実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第840回】新春第2弾:これがAct.30台本だ、の巻



 俳優・船越英一郎(61才)が女優・歌手でアーティストとしても活動する松下萌子(39才)と真剣交際していることがわかった。前妻・松居一代(64才)との泥沼離婚騒動から5年、「もう結婚はいいや」と周囲にこぼしていた船越がついに再婚を決意したという。
(『NEWSポストセブン』2022年1月4日


 しばらく前にコメント欄で百日紅さんから教えていただいて、思わず椅子からずり落ちるほど驚いた件。地場衛の婚約者、陽菜である。沢井さんとはかつて劇団東少ミュージカル『眠れる森の美女』(2010年)でも共演した。しかしだいぶ昔の話だ。うちのブログで松下萌子さんの話題を最後に取り上げたのはいつかと思って調べてみたら、3年前の2019年1月、チョークアーティストMoecoとしてテレビ朝日の番組に出演されていたのをピックアップしたのが最後である。



 それにしても今回のこの話題、お相手が船越英一郎というのにびっくり。陽菜がもう39歳というのに二度びっくり、相変わらずお美しいのに三度びっくりである。戦士のみなさんといい、ダーブロウさんといい、どうしてこうも変わらないのか。ダーブロウ有紗、昨年クリスマスのインスタライブより。



 さて、というわけで今回は前回に引き続き新春企画、Act.30台本紹介である。読んで、そして実際の映像作品と比較していただければ分かるが、今回はかなり未使用場面が多い。ひとつには楽曲の問題がある。たとえばシーン18、台本ではスタジオで仕事中の黒木ミオを美奈子が訪問する場面。台本では黒木ミオはポスター写真撮影中ということになっているが、実際の作品では、オリジナルキャラクターソング「Change of Pace」(けっこういい曲)の収録中という設定に変更されていて、ここで30秒くらい有紗の歌声を聞くことができる。



 また今回のクライマックス、愛野美奈子のサプライズライブでは「べぃべべぃべ」の「Romance」が1分半ほど演奏される。この二つの音楽シーンが入ったぶん、台本の会話を少し削らざるをえなかったものと思われる。
 このあたりはまあ、販売促進という意味もあったのだろう。ちなみに「Romance」と「肩越しに金星」を収録した小松彩夏のシングルCD『セーラーヴィーナス 愛野美奈子』のリリースが2004年4月21日、このAct.30の放送日が5月8日、黒木ミオの「Change of Pace」が収録されたコロちゃんパック第2弾の発売日が5月19日である。



 しかしそのことを考慮してもなお、台本からカットされたシーンが多い。今回は、黒木ミオとはいったい何者なのか、という謎を中心に進む。美奈子のライバルみたいなかたちで芸能界デビューしたかと思えば、十番中学に転校、という具合に、明らかにセーラー戦士たちに何かを仕掛けようとしている。とはいえ、いきなりうさぎに危害を加える様子でもないし、レイの霊感にも反応しないから妖魔の類いでもない。こいつは何者で、何を目的としているのか。そのあたりのモヤモヤを、クラウンでは戦士たちが議論しあっているし、美奈子も美奈子でアルテミスとあれこれ考えたりしている。でも台本のそういう場面は、長すぎたせいか完成作品ではけっこう切られて、うさぎとミオの二人に焦点が絞られている。結果、レイとまことなんか、今回はほぼ蚊帳の外といってもいいくらい印象が薄い。あと美奈子も、あれこれうさぎのことを心配しているのだが、そのあたりの描写が少なくなり、ただ黒木ミオに対して意地悪な部分だけが突出して残った(笑)。ま、能書きはこのくらいにして、実際にテキストをご検討いただきましょう。あ、前回に引き続き、理科の加藤先生(加藤弘之)も出演しています(台本のシーン20)。


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 当サイトはこれまで計14本の実写版台本を扱っています。(Act.ZEROAct.1Act.5Act.8Act.12Act.13Act.15Act.16Act. 28Act. 29Act.34Act.40Act.48Final Act)これらは同好のみなさまからの提供を受け、実写版セーラームーンマニアのための研究資料として提供するものです。閲覧される方は、その点をよくご理解いただき、扱いにはくれぐれもご注意くださいますようお願いします。



