将 彦根店」ですね。
 で話を戻して、庭野の期待どおり、この餃子の店で三軒屋チーフから喝を入れられる。



万 智「足立!」



足 立「はいっ」



万 智「家を売ったくらいでその家族を幸せにしたのは自分だと勘違いをし、うぬぼれまくり、愛人が家を欲しいと言えば、悩んだ顔をしながらこれ幸いと家を売ろうとし、そのことで本宅が崩壊したら、自分が愛人に家を売ろうとしたからだと、ウジウジウジウジ悩んでいる」




万 智「そして庭野」

 


足 立「はいっ」



万 智「お客におとなりの人が普通の人か調べろと言われ、普通とは何か、自分の狭い価値観から自分を解き放とうともせず行動も起こさず、ただウジウジウジウジ悩んでいる」



足 立「ウジウジって……」




足 立「すいません!」



万 智「いいか足立、庭野」



万 智「あなたたちの仕事は何だ」



万 智「家を売ることです」


 いつものセリフがいつものセリフのまんまで、ちゃんとクライマックスの決めゼリフになるように構成されたエピソード。お見事でした。

3. 第7話:白州美加の叛乱


 第7話「ダメ社員 白洲美加vs三軒家 家爆売りの乱でGO」(2016年8月24日OA/脚本:大石静/撮影:二之宮行弘/演出:猪股隆)。



 テイコー不動産新宿営業所に、お荷物社員の白州美加(イモトアヤコ) の母親(原日出子)がやって来た。女のところへ行ってしまった夫 ときっぱり離婚して、家を売るつもりである。
 原日出子がほんとうにイモトアヤコのお母さんに見える。メイクや衣装や演出もあるだろうけど、これはやはり本人の演技だと思う。原日出子すごい。



美 加「離婚? まさかお父さんと離婚するの?」



貴美子「お父さんしか離婚する人いないでしょ」
美 加「そうだけど……ねえどうしてそんなことになったのよ」



貴美子「昨日の夜、お父さんが突然言い出したの。『貴美子には悪いが愛する人ができた。別れてくれ』って」



美 加「うそぉ」



貴美子「そのまま女のとこ、出て行っちゃったのよ」
美 加「ひどおい」



貴美子「はぁ……これまでも浮気は何度かあったけど、これは浮気じゃないと思う。本気の恋みたい」



美 加「そんなぁ。ねえお母さんがそんなこと納得してどうすんのよ」
貴美子「納得はしてないけど、離婚届まで置いてったんだもん、ほら」



貴美子「おかあさん一時間ぐらいぼーってその離婚届見てたんだけど、突然、そんならこっちだってあんなお父さんは願い下げだわって思ったの」



貴美子「もうお父さんと暮らした家に住むのもイヤだ。だから何もかも売って出直そうと思って、それで美加ちゃんに相談に来たのよ」



美 加「ねぇもうそんな慌てて売ることないじゃん! あの家は美加の思い出の家でもあるんだよ」



貴美子「お母さんはもうあの家売りたいの」



美 加「イヤだ。私はあの家残しておいてほしい」



貴美子「あんたはもう独立しているんだから」
美 加「イヤあの家は売らないで」


貴美子「あそう。美加ちゃんがやってくれないんだったら、売買仲介営業課の他の方に頼むからいいわ」


万 智「売買仲介営業課の他の者です」



万 智「よろしければ私がご用を承ります」



美 加「三軒屋チーフには関係のないことなのであっちに行っていてください」
万 智「白州美加、ポスティングさぼったな」



美 加「だって父と母が離婚するって一大事なんですから」



万 智「お母様のご要望は私がお聞きします。白州美加はポスティングにGO」



美 加「お母さん、この人にお願いすると、本当に速攻で家売れちゃうから、よ〜く考えないとやばいよ」



万 智「GO」



美 加「ねえ分かった?」



万 智GO!




美 加(走り去る)



貴美子「ゴーゴーって言うんですねこの会社。外国みたい」



万 智「三軒屋万智と申します」



万 智「白須様、万事私におまかせ下さい」



万 智「私に売れない家はありません」


 まあ父親(モロ師岡)は、すぐに若い女に捨てられて、すごすご家に戻ってくるのだが、愛想を尽かした母の意思は固い。なんとかヨリを戻させようとする美加の努力も空しく、母は離婚届を提出し、三軒屋万智に実家の売却を依頼する。



 万智は、美加の実家は老朽化が進んでいるので、いっそ撤去して更地にした方が売れると進言する。もちろん美加は猛反発。せめて思い出の詰まった家を残したいと、取り壊さずに家ごと買い取ってくれる客を探して、いつになく仕事のために奔走。チラシ配りにも精が出る。



 でも三軒屋チーフの見立ては正確で、土地だけなら買ってくれるという客しか見つからない。



 業者が取り壊しにかかる当日、とうとう白州美加は実家に立てこもってしまう。




 屋代課長(仲村トオル)が説得しても、ただ「撤去反対」を叫ぶだけで出てこない。



 ラチが開かない様子を見た万智は、業者から金槌を借り、窓をぶち破って中に入る。




 かつて自分が使っていた二階の部屋に籠もる白州の前に立つと、諄々と語りかける。



万 智「私は昔、ホームレスだった」



万 智「両親が死んだあと、一人っ子だった私には、父の借金が残された」



万 智「かばってくれる大人はおらず、気づいたら何もかも失って、公園で暮らしていた」



万 智「そのとき私は高校2年生。季節は梅雨だった」



万 智「育った家を追い出されるときのことを、私は今も夢に見る。雨の日の朝だった。私は今も、過去に縛られている」



万 智「だから私はこうなんだ。今も、家にこだわっている。家を追われた過去から解放されない。だから今も家を売っている」



万 智「家、家、家、家、家、家……家。家を失ったとき、心に開いた大きな穴を埋めるために、私は家を売り続けている」



万 智「いくら売っても穴は埋まらない。過去から解放されない。今のあなたも同じだ」



万 智「過去から、自分を解放しなさい。この家をあきらめれば、あなたは解き放たれる」



万 智「あなたが自由になれば、お父さんもお母さんも安心して幸せになれる」



万 智「自分を解放しろ。心を解き放て」



万 智「白洲美加は私のようになってはならない」



万 智「解き放て。解き放て」



╳    ╳    ╳




庭 野「時間かかってますね」
屋 代「ああ」
庭 野「信じましょう」



美 加「課長〜!」



美 加「解き放たれました。私、解き放たれました」



美 加「壊してください。今すぐ壊してください」



美 加「私は自由になりました〜!」




万 智「お待たせしました。撤去お願いします」


屋 代「よく分かんないけどよくやった!撤去始めてくださ〜い!」


万 智「……落ちた……」


 最後の「落ちた」は、実は私がねつ造したセリフで、ドラマには出てこない。今回は客に家を売りつけたわけではなくて、同僚を説得しただけなので、本当は「落ちた」がない方が正解なんだけど、でもここで入れて欲しかったな。ますますわけが分からなくなって、よかったのに。
 とにかく万智のセリフがだんだん宗教みたいになってきていて、それがあまり真剣味をもってしまっても面白くないので、もう少し視聴者を煙に巻いて欲しい。どれだけ立派なことを言っても、最後には「落ちた」とほくそ笑むから、やっぱり家を売ることしか考えていないのかな、みたいな。
 まあともかくこれで7話が終了、残りも見えてきた感じで、このまま順調に突っ走ってもらえればと思う。ばんがれ!