実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第385回】なぜ今?『死刑台のエレベーター』レビューの巻


【告知】9月最初の週末はこのブログお休みさせていただきます。


「来週の今ごろは海外出張」なんて書いたけど、すみません日にち間違えてました。あと三日後です。まだ日本に居ます。



こんな感じの中国女性に会いに行ってきます(推定)。


さて今月はお盆で帰省していたので、その間に、名古屋では視聴できない『メグたんって魔法使えるの?』を録画した。幸いにも、M14さんのPCが逝去されてレポのなかった回だった(第6話)。



『メグたんって魔法使えるの?』は、脚本・監督はあの福田雄一で(『大洗にも星はふるなり』『33分探偵』『勇者ヨシヒコと魔王の城』)、主演はAKB48の小嶋陽菜で、日本テレビで土曜の午前2時ごろにOAされているという15分ドラマである(2012年7月7日〜)。内容はですね、え〜と「マカロニほうれん荘」や「めぞん一刻」みたいな人々のいる「ろくでも荘」という下宿があって、そこに新しい管理人兼お世話係としてやってきたメグたん(小嶋陽菜)が、実は人間界に修業にやってきた魔女だった、というお話です。
メグたんは料理とか苦手なので、すぐに魔法を使って、すぐに魔法使いであることがバレる。なので毎回パンチラを見せる。パンチラを見せると、魔法に関するみんなの記憶を消せるのだ。
このパンチラシーン、同じものの使い回しでは毎週見て下さるファンに悪いから、という小嶋さん自身の提案で、毎回違うものを撮っているということだ。



私が観た第6回にはゲストとして指原莉乃が登場。指原さんは『メグたん』より前に同じ時間帯でやっていた『ミューズの鏡』のヒロインだった(2012年1月〜6月、全24話)。これも福田雄一脚本・監督の15分ドラマなんだけど、何とこのたび、その劇場版が制作されるそうだ、指原さんみずから告知も兼ねて特別ゲスト出演である。完全に主役を食っていた。


「だめっ!」


「こりゃたまらん〜」


凄いですね。
『ミューズの鏡』は、観ていないんだけど、貧乏人の娘が女優の道を進むという、どうも『ガラスの仮面』のパロディ的な話のようである。実写版セーラームーン関係でいうと池田成志(美奈子の事務所の社長)が「オペラの怪人」のパロディみたいな役で出ている。しかし名古屋ではこれも観られなかった。『メグたん』同様、東京のみのオンエアかと思ったら、指原さんの出身地である大分放送だけは4月から放送を開始しているから、ひょっとするとこのころすでに、指原さんの元恋人発覚・九州帰還命令という6月のイベントは仕込み済みだったのかも知れない。
ところで、この『ミューズ』と『メグたん』と『実写版セーラームーン』の視聴率を比較すると、なんか気分が昂揚しますよね。我らがセーラームーンもAKBに負けてないという感じで。



『ミューズ』『メグたん』『実写版』 
第1話2.6%2.1%4.6%
第2話1.8%1.8%4.2%
第3話1.8%1.8%4.1%
第4話1.0%1.4%3.1%
第5話1.9%1.1%2.8%
第6話2.4%2.1%3.6%
第7話1.7%2.1%3.0%


日テレは25日(土)から26日(日)にかけて24時間テレビである。この機に、いつも関東オンリーの『メグたん』のスペシャル版を全国放送して知名度を上げれば、来週からは視聴率2桁を狙えるぞー!
……と思ったんだが「今週の『メグたんって魔法使えるの?』は24時間テレビのためお休みします」だそうである。気のせいかも知れないが、どうも当事者たちも、あんまり広くは知られたいと思っていないんじゃないかな、このドラマ。


さて、結局すっかり遅れてしまったけれども、北川景子さん、26歳のお誕生日おめでとうございます。
先週もちょこっと書いたとおり、今回はお誕生日にあわせて『死刑台のエレベーター』(2010年)を観てみた。北川ファンの評価の高い作品だし、確かに主演作ではないが出色の演技であるから、生誕記念レビューにふさわしいと思ったわけです。
ただ北川さんの演技は良いんだけど、作品そのものは、出来が悪いというのではなくて、なんというか、変である。この「変」の理由は明白だ。台本がおどろくほどオリジナルに忠実なのである。これは、オリジナル版(1958年フランス)の監督ルイ・マルの遺族が、原典にできるだけ手を加えないことを条件にリメイクの許可を出したせいでもある。なのに舞台は21世紀の日本。だから物語のあちこちに、しわよせ的に「無理やり」が生じている。そこに目をつぶれば頑張っていると言えるが、逆にそこがどうしても変だ。