『美少女戦士セーラームーン』Act. 30
原作:武内直子/脚本:小林靖子

1. 前回より(本編になし



  ミオのCM。
  うさぎのクラスに転校してくるミオ。
  ミオとうさぎのバレーボール風景。
ルナのN「ルナです。うさぎちゃん達の学校に、アイドルが転向してきました。名前は黒木ミオ。ヴィーナスは、嫌な予感がするって言ってたんだけど――」



  うさぎとミオ
ミ オ「月野さん、私の事、嫌い?」
  ミオが泣く。
うさぎ「ううん、ごめん、私、愛野美奈子のファンだから、つい対抗しちゃって……。でも、クラスメートだもんね、やっぱり友達だよ」
ミ オ「ホント⁈ じゃあうさぎちゃんって呼んでいい? 私の事はミオって呼んで」



  妖魔に襲われて負傷するミオ。
うさぎ「ミオちゃん!」
  マーズ達が妖魔と戦う。
  セーラームーンも参戦し、必殺技で妖魔を倒す。
  ミオの手当てをするうさぎ。
ルナのN「ヴィーナスの間違いだったみたいで、ちょっと安心したんだけど――」



  メタリアの間のベリルとジェダイト。
ジェダイト「は、ベリル様にお貸し頂いた力で、予想以上の出来です。必ず、幻の銀水晶を手に入れるでしょう」
ベリル「楽しみだな……。わらわの力が加わっているとあればなお……」



  うさぎ達の教室。
香奈美「うさぎ、どういう事」
うさぎ「何が?」
桃 子「ミオちゃんにケガさせたの、うさぎなんでしょ」
うさぎ「えぇ⁈」
桃 子「ひどすぎだよ、最低!」
うさぎ「ちょっと待って……」

2. クラウン・中


  ミオを囲み、うさぎと対峙しているクラスメート達。
  亜美はうさぎの側に立つ。



うさぎ「ねぇ、私がミオちゃんにケガさせるわけないじゃん」
な る「そうだよ、うさぎはそんな事しないって」
香奈美「でも、ミオちゃんの話だとそうなるんだけど」
うさぎ「ミオちゃん――」
ミ オ「ううん、私、うさぎちゃんがそんなつもりないってわかってたし、みんなにも違うって言ったんだけど……」



桃 子「ミオちゃんはうさぎを庇ってくれたよ。でもさ、怪物が暴れてる時に、ケガした人放り出して自分だけ逃げたって聞いたらさ」
うさぎ「! あれは――」


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  回想
  ミオを物陰に座らせるうさぎ。
うさぎ「ここに隠れてて。大丈夫だから」


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うさぎ「その……(Mで)……戦ってたなんて言えない……」



亜 美「……」
桃 子「ホントだったんだ……。ガッカリ」
香奈美「私も、最初は信じたくなかったけど……」
うさぎ「ミオちゃん、あれは置き去りにしたんじゃなくて……」
ミ オ「わかってる。うさぎちゃんだって、本気で見捨てるつもりなかったんだよね。ただ、私が愛野美奈子のライバルだから……」



女生徒「ミオちゃんがいなくなればいいと思ったんだ」
  生徒達も口々に「ひどいよ」「冷たい」等と口にする。
ミ オ「みんなやめて。私、うさぎちゃんがイヤなら芸能界やめるし」
  うつむくミオ。
うさぎ「ミオちゃん――」
桃 子「そんな必要ないって!」
香奈美「そうだよ」



うさぎ「違うよ! 私そんなつもりないよ!」
な る「みんな、待ってよ!」
  亜美も思い切って前に出る。



亜 美「うさぎちゃんを信じて!」
  しかし、生徒たちの反応は冷たい。
  困惑のうさぎ。
  うつむいたミオが微かに笑う――。

タイトル



  監督:佐藤健光

3. クラウン・受付



  古幡が映画のチケットを持ってそわそわしている。
  そこへ駆け込んでくるまこと。
古 幡「!」
まこと「こんにちは!?」
古 幡「あ、あーっと、映画のチケットが……」
  とわざとらしく落としたりするが、急いでいるまことはパスを見せて奥へと駆け抜ける。
  後に空しく落ちているチケット。
古 幡「角度が悪かったかな……」

