実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第153回】Special Actの巻(18)


名古屋支部セラムン記念資料館は、ここんとこ他のブログへの書き込み等をさぼりがちであるが、ご要望については聞き届けた。ご要望って、エンディングのことだ。今回M14さんが手に入れたAct.8は、最後が「二人の間の距離は縮まらず、広がらず」というト書きで終わっている。印象に残る幕切れである。一方、こっちよ!さんが入手された6冊は、どれも最後に「―― つづく」とあるんだそうである。どちらが(小林靖子にとって)より一般的な結末の書き方なのか。当名古屋支部には、M14さんがかつて落札されたAct.16、Act.34〜36、41〜46の10冊の台本が保管されているで、これを確認すれば、ある程度の傾向はつかめるかも知れない。
ただ、その調査結果だけでは1回分のネタにならないので、『M14 の追憶』のAct.8比較が終了したら、その感想と一緒にアップしたい。調査結果を心待ちにしている人も、そんなにはいないだろうし、報告の遅れが日本経済に影響を与えるわけではないから、良いと思う。
てなわけで、正直言ってもういい加減で終わりにしたくなってきた『Special Act』レビューを続ける。前回は、亜美の運転免許証の分析に終始してしまった。その続きだ。

1. 水星の道化師は片目にティアドロップ


免許証をきちんとダッシュボードに表示して、眼鏡もかけて「どいて!」とジグザグ走行する亜美。ちょっと予想もしなかった無謀な突入に、ピエロ軍団もきりきり舞いだ。武器はピコピコハンマーぐらいしか持っていないみたいだし。
やった、ピンチを切り抜けた、と思った亜美だが、その行く手に立ちはだかる強そうな、え〜と、こいつの名前は何だ?分からないので、便宜上こっちを「妖魔(金角)」、次の美奈子のシークエンスに登場する兄弟分を「妖魔(銀角)」と呼んでおきますね。
立ちふさがる妖魔(金角)は、指先を突きつけて、光線か何かを出そうとしている。それを避けようとした亜美はハンドルを切りそこね、倉庫のような建物の前で急停車する。追いついたピエロ軍団に取り囲まれて、絶体絶命。
で、このピンチを亜美がどう切り抜けたかは、画面では示されない。おそらく台本にも書いてなかったのではないかと思う。脳内補完しなければならないわけだ。う〜んと、亜美は車を飛び出して、倉庫の脇の細い通路を逃げたところで、そのへんにあったドラム缶か段ボールかに身を隠す。狭いので一列縦隊になって追いかけるピエロたちは、通り抜けた所で、亜美の姿を見失ない、手分けしてあちこち探す。様子をうかがっていた亜美は、しんがりのピエロをヒップアタックで倒すと、道化服と仮面を奪ってドラム缶に放り込み、一味になりすまして、一緒に亜美を探すふりをしたのである。そんなところで勘弁してください。
そこのところの説明を全面的に飛ばしてしまったのはちょっとどうかと思うが、このシーンのアイデア自体はすごく好きだ。つまり亜美と道化師という取り合わせ。
Act.5のパジャマパーティーで、うさぎと大阪なるのコスメを借りて初めてメイクをした亜美は、顔中ゴテゴテに塗りたくって「亜美ちゃん、やりすぎ」と二人に引かれてしまう。この時のメイク顔、そしてそれに続く、洗面所で顔を洗っているときの、鏡のなかの化粧を落しかけた亜美の顔は、ピエロそのものだ。亜美は戦士になってからも、自分の様々な感情を押し隠して、いつも少し気弱そうな微笑みだけを浮かべている道化師だった。
それからAct.22の後半では、真のプリンセスが誰であるかに気づいたクンツァイトが、ダーク化した亜美にセーラームーンを襲わせる。でも亜美はただクンツァイトの言いなりではない。「どこでどうやるかは、私の勝手よ」ぐらいのことは言ってるんじゃないだろうか。だから「月野さん」をいたぶるという邪悪な遊びを楽しむ場所として、子どものころの楽しい想い出のつまった木馬遊園地(八景島シーパラダイス)を選び、回転木馬に乗ってセーラームーンを待ちかまえ、そこで変身したのだ。そしてその時に、一緒にいたマーズとジュピターの注意を引きつけ、セーラームーンから引き離すための手駒として使った妖魔は、白黒の道化師の姿をしていた。要するに亜美と道化師は、基本的に相性が良いのである。そんな彼女が『Special Act』でも道化師妖魔の一味に紛れ込んだのは、ある種の必然と考えたっていい。

