実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第485回】またしても再起動失敗の巻(泉里香『仮面ライダー鎧武』第45話)

1. 来年1月には上海にて初の海外公演





以上、特に意味はなく、余韻にひたっているだけです。


2.「はい、剥く」

 
 テレビ朝日『仮面ライダー鎧武』もいよいよ大詰めである。
 泉里香については、期待していたほどの出番はなかったが、それでも「ヒーローのお姉さん」としては、まずまずの頻度で出演していた。少なくとも『特命戦隊ゴーバスターズ』(2012年)の主人公の姉ちゃん(吉木りさ)よりも出演回数は多かった。
 ただ、この人は実写版セーラームーン時代も、一年を通じて顔の感じが月の満ち欠けみたいに微妙に変化していた。なんて、こんなこと書いてしまうと怒り出す浜千咲原理主義者が、今もいるかな?
 今回の『仮面ライダー鎧武』も同様で、里香さんの顔の輪郭が(したがって顔の造作全般の印象が)だいぶ変化したように感じられる時があって、一年間けっこうドキドキして見守っていた。この際ですから、ちょっと初回を振り返ってみましょう。第1話(2014年10月6日放送、脚本:虚淵玄、撮影:松村文雄、監督:田崎竜太)より。



 晶 「どうしたの、バイトで何か失敗でもした?」



紘 汰「なあ姉ちゃん……大人になるってどういうことだ?」



 晶 「自分で自分の面倒をみられるってこと」



 晶 「今のコウタは食費も家賃も、全部自分で稼いでいるじゃない。だからもう立派な大人だよ」



紘 汰「でも自分の面倒しか見てられない。仕事ばっかりで手いっぱいでさ」



紘 汰「ほかにもあるはずの大事なこと、全部ほったらかしにしてるんだ。こんなんじゃ俺、昔と全然変わってねえよ……」



 晶 「コウタ」



紘 汰「俺、変身したいんだ。もっと強くて何でもできる自分に」



 晶 「ある日いきなり違う人間になろうだなんて、人生なめすぎだぞ、てめえ」



 晶 「焦らないで少しずつ、なりたいと思った大人になればいいの」



 晶 「はい、剥く」



 というわけで、ニンジンをにぎって皮むきをしている姉ちゃんに向かい「大人になるってどういうことだ?」なんてダイレクトな質問を浴びせる今度のライダーはすごい、さすがアダルトゲームのシナリオで名をあげた人が脚本を書いているだけのことはある、と話題蒼然だった初回である(本当か?)。
 ご存知のように、もともと昭和の仮面ライダーは、心身ともにずばぬけた能力をもつ若者が、悪の組織に目をつけられ改造手術を受ける、という話だった。でも、医療が発達して、人工臓器もどんどん普及している現在、テレビ局は(おそらく差別につながるからも知れないからという理由で)「改造人間」という単語の使用を自粛するようになった。
 だから平成仮面ライダーは、だいたい「正義感は強いけど普通の青年が、何かのきっかけで謎の変身ベルトを手に入れ、その時から怪物と戦う日々が始まる」パターンだ。たまに最初から魔法使いというのもいたが、ともかくこの場合、主人公のキャラクターは、気弱だったり尊大だったり情にもろかったり放浪癖があったりヤンキーだったり様々だが、でもみんな、それなりに目の前の現実と折りあいをつけながら生きている。この『鎧武』の紘汰みたいに、バイトに追われる毎日に強烈な不満をもっていて、初回から「自分を変えたい」という変身願望を口にする主人公は、実は平成ライダーシリーズでは珍しい部類に属する。
 でも視聴者の子供たちは、まさに自分も「変身したい」からこそ仮面ライダーを観るのだ。そういうふうに、主人公と視聴者が「大人になりたい」「強くて何でもできる自分に変身したい」という願望を共有する地点から始まったところに『仮面ライダー鎧武』の特徴(のひとつ)はあったと思う。

3. 黄金の林檎


 しかし近年の仮面ライダーは、1号、2号、新1号とのんびりしていた我々の時代と違い、もう次から次へと新しいバージョンが登場してどんどん変わっていくから、主人公の変身願望も天井知らずに増大していく。その結果、本人もなんだか分からなくなっちゃったのが先週の第45話(2014年9月14日放送、脚本:虚淵玄、撮影:倉田幸治、監督:金田治)だ。
 ……あの、念のために書いておきますが、ご覧になっていない方、あまり私の説明を真に受けすぎないでね。





