実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


最新記事〕 〔過去記事〕 〔サイト説明〕 〔管理人

【第736回】活躍すれど殺されず、の巻(安座間美優『リカ』)

 連休っすか。いいっすね……なんて遠い目をしている場合じゃないや。いろいろ予定もあるので今回はさっさと本題に入る。物語がどんどん破綻していくサイコスリラー『リカ』第1部、安座間さんあいかわらず大活躍の後編だ(第3話、2019年10月19日放送、第4話、2019年10月26日放送、脚本:牟田桂子/撮影:白石利彦/照明:小池真之介/演出:[第3話]菊川誠・[第4話]松木創)。`
 花山病院の小山内師長が階段から転落して脳挫傷を起こし、未だに意識が戻らない重体となってしまった。スタッフ一同悲しみに暮れるなか、森田看護師(立花恵理)だけはちょっと違った。森田は愛煙家で、ときおり病院の敷地内でこっそり喫煙して、ボヤ騒動まで起こしていたが、そのことが師長にバレかけていたのだ。



小山内「誰がこんなところで……」



 そういう意味では、今回の事件は渡りに舟だった。彼女はそのことをリカにこっそり打ち明ける。森田は以前、喫煙しているところをリカに見つかり、かくまってもらったことがある。リカはいつもスパゲティミートソースにチーズをいっぱいふり、森田はカレーにソースをじゃばじゃばかける。看護師のくせにタバコは吸うし塩分はとるし、というキャラクター設定か。



リ カ「じゃあ 好都合だったわね。小山内さんには申し訳ないけど」



森 田「うん。天の助け」



森 田「なんて言ったらバチ当るか」



森 田「あっ、 そういえばさ、病院の近くにおいしい居酒屋あるんだけど、今夜いっしょに行かない?」



リ カ「あっ、今夜はちょっと」
森 田「ちょっとって?」



リ カ「記念日なの。彼と出会ってちょうど 1カ月」
森 田「えっ!? 雨宮さん。 彼氏いたの?」
リ カ「うん」
森 田「あっ。 もしかして 医者?」



リ カ「まあね」
森 田「嘘? マジで? ここの先生だったりして」
リ カ「それはちょっと……」




森 田「そうなの? いいじゃん教えてよ、誰にも言わないからさ」



リ カ「実はね……」


 もちろん、こういうときの「誰にも言わないからさ」ほど当てにならないものはないし、ホントに秘密にしたいことをこんな状況で打ち明ける人もいない。森田は木村(安座間美優)にそのことを伝え、木村は相川(浅沼惠理)たちに伝え、うわさはあっという間に院内公然の事実となる。



相 川「嘘!? 大矢先生と雨宮さんが?」



木 村「最近、付き合い始めたみたいよ」



相 川「えっ。 ショック」



リ カ「おはよう」



看護師たち「おはようございます」





大 矢「おはよう」
看護師たち「おはようございます」



 交際はもちろんリカの一方的な思いこみだが、弱みをにぎられている副院長の大矢(小池徹平)は、どうしても強く出ることができない。弱みというのは医療ミスだ。先日の手術で、患者の体内に止血鉗子を残したまま縫合してしまい、直後に患者に無断で緊急再手術を行い、取り出したのである。渋江譲二の出ていた『ブラック・ペアン』と同じようなミスの話であるが、しかしこの場合、それは人為的な犯罪だった。



 手術が終わり、大矢から後片づけを任されたリカが、縫合したばかりの患部を開いて鉗子をひとつ戻しておいたのである。それから鉗子がひとつ足りないことを大矢に報告し、大矢に自分の医療ミスと思い込ませたのだ。




 そして動揺する大矢に、麻酔が醒めないうちにもう一度こっそり開腹して、ペアンを取り出すよう勧め、手術ミスの隠蔽という決定的な過ちを犯させてしまった。



 看護師って、やろうと思えば開腹までできちゃうんですね。これからは病院から在宅へ現場が移っていく難儀な時代だから、医師のやっていたことを看護師がやり、看護師のやっていたことを患者と家族がやるようになってくるのかも知れない。長生きも考えものである。



 ペアンは回収。事態を無事収集してひとまず喜ぶ大矢医師だったが、これでリカに完全に弱みを握られた状況となる。



 だから二人が交際しているという噂を打ち消しはしても、そういう噂を自分から拡散するリカを処分できない。このアキレス腱がやがて、大矢医師に破滅をもたらすことになる。



 一方、意識不明の小山内(池谷のぶえ)に代わり師長となったナンバーツーの藤鐘(安藤玉恵)は、ナースコールがかかって出て行った小山内が階段から転落し、しかも当の患者がナースコールなどしていない、と言っていたことを不審に思っていた。確かにその患者は認知症だが、藤鐘のカンでは嘘をついているように見えなかった。誰かが患者を騙り、ニセのナースコールで小山内をおびき出し、階段から突き落としたのだ。



