実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


最新記事〕 〔過去記事〕 〔サイト説明〕 〔管理人

【第380回】小松彩夏姫降誕26周年記念「みちのく☆パンクロック」プラスワンの巻



先週「小松彩夏様の誕生日を祝うネタがない」って書いた背景には、実は今週の土曜日、日曜日、月曜日まで何かと忙しい、という事情があった。ひょっとするとブログを一回休みするかも知れないと思い、そのための伏線を張ったつもりだったんです。が、そういうときに限って、コメント欄に「じゃあこういう企画をやったらどうですか」という皆様の親切な応援レスがついてしまって、いや、ありがたいことです。
ぽんた師匠のブログを拝見しておりましたら、なんと彩夏様、今年のバースデイイベントにてセーラーヴィーナスの衣裳を披露されたという(ただし2回目に参加したひろみんみんむしさんは観られなかった模様)。およそ10年振りのヴィーナスである。私はイベントが不得手なんだけど、こればっかりは、ぜひ参拝して足下にひざまづきたかったなぁ。これからも、いつもヘコみやすい姫を応援していきたい。
と思ったんだけど、マジで時間も無いので、どうしようか。とりあえずは、こっちよ!研究員の書き込みのあったラジオドラマの感想。なにせラジオドラマのレビューなのでひさびさに文章ばっかりだよ。

1. みちのく☆パンクロック



劇ラヂ!ライブ『みちのく☆パンクロック』
(NHKラジオ第1制作ドラマ、2012年5月4日放送、7月14日再放送)


作・演出:及川拓郎


カオリ:小松彩夏


ノゾミ(希美):仲谷明香(AKB48)


影岡(教師):平野正人


DJ岩渕:浅沼普太郎


嵐☆三十郎:片桐仁


音楽:NARASAKI、WATCHMAN


録音スタジオに客を招いての、ライブスタイルのラジオドラマ。
小松彩夏の役どころは、ギターが好きでミュージシャンを目指している、東北の片田舎の女子高生カオリ(小松彩夏)。わりとシビアで冷静な自己批評能力をもっていて、今の自分の才能に限界を感じている。このままここでくすぶっていても、アタシ程度の才能では人知れず埋もれて消えて行くだけだ。だから早く東京に出て、誰かの目に留まらなくちゃいけない。そういう焦りの気持ちから、授業態度もよろしくなく、親身になって彼女の将来を心配している担任の影岡先生(平野正人)とも、何かと喧嘩してしまう。ほとんど唯一の友達は、一緒にバンドをやっているノゾミ(仲谷明香)。


希 美「カオリちゃん、また影岡とやりあったらしいじゃん」
カオリ「別にやり合ってないし、大学行かないって言っただけ」
希 美「カオリちゃん、ほんどに東京に行くの?」
カオリ「まぁ別に東京じゃなくてもいいんだけどね。どこか音楽できるとこ」
希 美「音楽ならここでもできんじゃん。別に東京行かなくても」
カオリ「できないよ。こんなとこで音楽続けて先が見える?ぜんぜんリアルじゃない」
希 美「出た、リアル。さすがパンクロッカー」
カオリ「もう、バカにしてんの?」
希 美「してないよ。パンクパンク。カッコいい!」

カオリのM
(私はこの町が嫌いだった。町並みも空気も方言も、そこにいる人たちも。それがリアルな感情で、とにかくこの町が私は大嫌いだった。この町に生まれて唯一よかったと思えるのは、ノゾミと出会えたこと。ノゾミは小さい頃からピアノをやっていた。ノゾミは私なんかよりずっと才能がある。だけど……)


カオリ「てかさ、ノゾミも行こうよ。向こうでバンド続けよう」
希 美「私?無理無理、才能ないもん」
カオリ「どこがよ。ノゾミならぜんぜん通用するって」
希 美「無理だよ〜」


カオリのM
(ノゾミのことは大好きだけど、こういう態度がたまにムカつく。いわゆる才能のむだづかいだ)


