実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第559回】『ニーチェ先生』最終回の巻(付録:『黒い樹海』)


1. 可愛いだけじゃだめかしら


  『ニーチェ先生』が最終回を迎えた。
 前にも書いたように、観る人を選ぶドラマであった。なにしろ「タキシード仮面界の出世頭、浦井健治を無駄づかいする」というのが唯一のテーマなのだ。もともと実年齢(現在、三十代半ば)とバランスのとれたルックスの浦井健治に「大学を卒業後、面接に落ち続けている就職浪人」という、そうは見えにくい役をふる。そんな無理をするからには、何かほかに「なるほどこの役は浦井君にしかできない!」という話が出てくるんだろうな、なんて思って観ていた人は、回を重ねるごとに不安になっていったに違いない。別に誰がやってもいいような会話ばかりが続く。



仁 井「お好きなんですか?」



松 駒「ははは……いい大人なのにね」



松 駒「おもちゃとか大好きなんですよ。ぬいぐるみとか、カワイイもの見つけると、買っちゃうんですよ」



仁 井「フィギュアとか、並んでるんですか?」



松 駒「恥ずかしながら、妖怪ウォッチのフィギュアがずらりと……」



仁 井「意外ですね」



松 駒「そう?」



仁 井「そうは見えないです」



松 駒「え? 僕って何が趣味の人に見えるの?」



仁 井「……就職浪人……」



松 駒「それ趣味じゃないよ。致し方ない身の上だよ」
仁 井「浪人が趣味の人もいるみたいですよ」



松 駒「へぇ〜」



仁 井「たとえば、それまで親の言いなりで生きてきたりすると、浪人したとたん、それがいちばん楽しくなるというような」



松 駒「へぇ〜」



松 駒「まあでも僕は、大学の時に好きなことし過ぎた結果なんで」



松 駒「なるはやで就職したいです」



仁 井「……がんばってください……」



松 駒「てか、仁井君こそ趣味がわかんないよ」
仁 井「僕は音楽です」



松 駒「えぇぇぇぇ、それぼく以上に遥かに意外ですよ」



仁 井「バンドを組んでいるので」



松 駒「えぇぇぇぇ、すごい意外」



仁 井「よく言われます」



松 駒「ええ、じゃあ仁井君のパートは何なの?ベース?」



松 駒「もしかしてボーカル?……リードギターっぽいけど」



仁 井「木魚です」


 ただ愛想の良さというか、このキャラクターは浦井君ならではなんですけどね。
 で、前にも触れたように、第7話で、いまブレイク中の霧子(仮面ライダードライブ)こと内田理央が、新人バイト役で登場する。「恋愛禁止なので男の人とは付き合えない」などとお嬢様かアイドルみたいなことを言うわりには、深夜のコンビニでバイトしているこの謎の美少女の正体が明らかになるのが第9話。



 実は彼女は「地下アイドル」だったのである。そのことが発覚して、みんなから「歌って!」とせがまれた内田理央は「え〜っ」とか言いながら「じゃあ、ちょっとだけですよ」と、すぐにノリノリで持ち歌を歌いだす。が、これが歌も踊りも壮絶にヘタなのである。


♪ああ連れて行きたいな♪



♪あなたを大好きなあの月へ♪



♪ああ半ば誘拐まがいでも/あなたを月に連れてって♪



♪いっしょにおモチをつきたいな♪


 内田理央の熱演に、浦井君もシソンヌじろうも笑いをこらえるのに必死であるが、ともかく、すさまじくヘタ。あまりの事態に、店内は重苦しい空気に包まれるが、本人はまったく気づいていない。



 萌 「はいっ、ここまで〜!あ〜恥ずかし」



仁 井「それで舞台に立ってるんですか」




仁 井「しばらくは地上に出ることはなさそうですね」


 そして迎えた第10話(最終回)。彼らのコンビニ「スリーセブン寺院通り店」に、なぜか社長が視察にやって来ることになった。このチェーンでは定例の行事らしいが、結果によっては閉店させられることもある。寺院通り店はここのところいつも閑散としているし、実際、売り上げもよくない。いきなり閉店の危機である。
 


 悩む店長(佐藤二朗)のために、なんとか客を集めるアイデアを絞り出そうとする松駒(浦井健治)や仁井くん(間宮祥太朗)たち。で、思いついたのが地下アイドル萌ちゃん(内田理央)のライブ。地下アイドルとはいえ、いや地下アイドルだからこそ、コアな固定客が一定数いるわけで、小さなコンビニの売り上げには充分な効果が見込める、という算段だ。
 ところがこれが惨憺たる結果に。集まったファンは5人。地下アイドルといっても、もうこれは地下一階とか地下二階とかいうレベルではない。






