実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第326回】乗っ取られたヒロインの巻(『太陽と海の教室』第6話レビュー:中編)

ちょっと分量オーバー気味なので、今回は中編。完結編は今週末に。ということは、小松彩夏降誕25周年記念企画はどうなる?

1. 有紗は歯を立てない


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昨日(2011年7月17日)放送の『仮面ライダーOOO』第42話より(脚本:小林靖子/監督:舞原健三)。テレビでは久々の小林・舞原のタッグである(劇場では昨年のオムニバス『超・電王トリロジー』の第2話があるらしいが未見)。撮影はいのくままさお。
お菓子とかを手当たり次第に「うまい、うまい」とむさぼり食うガメル人間体(松本博之)。今回のライダーは食い物がひとつのポイントなんだけど、42話にいたってその謎の一端がようやく明らかにされた。グリードたちは食べ物の味が分からないんだそうだ。でも人間体を手に入れると、うまいとかまずいとかが分かってくる。だから単純なやつほど味が分かることに感動する。なあんだ、そういうことだったのか。
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2004年8月14日『美少女戦士セーラームーン』Act.44(脚本:小林靖子/監督:鈴村展弘)より、亜美の作ったクッキーを「まずい、まずい」とむさぼり食うネフ吉。長いことこのシーンの意味が謎だったんだが、そうか、「うまい」か「まずい」か、ではなく「味がする」ことに感動しているのだね。ダーク・キングダムの皆さんも、味が分かんないんだ。だから「味が分かる」ということを、マズいクッキーを通して教えてくれた亜美に、ネフライトは好意を持つようになり、やがて人間として生きていこうとするのだ。
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Act.37より、味が分からないまま鶏の足を囓るダーク・キングダムの人。でもこれ、ビデオで何度も観ると、実は囓ったフリをしているだけで、歯も立てていない、舌も這わせていないことが分かる。疑似である。
というわけで、最近StreamKatoさんの影響で変なことを書くようになってしまった私であるが、ただでさえ記事の進行が滞っているのだ。さっさと本題に入ろう。


あっ、でもついでだから、暑気払いに疑似ではない「うまい」画像をいくつか。

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あっ、戦士じゃない人も入っちゃった。まあいいか。


前回までのあらすじ)


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スプーン曲げができたり、UFOや宇宙人と交信できると自称する3年1組の「不思議ちゃん」船木真由(前田敦子)。彼女の奇行の背景には家庭問題があると考えた担任の朔太郎(織田裕二)は、副担任の若葉(北川景子)と共に両親を訪問する。実は真由は孤児で、現在の両親は、施設から彼女を引き取って育てたという。
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小学生時代の真由が描いた両親の肖像画を、母の鈴実(美保純)から見せられる朔太郎と若葉。その肖像画にはどれも顔が無かった。「あの子と初めて会ったときから、本当の娘だと思って育ててきました。しかしあの子の心の底では、私たちを親だと認めていなかったのかもしれません」と肩を落とす父の高彦(ダンカン)。

2. ここからヒロインが変わります


この『太陽と海の教室』というドラマ、いちおう当初は「北川景子、初の月9ヒロイン」という謳い文句だった。でもフタを開けてみると、先生側のヒロインである副担任の榎戸若葉(北川景子)に対して、いわば生徒側のヒロインとして白崎凜久(北乃きい)が立てられていて、しかもそっちの方がだんだん存在感を増して、最後には実質的なヒロインの座をハイジャックしてしまった。
最初のうちは、第2話ラストで生徒の川辺(山本裕典)と副担任の若葉(北川さん)の禁断のキス(みたいな)シーンがあったり、第3話ラストで、若葉の気持ちが明らかに朔太郎(織田裕二)に傾きつつあるのを暗示する描写があったりして、確かに北川さんがヒロインだった。でも第3話以降は、そういった伏線が放り出されたまま(朔太郎に対する若葉の片想いは、最終回の最後の方で唐突に告白されるが)、北乃きいの、いかにも女子高生らしいナチュラルな輝きに釣られるように、こっちを中心とするシフトに移っていったと思う。
たとえばこの第6話で、北川景子がヒロインらしい扱いを受けるのは、実は前回取り上げた家庭訪問のシーンまでである。まだドラマが始まって正味10分も経っていないのだが、ここから先、実質的なヒロインは北乃きいにチェンジされてしまう。