オムニバス映画『恋文日和』(2004年、シネカノン)の第2話「雪に咲く花」(脚本:佐藤善木/監督:須賀大観/撮影:福本淳)の小松彩夏は、雪降り積もる東北の田舎町(ロケ地は新潟だったけど)には不釣り合いなくらい垢抜けて妖艶な美少女であった。男子生徒の間には「500円払えば誰とでもやらせてくれる」という都市伝説ふうのウワサもあって、でもちょっと軽々しく声をかけがたい雰囲気も合って、勇気をもって声をかけても、軽く子供あつかいされてしまいそうな、エキセントリックな子だ。でも本当の内面は、もろくて傷つきやすい普通の少女だった。そういう「田舎町に住んでいて馴染めずにいる、でも普通の女の子」という役どころが、小松彩夏にはとても似合っていて、だからこのラジオドラマのカオリも適役である。
と思ったんだけど、考えてみればそれは小松彩夏のヴィジュアル含めての話であった。我々はあの声を聴けば自動的に彩夏姫の顔が思い浮かぶ。そしてデビュー当時から、小松彩夏のソフィスティケイテッドな美貌は突出していた。セーラー戦士デビュー当時から今日にいたるまでの集合写真を較べると、みんなさすがに最初から洗練された美少女ではあるが、やはり昔の方がおぼこいというか、多少はコドモっぽく見える。でも小松彩夏だけは例外的に完成度が高かった。違うかな。


2003年 武内直子先生と
2004年 ヴィジュアルブック

2008年 夏の戦士の会

2012年 春の戦士の会


「ハマリ役だ」と思ったのは、我々が彼女の顔も経歴も性格も知っているから、なのかもしれない。顔の見えないラジオドラマで、どれくらい小松彩夏が好演していたといえるか、正直わからない。たとえば仲谷明香がお目当てでこのドラマを聴いていたAKB48ファンのなかには「小松彩夏?誰それ」くらいの人がいるのではないだろうか。そういう方の意見も聞いてみたいですね。
話をドラマに戻す。そんなこんなでカオリとノゾミがおしゃべりしていると、ラジオではコミュニティFMの『田舎通信』が始まる。ノゾミの好きなDJ岩淵(浅沼普太郎)のローカル番組だ。本日のゲストは、最近この地域でCDがバカ売れして話題の「方言ポップス歌手」嵐☆三十郎(片桐仁)である。



片桐仁といえば、小松彩夏とは『占い師 天尽』第2話(2007年)以来の共演ではないかと思うが、こうしてラジオドラマで声だけ聞いていると「ジュモクさん」がしゃべっているようにしか聞こえないのが困ったものである。





希 美「あ!始まった田舎通信」
カオリ「あんたホントに好きだね」
希 美「けっこう面白いんだよ、コミュニティFM」


       ╳    ╳    ╳


岩 渕「みなさん、おばんです。パーソナリティの岩淵です。竜ヶ岡FMがお送りする今日の田舎通信は、地元出身の歌手、嵐☆三十郎さんをお迎えしてお送りします。嵐さん、おばんです」
 嵐 「おばんで〜す」
岩 渕「嵐さんはこの町を中心に歌手活動をされているのですが、新曲『みちのく☆ずっきゅ〜ん』が駅前商店街を中心に大ヒットを飛ばしていますね〜」
 嵐 「いやいやこれもひとえに町のみなさんのおかげで、ありがたい限りです」
岩 渕「嵐さんはこの町の出身ですよね」
 嵐 「そうですね。生まれも育ちも、ここ竜が岡市です」
岩 渕「なんというか、とても特徴ある方言ですけれども……」
 嵐 「そうですか?初めて言われただなぁ〜。完全にネイティブ、田舎者ですよ」
岩 渕「方言ヘンですよ」
 嵐 「ヘンじゃありませんよ」
岩 渕「ヘンですよ」


       ╳    ╳    ╳


カオリ「こいつなんかムカつく。まぁ歌はいいとして、なんかインチキくさくない?」


このドラマの作者は岩手県水沢市出身の及川拓郎で、2008年のテレビドラマ『スミレ16歳』や『ザ・クイズショウ』といったテレビドラマで一躍注目を集めた人、と記憶している。特に土曜の深夜ドラマ『ザ・クイズショウ』は、出来が良かったせいか、翌年にゴールデン枠でリメイクされ(いや一種の「続編」と言った方が正確か)、オリジナルでは片桐仁が演じていたクイズショウの司会者を、リメイク版では嵐の櫻井翔が演じていた。そういう経緯を踏まえて、ここで片桐仁が「嵐さん」を演じていると思えば、ちょっと楽しい。ま、余談です。ついでに言うと、このラジオドラマで音楽を担当しているNARASAKIも、テレビドラマデビュー当時から及川拓郎と組んでいる。
ま、ともかく、その片桐仁の演じる「嵐☆三十郎」は、地元出身の方言ポップス歌手としてローカルに大ブレイク中なわけですね。それがどうにも気にくわないのがカオリ。


カオリのM
(私はなぜだか、この嵐三十郎という男が好きになれなかった。この町を愛している?どこをどう見たら愛せるの?私がこの男に対して感じたうさんくささは、数日後思いもよらないかたちで証明されることになる)