 これでは当然ながら売り上げにはつながらない。というか萌ちゃん自身、かなりのショックを隠せない。



 萌 「いま時分、アイドルグループっつうのはね、可愛い子は人気が出ないんっすよ」



 萌 「可愛ければ可愛いほど人気出ないんっすよ。ブスじゃねえと売れねえんっすよ。『あ〜、よくもこんなブスが売れてんなあ』ってヤツしか売れねえんっすよ」


 改めて言っておくが、このドラマの脚本・監督は、『ミューズの鏡』『薔薇色のブー子』『指原の乱』など指原莉乃とめちゃくちゃ相性のいい福田雄一です。それがどうこうということはありませんけどね。
 それはともかく、せっかくステージをしつらえたのに、萌はすっかりやる気をなくしてしまうし、スタッフのテンションは下がりまくり。そこで松駒が一計を案じる。



松 駒「仁井君、萌ちゃんのカタキをとってあげてよ」



仁 井「はい?」



松 駒「バンドをやってるって言ってたよね」



仁 井「ですが、僕は木魚担当なので」



松 駒「いや最低限、萌ちゃんより音感は良いはずだよ」



店 長「さらりと大胆に酷なことを言ったね」



松 駒「もう配置まで替えちゃったんだから。ステージ作っちゃったし」
仁 井「申しわけありませんが……」
松 駒「塩山があれだけ夢中になって追いかけているんだから、絶対女子が集まるよ!」


 「塩山」っていうのは、このコンビニの常連で、浦井君の幼なじみなんだけど、仁井君にぞっこんのあまりストーカーになってしまった松井玲奈のことね。



 何やかんやと仁井君は「松駒さんがいっしょなら」という条件でステージに立つことに。そしてその二日後。仁井と松駒のステージが始まる。



♪スリーセブン/スリーセブン/スリーセブン♪



♪疲れた時に寄ってみな/セブンがたちまちヘブンだよ♪



♪買いたいものがなくたって/うろうろしてりゃ/テンション上がる♪


 ショーはミュージカル風なんだけど、ひたすらユルい。
 第1話からずっと浦井健治を無駄づかいしてきたこのドラマだが、最終回にいたっては、ゆる〜いミュージカルもどきまでやらせてしまうのである。この高級和牛でドッグフードを作るようなもったいなさが『ニーチェ先生』の醍醐味だと思う。
ともかく、評判が評判を呼んで、次第にライブ目当ての女子の客が増えて来る。コンビニ「スリーセブン寺院通り店」はなかなかの繁盛。







 萌 「いいなあ、人気あって」



柴 健「萌ちゃんは女優さんに向いていると思うよ」



店 長「ああ良かった。これで潰れずに済むなぁ」


 で実際(歌や踊りはド下手だけど)可愛い萌ちゃんが女優に転身して芸能界で大成功を収めるとか、新入りバイトの「柴健」こと柴田健くん(松田稜)の意外な正体とか、いろいろ後日談や伏線の回収とかもきっちりあって、わりと気持ちよく終わった。
 なので私は最終回を観おわってすぐ、ひろみんみんむしさんに「良かったよ〜」とメールを送った。そしたらひろみんみんむしさんてば、これを観るためにHuluに登録してしまったらしい。まだ無料のお試し期間だからいいんだけど、考えてみたら、浦井君ファンがみんな楽しめるドラマなのかどうか、だんだん自信がなくなって、今は私、ちょっと責任を感じています。

2. 本編に入るつもりがほとんどオマケ



 そんなこともあって、今回はマクラに、少し詳しく『ニーチェ先生』最終回をご紹介して、それから本編は北川景子さん主演の『松本清張 二夜連続ドラマスペシャル 第二夜 黒い樹海』(2016年3月13日、テレビ朝日)のレビューをするつもりでいた。だけど、今回は時間も気力も尽きてしまったので、悪いけどこれで失礼します。
 『黒い樹海』は脚本と演出がカッチリまとまっていて、北川さんも可愛く綺麗に撮られていて、まずまず文句なしに楽しめたドラマだと思う。





 美しいなりに眉間の縦じわもクッキリ。このドラマの見どころのひとつは、沢村一樹と北川景子の眉間の縦じわ対決だったような気がする。そしてそこに六平直政も参戦してくるのであった。





 あと小池栄子と北川景子が姉妹という設定。同じものを食べて育っても、体型にだいぶ差が出るとか……いつも下世話なネタですみません。



 原作が松本清張で、いってみればサスペンスドラマの元祖みたいな話なので、プロット自体クラシックといえば言葉はいいが、要するに古めかしい。でも脚本や演出で、ほどほどに現代風のアレンジがほどこしてあった。そのへんが良くできていたので、レビューしてみようかなぁ、とも思っていたんだが、今回『ニーチェ先生』に終始してしまったし、改めて思い起こすと、そのほか観ていて印象に残ったポイントは、『M14の追憶』で言い尽くされているような気もする(ここ)。だからレビューはまあいいかな、という気にもなってきたけど、どうしようか。ちょっと迷っています。
 本日はこのくらいで。