4. 同・中(前半の会話は本編になし


  うさぎと亜美、レイ、猫ルナがいる。
  駆け込んで来たまことが慌ただしくイスに座る。
レ イ「まこと、聞いた?」
まこと「ああ、うちのクラスでも持ちきり。どういう事?」
うさぎ「わかんない。多分、何か誤解されちゃったんだと思う」
亜 美「妖魔と戦ってた事言えないから、余計……。でも黒木さん、みんなにホントの事言ってるのかな」
うさぎ「ウソついたって事? そんな風に疑ったら可哀相だよ。私の事かばってくれてるんだし」
亜 美「そうなんだけど……」
  レイ達を見る亜美。
レ イ「黒木ミオについてはヴィーナスも最初疑ったぐらいだから、ちょっと問題はあるのかもね」



まこと「うさぎ、元気出しなよ。みんなが信じなくたって、私達がいるんだし」
  うさぎが笑顔を見せる。
うさぎ「うん、なるちゃんも信じてくれているし、平気」
猫ルナ「そうそう、元気出して。特訓でもやりましょ」
レ イ「またあれ?」



  控えめに首傾げる亜美。
猫ルナ「だって亜美ちゃんには効果あったんでしょ」
  まことがそっと手を挙げる。
まこと「私、やろうかな……。私だけまだ戦士の力目覚めていないし」
うさぎ「ねぇ、何何、私もやりたい」


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  また紙吹雪特訓で、きゃーきゃー言っているうさぎ達。

5. 道(本編になし


  ミオと桃子、香奈美が一緒に帰宅している。
  少し遅れてなるが憮然と歩く。
桃 子「ミオちゃん、ホント、芸能界やめちゃだめだよ」
ミ オ「うん、ありがとう。でもみんなも、あんまりうさぎちゃんの事怒らないでね。うさぎちゃん、愛野美奈子が好きなだけなんだから」
香奈美「行き過ぎだよ」
な る「ねぇ、ホントに――」
桃 子「あ、これ!」
  桃子がキーホルダーをはずしてミオに渡す。
桃 子「お守りのかわりなんだけど、ケガが早く治るように」
ミ オ「わぁ、ありがとう! 大切にするね」
香奈美「じゃ私達こっちだから」
ミ オ「うん」
  手を振って別方向へ行く桃子、香奈美。
  なるはちょっとミオを見つめて、桃子達を追う。
  背を向け、歩き出すミオ。
  途中、汚い物のようにつまんだキーホルダーを投げ捨てる。

6. ダーク・キングダム・全景(本編になし

7. 同・通路


  歩いてくるジェダイト。
  暗がりからクンツァイトが進み出る。



クンツァイト「随分機嫌が良さそうだな」
ジェダイト「気のせいだ」
クンツァイト「隠すな。プリンセスに何か仕掛けているな」
  肩に手をかけようとするのを、ジェダイトがかわす。
ジェダイト「忘れるな。今は俺の方がベリル様に近い」



クンツァイト「なるほど、自信の根拠はそれか」
ベリルの声「クンツァイト! 参れ」
ジェダイト「お呼びだ」
  ニッと笑って立ち去るジェダイト。
クンツァイト「……」

8. 同・メタリアの間



  ベリルの前に一礼するクンツァイト。
クンツァイト「お呼びにより。ベリル様にはご機嫌麗しく……」
ベリル「いい加減芝居はよさぬか。お前が前世の記憶を持っている事はわかっておる」
  ベリルが黒い花を出す。
クンツァイト「ならば、それは最早ムダな事とおわかりのはず」
  フッと笑ったベリルは花から黒い粒子を飛ばす。