カオリに何かと目をかけてくれる(で結局、何かと喧嘩になる)教師の影岡から、思わぬ話を聞き出すカオリたち。なんと「郷土を愛する方言ポップス歌手」だったはずのこの嵐☆三十郎、実は地元出身でも何でもない。影山先生が東京の大学にいた頃の同級生で、まぎれもない東京ネイティブなんだそうである(まあ最初から怪しげな方言なのでバレバレの設定ではあるのだが)。
お人好しの影岡先生は、苦笑はするものの、真実をバラして過去の同級生を窮地に追い込もう、なんて悪意はハナからない。でもカオリは、自分の感じた「うさんくささ」が理由のあるものであったことを知り、そのまま放っておくこともできず、ノゾミと連れだって嵐☆三十郎を訪問する。
女子高生がやって来て「自分たちもバンドで方言ロックやりたいと思っているので、先輩からいろいろお話を聞きたい」なんて言うもんだから、最初はいい気になってしゃべっていた嵐だが、駅前商店街の昔の様子について訊ねられたり、出身校を聞かれたりするうちに、話のツジツマが合わなくなり、最後には地元出身ではないことを認めて、開き直る。


 嵐 「いくら欲しい?金で解決しよう。お金あげるから他人には言わないでください。二千円あげます」
カオリ「安!」
 嵐 「そんなことないよ。じゃあこの南部せんべい持ってけ」
カオリ「あ〜あ、なんかがっかり。出身まで偽って歌出してさ、それでどんな悪どい奴だと思ったら、何のことはない、ただのバカじゃない」
 嵐 「バカじゃない!ぜんぶ計算ずくだ」
希 美「なんでこんな面倒くさいことしてんですか?」
 嵐 「そんなの、売れたいからに決まっているでしょう?あのね、オレにはぶっちゃけ歌でやっていく才能がないんです。でも売れたい。お金が欲しいから」
カオリ「だからこの町にやって来たわけね。罪悪感とかないわけ?」
 嵐 「なんで持たなきゃなんないの。喜んでんじゃん。オレの朴訥な歌を聴いて、感動して、癒されている。オレもCDが売れて、いろんな営業に呼ばれる。どっちも幸せでしょ」
カオリ「ムカつく」
 嵐 「ムカつけばいいじゃん。やったもん勝ちだし。だいたいこれって正論でしょ?」
カオリ「正論でもムカつくの。誰も損してなくても、みんな喜んでも、あんたの歌詞はニセモノでしょ。その朴訥さもニセモノでしょ」
 嵐 「バーカ。そもそも歌詞なんて作りものだろ。心が言葉になった瞬間、それはどう考えても本物じゃないの」
カオリ「でも本物に近づけることは出来る」
 嵐 「才能があればね」
カオリ「無いなら無いなりに本心で書けよ」
 嵐 「そんな青い世界じゃねえんだよ」
カオリ「バカにすんなよ。音楽もこの町も」
 嵐 「音楽はバカにしてねえよ。オレがいままでどんだけ苦労したと思ってるんだ。ま、でも、この町はバカにしているな。お前らみたいなバカばっか。金貰えっから我慢してるけどさ。オレのことチヤホヤしすぎ。このオレをだぞ。何が方言ポップスだよ。全部ウソ。全部ニセモノだっつうの」
カオリ「ふざけんなよ。アタシが言うのは良いんだよ。アタシはこの町大っ嫌いだ。でもね、部外者から言われると、ほんとムカつく」
 嵐 「わがまま過ぎんな」
カオリ「分かってる。分かってるけどムカつくの。何よあんたは。この町のこと何知ってんの?どんぐらいこの町に住んでんの?アタシはね、アタシたちはこの町で生まれて、この町で生ぎできたの。あんだなんかより、この町の嫌なとこ知ってんの。ちょっとだけど良いとこも知ってんの。別に嫌いでもいいよ。だけどね、それ隠してみんなのこと騙さないでよ。そういうとこがムカつくの」
 嵐 「何よ〜、急に方言になって」
希 美「カオリちゃんに謝ってよ。謝って。そうしなきゃ全部ばらすよ」
 嵐 「(突然)すいませんでした!昨日から熱があって、ちょっと自分が自分じゃないって言うか…」
カオリ「もういいよ。行こうノゾミ」
希 美「うん」
 嵐 「すみません今日のことは……」
カオリ「言わない。ムカつくから絶対に言わない」