朔太郎と若葉が真由の両親を訪問していたちょうどその頃、3年1組の生徒、白崎凜久(北乃きい)は、放課後の帰り道で偶然に真由を見かける。授業中に教室を飛び出した真由のことが気がかりな凜久は、思わず声をかけて、帰宅する真由と一緒に歩き出す。


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真 由「ねえ白崎さん、人間はどうして泣きながら生まれてくるか知ってる?」
凜 久「?」
真 由「生まれてくるのが嫌だからだよ」
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  戸惑う凜久を置き去りに、さっさと自宅の中華料理店に入って行く真由。
  後を追う凜久。と、そこには担任の朔太郎と副担任の若葉が。
翔太郎「よう」
鈴 実「おかえり」
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真 由「先生だまされないで、この人たちはニセ者よ」
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真 由「私の本当のお父さんとお母さんは違う星にいるんだから。行こう白崎さん」
   凜久の手を引いて飛び出していく真由。
   後を追おうとする朔太郎、ふと両親の方を振り返り
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翔太郎「親が力不足だったら、子供はあんなに大きくは育ちません。ご立派だと思います」
   一礼して、出て行く朔太郎。
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最後の若葉の笑顔は、台本ではどのように指定されているのか。朔太郎がさっさと飛び出していったので、所在なくその場をとりつくろっているだけなのか、それとも「精神的虐待していたわけではない」と両親への誤解が解けたせいなのか、いずれにせよ「とりあえずほほえむ」みたいな感じである。
とにかくヒロインだったらここで「すみません」とかペコリと両親にお辞儀をして、朔太郎を追いかけなければいけないのところなのに、あいまいな笑顔を浮かべたまま宙ぶらりん。こうして北川景子はドラマの流れから置き去りにされ、代わりに、前田敦子に手をひっぱられて、むりやりドラマの本筋に巻き込まれた北乃きいがヒロインになる。


   凜久の手を引いたまま学校まで戻ってきた真由。
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真 由「地下にUFOの前線基地があるの」
凜 久「そう。すごいね」
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真 由「……あるわけないでしょ。そんなのぜんぶ私の妄想なんだから」
凜 久「舟木さん?」
   そのまま、校舎の中に駆け込んでいく真由。
   入れ違いに駆けてくる朔太郎
翔太郎「白崎、舟木は?」
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凜 久「あっちに」


真由が以前から「この学校の校舎の地下にはUFOの基地がある」という自説を主張してやまなかったのは、この回に向けての伏線だった。それが自分の妄想であることを自覚しつつ、一縷の望みを託して校舎を降りていく真由と、後を追う凜久、そして朔太郎。でもやっぱり、地下はただ物置があるだけだった。


翔太郎「舟木……」
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真 由「やっぱり基地なんてなかった……」
翔太郎「そうか」
真 由「私には誕生日がありません。名前も、誕生日も何も残さず捨てられたから、あの人たちが勝手に決めたものしかないんです」
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真 由「私は祝福されずに生まれてきたの。おめでとうって言われずに生まれてきたの。私なんて要らなかった。私がみにくいから、私が汚いから、私が失敗作だったから」
凜 久「そんなことないよ舟木さん。そんなことないって」
真 由「よして!」
   凜久を突き飛ばして出て行く真由。
   勢いよく地下室の扉を閉めた拍子に、かんぬきが外からかかってしまう。
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最後に鍵がかかってしまうのはいささかご都合主義であるが、こういう流れで北乃きいは、織田裕二と二人きり、密室状態にされてしまう。それはヒロインの役どころで、だから北川景子に回して欲しかったのだが。

3. 地下室の二人


一方、ただの脇役になってしまった若葉には、いちおうの救済措置が与えられる。朔太郎のことを探したのか、たんに学校に戻ってきたというだけのことなのか、正門をくぐったところで、真由とバッタリ出くわした北川さん。