物語は、主人公の男が、職場のボスを殺し、不倫関係にあったボスの妻と一緒になろうとするところから始まる。勤務の合間に社長室に忍び込み、自殺に見せかけた密室殺人に成功。
と思えたが、手違いで現場に証拠を残してしまう。でも、もうアフターファイブなので、怪しまれないよう、秘書と一緒にいったん退社したフリをする。で、ビルの裏口から大慌てで戻り、証拠を回収。やれやれ、と思って下りエレベーターに乗ると、あとちょっとで一階というところでエレベーターが停まる。終業後の見回り点検を終えた警備員が、電源を落としてしまったのだ。



こういう次第で主人公がエレベーターに閉じ込められている間、ほんのちょっと停めておくつもりで裏口につけておいた車をチンピラに盗まれてしまう。キーをさしたままだったのである。そしてその晩、チンピラは恋人を乗せてドライブを楽しんだあげく、行き当たりばったりに殺人まで犯して、車を乗り捨てて逃走する。警察が車の持ち主を洗い出して、主人公は、一晩じゅうエレベーターから脱出しようと悪戦苦闘しているうちに、見も知らぬ男女の殺害犯人として指名手配されてしまうのである。



あらすじを追うのはこのくらいにしておくが、この時点でもう、かなりな無理やり感がただよう。(1)現代では、この映画のような方法で自殺を偽装することはまず不可能。だいいち部屋の鍵のメカニズムが古すぎる。(2)守衛が主電源を切ったせいでエレベーターに閉じ込められるというシチュエーションも、今時ちょっとあり得ない。(3)いくらわずかな間でも、キーをさしたまま車を離れて建物のなかに入っちゃうって、都会の真ん中であり得ないような気が(しかも車のルーフは開きっぱなし。しかもシートに携帯電話を置いたまま。しかもアルファロメオのスパイダー)。
いちおう、殺害の舞台となる建物は「旧帝国ホテルも手がけたアメリカの建築家フランク某」の設計になる、歴史的価値をもつビルということになっていて(横浜郵船ビルをCG加工して使用)、だからエレベーターも部屋の鍵も、何もかも旧式のまま骨董品のように保存されている、という説明はある。



それならいっそのこと、時代設定そのものをもっと昔、昭和30年代くらいにしてしまえば良いのに、と思った。そこまでの予算はなかったのかな。
もうひとつ大きな問題は拳銃だ。この映画の二件の殺人には、どちらもピストルが用いられる。物語の性格からしても、刺したり殴ったりという生々しいやり方より、銃弾一発の方がふさわしいのだが、欧米と違って日本では滅多に拳銃など見かけない。さてそれではどうやって犯人は拳銃を手に入れたのか。
一件目は計画殺人だから、何らかのルートで事前に準備させておけば良い。でも、二件目の場合は、オリジナルでは、奪った車のグローブ・ボックスに、たまたま護身用拳銃が放り込まれてあったので、それを犯行に使っただけの話だ。計画性もへったくれもない。しかし日本の場合、護身用の拳銃などというものを携行する人はいない。ここをどうするか。



