実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第771回】プリンセスは幻の女、の巻(沢井美優『世にも奇妙な物語 '20 夏の特別編』)


 演劇プロデューサーの松田誠氏によるクラウドファンディング「シアターコンプレックス」。要は演劇専門の動画配信事業を運営するというプロジェクトである。資金1億円を目標金額に掲げていたが、5月の1ヶ月あまりで1億6千万円を越える金額を集めて終了し、いよいよ7月7日より事業をスタートさせた。内容はオリジナルコンテンツや新作舞台の有料配信が中心になるのだと思うが、過去作品もいろいろ出てくるらしい。



 ということで、7月20日からはこのプラットフォームから、ネルケ版セーラームーンミュージカル第1期の5作品(大久保聡美ムーン3作品+野本ほたるムーン2作品)がストリーム配信されることになった。私はぜんぶDVDを持っているのだが、この際だ、料金払って観てしまうかな。
 七木奏音のブログの告知には、マネージャーが「ピチピチの奏音がご覧いただけます……」って書いているし、そうか、ピチピチかぁ。



 さて本日のお題は土曜プレミアム『世にも奇妙な物語 ’20 夏の特別編』(2011年7月11日、フジテレビ)。



 本来は『春の特別編』として5月に放送される予定が延期されて「夏の特別編」になってしまった。エピソードのつなぎにタモリが語るセットに七夕飾りがあったりするから、タモリのパートだけ撮り直したみたいだ。



タモリ「人間の願いは多種多様。古今東西、いま自分にないものを手に入れるために、人間は願いごとをしてきました。お願いをするだけならタダですからね」



タモリ「ん?」



タモリ「『金、美女』……」



タモリ「しかし、安易にタダなものに手を出すと……」


 今回とりあげるのは、第2話「3つの願い」(脚本:荒木哉仁/演出:河野圭太)。ただ公式サイトやプレスでは、オンエア順と違って第3話になっている。



 画に描いたようなお金持ちのお屋敷でワインの栓を抜く若林和也(伊藤英明)。奥さんの貴美子さん(沢井美優)と一緒になってもうすぐ5年になるらしい。



若 林「ああ…… 気持ちいいね、今日は」
貴美子「うん」



若 林「もうすぐ 僕らも5年か」



貴美子「そうね」



若 林「ずっと 一緒だよな?」



貴美子「当たり前でしょ? どうしたの?」



若 林「いや……」



若 林「ワイン取ってくる」




(グラスが割れる音)



若 林「貴美子?」



若 林「貴美子?」



若 林「貴美子!」



(電話のベルの音)




若 林「はい 若林です」
電話の声(ボイスチェンジャーの声)「若林和也さんだね」
若 林「誰だ?」



電話の声「あんたの奥さんは預かった。無事に返してほしければ現金5億円を用意しろ。身代金が用意できたころにもう一度 連絡する」
若 林「おい!」
電話の声奥さんの命が大事なら、余計なまねはするなよ」



若 林「貴美子は無事なのか? 声を聞かせろ 貴美子の! もしもし……」
(不通音)




 警察に通報すると、ただちに引っ越し業者に扮装した刑事たちがやって来て、逆探知などの準備が始まる。



 その傍らで、若林に対する聞き込みを始める野島刑事(宮崎秋人)と、捜査の指揮を取る山口刑事(松角洋平)。



野 島「奥さんから目を離した時間は、どれくらいでした?」



若 林「15秒もなかったと思います」



野 島「たった15秒ですか?」



若 林「ええ… それぐらいに感じました」



若 林「お願いします。 妻を……貴美子を取り返してください。お願いします!」


 山口と野島、同じく部下の日比野(赤川千尋)は、浦田(斎藤陸)が確認している防犯カメラの映像をのぞき込む。そこに映っているのは、瞬時に妻が姿を消すという、あり得ない光景だった。さらに、妻の貴美子をめぐって次第に明らかになる奇妙な事実。



浦 田「庭に向けられた防犯カメラの映像です」



浦 田「12時20分34秒。ここで 若林さんが席を立ちます」



浦 田「ここから、なぜか映像が乱れ始めます」




山 口「えっ?」




浦 田「何だこれ……まるで神隠しみたいじゃないですか」
浦 田「若林さんが席を立ってからは15秒。カメラの映像が消えてからはわずか5秒です。その間に犯人は奥さんを誘拐してます」



山 口「他のカメラは?」
浦 田「はい」




野 島「妨害電波でも使ったんですかね?」




山 口「念のため 映像が加工されてないか調べろ」
浦 田「はい」



日比野「防犯カメラに死角はありませんでした」



山 口「どうやって 犯人はカメラに写らずに侵入したんだ?」



野 島「山口さん、これ見てください」



野 島「若林さんから奥さんの携帯を借りたんですが、電話帳の登録も発信履歴も旦那さんだけです」



野 島「他の携帯がないか確認したんですが、これ一台だけだと」



野 島「ここの夫婦、何か変じゃないですか?」



 そこへ署で資料調べをしていた綾部(伊原農)や、外回りで情報収集中の刑事(堀池直毅)から電話がかかってくる。若林とはいったい何者なのか?。



山 口「はい山口」



織 部「おう、若林和也という男、調べてやったぞ」
山 口「ああ……どうだ?」



織 部「若林は投資で生計を立ててる。把握できた収入源はそれだけだな。あとは謎だらけだ」



山 口「謎?」



織 部「5年ほど前、彗星のごとく投資の世界に現れて、億単位の金を転がし始めてる。ネットや経済雑誌にも取り上げられたぐらいだ。あとで お前の携帯に記事のリンク送ってやるよ」