2. 劇団セーラームーン、と呼ぶのは失礼だ


さて一方、美奈子は、たぶん空港の地下駐車場で、先を急いでいる。

美奈子「急ぎましょう」
坂 本「美奈子さん到着、移動スタンバイ」
藤 井「現在B地点通過」

いきなり「B地点」って言われても困りますが、その前の「移動スタンバイ」という発言から察するに、美奈子が駐車場入りした段階で、日本側の運転手はリムジン(推定)の準備に入り、B地点通過を合図にエンジンスタートをかけたとか、そういうことかな。
そこへ忍びよるバイクの影。またしても道化師妖魔だ。ぜんぜん強くないボディーガード。
この二人の黒メガネのボディーガードが、劇団ヨロタミで脚本や演出も担当している坂本直季(髭を生やした方の人)と、アクション俳優にしてブラジリアン柔術家の藤井大督(坊主頭の方の人)であることは【第149回】に書いたとおりである。どちらも放映新社所属。
で、その坂本直季さんの主宰する劇団ヨロタミは、セーラームーンのキャストが多い。公式HPを拝見すると、座長の寺林伸吾、五十嵐さゆり、金藤洋司が、劇団員プロフィル欄の出演作品リストに「中部日本放送『美少女戦士セーラームーン』」を挙げており(TBSでないところが偉いと思う)、すでに消えてしまった元メンバーでも、小林百合子と『劇団BOOGIE★WOOGIE』の中島佳継のプロフィルに載っていた。坂本さんを入れて6人。すごいぞ。劇団セーラームーン。ただ、全話のキャスト表をざっとチェックしたんだが、どのエピソードに出演しているのかが、ぜんっぜん分からない。困った。

3. このローアングルは小津安二郎へのオマージュではないと思う


坂本直季は、ピエロ妖魔にボコボコにされながらも「逃げてください、いったん空港ロビーへ!」と、美奈子の身柄の安全確保に懸命だが、美奈子は「そういうわけにはいかないのよ。しっかりして、それでもボディガードなの!」と睨みつけ、結局、剣を振りかざして迫ってきたピエロに自ら攻撃をかける。
この睨みつけはAct.17のラスト「なっかりだわ」の再現だし、次の攻撃はもちろんAct.12、病院で襲ってきた齋藤社長(に取り憑いた妖魔)を、変身前にもかかわらず、病室の壁が壊れるくらいのキックで吹っ飛ばしたシーンと同じだ。それと、ちょっと先の話になるが、バイクに乗って仲間の元に駆けつけたときに、ヘルメットを外すなり「みんな、遅れてゴメン」と言うのは、Act.30のシークレットライブの最初のMCといっしょだ。というように、美奈子に関しては、過去の名場面を集めてみました、という印象が強くて、ファンを楽しませてくれる。ただし監督が違う。
睨みつけに関しては、小松さんあいかわらず怖いけどきれいですね、という程度の感想で、健光演出と大きな差はないが、ハイキックはおおいに違う。微妙にカットを割って「中」を見えなくしたAct.12の高丸監督に対して、舞原演出は「それは違う!ミニスカートでハイキックなら、こう撮らなきゃいかんだろう」と言わんばかりに、真正面から、しかもローアングルにカメラを据える。アキバに行くとこういう人がいるらしい。したがってDVDで「その瞬間」を静止画像にすれば、「中身」はスーパー戦隊のイエローやピンクの変身前とだいたい同じ仕様であることを、明瞭に確認できるが、私はもちろん、そんなヨコシマなことをしようなんて、思ったことは一度もない。ただレビューを書くという崇高な目的のために、パソコン上でDVDを再生したり停めたりしている間に、たまたま「そのシーン」でストップモーションになってしまっただけである。たとえそのまましばらく鑑賞したとしても、キャプチャーしたりしていない。本当だ。おじさんを信じてくれ。
いやまあその、ともかく迷彩服のミニスカートでハイキック。まともに食らったピエロ妖魔は、齋藤社長の時と同様、壁もヘこむほどの勢いで吹っ飛ばされ、ピエロ軍団は、その勢いにたじたじ。「どきなさい」という美奈子様の命令に、すっかり戦意喪失して通り道をあける。

美奈子「行くわよ」
白ネコ「み、美奈子、さすがだな」
美奈子「勢いよ」

美奈子は女王様のように、ボディーガード二人を従えて進んで行く。

4. 台本Act.12のお話


と、ここまで書いたところで、こっちよ!研究員から、先日のオークションで入手されたAct.12台本を全ページスキャンしたファイルが「宅ふぁいる便」で送られてきた。「宅ふぁいる便」なんて、初めて聞いたよ。ともかく、ありがとうございます。さっそく、いま話題に出た「美奈子、齋藤社長にハイキック」のシーンがどうなっているか見てみよう。シーン8。まずは病室で、ナコナコのデザインをあれこれいじくる美奈子だ。これという良いデザインが浮かばなくて、いまいちパっとしない感じ。というか、命に代えてもプリンセスを守ろうと思っていたのに「あんな子が、セーラームーン」だったんで、色々とやる気がなくなっているのだ。そこへ登場するのが美奈子の所属事務所の齋藤社長だ。妖魔に取り憑かれている。