       ╳    ╳    ╳


希 美「カオリちゃんの方言、初めて聞いた。可愛かったよ」
カオリ「そう(笑)」
希 美「カオリちゃんはね、この町が好きなんだよ。ホントに嫌いだったら、嵐にあんなこと言えないよ」
カオリ「あれはムカついただけで……」
希 美「なんでそんなに嫌いだって言うの?この町に何されたの?カオリちゃんはここで生まれて、ここで育ったんでしょ。嫌いな理由は分かんないけど、カオリちゃんこそ、もっとリアルに生きたら?」
カオリのM
(ノゾミの言う通りだった。方言だろうとなんだろうと、今の私にリアルな歌詞など書けるわけがないのだ。ここにあるリアルな感情を受け入れない限りは……)


カオリは自分がなぜこのおかしな「方言ポップス歌手」に怒りを抑えられないのか、その理由を自覚する。彼はアタシだ。ふがいない自分自身に対する怒りや不満を、生まれ育った田舎町のせいにすりかえて、東京にさえ行けば自分の本当のリアルが見つかる、なんていう虚構にすがっていたカオリと、東京でうまく行かず、田舎で「方言の温かさ」を売りに虚構の人格を演じ、小さな成功を収めた嵐☆三十郎は、合わせ鏡のように対照的な存在である。だからこそカオリは、自己嫌悪に等しいムカつきを彼に対して抱いたのだ。
ノゾミの言葉で目覚めたカオリは、次の学園祭では、この町に生まれ育った自分の言葉で歌詞を書き、本当にリアルなみちのくパンクロックを演奏してみようと決意する。
という、なかなかにウェルメイドな小品でありました。


2. プラスワン


もうひとつ、大家さんからもリクエストをいただいた。小松彩夏と同世代の女優はたいへん層が厚い。そんななかで彼女が現在のようなポジションにいることのユニークさを考察できないか、という話だ。また難しいお題を……。
でも確かにそうだ。小松彩夏という人は、見られることを職業としていて、そのことについては違和感がないというか、なじんでいるように見えるが、そのわりに「他人を押しのけても私が」的な貪欲さや、「私を見て」的なナルシズムが希薄すぎるように思える。写真やDVDではけっこうきわどい格好をしても、普段からグラビアアイドル的フェロモンを積極的に出すわけでもない。むしろ舞台挨拶とかでは全身から「帰りたいオーラ」を放射していることさえある。考えようによってはこんな人、芸能界からすぐに消えても不思議ではない。なのに、むしろそういう性格がファンの支持を集めて、爆発的ではないにせよ一定の支持を集めている。真面目に考えるとかなり不思議なスタンスである。
加えて言えば、セリフ回しがとくに上手いというのではない。でも舞台へのオファーがけっこうあって、どうしてかというと、確かに彼女のセリフは妙に魅力的なのだ。歌も決して上手くなくて、でも愛野美奈子役以来、多くの人たちは彼女に歌を歌わせたがる。『美少女戦士セーラームーン』『僕は妹に恋をする』『キラー・ヴァージンロード』そして『みちのく☆パンクロック』。つまり彼女の歌声には、何かしら人を惹きつける要素があるんですよね。
前回、yamaboshiさんやMASAさんからいただいたコメントを御一覧いただければお分かりのとおり、現在20代後半、つまり1985年生まれから1988年生まれの美人女優は人材豊富で、だいたいの需要は満たされている。このなかで小松彩夏の占めるポジションというのは非常にユニークで「何かしら」の測定不能な魅力のなせるわざである。ある意味、北川景子以上に難解な人だ。あんまりそういうこと言うと本人はヘコむし。


今回は、比較的近いポジションにいる人として、この夏の仮面ライダー映画に出演する原幹恵、そして今週から『特命戦隊ゴーバスターズ』の悪の幹部としてレギュラー入りした水崎綾女、この2人と小松彩夏の比較を最後に持ってこようと思っていた(実は水崎さんは若すぎるんだが、まあ小松さんの親友なので良いかと思って)。でも日曜日も終わろうとしているのでそれは止めておく。



言うまでもなく、このお二人は(おそらく小林靖子の実写版セーラームーンを意識しながら井上敏樹が台本を書いた)『キューティーハニーTHE LIVE』(2007年)の主役であり、とくに水崎綾女は良かったなぁ。


ミ キ「分かるか。私はハニーのなかで生きるんだ」
ハニー「ミキちゃん!」


この二人の新作に期待しつつ小松彩夏様の誕生日も祝おうという欲の深い企画であったが、やはり企画倒れに終わってしまった。済まないです。



小松彩夏さん、お誕生日おめでとうございます。