1. 沢井の苦労
先月、沢井美優の公式YouTubeが更新されて、名古屋のかき氷屋さん「金山とまと」を紹介していた。ええっ名古屋に来たの? と思ったが、髪は長いし、画面に写り込んでいた店の営業日カレンダーは2024年の2月。およそ1年前の映像である。
前回の最後に、こまっちゃんが産後の肥立ちでまあまあ御苦労された話題を取り上げた。Nakoさんから「案外産んでからの方が体力的にも精神的にも大変」という感想もいただいた。で、そういや昨年(2024年11月14日)に第一子を出産された沢井姫はどうなってんのかな、と思ってちょっと調べたんだけど、最新のYouTube動画は昔撮った映像っぽかったです、という話でした。
そしたら「たまひよ」にティモンディ高岸さんのインタビューが出ていた。「たまひよ」とは「たまごクラブ」「ひよこクラブ」の総称で、妊娠・出産・育児期に関するコンテンツが集められているBenesseのサイトです。タイトルが長くて「一児のパパ、ティモンディ高岸。妊活、壮絶なつわりを乗り越えての妻の出産。生まれた瞬間『ありがとう』と『本当に自分の子?』と不思議な気持ちに」とあります。記事もすっごく長いですが、ごく一部を引用します(引用元はこちら)。
——妊活を経験されたのでしょうか?また、妊娠がわかったときは、どんな気持ちでしたか?
高 岸 2022年の10月に僕たちは結婚したんですけど、おたがいにすぐにでも赤ちゃんがほしかったんです。夫婦間のベクトルはまったく一緒でした。
まわりの人から、妊活で病院に行くことがかえってプレッシャーになることもあると聞いたので、すぐに病院に行って検査をすることはしなかったんですね。最初の数カ月はあまり気にせずに、自分たちなりの妊活をしていました。妻には、「2人だけでも楽しいし、リラックスして、やっていきましょう」と声をかけました。
ただ、決して順調に妊娠できたわけではなくて、そのあとにいわゆる妊活も経験しました。妻もいろいろなことにチャレンジしてくれたんです。そんなあるとき、家で一緒に検査をして、妊娠がわかりました。でも、それですぐに安心はできなかったですね。陽性の印が出ても、「本当かな?」という気持ちもあって。そこからは、かなり慎重になっていたことを覚えています。
健診に行くのも、妻にとっては毎回プレッシャーだったと思うので、なるべく僕も一緒について行っていました。どうやったら少しでもリラックスできるかなと考えていました。もちろん、僕も不安がなかったわけではないですけど、やっぱり妻のほうが不安は大きかったと思います。
——妊娠中はどんな様子でしたか?
高 岸 つわりがとにかく重かったんです。つわりになる週数も早かったですし、一般的な人よりもすごく長かったみたいですね。吐き気もつらそうでしたし、後半は腰がずっと痛そうでした。何の症状もなく落ち着いていたのが、妊娠10カ月のうちの1〜2カ月程度だったと思います。そういうのをずっと見てきたので、余計に、出産まで無事にいくことができれば、絶対に2人を大切にしないとなと思いました。
妻は、大のかき氷好きなので、妊娠中もよく食べたがりました。でも、妊娠中はあまり体を冷やさないほうがいいと聞いていたので、どうにかして、違うもので気をそらそうとしていたんです。ただ本人は、「かき氷がないと乗り越えられない」「食べると幸せだし、落ち着く」と言っていたので、メンタル面も大事にしないといけないかなとも。きっと、僕が仕事で不在のときは、かき氷を食べに行っていましたね(笑)
——仕事で家を空けることも多いのでしょうか?奥さんがワンオペになることもよくありますか?
