ちょっと前に『M14の追憶』のレビュー(ここ)で興味をもち、アマゾン・プライムビデオのオリジナルドラマ『No Activity ―本日も異常なし―』全6話を観た。
張り込み中の覆面パトカーのなかで二人の刑事(豊川悦司と中村倫也)のやり取りがある。これが舞台劇というか、二人組のコントみたいな感じ。ときどき無線で状況報告をするのだが、無線連絡室のほうでは、こっちでも木村佳乃と清野菜名が舞台のコントみたいな会話をしている。一方、張り込み先の近くの倉庫では、二人組の小悪党(岸谷五朗と岡山天音)がやっぱりコントみたいな会話をしている。ここに岸井ゆきのが絡んできて話が動き出す。
オーストラリアでヒットしたコメディードラマの日本版ということだが、どこまでが原作どおりでどこまでが日本版アレンジなのかは分からない。とにかく、ドラマとしてのプロットがあって台詞を作って行くというよりも、コントを何本かつなげてドラマの形にしたような変わった雰囲気で、だれが書いたのかなと思ってクレジットを見たら、脚本はシソンヌのじろうだった。道理でコントっぽいはずだね。
そのシソンヌの片割れ、長谷川忍がけっこう出ずっぱりだったのが、NHK総合「ドラマ10」枠で放送中の『正直不動産』(2020年4月〜6月、全10話)。長谷川忍は、主人公(山下智久)の上司役なんだけど、本当はもう一人、上司の役で木下ほうかが出ていたという。ひょっとしたら木下ほうか降板の都合で、長谷川忍の出番が相対的に増えたということか。
『正直不動産』は『クロサギ』(TBS系、2006年)と同じく夏原武が原案のマンガを、『クロサギ』の山下智久主演でドラマ化した作品で、第1話冒頭から山Pのセクシーショットがあり、しかも第1話ゲストは、山Pが俳優業の師と仰ぐ山崎努である。
NHKはなぜここまで山Pをもり立てようと? というあたりは、ちょっと分からないなあ。まあとにかく、今回は第1話「嘘がつけなくなった不動産屋」をちらっと覗いてみよう(2022年4月5日放送/原案:夏原武/原作:水野光博・大谷アキラ/脚本:根本シンジ/照明:長谷川誠/撮影:金澤賢昌/プロデューサー:宇佐川隆史・清水すみれ/監督:川村泰祐/制作:NHK・テレパック)
『正直不動産』の主人公、登坂不動産営業部の永瀬財地(山下智久)は、『家売るオンナ』の三軒屋万智とは対照的に、営業成績を上げるためなら客の人生など顧みない男。ライバルの同僚からは「息を吐くように嘘を並べて契約をもぎ取る、そのためだったら手段は選ばない悪魔のような男、ライアー永瀬」と呼ばれている。第1話のお客は、歳も歳だし隠居を考えている和菓子職人の石田(山崎努)。永瀬は石田に、店を畳んで土地を整理して、アパート経営することを勧める。本当はこの土地では将来的にアパート経営で収益が成り立つ見込みはないのだが、そんなことはおかまいなし。いま土地売買の契約が取れればいいのである。
ところが、予定地となる店舗跡を下見に行くと、そこにはなにやら古い石碑と祠のようなものがある。業者に電話して、さっさと撤去して欲しいと訴えるが、業者はすでに別の現場に行っていて手が離せない。
起工式も近いので、仕方なく永瀬はシャベルをとって自分で撤収作業に入る。ところが祠を壊したそのとき、一天にわかにかき曇り、傍らの石碑も粉々に割れ、そこから出てきた妖気が永瀬を包み込む。『水滸伝』か『ナイルなトトメス』か。
その時から、なにかの神様の天罰で、永瀬はウソをつけない体質になってしまった。営業部長の大河(長谷川忍 シソンヌ)に飲みに誘われても、口が勝手に本音を言ってしまう。
大 河「永瀬、契約決まったし、飲みに行くか?」
永 瀬「嫌で〜す。あんたのしょうもない自慢話 聞くの、もううんざりなんです」
大 河「は? 」