 晶 「コウタ!それ危ないんじゃ?」



紘 汰「本当はうすうす分かってたんだ。食欲がなくなってからも、うまそうだって思えたのは……」



 晶 「コウタ!」



紘 汰「ああ、やっぱりうめえ」



  主人公の内面も変わったが、姉ちゃんの外面も微妙に変わった(だからそれは言うなって)。
  それにしても、リンゴだバナナだオレンジだと、フルーツをモチーフにした仮面ライダーって、ふざけているのかと思ったら(実際ふざけているようにしか見えない外見だが)、話がどんどん神話的にふくらんでいってびっくりした。実際、ギリシアや北欧など西洋世界に広く伝わる黄金の林檎伝説とか、アダムとイブの食べた禁断の果実とか、日本神話で黄泉の国へ行ったイザナギが追っ手に桃を投げつけて生者の世界に生還したとか、言われてみればフルーツというのは様々な文化圏の神話物語のなかで、人間の欲望や永遠の生命を象徴するアイテムとして登場していた。たぶん、もともと「今回のライダーはフルーツで」というアイデアが先にあって、そこに様々な神話的想像力を刺激する、民俗学的というか、文化人類学的というか、そういうモチーフを突っ込んでいくかたちで、全体の物語を考えたのではないかと思う。そういえばちょっと前には光実が「ヨモツヘグリ」なんてロックシードで変身していた。

よもつ - へぐい【黄泉戸喫】
黄泉の国のかまどで煮焚きした物を食べること。これを食べると死者の国の者になり、再び現世には戻れないと信じられていた。ギリシア・北欧などの神話にも見られる。(『広辞苑』第四版)


 ともかく、食えばもう後戻りはできない、あっちの世界の果実を口にしてしまった紘汰。第1話で自分から望んだ変身の力を手に入れ、巡りめぐって辿りついたのがここだ。そして顔のまるくなった姉ちゃんを引き続きアップでとらえるカメラ。



 晶 「……コウタ……あなた……」



紘 汰「……ごめんな姉ちゃん。俺、もう姉ちゃんの手料理食べられないや」



紘 汰「いいんだ姉ちゃん。だってホラ前にも言ったことあっただろ、今とは違った自分になりたいって」



 晶 「だからって……そんな身体になってまで、あなた……」



紘 汰「これが正しいかどうかは分からない」



紘 汰「でもな、今なら、今の俺なら正しい人たちの味方ができるんだ」



(上空でヘリの音)



╳    ╳    ╳




 晶 「あ、自衛隊」





紘 汰「やっぱり俺たち見捨てられてなかった」




 晶 「コウタ?」




紘 汰「みんなに伝えてくれ。戒斗やザックのことは俺に任せろって。先に街から避難しろって」



 晶 「……そんな……」



 晶 「コウタ!」


 こうして最後の戦いに向かっていく紘汰。
 さっき第1話を観なおして気づいたんだけど、ニンジンは剥いていても、実は紘汰が姉ちゃんの料理を食べるシーンって無いんだよね。ためしに第2話、第3話を観たけど、やっぱり無かった。第30話で、家で姉ちゃんとご飯を食ってる場面があったが、それは姉ちゃんが作ったんじゃなくて、拾ってきた(笑)ロボットのジロー(キカイダー)が作ったご飯だった。
 ひょっとして「俺、もう姉ちゃんの手料理食べられないや」と言いながら、紘汰は本編では一度も姉ちゃんの手料理を食べていないのかもしれない。すべて確認していないので間違っていたらすみませんが、だとしたら面白いよね。
 ま、ともかく後少しで最終回。『仮面ライダー鎧武』は全47話のようだから、残りあと2回である。いつもラストになるとバタバタ慌ただしい展開になってしまいがちな仮面ライダーにしては、この『鎧武』は、ここまでのクライマックスの展開もキッチリしているし、最後の決戦とエピローグに1話ずつとってあるわけで、しっかり計算されている。エライ。ほかの脚本家の方々も見習ってください。この第45話ではザックと耀子が死んだ(と思ったらザックは意識を失っただけだったみたい)。耀子のミニスカートも見納めだ。




 さあそして最終決戦だ。なんだか『デビルマン』の最終回、不動明のデビルマン軍団VS飛鳥了のデーモン軍団の様相を呈してきた戦いの行方は?








 と、このくらいをマクラに、本題である『みをつくし料理帖』レビューに入るするつもりでいたんだが、すでに今これを書いているのは9月21日(日)の早朝、スーパーヒーロータイムが始まる時間になってしまった。
 読んでくださっている方の中には、私がわざと道草くって本題を進めないようにしている、と思っている方がおられるかもしれないが、そんなことはないのだ。私だって『みをつくし料理帖』をあと2回くらいでかたづけて、実写版DVDのレビューに戻りたいですし、セラミュや小松彩夏の映画のレビューもやりたい。北川さんの映画レビューだって、やっていないのがまだ溜まっている。なのに、いろいろやらなければならないことが増えて、嬉しい悲鳴をあげています。
 実際、昨日も帰宅してからこつこつ『みをつくし料理帖』のレビューを準備して、ちょっと仮眠をとってから、午前2時ごろに起き出して、本題に入る前に、まず『鎧武』のことを書き始めたのである。そうしたらトッキュウジャーの始まる時間になってしまった。次回こそはがんばって『みをつくし料理帖』レビューを再起動します。


おまけ】某所で拾ったGIFアニメ