 小山内が転落した直接の原因は、つかんでいた階段の手すりが老朽化で外れてしまったため、と思われていた。ところが業者の話では、手すりは人為的にネジを緩められていたというのだ。やはり誰かが事故に見せかける細工をしたのである。



藤 鐘「ねえ? 小山内さんが事故に遭う直前、208号室の鈴木さんにナースコールで 呼ばれて非常階段に向かったのよね?」
木 村「はい」



藤 鐘「そのとき、所在の分からない看護師っていなかった?」



木 村「そうですね、休憩を取っていた人は何人かいたと思いますけど」



藤 鐘「その中で一番最後に戻ってきたのは誰?」



木 村「覚えてる?」



相 川「確か……」



千 秋「転落ってどういうこと?」




相 川「一番最後は雨宮さんでした」


 こうして、新たに師長となった藤鐘も、小山内と同じように真犯人にたどり着く。さらに、大矢とリカが交際しているという院内の噂の出どころがリカ自身であることから、彼女の動機が大矢にあることまで正しく見抜いた。

 



藤 鐘「先生が雨宮さんと付き合ってるなんて嘘ですよね?」
大 矢「もちろんだよ。僕には婚約者がいる。まだ結婚は何年か先になるけど、真剣に付き合ってる」



藤 鐘「そうですか。でも雨宮さんは、先生のことが 好きなんですよ」



大 矢「えっ?」



藤 鐘「小山内さんは彼女を辞めさせようとしたから……。要は先生から遠ざけようとしたから、襲われたんです」



大 矢「そんな……僕のせいで小山内さんが」



藤 鐘「先生、気を付けてください。あの人は先生を手に入れるためなら何でもしかねない」


 しかもこの後、大矢から「彼女に弱みを握られている」とペアンの一件を告白されて、それはリカの仕組んだ罠に違いない、とたちどころに看破する。なかなかの名探偵である。安藤玉恵はどんな役もこなせるなぁ。でも、こんなに鋭いのに、なぜかリカと一対一で対決して「あなたにはもう辞めてもらいますから」なんて禁句を突きつけ、小山内と同じ運命を辿るのだった。
 その日の夜勤。藤堂は木村看護師(安座間美優)のいれてくれたコーヒーを飲んでから、夜間の巡回に出る。



木 村「師長も飲みますか?」



藤 鐘「ええ、もらうわ」




木 村「はいどうぞ」
藤 鐘「ありがとう」




 巡回中、なにか物音がしたので様子を見に行くと、小山内前看護師長の病室から明かりが洩れている。







藤 鐘「誰かいるの?」



藤 鐘「雨宮さん! ここで何してるの? 早く帰んなさい」


 小山内の呼吸維持装置のスイッチを切ろうとしているリカ。当然、言い争いになるが、藤鐘の足もとは次第にふらつき、意識が遠のいていく。一服盛られたのだ。




リ カ「眠くなった?」



リ カ「コーヒー おいしかったでしょ?」



藤 鐘「あなた、まさか……」


 どのくらい時間が経ったのか、同じコーヒーを飲んでぐっすり眠っていた木村看護師は、大きな物音にふと目をさまし、藤鐘が巡回から帰ってきていないことに気づく。





木 村「師長!?」



木 村「師長?」


╳    ╳    ╳






╳    ╳    ╳



木 村「先生」



大 矢「どういうことなんだ?」



木 村「分かりません。私が来たときには、もう」



大 矢「まさか」



大 矢「いったい何が?」




藤 鐘「小山内さんを襲ったのは私です。結果植物人間にしてしまった」



藤 鐘「いまさら後悔しても、もう小山内さんの意識は戻りません」



藤 鐘「その罪を償って、小山内さんと 一緒に私も死にます。藤鐘清美」




大 矢「そんなバカな!?」


 藤鐘は罪の意識にかられ、小山内の人工呼吸装置のスイッチを切り、自らも睡眠薬を飲んで手首を切り自殺した。ということになってしまった。あれだけ頭の回転が早いのに、リカの手で事件の犯人に仕立てられ、命を奪われた。しかも彼女はもうひとつ大きな失敗をやらかしていた。リカに病院を辞めろと言った時「大矢先生だっていい迷惑よ。婚約者がいらっしゃるのに」と口走ってしまったのだ。当然リカの次のターゲットは、この婚約者の佐藤真由美(山谷花純)となってくる。