永 瀬「だいたい、激安居酒屋で激安ハイボール奢ったぐらいで恩着せがましいんですよ。このクソ上司が」
そして仕事でも、いままで隠していた物件の短所や契約書の問題点を客に向かってべらべらしゃべってしまう。それを聞いたお客は当然その場で契約を破棄し、永瀬は営業成績トップの座から、いきなり転落。社長(草刈正雄)から直々に、もはや解雇寸前の身分であることを告げられる。
成約ボーナスを当てにして都内の高級タワーマンションに引っ越し、北欧製の高級家具を一回払いで購入したのに、成約ボーナスでそれをまかなうどころか、ペナルティーで減給になってしまった。もはやタワマンの家賃も払えるかどうか危うい永瀬は、給与が振り込まれる光友銀行に残高を確認しにやってきた。
一方、光友銀行の融資課では、行員の松田亜衣(五島百花)が、つい最近人事異動で融資課にやってきた榎本美波(泉里香)に、婚活パーティーの成果を尋ねているのだった。
亜 衣「美波さん、この間の婚活パーティーどうでした?」
美 波「全滅」
亜 衣「やっぱり、お医者さん限定とかのパーティー?」
美 波「別に。私、まともな仕事なら何でもいいし」
亜 衣「じゃあ、こだわるポイントって?」
美 波「定職に就いてて犯罪歴がなくて体が丈夫で食べ物の好き嫌いがなくて犬好きで縦列駐車が得意でイケメンだったら誰でも良い」
亜 衣「最後が一番難しいと尾路もいますけど。年収とかは?」
美 波「お金もどうでもいい。私、結婚しても、子どもを産んでも、60になっても、この仕事やめる気、1ミリもないし。いざとなったらダンナ養うし」
亜 衣「じゃあ、何で結婚したいんですか?」
永 瀬「何で?」
行 員「どうされました?」
永 瀬「大丈夫です」
行 員「何かありましたら、お声がけください」
美 波「はぐれイケメン発見」
亜 衣「あっあの人、登坂不動産の営業の永瀬さんです」
美 波「永瀬」
亜 衣「うちの取引先……あっ、美波さん融資係きたの最近ですもんね」
永 瀬(まずい。例の北欧家具の分が引き落とされた)
永 瀬(これじゃ今月の家賃に全然足りない)
美 波「登坂不動産の方ですよね?」
永 瀬「あっ、はい」
美 波「先週から融資係に異動になりました榎本美波と申します」
永 瀬「永瀬と申します」
美 波「私、近々御社の担当になるのでいろいろ教えてください」
永 瀬「もちろん。 じゃあ 今度 食事……」
これまでだったら、ちょっとした美女からサインがくれば、積極的に乗っかっていた永瀬だが、いまは金もないのに「食事に行きましょう」などと心にもないことを言おうとすると、一陣の風が吹いて彼の正直スイッチをオンになる。それでウソがつけなくなってしまうのである。
(風の音)
永 瀬「食事……なんかより 金貸してください」
美 波「えっ?」
永 瀬「すいません」
美 波「あっ 今の冗談ですね……ギャグですね」
永 瀬「失礼します」
永 瀬(ダメダメ! 借金なんて死んでもしたくない)
美 波「永瀬財地」
美 波「悪ぐねな」
最後にいきなり濃ゆい秋田弁をかます泉里香(方言指導は森ひとみ)。これはいったい何を意味するのか。まあしかし、京美人の泉里香が秋田ことばを口にするというのも、それなりに趣はある。
ということで、泉里香の出番が終わったので今回のレビューはここまで。なかなか面白そうなドラマだが、豪華キャストが紋切り型の配役で、何なんだろうという疑問はある(山下智久は山下智久っぽい役をやり、泉里香は泉里香っぽい役をやり、福原遥は福原遥っぽい役をやり、草刈正雄は草刈正雄っぽい役をやり……以下同文)。
ま、しかし、このままレビューを続けるかどうかも含め、今後の展開を見てゆきたい。あとはあれだね、『ブザー・ビート』のラストで山Pと北川さんはチューしたけど、今回は泉里香とのキスシーンはあるのか。……なさそうだね。じゃ次回。