で、リメイク版は結局このチンピラを若い警官という設定にした。役者は玉山鉄二。こいつがなぜか(警官なのに)チンピラヤクザたちに因縁をつけて、逆に袋だたきにされて持っていた拳銃を奪われる。それを奪い返すために、そのへんに停めてあった車を盗み、かつチンピラたちのボスの車を追った、というふうにアレンジしてある。で、血の気が多いから、取り戻した警察拳銃で相手を射殺してしまったのだ。
って、こう書いてみるとかなりむちゃくちゃな話だな。こんな計画性のない逆ギレ君が警官というのもアレだし、いきさつはどうあれ、ヤクザが白昼堂々、公然とおまわりさんをボコボコにして拳銃を奪うなんてことも、あり得ないよねぇ。
とは思うがしかし、私はこのへんの展開、そんなに気にならなかったな。1970年代にはこういう、若者の無軌道な暴走とその破滅を描いた映画がけっこうあった。『青春の蹉跌』(1974年、東宝、監督:神代辰巳)とか『仁義の墓場』(1975年、東映、監督:深作欣二)とか『青春の殺人者』(1976年、ATG、監督:長谷川和彦)とか。こういう映画で萩原健一とか水谷豊がやっていた破滅型キャラクターを、ここでは玉山鉄二が演じている。悪くないと思ったよ。
そして、そういうやぶれかぶれな男をなんとか手なづけようとしながら、惚れた弱みで引きずられていく、ちょっと頭の弱そうな彼女が北川景子だ。1970年代だったら桃井かおりや原田美枝子の役回りだね。北川さんの場合、どっちかというと、桃井かおりよりも原田美枝子タイプか。とにかくバカ。
玉山が車をパクろうとすると「何それ犯罪じゃない?」と言いながら、「乗れよ、乗れ」と言われればほいほい助手席に乗って、車の開閉ルーフに「凄い」って無邪気にはしゃぐ。



玉山が自分のピストルを奪ったヤクザを追っていることを知ると「拳銃取り戻したら刑事になれるのね」と大喜び。カメラ好きで、車の中にあったライカを持ち歩き、宿泊先で出会った写真屋に「やばい、いいな〜これ」と言われると嬉しそうににっこり。オリジナルに忠実なラストシーンを実現するためには、デジカメじゃだめなんですね。だから北川さんは、盗んだ車で見つけたヴィンテージカメラで自分撮りをして、フィルムに証拠を残してしまうバカ娘という設定(笑)。



玉山が成り行きでヤクザと情婦の二人を射殺してしまうと、これまでと観念して自分のアパートに戻り、ワインに睡眠薬で心中を図るけど、バカだから致死量もちゃんと知らなくて、翌朝には元気に目覚めて薬をぜんぶ吐いちゃう。



トイレで吐きながら「死ねなかった!」と泣く。無知の涙。しかしそんな姿が可愛い。吐いているシーンが可愛い女優さん、今の若手を探してもなかなかいないと思う。オリジナル版のベロニク(ヨリ・ベルダン)も、ここは朝まで眠りこけているだけで吐かない。間違いなくオリジナルを越えたといえるシーンだ。



ほかにもいろいろあるような気もするけど、このくらいにします。
オリジナル版は神格化されているけれど、サスペンス映画としてプロットだけみれば、さすがに今となっては古めかしさは否めない。主人公の行動は、完全犯罪を狙うわりに雑でアナだらけだし、展開も偶然性に頼りすぎる。見ようによっては相当とぼけた奴だ(リメイク版の阿部寛は、そういう味も持っているので良かったと思う)。

でも本作の最大のサスペンスは、実は物語のなかには仕掛けられていない。中身ではなくパッケージというか、お話をいかに見せるかという演出の側に仕組まれているのだ。冒頭で主人公と愛人が、電話を通して愛の言葉をささやきあう。ほんの15分で完全犯罪は成功し、そうすれば二人はなんの邪魔者もなく愛し合える。冒頭のところを見ていると、これは、犯罪に手を染めた男と女の愛の逃避行のドラマが始まるのかな、と思ってしまう。




ところが、手違いに偶然が重なって計画が思い通りにいかず、二人は会えるどころか電話で連絡することすらできなくなってしまう。閉じ込められたエレベーターからなんとか脱出しようとあがく男と、男に裏切られ、逃げられたのではないかという疑念をぬぐえず、憔悴して夜の街を彷徨する女。
我々も、話がどこまで進めばこの二人は再会するのかな、というじらされた気持ちになる。実はこれがこの映画の芯となるサスペンスであり、伏線となっている。結局、いつまで経っても二人が同じ画面におさまる展開にならない。最後の最後に二人のツーショットが画面に映るんだが、それが結局、完全犯罪と思われた二人の企みを崩す詰め手になる。



