実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第27回】関西支部との初共同企画、しかし相手はそのことを知らないの巻(『マスター・オブ・サンダー』)


 最初に断っておきますが、今日の日記はぜんぜんセーラームーンじゃありませんから。それから、現在「小松彩夏学校」参加レポートで我々を楽しませてくれている『ぽんたのエスティマ日記』との初のコラボレーションでもある。ということでぽんたさんよろしくご了承下さい(って許可とってないのかよ。なんだこれ)。

 

 谷垣健治。1970年奈良県生まれ。小学生のときにゴールデン洋画劇場で『スネーキーモンキー 蛇拳』を観てジャッキー・チェンにあこがれ、少林寺拳法を習う。大学入学後、初めて香港へ旅行して『奇蹟 ミラクル』の撮影現場を見学。演出中のジャッキーを目撃。これでほとんど人生が決まる。
 帰国後「倉田保昭アクションクラブ」大阪養成所に入り、4年ほどアクションを学ぶが、入ってくる仕事はほとんど時代劇。それはそれで勉強にはなったが、やはり「香港映画みたいなアクションをやりたい」という熱い想いはつのる一方で、とうとう1993年、バイトで貯めた50万円の預金通帳を手に、単身香港へ渡航。知人もいなければ、なんのコネもなく、広東語も分からない。まさにゼロからの出発だった。
 しかし持ち前のバイタリティーで、あれやこれやとあった後、香港のエキストラ派遣会社に登録。その年のうちにはジャッキー・チェンの代表作のひとつ『酔拳2』で、泥棒に突き飛ばされる通行人の役をゲット。むかし日本から押しかけて色々話をしてきたファンのことを、ジャッキーは憶えていて、撮影中にも声をかけて、色々よくしてくれた。先の見えないつらい香港生活のなかで、それはなによりの心の支えだった。
 でもアクションがこなせるということもあって、それから顔が知られるにつれ、仕事はどんどん増えていった。ジェット・リーの主演作品『フィスト・オブ・レジェンド』に出演したのが翌1995年。これはブルース・リー主演『ドラゴン怒りの鉄拳』(1972年)のリメイクだ。
 『ドラゴン怒りの鉄拳』は、日清戦争後の上海を舞台に、横暴をきわめる大日本帝国に立ち向かった一人の中国人青年の闘いと悲劇を描いた、きわめて政治色の強い抗日(反日)映画である。出てくる日本人は、主人公の道場の師匠を毒殺したり、「犬と中国人、入るべからず」の看板を掲げたり、芸者にお座敷ストリップをさせたり、といった典型的な悪役で、とにかく「善い日本人」は一人も出ない。
 でも時代も変わった。このリメイク版『フィスト・オブ・レジェンド』には、そんな日本帝国主義に批判的で、中国人との友好的な交流を訴える日本人武道家(倉田保昭)とその娘(中山忍)が登場する。主人公はこの日本人娘と恋に落ちてしまい、当然というか周囲の中国人仲間からヒンシュクを買って、一種のロミオとジュリエット状態になる。そう、この作品には、主演ジェット・リーのたっての願いで、倉田保昭が登場したのである。悪い日本人役で出演し「寸止めなし」主義のジェットとの格闘シーンで顔がボコボコだったスタントマン谷垣健治は、こうしてかつての師匠と再会した。

 

 倉田保昭。1970年、香港の大手映画会社ショウブラザーズからの「カラテの出来る役者が欲しい」という要請を受けて、東映が送り込んだ無名の大部屋俳優。しかしその蹴りの鋭さとアクション・センスの良さは、関係者の注目を集めるところとなり、あっと言う間に1970年代の香港アクション映画には欠かせないスターとなる。ただし「クライマックスで主人公と闘う最後の敵」といった役回りが多く、つまり悪役のトップだ。そういう状態で1972年には台湾に渡っている。この年、田中角栄と周恩来の間に交わされた日中国交条約は、大陸以外の中国では反撥を招き、特に台湾では激しい反日運動が展開されていた。日本人だとバレたら身の危険もありうる、その最中に彼の地で映画を撮っているのであるこの人は。
 1973年末、『燃えよドラゴン』が火付け役になって、日本にもカンフー映画ブームが起こると、倉田は『帰ってきたドラゴン』(1974年)で凱旋帰国を果たす。そして、翌年のドラマ『Gメン’75』の草野刑事役で日本のお茶の間でも知られる存在となり、以降は日本・香港・台湾を股にかけて、俳優として活躍していく。

 

 そんな倉田保昭が制作の指揮をとり、弟子の谷垣健治が監督をつとめるこの夏の最大の注目作、それが『マスター・オブ・サンダー 決戦!!封魔龍虎伝』だ。そして特撮オタクの大きいお友達にとっても大注目作である。みなさんよーくご存じだろうが、自分のための整理メモとして出演者リストを書いておく。女優陣が『特捜戦隊デカレンジャー』の木下あゆ美と『美少女戦士セーラームーン』の小松彩夏と『仮面ライダー555』の芳賀優里亜と『仮面ライダーカブト』の永田杏奈と『ウルトラマンマックス』の長谷部瞳と『仮面ライダーアギト』の秋山莉奈。男優陣に『仮面ライダー剣』の椿隆之と竹財輝之助と『グランセイザー』の岡田秀樹。そして、谷垣監督にとっては倉田保昭アクションクラブ大阪養成所の先生にあたる中村浩二。『ウルトラマンティガ』『ウルトラマンダイナ』『ウルトラマンガイア』のウルトラマンの中身、つまりスーツ・アクターである。すごいですね。
 谷垣健治は香港、中国、日本、そして世界へと活動の幅をひろげながら、アクション俳優やアクション監督の仕事を続けてきた。国内ではVシネの監督作品もけっこうある。ただ見るからにスケジュールや予算が限られているのがバレバレな作品もあって、どれもお薦めというわけにはいかない。私としては『飛龍紅雲山 女ドラゴン軍団VSくの一5人衆』(2005年)が良かった。谷垣監督自身の「昔東京12チャンネルで放送していたB級香港アクション映画のような感じ」という説明がぴったりくるテイストの作品で、こういう言い方にピンときた方は(どれくらいいるかは知らないが)観ておいて損はないかと思う。あと蒼井そら主演なので、M14さんとかそういう人も。でもそういうシーンは大してありませんから(何のことやら)。
 ともかく、谷垣監督が本格的な劇場公開作品のメガホンをとるのはこれが初めてだと思う。しかも師匠である倉田保昭のプロデュースということで、本人の期するところも大きいのではないか。劇場公開は2006年8月19日。私の住む地域ではいつどこで観られるのか、それはちょっと調べていないのでよく分からないが、いずれにせよ小松彩夏ファンのみならず全国のみなさん、応援よろしく。いや別にわたしは関係者ではなくて一介のファンです。
 というわけで、名古屋支部にとってこの夏もっとも気になる映画『マスター・オブ・サンダー』試写会会場の様子は、はたしてどうだったか。関西支部のレポートを待ちたいと思う。エスティマ日記に続く(だから勝手に続けんなよ)。