山 口「助かる」



織 部「気を付けろよ」



山 口「えっ?」



織 部「若林は 過去の経歴が一切 謎に包まれてる。資金源は裏社会の黒い人脈かもしれんぞ」




 綾部が教えてくれたネットの記事を見た山口は、これを執筆した佐藤(三村和敬)というライターへの事情聴取を依頼する。しばらくすると、聞き込みをした刑事(堀池直毅)から折り返し報告があった。

 

                                  

刑 事「若林さん宅に訪問されたことは?」
佐 藤「何度かありますね。取材はいつも自宅でやるので」
刑 事「若林和也さんの周囲で、最近なにか変わったこと、ありませんでしたか?」



佐 藤「変わったことっていうか……オレ、出禁なんですよ」



(カシャッ)




(カシャッ)



佐 藤「ああいいっすねぇ!」



(カシャッ)



若 林「何やってんだ!」




佐 藤「若林さん、普段はとても穏やかな人なんですけど、この前の取材で猛烈に怒らせてしまって」



佐 藤「そんなに奥さん、他の男に見られるのが嫌なのかなって、ちょっと怖くなりましたよ」



刑 事「若林和也は かなり奥さんに執着してるみたいですね」



山 口「引き続き佐藤から話を聞いてくれ」


 とにもかくにも、身代金として要求された5億円を用意する若林。最大の望みは妻が無事戻ってくることで、そのためなら5億円の金も惜しくない。警察にも、犯人逮捕より何よりも人命第一で捜査を進めるよう懇願していた。



 そのとき、若林の邸宅のチャイムが鳴る。やって来のは週に1回、ハウスクリーニングを頼んでいる、家政婦の峰岸亜紀(山口詩史)だった。




 玄関から顔を出した刑事たちに面食らう家政婦を、松山刑事(鮎川桃果)が半ば無理やりに家の中に押し込み、聞き込みが始まる。



野 島「若林夫妻の間で最近、何か変わったことはありませんでしたか?」
峰 岸「変わったことですか?」



山 口「印象に残ってることであれば、どんな些細なことでも構いません」



峰 岸「あっ、そういえば この前」



若 林「何であいつに見せたんだよ!?」



若 林「なあ。あれは僕たちだけの秘密だろ?」
貴美子「だって~」



若 林「分かってるよな? 僕は その気になれば 君を消すことだってできるんだからな」



峰 岸「ケンカしてるのを見たのが初めてだったので、珍しいと思って」



山 口「『消すことだってできるんだからな』若林さん、確かにそうやって言ったんですね?」
峰 岸「はい」



山 口「若林さんが『あれ』と言っていたのは、何のことだか分かりますか?」



峰 岸「そこまでは ちょっと……」


 
とそのとき、パソコンのスクリーンを覗いていた浦田が山口を呼ぶ。若林の身元調査結果が届いたのだ。



浦 田「山口さん これ見てください」



╳    ╳    ╳



山 口「若林さん。あなた 嘘ついてましたね」
若 林「嘘? 何の話ですか?」



山 口「あなたの戸籍には婚姻の記載がない」



山 口「書類上あなたは未婚で奥さんとの間に 婚姻関係がない」



若 林「それは……籍を入れられない事情があるんです」



山 口「どのような?」


 死角のないはずの監視カメラの目を盗んで、わずか数秒のうちに消えた美女の謎。妻のために身代金5億円払うことを厭わない謎の大富豪。そして実は入籍していない妻。本格ミステリとしてはなかなか魅力的な謎のばらまき方だが、これは『世にも奇妙な物語』なので、美女消失のトリックとかはない。
 さらに重要なことは、この作品は現在まだTVerで、あと一週間は視聴できる(2020年7月25日終了予定)。だからここでネタバレするわけにはいかない。



 できるだけ多くの方々に視聴してもらいたいので、残念だがこのくらいで紹介を終えます。みんな、TVerで沢井さんを観てくれ!いやこのエピソードだけじゃない。第1話なんかも、コンパクトながらきっちりまとまった短篇ホラーで、広瀬アリスのスクリーミング・クイーンぶりを堪能できる。



 沢井美優は、昨年の6月に放送された『世にも奇妙な物語 ’19 雨の特別編』(2011年7月11日、フジテレビ)の「人間の種」(レビューはこちら)にも出演していたが、今回のエピソードも、その時と同じ河野圭太監督である。昨年と同じ監督に起用されて、しかも昨年に較べて出演シーンがぐっと増えている。そもそもエピソード自体が、今回放送された4話の中で40分ともっとも長尺で、エンドクレジットのキャスト一覧でも、伊藤英明と松角洋平に続く3人目が沢井美優である。だいぶいい感じになってきて、嬉しい。



 ってわけで、次回は半年近く前の作品に戻るけど、テレビ朝日系で放送された『日曜プライム』ドラマスペシャル「私刑人~正義の証明」(2020年2月9日)を取り上げたい。
 重ねて言うけど、まだしばらくはTVerで全編視聴できるんで、みんな観てね。