  軽く剣の鞘で受け止めるクンツァイトが、突然グラッとなる自分に顔色を変える。
クンツァイト「……!」
ベリル「気付いたか? クイン・メタリアの力がまた強くなっておるのだ。わらわもその影響を受けておる」
  クンツァイトは懸命に鞘を払って剣で粒子を断ち斬るが、思わず膝をつく。
ベリル「わかるな。お前を自由にさせておくのは、その方が役立つと思うゆえ。しかし余計な事をすればいつでも……」



クンツァイト「余計な事とは?」
ベリル「ゾイサイトの邪魔だ」
クンツァイト「成る程、マスターの目覚を待っているのは敵だけではないと。が、目覚めた所であなたには――」
ベリル「それが余計な事⁈」



クンツァイト「(フッと)お言葉通りに」
  背を向けたクンツァイトが、苦痛の色を見せる。
  その表情から余裕が消えている。
ベリル「……エンディミオン、お前に会う時も近い……」

9. ロンドン・衛の下宿(夜)


  暗く、無人、外は雨。
  テロップ『ロンドン』。



  帰ってきた衛が電気もつけず、ソファに座る。
 衛 「……」
クンツァイトの声「お前は我らを裏切り、そしてこの星は滅んだ……」
  窓から漏れる明かりの影にゾイサイトがいる。



ゾイサイト「……」
  衛が深く息をつく。
 衛 「……俺は、自分の名前も何もかも、他人や前世から与えられている。だから、そうじゃない自分が欲しかった」
ゾイサイト「ここに、それが?」
  衛が立ち上がる。
 衛 「……」

10. 学校・全景(朝)


11. 同・下駄箱前(朝)



  上履きに履き替えている桃子と香奈美。
  うさぎが来て、
うさぎ「おはよー」
二 人「おはよ」
  しかし、その態度は冷たく、すぐ奥へ行ってしまう。
うさぎ「……」
  そこへ来る亜美



亜 美「うさぎちゃん……」
うさぎ「あ、おはよ。うん、大丈夫大丈夫」
  なるも駆け寄る。
な る「おはよ!」
うさぎ「おはよ」
  その横を、また他の生徒が冷たく通りすぎるが、うさぎは笑顔。
  その様子を離れた所から見ているミオ。

12. テレビ局・全景(本編になし

13. 同・ロビー(本編になし


  アルテミスを抱いた美奈子と、ルナがソファに向かい合っている。
美奈子「そう……。そんな事に……」
アルテミス「ルナ、本当に怪しい所はなかったのか」
ル ナ「うん、マーズも何も感じなかったって。それに敵だったら、プリンセスに意地悪するだけなんて変でしょ」
美奈子「それはそうなんだけど……。もう一度確かめてみる」
  美奈子は携帯をかける。
美奈子「美奈子ですけど、黒木ミオのスケジュール、わかる?」

14. 学校・全景(本編になし


  チャイムが鳴る。

15. 同・屋上



  うさぎと亜美が弁当を広げている。
うさぎ「何か、屋上ランチっていいね」
亜 美「まこちゃん遅いね」
うさぎ「後でなるちゃんも来るって言ってた。ミオちゃんと食べたくないんだって」

16. 同・裏庭



  なるとミオがいる。
ミ オ「話って?」
な る「うさぎが黒木さんの事置き去りにした話、ホントだと思えないんだよね」
ミ オ「私だってそうだよ。でもうさぎちゃんも悪気はないと思うし」
な る「そういうんじゃなくて、何か他に事情があったんでしょ」
  うつむくミオ。
ミ オ「うさぎちゃんの事、そんなに信用してるんだ」
な る「してる。だからホントの事言って」



ミ オ「うさぎちゃんの側にずっといるもんね」
  上目遣いになるを見る。
な る「?」
  が、次の瞬間、お腹を押さえる。
ミ オ「どうしたの?」
な る「イタ……」
ミ オ「大丈夫?」