高 岸 妻は友だちがすごく多く、友だちといるときが、精神的にもリラックスできるみたいです。それで、僕が仕事で泊まりのときなどは、「じゃあ、〇〇ちゃんのところに行ってくるね」と言って、出かけていくんです。本人にとっては、だれかと一緒にいるほうがいいみたいですね。(「たまひよ」2025年2月9日)
「何の症状もなく落ち着いていたのが、妊娠10カ月のうちの1〜2カ月程度だった」というのだから、産むまでがまあまあ大変だったみたいだね。最後の「友だち」のなかに、戦士たちも含まれているのでしょうか。てことで、おつかれさまでした。
2. それぞれの秘密(承前)
さてそれでは連続ドラマW 湊かなえ「落日」第2話レビューの続き、参ります(2023年9月17放送、全4話/原作:湊かなえ/脚本:篠崎絵里子/照明:井上真吾/撮影:伊藤麻樹/監督:内田英治/チーフプロデューサー:青木泰憲/制作:WOWOW)。
実家に帰宅した真尋(吉岡里帆)は、姉の千尋が使っていた部屋に入る。部屋は、まるで本当に長期遠征中の千尋を待っているかのように整理整頓されている。
真 尋「ただいま、お姉ちゃん」
一方、真尋と別れ、独りになった香(北川景子)は、タクシーを拾い、先ほど訪ねたアパートに戻っていた。
かつて自分が両親と暮らし、隣に立石一家がすごしていたあのアパートだ。
ベランダを見上げる香を、あのころの香自身(児玉すみれ)が見つめている。
部屋の中からは両親の、というよりは母の真理(真飛聖)の激しい怒号が聞こえてくる。
母は田舎暮らしを嫌い、娘の香を都会の名門校に進学させたくて、とても厳しい学習指導をしていた。そして夫の裕貴(夙川アトム)がいつまでも東京本社へ異動にならず、むしろ田舎暮らしに落ち着いているようにさえ見えることに、激しく苛だっていた。
真 理「だから約束が違うって言ってるの!」
真 理「私の理想をかなえてくれるって言ったくせに! ねえっ、こんな田舎に何年住まなきゃいけないの」
真 理「安藤さんは本社に転勤が決まったんでしょ? なんであなたはいつまでも出世しないの?」
真 理「こんなところにいるから香だってあんな……」
真 理「もっと勉強の進んだ学校に行かせて、教養だって身に付けさせたいのに」
裕 貴「香は良い子だよ」
真 理「まるっきり田舎のとろい子じゃない!」
「あんな、まるきり田舎のとろい子」と母親に言われ、思わずベランダにしゃがみ込む香を救ったのが、隣の家から差し伸べられた手であった。
あの手を、香は長いこと、殺された立石沙良の手だと思っていた。しかし実際には、あれは力輝斗の手だったのだ。
3. 調査は進む
一方、香が力輝斗に直接、手紙を書いたことは、前回の香と真尋の会話のなかで触れられていたとおりである。その手紙はすでに獄中の力輝斗のもとに届けられていた。
「立石力輝斗様 突然のお手紙をお許しください。
私は15年前のあなたの事件を映画にしたいと思っています。
調べるうちに、あなたは子どもの頃に、御両親から虐待を受けていたと知りました。あなたがそれを裁判でも語らず、死刑に甘んじようとしていたことも。
力輝斗さん、私と会っていただけませんか? あなたと沙良さん、御両親のあいだに何があったのか。あなたがどういう思いで生きてきて、どうしてこの事件が起きてしまったのか。
あなたが独りで抱えている真実があるのだとしたら、話していただけませんか。私はあなたを知りたいのです。
長谷部 香」
真尋は「力輝斗が監督の手紙に反応すると良いですね」と言っていたが、しかし当然ながら、死刑判決に対して控訴もせず、15年間を過ごしてきた力輝斗が、簡単に面会に応じるはずもない。手紙を渡した弁護士(山田将之)が香に報告する。
弁護士「お預かりした手紙は本人に渡しましたよ」凜 子「どうでしたか?」弁護士「ちゃんと読んだようです。ただお会いするのはお断りしたいということです」
╳ ╳ ╳
力輝斗「裁判で話したことがすべてなので。それ以外の真実なんてありません」
╳ ╳ ╳
弁護士「私も彼と考えは同じです。当時彼に、ほかに動機があるようには思えませんでしたね」
凜 子「もう一度、手紙を書くので渡していただけませんか?」
弁護士「それは構いませんが、彼に会うのは難しいと思いますよ。私自身、もう面会を断られてしまったので」
香は、力輝斗はもちろん、その家族の人物像についてもさらに調査を続ける。まずは立石家の親戚にあたるらしい男性のもとを訪ねる。
まあ歓迎されなくて当然で、男(野村たかし)も最初は少々渋い顔をして受け答えしていたが、最終的にはかなりいろいろな貴重な話を聞けた。
香 「15年前、力輝斗さんがあの事件を起したのは、何か別の動機があったんじゃないかと思うんです。お心当たりはありませんか?」男 性「ないですよ」
男 性「だいたいあの家とはそのもっと前から縁を切ってたんだから」
香 「縁を切っていた?」
男 性「父親の酒癖が悪くて、金にもだらしないし、親戚はみんな迷惑していたんですよ」
