実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第238回】筆談ホステス序説の巻

 

映画『Dear Friends』(2007年)より、仁科克基さん(現在、多岐川華子さんと真剣交際中)と北川景子さん


前回の記事の最後に予告を書いたように、今回は火野家の問題について少し考察する心づもりでいた。でも北川さんの新春ドラマがとても良かったので、やっぱり(kyoroさんの督促はあったが)火野家のお墓のことは後回しにして、筆談ホステスの話題に換えることにした。
と思って、スタッフ・キャストのかなり詳細な表をこしらえて(最後の方を見てください)印象に残った場面を書き出していたのですが、土・日に臨時の仕事が入ってしまって、整理がついていない。
というわけで、レビューとは言えないようなレビューでお茶を濁します。最近また言い訳が多くなってきたよなぁ。

 

 

今回のドラマ、正式なタイトルは『新春ヒューマンドラマ特別企画 筆談ホステス 〜母と娘、愛と感動の25年。届け!わたしの心〜』長いね。これは斉藤里恵さんという、聴覚障害で耳がまったく聞こえないのに銀座のNo.1ホステスになったという方の半生記を原作にしている。いや半生記って言ってもまだ25歳の女の子ですが。
青森に生まれ育ち、障害者だからと特別視されないように努力するけど、それが仇となって友達に疎んじられ孤立してしまい、高校を退学してブティックでバイトを始め、そこで接客業の楽しみにめざめ、ホステス募集のチラシを見て水商売の道に入り、母親に反対され、喧嘩をして家を飛び出し、上京し、銀座へ出て「筆談ホステス」として人気者になり、最後は母親と和解する。まあそういう話です。すみません、私は原作を読んでいないし、この人については何も知らないんだ。
だからほとんど白紙の状態で見たら、最初の方は『Dear Friends』みたいで、あれ、これって『Dear Friends』のテレビ版リメイクだっけ、なんて思ってしまったくらいである。まあ、こっちのヒロインの里恵はあっちのリナほどケバくはなかったけど。なにしろいきなりクラブのダンスフロアで踊っちゃうのである。

この、里恵がクラブに行く顛末というのが、短いけど分かりやすい。里恵は、ちょっと遊んでる感じの女子高生だ。しつけの厳しい母親に反抗して門限を破り、仲間と一緒に夜のゲーセンでたむろしているんだけど、クラスメートは「わたしたち、これからクラブに行くの。里恵は帰った方がいいんじゃない?」と言う。

でも里恵は小さい頃から母親に、健常者の人に見くだされたりしないように頑張んなきゃいけない、という教育を受けていて、そのせいでとても負けん気が強くてプライドが高い。だからこういう「クラブ遊びなんて、耳の聞こえない里恵には無理じゃないの」という態度にあうと、かえってムキになって「大丈夫、行こ行こ」みたいに、身振り手振りで答えるのだ。
この最初のシークエンスで、里恵にとって母親という存在が、規範であると同時に乗り越えたいハードルであることが、まず端的に示される。
それで勢いでクラブへ行って踊るんだけど、音楽が聴こえないので、曲が終わってみんながフロアからテーブルに引き上げても、気がつかずにフロアで踊り続けていたりして、目立ってしまう。それを面白がって「不思議ちゃん」とちょっかいかけてくる男達と小競り合いになる。最初は里恵をかばっていたクラスメートたちも、だんだん「こいつ連れてくると面倒だよな」ってうっとうしく思うようになって、結局、学校では仲間はずれになるし、母親からは夜遊びを非難されるしで、孤立無援で、退学する。
話の展開はそういうことになるのだが、そのクラブで踊るシーンが、こう、いかにも北川さんなのである。

今や天下の人気女優となられた北川景子に対してこういうことを書くと「でめえバカにしているのか」と多方面からお叱りを受けそうだが、あの、北川さんの踊りって、一度見たらちょっと忘れられないインパクトがあるよね。独特のリズム感をお持ちというか。それはもうセーラームーン時代から有名で、たとえば戦士5人、そろって手を振らなくちゃいけないような箇所でも、気がつけばレイちゃんはひとりで手も上げず、ぜんぜん別の不思議なステップを踏んでいたりするのだった。
『Dear Friends』の、黄川田君とのセクシーダンスもすごく奇妙だった。クラブの女王なんて言われているカリスマ女子高生なのに、こんな踊り方で良いのかなあ、なんて。で、今回はどうかというと、やっぱりそうなんだよね。それにこう、里恵が踊りながら髪をかきあげる仕草や表情なんかも、リナとそっくり。いやそっくりって、本人だから同じなんだけど。でも今回の役どころはクラブの女王じゃなくて「音が聞こえない、リズムが取れないのに、無理して踊っている」という特殊な状況だから、かえってリアルに感じられて、怪我の功名である。いやホント。

それから、このあとちょっかいをかけてきた男たちに激昂して、思わず手にしていた飲み物の中味を相手の顔にぶちまけて、あたりを騒然とさせてしまうところも、その行動パターンはまんまリナ。編集してつないでも違和感がないくらい(笑)。ただしコップを持つ手が、前回は右手、今回は隠れ利き腕の左手ですね。

