実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第359回】DVD第3巻:Act.9の巻(1)


昨日から熱っぽいしハナは出るしボーッとして不調でございます。風邪かなと思ったが、花粉かも知れない。

1. さよなら宇宙海賊



スーパー戦隊シリーズ第35作『海賊戦隊ゴーカイジャー』が終わった。35作目って、なんとなく中途半端な区切りだったけど(石森章太郎原作『秘密戦隊ゴレンジャー』が始まったのが1975年だから、あと3年待てば40周年なのに、とも思うが、その時はその時でまた盛り上がるのであろう)ともかく、過去の戦隊シリーズのレギュラーたちが、同窓会的に次から次へと現れる楽しい一年間であった。
そういうお祭り騒ぎの一方、番組がスタートした矢先、第4話(2011年3月6日)が放送された翌週に震災が起こった記憶も、最終回にはしっかり刻印されていたと思う。
第1話で、地球にやってきた宇宙海賊たちは、とりあえず腹ごしらえをしようとスナック『サファリ』へ入って特製カレーを注文する。カレーというのは『ゴレンジャー』のスナック・ゴンへのオマージュだろうが、スナック・サファリのサファリカレーというのは、『太陽戦士サンバルカン』へのオマージュだが(以上、コメント欄の万丈さんの指摘により訂正)海賊たちが「いただきまーす」と一口食べようとした瞬間、轟音と共に店は崩壊する。数々の星を侵略して滅ぼした宇宙帝国ザンギャックが、いよいよ地球に襲来したのだ。外に出た海賊たちは、幼稚園の子供と先生たちがザンギャックに襲われているのを見て、思わず変身して戦う。こうして、お尋ね者の宇宙海賊と銀河の支配者ザンギャックの戦いの火ぶたが切って落とされた。



しかし最終話のエピローグで、あのとき滅茶苦茶に破壊されたスナックは、なんとか改装して、お店を開業している。海賊は第1話で食べずじまいだったカレーを何皿も平らげ、満腹して店の外に出る。すると、あのとき助けた子供たちと先生たちが駆けつけてきて、お礼を言う。引率する先生たちの服装は変わっていないが、子供たちの帽子の色が、一学年上がったということなんだろうけど、青から黄色になっている。



こういう第1話と最終話の対応関係に、復興と再出発への祈り、そして成長していく子供たちに託された願いを読み取っても、そんなに突飛ではないだろう。さらにエンディングで、「戦いはこれで終わった」どころか、海賊たちはザンギャックの本拠地がある母星めざして飛び立っていく。なんというか、まだ何も終わってはいないのだ、本当の戦いはこれからだ、というメッセージが聞こえて来るようなエンディングであった。やはりこれは、3.11を体験したドラマである。



ということで、今週から『特命戦隊ゴーバスターズ』が始まる。メインライターは我らが小林靖子。小林靖子というと、『仮面ライダー電王』では「多重人格」、『侍戦隊シンケンジャー』では「影武者」「殿様(プリンセス)と家臣」「過去の因習の束縛」という具合に、わりとセーラームーンの(あるいは『タイムレンジャー』以来の)モチーフを引きずっているようなところがあったのだが、昨年の『仮面ライダーOOO』では、ほぼその辺が吹っ切れたというか、新たな境地に進んでいったという感が強い。その小林靖子先生が、再び『OOO』の武部直美プロデューサーとタッグを組んで、今度はどんな世界を見せてくれるのか。楽しみに待ちましょう。


2. wiped out



さてAct.9本編だ。主題歌が終わると、場面はどこぞのホテルのロビー。ロケ地はホテルカデンツァ光が丘。といっても、この作品が撮られた2003年までは「第一ホテル光が丘」だったらしい。しかし、あんまり意識していなかったけど、練馬区光が丘ってやたらとロケ地が多いね。いつもの通学路の橋だって、Act.6のバスケットボールコートだって、Act.8でレイが拉致されたホテルだって、Act.36で月のプリンセスと地球の王子がキスする前世の月だって所在は練馬区光が丘のあたりである。



ホテルのロビーには「Icy Queen 氷の女王」という名の宝石が展示されているが、一瞬の停電の合間にショウケースから姿を消してしまう。そして宝石を手に夜の街を疾走する怪盗タキシード仮面。そのマントがひらりと翻ると、暗闇は一転して、月野家の朝となる。