男 性「力輝斗も優しい子でしたよ。給食の牛乳を野良猫にやったりして」
男 性「沙良に馬鹿にされてカッとなってやったって言うけど、正直、それは信じられませんでしたね」
男 性「もちろん沙良も可哀想ですよ。何とかっていうアイドルグループにデビューが決まって、高校を卒業したら、東京に行くことになっていたんでしょ」
男 性「せっかくの将来をあんな形で潰されちゃって」
男 性「もういいでしょ、うん」
次に芸能事務所の運営スタッフ(岩永ひひお)。力輝斗の妹、立石沙良は高校時代、この事務所のオーディションに合格して、卒業したら上京し、アイドルグループ「エンジェルガールズ」の一員としてデビューすることが決まっていたという。だが真相は違った。
運 営「どうぞどうぞ」
香 「立石沙良がデビューする予定だったのは、当時こちらで活動していたエンジェルガールズですよね」
運 営「はいはい。お電話いただいて調べておきましたよ。確かにうちのオーディションを受けていました。でも二次審査で落ちています」香 「……落ちてる? でも当時の報道ではデビューが決まっていたって……」
運 営「彼女が周りに嘘をついていたんじゃないですかね。そしてその嘘にウチも乗っかった」
運 営「あれ、どこだったっけな……芸能界ではよくあることですよ」
運 営「はい『亡くなった彼女のぶんまで頑張るメンバーたち』ってことで美談になりますから」
運 営「……ああ、ここだけの話にしてくださいよ」
沙良の応募書類の家族構成欄に書かれているのは両親のみ。引きこもりの力輝斗はいないことにされていた。そして一番下の空欄には「容姿○、歌△、ダンス△」の評価。
可愛い写真で書類選考は通過したが、面接したら歌と踊りがイマイチだったんで落ちたってことか。あるいは実際に面接した時点で、ダークでサイコパスな一面が垣間見えてしまったのかもしれない。久保志緒里なのに(笑)。
4. ライバル登場
一方、真尋は映画会社「新映」のプロデューサー佐々木信吾(浜田学)に呼び出されていた。この人は原作小説だと、真尋の元カレって設定になっていたと思うけど、ドラマのほうではそういう関係性はない。
佐々木は当初、香が笹塚町一家殺人事件を映画化することに難色を示していた。でもこの作品にかける香の想いを知ってゴーサインを出した。もちろん、1作目にして著名な国際映画賞を受賞した話題の監督の第2作である、というポイントも大きい。ただそうすると、脚本を鳴かず飛ばずの新人に任せるというのはちょっとね、ということになる。それはまあ、当然の話だ。
佐々木「長谷部監督が甲斐さんに脚本を依頼した経緯は伺っています」
佐々木「でも実は上の方から作家さんについて注文というか、ちょっと意見が出てしまって」
で、問題はこの題材に関心をもち、真尋に替わって脚本を書くと名乗りを上げた人が誰かということだ。まあ第1話から観ていれば簡単に予想できるわけだが、真尋の師匠、大畠凜子(黒木瞳)先生なわけですね。
凜 子「おつかれさま」真 尋「どうしてですか?」
凜 子「ん? ああ、佐々木さんから聞いたの?」真 尋「先生から書きたいって言ったって聞きました」
凜 子「興味があるって言っただけ。あとは向こうの判断」
そりゃ大島先生から「興味がある」と言い出せば、そうなるよな。かつては「恋愛ドラマの女王」と呼ばれた大島凜子先生も、最近は視聴率の獲得に苦慮している。ここらへんで何か新境地を開拓したいと思っていたら、出入りの若い子が絶好の、それに明らかに彼女の手にあまる素材をもってきた。チャンス、という作家のエゴがはたらいていないとは言えないだろう。
ただ一方で凜子先生は、いつまでも芽が出ない真尋を心配してもいる。ここで自分が壁として立ちはだかることで、彼女が殻を破るきっかけを作れれば、という思いもあるのだ。黒木瞳はその辺のニュアンスまでちゃんと伝えてくれるから偉い。
凜 子「前からちゃんと伝えなきゃと思っていたんだけど」
凜 子「もし私が断ったとしても、真尋ちゃんにはこの脚本は無理だと思うよ」
凜 子「真尋ちゃんが書くものは主人公がみな同じ。きれいで優しくて芸術的な才能にあふれてて……。あなたが憧れているお姉さんの姿なんでしょ」
凜 子「でも今度は、あの長谷部香が監督するのは、人間の心の奥底にあるきれいなものも汚いものも全部えぐりとって大衆の目の前にさらす。登場人物みんな、ガラスの破片の上を裸足で歩かせる」
凜 子「そんなところに、ふわふわしただけのあなたのお姉さんを、立たせることなんてできないでしょ」
真 尋「……私が受けた仕事です。だから私も書きます。それで、もし私のほうが選ばれたら」
凜 子「ふっ……私より面白いものが書けるって言っているの?」
最後の表情にちょっとどんぎつねが重なったが、う〜んでも私の錯覚かも知れない。
というわけで、真尋は大島凛子先生の挑発に無言で宣戦布告。このあたりから、香と真尋、ふたりの抱える闇が交錯してきて面白くなってくる。もう少しレビューを続けたかったんだが、すみません今回はこのへんで。
ほんに夫婦仲がよろしおすな