で、踊りに関しては、正直よく分からないんだが、それ以外の演技を比較しながら鑑賞すると、やっぱり北川さん、きちんと3年分、成長しているんですよね。
このブログを始めた頃から言い続けていることだし、そもそも実写版セーラームーンからのファンならば誰でも思うことだろうが、北川景子は器用な女優さんではない。というか不器用だ。天才肌ではないから、新しい作品の台本に、以前に演じたのと同じようなシチュエーションがあれば(本人は自覚していないかも知れないが)自分の引き出しの中から、その時の芝居を引っ張り出してきて、まずそれを土台に据える。でも勉強家で、一作一作、こつこつと努力の成果を積み上げてきているので、以前よりちゃんと進歩しているんですね、ちょっとずつ。同じパターンの芝居をしている分、素人目にも進捗状況が見えやすい。

『Dear Friends』では、入院中、抗がん剤治療で髪が抜けてパニックに陥るシーンがあった。今回は、人工内耳手術を受けたけれども、幼い頃から何も聞かずに育ってきた脳が、大量の音声情報に拒絶反応を起こしてしまい、治療を中途で断念して、また音のない世界に戻る、というシーンがある。病室で一人、耳元で手を叩いて、何も聞こえなくてさめざめと泣く里恵。泣き顔は相変わらずなんだけど、以前の、力まかせに不安や激情をたたきつけるような演技にくらべると、こなれてきたというか、余裕がでていることがよく分かる。そういう、子供の成長記録を見るような楽しさが、北川景子を長く応援し続けることの醍醐味だと私は思います。

 

すみません、ここまで書いたところで、そろそろ出かける準備をしなきゃいけない時間になってきた。レビューとしてもまだ本題に入っていないような段階で、どうしようか次回も続けようか、それとも火野リサの墓の問題とかに戻ろうか、私自身、もうよくわかんないよ。


【作品データ】『新春ヒューマンドラマ特別企画 筆談ホステス 〜母と娘、愛と感動の25年。届け!わたしの心〜』制作:The icon/製作著作:MBS(毎日放送)/2010年1月10日21:00〜22:48放送

 

<スタッフ>プロデューサー:志村彰・森雅弘(The icon)/演出・プロデュース:竹園元(MBS)/ドキュメンタリーディレクター:高橋史典/演出補:水村秀雄・本多繁勝/記録:増子さおり/原作:斉藤里恵「筆談ホステス」(光文社)/脚本:加藤綾子/プロデューサー補:関川友理・深迫康之/宣伝:内藤史/宣伝スチール:増田祐治/劇用スチール:江尻千世子/インターネット:菊地崇/撮影:関照男/照明:目時威邦/VE:阪上忠雄/音声:和久井良治/編集:川中健治/協力:フォーチュン・AVC/CG:紀野伸子/MA:山下諒/選曲:山内直樹/効果:下城義行/エンディングテーマ:SQUAREHOOD「Departures」(ワーナーミュージック・ジャパン)/美術プロデューサー:津留啓亮/美術進行:佐々木伸夫/装飾:西田祐紀/衣装:山田隆信・斉藤あかね/メイク:鈴木未希子・青野茂美/題字:斉藤里恵/協力:フジアール/制作担当:大内裕/番組デスク:小野塚睦美/カーアクション:アクティブ・21/ホステス指導:和田昌子

 

<キャスト>斉藤里恵:北川景子/少女時代の里恵:清田海子/斉藤恵美子(里恵の母):田中好子/斉藤悟志(里恵の兄):福士誠治/少年時代の悟志:巨勢竜也/斉藤志郎(里恵の父):梨本謙次郎/朋子(理恵の高校の同級生 →信用金庫へ就職):折山みゆ/ひかり(理恵の高校の同級生 →保育士):麻生夏子/真由(理恵の高校の同級生 →OL):ゆき/正樹(里恵の彼氏):木咲直人/永井杏子(クラブ「Diana」のママ):手塚理美/島田(青森時代の客):春田純一/池波(青森時代の客、アメリカ転勤):石井康太/小島史生(洋服屋「JackPot」店長):井上順(友情出演)/佐々木(洋服屋「JackPot」店員):春日井静奈/河原三春(クラブ「Water Tower」のママ):戸田菜穂/瀬川耕造(建設会社社長):笹野高史/佐保(銀座のホステス):黒木美早/美菜(銀座のホステス):野口逢里/三田村賢二/西岡秀記/奥村友美/吉井宇希/石田妙/天野勝弘/大嶋守立/麻田あおい/中村龍介/八戸亮/帆足健志/佐々木哲平/吉田雄樹/河中彩/紺谷みえこ/澤田萌音/稲垣鈴夏/小西結子/クロキプロ/テアトルアカデミー/ワタナベエンターテイメントカレッジ/ナレーション:杉本るみ

 

<その他>取材協力:Club昴/撮影協力:青森市、青森フィルムコミッション、高崎フィルム・コミッション、前橋フィルムコミッション、つちうらフィルムコミッション、駅前ホテル青森館、青森ワシントンホテル、群馬大学医学部附属病院、前橋赤十字病院、MALL505、ウィルホーム、高崎中央銀座商店街振興組合、大手前慈光通商店街組合、高崎商科大学、高崎商科大学短期大学部、豊田屋旅館、SHNインターナショナル、ゲームスポットTOPPY亀戸店、行方市観光物産館、東京都個人タクシー協同組合、ポネットインターナショナル、高崎市のみなさん/車輌:マエダオート/提供(前半):花王、日本生命保険、東芝、日本マクドナルド、富士重工、養命酒製造/提供(後半):ダイワハウス、富士写真フイルム、セイバン