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若 葉「舟木さん」
真 由「お騒がせしました。家に帰ります」
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若 葉「…そう……桜井先生は?」
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真 由「分かりません」
若 葉「一緒に帰りましょ」
真 由「大丈夫です。お父さんたちにもちゃんと謝ります」
   一礼して立ち去る真由。
若 葉「……でも……」
   後を追おうとするが、背後から声をかけられる。
柴 草「なにやってんの」
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   進路指導の柴草。
若 葉「お疲れ様です」
柴 草「校長が例の問題を教育委員会に告発したらしい。理事長のご自宅に呼ばれちゃったよ。まさかオレまで疑われているんじゃねえだろうな」
   投げやりな様子で去って行く柴草。
   不安な表情の若葉。
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というわけで、北川先生はここで、科目未履修問題の方に気を取られるかたちで、前田敦子がらみのエピソードからは外れてしまう。今回も未履修問題は冒頭で触れられていたから、北川さんの関心がそっちへ行ってしまうこと自体は、いちおう筋がとおっている。でも、もともと「ヒロイン」として北川さんに振られた役柄を考える場合、ここで実質ドラマの本筋から退場してしまうのは、すごく奇妙なことなんである。そのことはもうちょっと後に書こう。
一方、地下の物置部屋に閉じ込められた朔太郎と凜久の二人はどうなったかというと、朔太郎が、部屋の上の方にある通気ダクトを使って脱出し、外から鍵を開ける方法を思いつく。ダイ・ハードである。でも通気ダクトをふさいでいる網カバーを外すためにはねじ回しが必要だ。そこで朔太郎は、物置のどこかから鉄棒をもってきて、それを床にこすりつけて、マイナスドライバーを作ろうとする。
 もちろん時間はかかる。作業を待ちながら、凜久はさっき真由から聞いた話を朔太郎にぶつけてみる。


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凜 久「人間が泣きながら生まれてくるのは、生まれてくるのが嫌だからなんですって。舟木さんが言ってました。そういうものなのかなぁ」
翔太郎「……昔、ボランティアに行ったことがあってさ」
凜 久「ボランティアって、地震とか、被災地のですか?」
翔太郎「そう」
凜 久「家が壊れていたり……」
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翔太郎「焼け野原だった」
凜 久「焼け野原?想像できない。そこで何していたんですか?」
翔太郎「たいしたことじゃない。炊き出しやったり、コンサートみたいなお祭りやったり」
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凜 久「お祭り?そんな大変なときに?」
翔太郎「大変なときだから、お祭りをやるんだよ」
凜 久「え?」
翔太郎「そこには、家を失った人がいる。大切な家族を失った人がいる。すべてを失った人がいる。すべて失った人っていうのは、泣き叫んだりしないんだよ。ただ茫然と立ち尽くす」
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翔太郎「祭りは、そんな人たちのためにやる。もう一度、泣くっていうこと、笑うっていうことを思い出すために。涙を流せば、生きてるって感じる。笑い方を思い出せば、あ、また明日を生きようって思う」
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翔太郎「人間がさ、泣きながら生まれてくるのは、叫んでるからだよ。僕はここにいるぞ、私はここに生きてるんだぞ、って、そう叫びながら生まれてくるんだ」


この時点では何とかようやく「記憶」として語れるようになった被災地の光景。1986年神戸生まれの北川景子にとって、阪神・淡路大震災は小学3年生のころの身近すぎる出来事だった。3.11のあと、しばらくブログの更新が滞ったときも、震災のニュースにだいぶ精神的に参っていたとか、いろいろ噂が流れた。実際のところは知らないが、あり得ない話じゃないと思う。
でも、ここで織田裕二と部屋に閉じ込められた「ヒロイン」の北乃きいは1991年生まれで、阪神・淡路の当時は4歳、しかも神奈川の出身だから、この彼女のリアクションも、わりとリアルなものなんだろう。それにしても、織田裕二の話に聞き入る表情とまなざしがきれいですね。こんな顔を見せられては、私だってこっちをヒロインにしてしまうかもしれない。
でも我々は、再び震災の記憶を軽々しく語れない時代に戻ってしまった。いやこのドラマでも決して軽々しく語っているわけでもないんだけど、いまこういうドラマを放送することは、すごくむずかしいだろうね。
ま、ともかく、即席ドライバーを仕上げた朔太郎は、通気口を伝って脱出成功。もちろん凜久も救う。

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こういうカットになると、まったく学園ドラマに見えなくなるところが織田裕二である。
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それにしても可愛いねこの子は。私はStreamKatoさんからこの子の写真集を頂いてしまいました。まことにありがとうございます。
と、ここまでで中編の終わりとします。後編を待て!
まあ待っている人がいるなんて思っちゃいないけどさ。