こういう繋ぎ方は、多分ワイプの一種なんだろうけど、私は専門家ではないので間違っているかも知れない。
ワイプ(wipe)というのは、自動車のワイパー(wiper)と同じ語源で「拭き取る」という意味である。たとえば実写版セーラームーンのアバン・タイトルで、画面の一角が拭き取ったみたいにくりぬかれていて、そこでうさぎとかがしゃべっている、こういう技法がワイプだ。



最近のテレビでは、こういう小窓の方を普通に「ワイプ」と呼ぶみたいである(厳密にはワイプは動詞だから「ワイプしてできた小画面」とか言うべきだろう)。
でも映画の世界でワイプという場合には、普通はワイプ・トランシジョン、つまりカットとカットのつなぎ、編集技法のことを言う。これはまさに、雨で曇った車窓をワイパーで拭うように画面転換するやり方です。
なんて、くどくど書かなくてもだいたいみんな知っていると思うけど、私はしつこいので続ける。私がこれまで映画とかドラマとかを見てきた印象では、ワイプの効果は主に(1)「しばらく時間が過ぎました」(2)「さて話は変わって」という二つがあると思う。違うかな。
まず(1)について、ワイプをよく使う監督として最も有名なのは黒澤明なので、黒澤の『隠し砦の三悪人』(1958年)からひとつ例を見てみましょう。高尚な場面ではなくて、主として下世話な方面で絶賛された有名なシーンにする。
村娘に身をやつして敵陣を突破しようとしている雪姫(上原美佐)と、ひょんなことからその手伝いをするハメになった百姓の太平(千秋実)と又七(藤原釜足)。雨宿りをしているうちに、スヤスヤ眠ってしまったプリンセス。姫君の足から目が離せない百姓二人。幸い、お目付役でリーダーの真壁六郎太(三船敏郎)も用事で外している。



だんだんやばい雰囲気になってきたが、そこへもう一人の仲間、途中から一行に加わった百姓娘(樋口年子)が帰ってきた。そのへんにあった石を振り上げ百姓男たちを威嚇する娘。たじたじの二人。



そして何も知らずスヤスヤ眠る姫のアップ。ここで、こちらから見て右から左へワイプだ。



これがただのカットだと「しばらくの間、両者はまんじりともせず睨み合い」みたいな、一定の時間のハバを出せない。かといって、フェードアウト、フェードインは「その翌日」とか「一年後」とか、もっと長めの時間経過の表現である。ワイプの効果って、ひとつにはこういう「基本そのまんまの状態でしばしの時が流れました」みたいな表現ができる、というのがある。


次は(2)だ。ワイプのもうひとつの効果は、語りで言うと「さて話は変わって」みたいな、スピード感のある場面切り替えができることだと思う。なんか我ながらだんだん面倒くさくなってきたのでさっさと済まそう。ジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ』サガといえば、黒澤からの影響が何かと指摘されるが、ワイプの多用もそのひとつである。スター・ウォーズって、わりと幾つもの話が並行して進むというパターンが多いですよね。「こっちの惑星にヨーダの宇宙船が到着したちょうどそのころ、あっちの星では銀河皇帝が……」みたいに、パッと場面を変えるとき、ただのカットつなぎだとちょっと唐突かな、と思える場合も、ワイプだとテンポ良く「あ、こんどはこっちの星の話ね」と頭がついていくのである。



ようやく話を本編に戻すと、さっきも書いたとおり、ここでは深夜の街を疾走するタキシード仮面のマントがひるがえると、ぱっと朝の月野家になっているのだから、(2)のテンポ良い場面転換に用いた例ですね。



で、それがどうしたと言われると、この話に先は無いのである。ちょっと風邪気味で頭の中が整理できておらず、考えていることがダダ漏れになっているだけだ。すまんね。
本当は「ワイプとディゾルブ(オーバーラップ)の違い」についても考えてみるつもりだったけど、今回はもういいや。結論的なことだけちょっと言っておくと、「しばらく時間が過ぎました」ということを表現したい場合、ディゾルブもワイプも使えるのだが、ディゾルブの場合は、その間の不確かな心理状態というか、「揺れ動く心」を表現するのに長けていると思う。具体的に言うと舞原健三監督のAct.6における用例。