17. 同・屋上(本編になし


  うさぎと亜美が昼食をとっている。
  まことが弁当を手に来る。
まこと「うさぎ、今すれ違ったんだけど、大阪さん、だっけ、先生が病院連れていったよ」
うさぎ「え! なるちゃんが? どうして?」
まこと「急にお腹痛くなったんだって。盲腸かもって」
うさぎ「うそ、あんなに元気だったのに……」
まこと「それがさ、それまで黒木ミオと一緒だったって」
亜 美「でも、まさか人を病気には出来ないと思うけど……」
まこと「まぁね」

18. スタジオ・中



  ポスター撮影中のミオ。
  シャッターが何枚も切られる。
  ミオに浮かんでいる笑み。
  ふと、その笑みが消える。
  スタジオの奥に、腕組みして見ている美奈子がいる。
ミ オ「すいません、ちょっと休憩いいですか」
  ミオが美奈子に歩み寄る



美奈子「……」
ミ オ「愛野美奈子さんが来てくれるなんて、感激です」
美奈子「勝手に見学してごめんなさい」
ミ オ「光栄ですよ。ダメ出しして下さいね」
美奈子「ケガ、大した事なかったみたいね」



ミ オ「え? ああ、知ってたんですか」
美奈子「十番中学に知り合いがいるから。色々と」
ミ オ「へぇ」
美奈子「どうして十番中学に? 仕事に不便じゃない」
ミ オ「そうかな」
美奈子「その前はどこの中学?」
  美奈子を見つめたミオが突然泣き出す。



美奈子「え……」
  ハデに泣くミオ。
美奈子「ちょっと」
  スタッフが声かける。
スタッフ1「ミオちゃん、どうかしたの」
ミ オ「何でもないです。ひどい事言われたんじゃないんです、美奈子さんはアドバイスしてくれたんです!」



美奈子「!」
スタッフ1「ちょっとちょっと美奈子ちゃん、新人いじめー?」
スタッフ2「貫録だねー」
美奈子「違……!」
ミ オ「違います!愛の鞭です!」
  泣いているミオを睨む美奈子
  ミオの隠れた口元は笑っている。

19. 同・外(夕方)(本編になし


  荒い足取りで出てくる美奈子。
アルテミス「確かに敵の気配はないけど、ちょっと怪しいな」
美奈子「それにいい性格。妖魔より手ごわいかも」
アルテミス「確かに」
美奈子「もし狙いがあるとしたら一体……」

20. 学校・道(日替わり)



  一人で登校しているうさぎ。
  桃子と香奈美がスッと追い抜いていく。
うさぎ「あ、おはよー!」
二 人「おはよ」
  振り返りもせず行ってしまう。
  溜息のうさぎ。
  後ろからミオが来る。



ミ オ「うさぎちゃん」
うさぎ「あ、ミオちゃん、おはよ」
ミ オ「ごめんね、私のせいでみんなから責められて。言い方が悪かったのかなー」
うさぎ「もうしょうがないよ。その内わかってくれると思うし、信じてくれる人達もいるし」
ミ オ「けど、愛野美奈子にまで悪いイメージ持っちゃった人もいるし」
うさぎ「……え、そうなのかな、やっぱり……」
  ちょっと俯くうさぎ。



ミ オ「だからさ、それを挽回する意味で、ライブやらない?」
うさぎ「ライブ、って……?」
ミ オ「愛野美奈子にプライベートライブやってもらうの。生で歌聞けば、悪いイメージなんて吹っ飛ぶよ」
うさぎ「えぇ? そんなのムリ。やってくれるわけないよ」
ミ オ「大丈夫、私がいるじゃない。実はね、もう話はしてあるんだよね。今日なら空いてるって」



うさぎ「ホントに⁈ すごい!」
ミ オ「みんなには6時くらいって言えばいいかな」
うさぎ「愛野美奈子のライブか~。うわぁ……」
  ミオ、うさぎを見て、
ミ オ「ね、これうさぎちゃんがみんなを楽しませる全部やった事にしよ。そうすればみんなと仲直り出来るよ」
うさぎ「ミオちゃん……」
  ミオ、笑顔で。

21. 街・全景(夕方)


22. 野外ステージ(夕方)