 にしても山谷花純と矢野優花は、ドラマとかで観るたびに可愛く美しくなってるね。



 で、第4話(第1部最終話)だが、実はこの第4話には「前回までのあらすじ」以外に安座間美優の出番がない。


*(注意)このあと、ドラマと原作の結末ネタバレ記述があります。


 リカは外科医の柏手(西村直人)の娘を誘拐して、娘を無事帰して欲しければ大矢の婚約者の真由美を殺せ、と命令する。柏手は言われた通り真由美を殺す(このあたり、無理筋な展開なのは原作を一部改変した結果である。といって原作も変なんだけど)。


 
 怒り狂った大矢がリカを殺そうとすると、それだと娘の居場所がわからなくなると焦った柏手が、背中から大矢を指して致命傷を負わせる。愛する大矢を殺されてリカも怒り狂い(この人は最初から狂っているか)柏手を殺す。柏手の娘も、たぶんすでに殺されている。それからリカは愛煙家の森田看護師を呼び出して、以前のボヤ騒動のシチュエーションを再現、彼女のタバコの火の不始末で病院の旧病棟が燃え、彼女自身を含む五人(大矢と婚約者、婚約者を殺した外科医の柏手、リカに誘拐された柏手医師の娘、そして愛煙家の森田看護師)が焼け死んだかのように見せかける。そしてリカ自身は行方知れずになってしまう。第1部完……という、かなりむちゃくちゃな話である。



 原作小説はさらにエグい。リカは婚約者のモモニンジャー山谷花純のような顔になれば小池徹平に愛してもらえると思って、彼女の首を切り取って外科病棟に持参し、自分でメスをふるってモモニンジャーの顔をはぎ取り、移植してもらう。そんな要望を聞く外科医はいないので、リカは外科医の柏手の娘を誘拐して無理強いする。だから小説のラストのリカは、皮膚の入れ替え手術が終わったばかりで、顔が腫れ上がっていて、包帯でぐるぐる巻きで、そこから片目だけがランランと光っている。それをそのまま映像化しても迫力のあるビジュアルになったろうが、ドラマ版はやはり高岡早紀の美貌を活用していて、それはそれで壮絶だった。まあどっちにしてもめちゃくちゃな話である。
 で、ドラマに戻り、花山病院のレギュラーメンバーで生き残った人をリストアップしてみよう。まず原作にも出てくる倉田看護師。



 この人は原作では藤鐘を慕っていて「藤鐘さんが自殺なんかするはずありません」と訴えていたが、自動車にひき逃げされて全治二ヶ月の骨折を負い、怯えきって退職届を残して退院してしまった。




 一方、今回のテレビドラマ版では、大矢医師と仲良さそうにしているところを見て嫉妬したリカが、彼女の担当の患者さんの薬をこっそり危険なものに変えてしまう。




 ミスを責められた倉田は、弁解しても聞き入れられず、腹を立てて自ら病院を辞める。まあ命拾いしたな。
 あとは原作に出てこない相川看護師(浅沼惠理)と同僚の木村看護師(安座間美優)。



 特に安座間美優の木村看護師(看護師としてこの前髪はいいのか?)は、小山内前師長の転落と藤鐘新師長の(偽装)自殺、どちらの現場の第一発見者でもある。ふつうだと最重要容疑者のはずだが、誰も疑わないのが安座間さんの人徳である。



 また、誰よりも早く真相を見抜いてもおかしくないくらい事件に近いところにいながら、ほぼ何も気づかなかったのでリカに命を狙われることもなく、肝心な時には睡眠薬入りのコーヒーでスヤスヤ眠っていた。このマイペースな鈍感力こそ彼女のサバイバル能力でもある。おかげでセリフも出番も多くて、しかも生き延びた。



 最後に受付嬢の丘留千秋を演じた夏菜。この人もドラマだけのオリジナルキャラ。結局、安座間さんよりも印象が薄かったような気がするが、主人公のリカを除けば、第1部と第2部にまたがって登場する唯一のキャラクターである。
 さあこれで『リカ』のレポは終わり。最後に私の心に残ったシーン。待ち合わせのレストランで、なかなか来ない小池徹平とメールのやりとりをする婚約者の山谷花純。それを遠目に見守る高岡早紀。山谷花純のみずみずしい美しさ、若さに満ちた輝きに、母親くらいの年齢の高岡早紀は一瞬目がくらんで、嫉妬の怒りとかそういうのではない、哀しそうな表情を見せる。高岡早紀だってあの年であれほど美しいのは奇跡的なのだが、だからこそ切なくなってしまう場面だった。









 以上、エグい話だったが、おつき合いいただきありがとうございました。で、安座間さんの『庶務行員 多加賀主水』シリーズ第3作目への出演はあるの? ないの? 2019年11月17日のオンエアを待とう!