この趣向の鮮やかさが、オリジナル版を不朽の名作にしているひとつの要素だろう。でもリメイク版の方は、幻想なんだけど、ヒロインが波止場で、幻の彼と対話するシーンが入っちゃっているんだよね。ここでちょっと、緊張の糸が途切れる。
さらに加えて、オリジナルではジャンヌ・モローがずーっと笑わない。本当は15分で完全犯罪が終わって、駆けつけてくれたはずの恋人が来ないので、最初から最後まで不安と焦りの入り交じった顔しか見せない。だからラストの笑顔が活きるのだ。
そういう意味では、リメイク版の吉瀬美智子も、最後まで絶対、笑顔は禁じ手のはずなんだが、雨に打たれて街をさまよい、「迷子になったの?」と問いかける少女と会話を交わすシーンで、まあ相手が子供だからか、ついうっかり微笑を浮かべてしまっているが、これはちょっとよくなかったね。



まあとにかく、何が言いたいレビューなのかまとまりがなくてすみませんが、「なんでここまでオリジナルに忠実でありつつ、現代日本を舞台にしたリメイクをやらなくちゃいかんのかな」という疑問を考えなければ、スタッフと役者の頑張りを楽しめる作品です。もし「主演じゃないから」とスルーしている北川ファンがいたとしたら、もったいないからぜひ見ておけ、とお薦めします。そいじゃ。


オリジナル版の車はメルセデス・ベンツ300SLクーペ


リメイク版の車はアルファロメオ・スパイダー


オリジナル版のカメラはミノックス


リメイク版のカメラはライカのM2




おくればせながら北川景子さん26歳のお誕生日をお祝い申し上げます。




【作品データ】『死刑台のエレベーター』2010年10月9日公開/企画・製作:小椋事務所/製作『死刑台のエレベーター』政策委員会(テレビ東京、角川映画、小椋事務所、ポニーキャニオン、テレビ大阪)/配給:角川映画
<スタッフ>プロデューサー:小椋悟/エグゼクティブプロデューサー:葉梨忠男/アソシエイト・プロデューサー :安斎みき子、井上潔/脚本:木田薫子/撮影:鍋島淳裕/監督:緒方明/編集:矢船陽介/音楽:山本友樹/ギター演奏:渡辺香津美/照明:三重野聖一郎/録音:星一郎/音響効果:今野康之/美術:磯見俊裕/美術デザイナー:鈴木千奈/装飾:須坂文昭/衣装:宮本まさ江/ヘアメイク:井川成/助監督:浅利宏/制作担当 :三辺敬一/スクリプター:川野恵美/キャスティング:おおずさわこ/特撮監督:尾上克郎/VFXプロデューサー:大屋哲男/VFXスーパーバイザー:道木伸隆/プロダクション協力:アグン・インク
<キャスト>手都芽衣子(手都グループ会長夫人):吉瀬美智子/手都孝光(手都グループ会長、芽衣子の夫):津川雅彦/時籐隆彦(医師、芽衣子の愛人) :阿部寛/時籐の秘書: 山田キヌヲ/赤城邦衛(警官):玉山鉄二/松本美加代(『クレオ』美容師、邦衛の恋人) :北川景子/神健太郎(広域暴力団組長):平泉成/中井朔美(健太郎の情婦):りょう/チンピラ:鄭龍進/遠野(手都ビル守衛):笹野高史/泉仙一(手都グループ総務部長):田中哲司/工藤浩一(隆彦の医大同期): 堀部圭亮/並木遙(浩一の友人):町田マリー/古山健三(古山写真館の館主):小市慢太郎/柳町宗一(横浜署刑事) :柄本明/恩田真紀子(神奈川県警刑事):熊谷真実/新川署長(横浜警察署長):上田耕一/横浜署の刑事 :福井博章、渡辺陽介、斉藤陽一郎/箱根署の刑事 - 諏訪太朗、原金太郎、並樹史朗/アナウンサー: 松丸友紀


<オリジナル>『Ascenseur pour l'échafaud(死刑台のエレベーター)』1958年1月29日フランス、92分/制作:ジャン・スイリエール(Jean Thuillier)/原作:ノエル・カレフ(Noël Calef)脚本:ノエル・カレフ、ルイ・マル/音楽:マイルス・デイヴィス(Miles Davis)/撮影:アンリ・ドカエ(Henri Decaë)/監督:ルイ・マル(Louis Malle)/編集:レオニード・アザー(Léonide Azar)/出演:モーリス・ロネ(ジュリアン)、ジャンヌ・モロー(社長夫人フロランス)、ジョルジュ・プージュリー(チンピラのルイ)、ヨリ・ベルダン(ルイの恋人)、リノ・ヴァンチュラ(警部)、ジャン・クロード・ブリアリ(モーテルの男)