  小さなステージで、備え付けの照明がある程度。
  桃子や香奈美など、生徒達が集まってきている。
桃 子「うさぎもよく美奈子のライブなんか頼めたよね」
香奈美「何か他のクラスの子も来てる」
桃 子「そりゃ美奈子だもん」
  ステージ脇にいるうさぎとミオ。
うさぎ「うわぁ、すごい集まってる」



ミ オ「美奈子さんの人気が上がれば、私も嬉しいな」
うさぎ「……ミオちゃんて、ホントに優しいんだね」
ミ オ「そう? あ、そういえば水野さんと、6組の木野さん、だっけ。来ないって」
うさぎ「え、そうなの?」
ミ オ「なんかねー、うさぎちゃんがそんなライブ開けるはずないって思ってるみたい。ちょっと冷たいね」



うさぎ「え、ホントに? ひどいなぁ……」
ミ オ「ほっとけばいいよ。うさぎちゃんには私がいるじゃん」
うさぎ「うん……」
  ミオ、時計見て
ミ オ「そろそろ時間かな、美奈子さん遅いな=」
  柱時計は6時ちょっと前。


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  日は暮れて、ステージには照明がついている。
  柱時計は6時を30分も回っている。
香奈美「ちょっとおかしくない? 全然始まらないし」
桃 子「それにステージ、何もないし」
  周囲もざわつき、「まだかー!」などの声が上がっている。
  ステージ脇で、うさぎの携帯をかけているミオ。
  不安げに見守ってるうさぎ。



  ミオ、携帯を畳む。
ミ オ「出ない。もしかして、すっぽかされちゃったかも」
うさぎ「え⁈」
ミ オ「芸能界って良くあるんだよね、新人いじめ。私、美奈子さんに騙されちゃったかな」
うさぎ「そんな、きっともうすぐ来るって」


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  時計は7時近く。
  さらに生徒達は騒いでいる。
ミ オ「もうムリだね。これ以上待たせられない」
うさぎ「……」
ミ オ「私がみんなに謝るよ。私が悪い事にすればいいんだし」
  ステージへ以降とするミオをうさぎが止める。
うさぎ「待って、私が行く」
  ミオは黙って道を開ける。
  ステージに上がるうさぎ。



  一応静まる生徒達。
うさぎ「あの、実は……。ごめんなさい! 美奈子ちゃんが、来れなくなって――」
一 同「えー!」
  ひるむうさぎ。



桃 子「何それ! ひどすぎ」
香奈美「うさぎ、ちゃんと準備したわけ?」
女子生徒「いい加減ー。美奈子も、ひどいよね。こんな小さいライブどうでもいいんじゃん?」
男子生徒「美奈子出せー」
  という声に、一斉に「出せ」コール。
うさぎ「あの……」
  立ちつくすうさぎ。



  脇で、声なく笑い転げているミオ。
ミ オ「あーあ美奈子最悪、うさぎちゃんもどんどん友達いなくなっちゃう。かわいそー」
  ミオ、笑いを止めてうさぎを見る。
ミ オ「大丈夫だよ、うさぎちゃん。私がいるから。うさぎちゃんの事大嫌いな私が。仲良くしようね……」
  ステージでさらし者状態のうさぎ。
  だがその時、照明が落ちる。



うさぎ「⁈」
  ざわつく客席。
  次の瞬間大音量で響いてくるイントロ。
  そして、客席の後方でフラッシュと共に白煙が吹き上がる。
  同時に発光するような照明と共に、浮かび上がるのは、トレーラーの舞台に立っている美奈子。
美奈子「みんなー! 遅れてごめんねー!」
  途端に大歓声が上がる。



うさぎ「美奈子ちゃん!」
  愕然と見ているミオ。
ミ オ「うそ……。どうして!」
  美奈子の歌が始まる。
  生徒達は夢中。
  うさぎがミオに駆け寄る。
うさぎ「ミオちゃん! 美奈子ちゃん来てくれたよ!」
ミ オ「そうね」
  美奈子が歌いながらミオに指を突きつけてくる。