タケル君をずーっと待っているまこと。これをもしワイプで繋げると、まことの心理にあまりブレが感じられなくなってしまうのではないか。でもまことは、待ちながらも「なんでこんなことしちゃうかなぁ」と自嘲気味ですらある。そういう揺れる気持ちを、舞原監督はディゾルブで的確に示した、そういうことも考えています。
でもひょっとしたら、こういうのは素人の私が知らないだけで、プロの人にとっては初歩中の初歩みたいな技術なのかも知れないですけど。もっと専門的な見地をおもちの方、おかしなところなどあったらご指摘ください。

3. 小さな伏線


すこし本編を進めなくては。土曜日の朝。ゆっくり起きてくるうさぎ。ママはちょっと不満顔。


  


うさぎ「おはよう。ママ、目玉焼き二つね」
マ マ「モーニングサービスは終了でぇす。いつまで寝ているのよ」
うさぎ「いいじゃん土曜日だもん。お願い」


  


ムッとしているママに気づかず、寝坊してきたくせに勝手に卵の注文をするうさぎ。だいたい月野家の週末の朝はこんな感じなのだろう。以前も書いたが、これは次回Act.10への伏線である。この翌週、ママはついに怒って、うさぎがチーズオムレツをオーダーしたのに、チーズを入れずにプレーンオムレツにする。それで口論になって、うさぎは家を飛び出してレイのもとに転がり込んでしまうのである。
うさぎがテレビをつけると、『サタデーモーニンTV』という、たぶんズムサタみたいな番組をやっていて、「世界各国の有名なアーチストの方々が……」云々という話題が耳に入る。ロンドンの有名な録音スタジオで、スーパーアイドル美奈子がニューシングルをレコーディング中、という話題である。


うさぎ「あっ、愛野美奈子!」


  


美奈子「……スタジオで美奈子も気合い入れて頑張っています。というわけで、ロンドンでのレコーディングは順調です。ファンの皆さん、新曲楽しみにしててくださいね」


  


うさぎ「へー新曲出るんだ。楽しみ。聴きたいなぁ。どんなんだろう。絶対買お」


実際、うさぎはもうちょっと後のAct.12で、二人きりの観覧車の中で美奈子の新曲「肩越しに金星」を(サワリだけ)聴くことができる。そういう意味で、この箇所も後の展開に向けられた伏線と言えるだろう。とにかくロンドンレコーディングだ。いや私だって、ロンドンでレコーディングすると何がどう違うかなんて、ぜんぜん知らない。まあ、機材が違うとかミュージシャンが違うとか、色々あるんだろう。ともかく、愛野美奈子のようなJポップシンガーがロンドンでレコーディングすると、昔でいえば山口百恵『GOLDEN FLIGHT』(1977年)とか、最近でいえば浜崎あゆみ『Rock'n'Roll Circus』(2010)のように、普通よりロック色が強まる、という一般的な傾向があるように思う。ということは、ひょっとすると「肩越しに金星」のオリジナルバージョンは、最後までしっとり聴かせるバラードだったのかも知れない。それが、ロンドンレコーディングによって、2コーラス目からドラムスが入って、ちょっとアップテンポになったのではないだろうか。
まあいいや、そんな美奈子の新曲に思いを馳せるうさぎだったが、その楽しい想像を打ち破るようなショッキングなニュースがテレビから流れ出すのであった。画面には「謎の怪盗が追う 幻の秘宝!」というテロップが。



テレビ「がらっと変わってタキシード仮面です」


  



うさぎ「えっ!?」
テレビ「宝石を専門に狙う怪盗タキシード仮面の被害がたいへん増えていますが、なんとマスコミに声明文を出してきました」


  


テレビ「それによるとですよ、日本には<幻の銀水晶>という秘宝があって、彼はそれを捜して犯行を重ねていると、そういうことです」


  


テレビ「はい、そうなんです。で、ですね、その幻の銀水晶、ななんと、時価数十億円ということなんです」


  


マ マ「ちょっと!数十億円……ねぇ、おばあちゃんからもらった水晶、あれどうしたっけ。捜さなくっちゃ」
うさぎ「ルナ……」
ル ナ「たいへんだわ」


なぜかマスコミに「幻の銀水晶」のことを公表してしまったタキシード仮面。その狙いはどこにあるのか?
……というほど、深く考えた上での行動でもなかったわけだが、ともかく、今回はこのくらいで。ではまた。


【今週のおまけ】
ゴーカイジャーの最終回より。杉本有美のえくぼと、やたらと渋い赤レンジャーこと誠直也。