8. 病院・病室

       美奈子の筆は進んでいない。
       そこへ入ってくる齋藤
美奈子「あ、社長―」
       齋藤は乱暴に扉を閉める。
美奈子「?」
       と見た瞬間、齋藤の手から放たれる蜘蛛の糸状の物。
       腕を絡め取られる美奈子。
美奈子「!?」
齋 藤「セーラーV、いや、プリンセス……」
美奈子「! まさか、妖魔……?!」
齋 藤「幻の銀水晶はどこにある」
美奈子「!……知らない」
齋 藤「お前が持っているんじゃないのか」
美奈子「……」
齋 藤「お前がプリンセスなんだろう!」
       一瞬答えようとして、口を閉じた美奈子が視線を落とす。
齋 藤「答えろ!」
       だが、美奈子は三日月型カッターで蜘蛛の糸を断ち切って窓を開ける。
齋 藤「逃すか!」
       襲いかかる齋藤を蹴る美奈子
       窓から落ちる齋藤だが、窓枠をかろうじて掴む。
       美奈子は後ずさり、一瞬後には部屋を走り出す。
       窓からはい上がってくる齋藤。

以上のように、放送は、ほぼ台本に忠実な映像化である。ただ最後のト書きでは、蹴られた社長は、勢いで窓から落ちかかり、必死で窓枠をつかんで助かっているが、放送では「壁にぶつかって、壁をへこます」ことになっている。つまりこの「美奈子に蹴られた相手、壁をへこます」というシチュエーションは、Act.12で監督が勝手に考えたものを、脚本家が面白がって、今度は『Special Act』に取り入れた、という感じなのでしょうね。

5. 思えば罪作りなクイーン


妖魔を派手に蹴っ飛ばし「どきなさい」と、相変わらず高飛車に、ボディーガード二人を従えて進む美奈子様。だが、その前に、妖魔(銀角)が立ちふさがる。
そしてここから先は、直前の亜美のシークエンスと同様、美奈子がどうやって妖魔をかわしたのか説明されないまま終わってしまう。まあしかし、これは、ピエロ軍団の一人がそのあたりに乗り捨てたバイクですかさず脱出したんだろうと察しがつく。ピエロたち、ちゃんとヘルメットしていた奴もいたもんな。結局、ボディーガードも、スタンバイして待っているはずの迎えの車も放り出してしまったわけだ。特にボディガード二人が妖魔(銀角)に襲われはしなかったか、やや心配でもあるが、目的のためには犠牲もやむを得ない、ダークマーキュリーだって攻撃すべきだと主張した往年の美奈子の「乙女のポリシー」を思い出せば、これは当然の成り行きであろう。
それはともかく、私の想像によれば、ここで美奈子は「勢い」でバイクに乗ってしまったのだが、実は無免許だろうと思えてならないのだが、みなさんの印象はどうですか?
一方、想い出の岩舟山採石場跡まで辿り着いたまこととセーラールナも、ピエロ軍団に襲われている。要するに、ピエロ達は同時多発的に、亜美、美奈子、まこととルナに襲いかかったらしい。ハリセンで戦うセーラールナと、素手で戦うまこと。肘打ちとパンチをメインに戦うまことが、とにかく格好いいです。とりあえず第一陣はぜんぶやっつけて、さらに坂道を駆け上る二人は、ようやく、月の王宮から送られた「伝説の剣」を見つけだす。

まこと「これが、伝説の剣」

がしかし、台座に突き刺さった剣は、まことの力でも抜けない。ルナと「せーの」で力をあわせても「だめだ」。そのとき、昨晩のクイーン・セレニティの言葉がルナの脳裏によみがえった「心を、ひとつにすれば」

ル ナ「もしかして、戦士がそろわないとだめなのかも」

ルナがそんなことを言ってくれちゃったせいで、初めて観たとき我々は「な〜んだ、戦士がそろわないと、ってことは、負傷欠場のレイも、やっぱり最後の最後には戦いの場に登場するんだな」と喜んだものだ。しかしその望みは叶えられなかった。まったくルナの奴、と後で舌打ちしたわけだが、考えてみると、ルナが勘違いしたのも、クイーンが「心をひとつにすれば」なんて思わせぶりなことを言ったからだし、クイーンだったら、レイの怪我ぐらい「それなら私がなんとかします」で治してくれて良さそうなものである。罪作りなのはクイーンか。
と、そこへ現れるピエロ軍団、第二陣。ひとりひとりはザコだが、倒せど倒せど、わらわらと現れてくる。泥妖魔みたいなものですね。


う〜ん、お話的には盛り上がらないところだけれど、疲れてきたので、今週はこれまで。続きはまた来週ってことで、よろしくお願いします。