ミ オ「……!」
うさぎ「美奈子ちゃーん!」
  歌う美奈子。
  グッと唇を結ぶミオ。
  その時、トレーラーから離れた向こうに妖魔の影が現われる。
  ハッと見るうさぎ。
うさぎ「ミオちゃん、ここにいて。私、ちょっと」
  うさぎが駆け出していく。
ミ オ「……」

23. 同・近く(夜)



  妖魔がトレーラーへ近づこうとしている。
  だが、その前に駆けつけるうさぎ。
うさぎ「待ちなさい! ライブの邪魔は絶対させないんだから! ムーンプリズムパワーメイクアップ!」
  うさぎが変身。
セーラームーン「愛と正義のセーラー服美少女戦士セーラームーン! 月にかわっておしおきよ!」
  妖魔の攻撃。
  かわすセーラームーン。


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  歌う美奈子。


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  妖魔の放つ糸がセーラームーンに絡みつく。
  身動き出来ないセーラームーン。
  妖魔が迫る。
  セーラームーンは懸命に力を込める。



セーラームーン「んー!」
  次の瞬間、胸のブローチが輝き、現われたスティックが糸を断ち切る。
セーラームーン「ムーントワイライトフラッシュ!」
  妖魔が消滅――


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  美奈子のライブが続き――

24. 野外ステージ(夜)


  ライブも終わり、生徒達もいなくなった中にいる美奈子、うさぎ、ミオ。
うさぎ「美奈子ちゃん、すっごい良かった! あの、私の事、覚えてくれてるかな」
美奈子「うさぎちゃんでしょ。いつかはケーキ、ごちそうさま」



うさぎ「きゃ――! 覚えてくれてたー! 感激ー!」
  喜びでじっとしていられないうさぎ。
  ミオが美奈子を見る。
ミ オ「どうして……」
美奈子「どうして? あなたが出てくれって言ったのよ」
ミ オ「そんな事言ってない!」



  美奈子、ニッと、
美奈子「そう。言ってないのに、私のライブを企画したわけ」
ミ オ「!」
  うさぎも「え」と見る。
美奈子「はじめから私を呼ぶ気なんかなかったんでしょ」



うさぎ「ミオちゃん、ホント?」
ミ オ「……」
  美奈子、うさぎに、
美奈子「今回は私が気づいたから良かったけど、気を付けて。あなたの友達が来ないのも、きっと騙されているのよ」

25. オープンカフェ(夜)



  まこと、レイ、亜美が座っている
まこと「うさぎ遅いな」


26. 野外ステージ(夜)



  いきなりミオが座り込んで泣き出す。
ミ オ「ごめんなさい……。私、うさぎちゃんを一人だけのものにしたくて……うさぎちゃんが好きなの……。嫌いにならないで」
美奈子「まだ騙すつもり? あなたの狙いは――」
  が、うさぎがミオを立たせる。
うさぎ「ミオちゃん、バカだな。そんな事しなくたって、私達クラスメートじゃん、友達だよ」
ミ オ「うさぎちゃん……」



美奈子「ちょっと待って、そんな簡単に信じるの?」
うさぎ「信じちゃうなー」
  くったくない笑顔のうさぎ。
美奈子「……!」
うさぎ「信じてもらえないのって、つらいもんね」
ミ オ「うさぎちゃん……」
  見つめた美奈子が仕方ないという溜息。



  そこへうさぎの携帯が鳴る。
うさぎ「もしもし、あ、まこちゃん? ごめーん、あのね……、あ、レイちゃん怒ってるんだ。ホントごめん。クラウン? すぐ行く!」
  うさぎ、携帯切って、
うさぎ「ごめん、私急がなきゃ、ミオちゃん、またね。美奈子ちゃん、ありがと!これからも頑張ってねー!」
  走って行くうさぎに美奈子は苦笑。



ミ オ「うさぎちゃん、いい人ですね」
美奈子「そうね。でも私はそうじゃないから。二度とあの子に変なことしないで」
  去って行く美奈子。
ミ オ「反省してます。今日はお疲れ様でした!」
  一礼したミオが顔を上げる。
  そこには歪んだ笑みが浮かんで――


  つづく