実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第726回】それぞれの結末の巻(北川景子『指定弁護士』レビュー最終回)


 『ウルトラマンジード』のライハこと山本千尋の初主演映画『BLACKFOX : Age of the Ninjya』の情報が解禁になった。タイトルどおり山本千尋がクライマックス、黒いキツネの仮面をつけたくの一に扮する。たぶん。



 『仮面の忍者 赤影』に、海外におけるBABYMETAL人気を加味したような(推定)東映特撮時代劇で、監督が坂本浩一。倉田保昭と、それから中村浩二も出るよ。と、まあこれで作品の基本的な雰囲気は分かりますね。



 ただ「山本千尋の初主演」て言われて一瞬、じゃあ『太秦ライムライト』(2014年、東映京都、監督:落合賢)は? と思ってしまったが、でもあれの主演は「日本一の切られ役」福本清三さんでした。



 さてお盆休みも近づいて、マスターピンク復活も近い。だらだら続けて来た『ドラマスペシャル 指定弁護士』のレビューもついに今回をもって最後までたどり着きます(2018年9月23日放送、テレビ朝日・東映、脚本:櫻井武晴/照明:池本雄司/撮影:関照男/監督:竹園元)。



 鴨川。裁判が終わって、え〜とどれくらい経ったのかな、巷に流れる判決のニュース。まあ内容はあらかた予想されていた通りである。NNFのワイドショー『イマホウ』では、司会の安東弘樹に振られて森永卓郎がなにやらコメントしている。



アナウンサー「京都市の国有地払い下げ問題を巡るあっせん収賄罪で、強制起訴された田金清造元法務大臣に、先ほど、無罪判決が下されました」



司 会「ということは、辰波氏から田金議員への献金は賄賂ではなく、また、指定弁護士が言っていた手間賃でもないと判断されたということですね」



森 永「う~ん、まあ献金に関しては、政治資金収支報告書にちゃんと記載されてるようですからね」



司 会「ただ、裁判で明らかになった内閣官房機密費の支出が適正であったか、また、公文書に改ざんや変造がなかったのか、このあたりは今後、調べられる事になりそうですね」



森 永「でもね、田金さんやっぱり立候補しましたよね」



森 永「今度の衆院選、それをどう判断するのかっていうのは我々有権者にかかってると思うんですよね」
アナウンサー「そのとおりですね」



アナウンサー「さ、続いての話題です。多摩川動物園でキングチーターの……」


 ちなみに、このワイドショーのコメンテーターは、森永卓郎と、何か分からないが老大家風の人と、あと女性二人。この正体不明の老大家風の人が、よく観ると『太秦ライムライト』の福本清三である。



 日本一の切られ役がこういう場面で、涼しい顔でノンクレジット出演しているあたりが、東映京都の作品だなあ、と感心しますね。



 話を戻して裁判所の控室。唯がワイドショーの報道を見ていると、橘検事がやってくる。



 唯 「ごめん、負けた」



 橘 「勝つための裁判じゃない。真実を公にする裁判だ。目的は十分果たした」



 橘 「お前さんは 本当にすごい。よくやったよ」



 橘 「さすが正義の味方、指定弁護士だ」



 唯 「なんで、なんで こんな時に初めて褒めるのよ」





 こう言っちゃ何だが、もともと負ける覚悟のうえでの裁判だった。ただ試合に負けても、勝負に勝ったと言えるだろうか? そんな思いをかかえて裁判所を後にしようとしたところで、唯と橘は三塚弁護士事務所の面々とばったり遭遇してしまう。



箭 内「ああ、やれやれですね」
三 塚「おう」
箭 内「食事行きましょう。予約ね、予約」



隆 司「はい」
三 塚「バローロ用意したほうがいい」
箭 内「いいですねぇ」




三 塚「満足か? 誰も望んでない真実を公にして。だが俺に言わせりゃ、そんなものは ただの露悪趣味だ」



 橘 「その真実のせいで人が一人、死んだんですよ」



箭 内「地検の検事です」



 橘 「そんなこと、二度とあっちゃいけない。そのためにも公にした意味は あったはずです」



三 塚「それを命懸けで隠した秘書は喜んでるか?」



三 塚「その遺族も喜んでるといいな」



 田金が辰波に便宜をはかり、事実上その見返りとして政治献金を受けていたことは事実である。しかしそもそも田金が辰波と関係をもった背景には、裁判員制度を大過なく確立させたいという田金の政治的信念があった。でもその信念に殉ずるかたちで田金の秘書は妻を残して投身自殺した。田金を始め関係者の面々を、単純に善悪どちらかに塗り分けて終われる話でもないのだ。



 だから世間の反応もイマイチである。ていうか、そのほうが良いんだけどね。世論が一方向に固まって、特定の政治家や有名人やアイドルを批判したり糾弾したりする状況のほうが、よっぽど不健全だ。
 真実が明らかになったので、これ以上、勝ち目のない試合を長引かせてもしようがない。控訴は断念して田金の無罪は確定。唯と橘検事は、京都地検に与えられた作業部屋からの撤収作業に入る。



インタビュアー「どう思われますか?」
 男 「……っていうかさ、裁判員制度を守るためのお金なんだったら、最初からそう言えばいいのにねえ」



 女 「そういう税金の使い道なら、最初から正直に言えば、怒る国民はいなかったわよ」



 唯 「嘘ばっかり」
 橘 「どうした? あんだけ応援してくれた一般市民に裏切られた気分か?」



 唯 「やっと わかった」
 橘 「えっ?」
 唯 「田金が法廷で言ったセリフ。当時批判ばかりだった裁判員制度のために、税金が大量に使われるとマスコミが騒いだら、裁判員制度は叩かれ、頓挫したかもしれない」



 橘 「まあ、良くも悪くも世論には力がある」



 橘 「真実がわかっただけでも裁判する意味はあった。おれはそう思うよ」



 それから、唯を指定弁護士に誘った先輩、京子(羽田美智子)にも業務終了の報告。続編があるとすれば、またこの人が唯に仕事をもちかけるのだろうが、ちょっと特殊すぎるからどうかな。個人的にはもう一作ぐらい観てみたい気もするが。
 さてここで、おっとりしているようで意外と細かいところに気が回る京子先輩から、急に「おめでとう」と言われた唯は、最初は首をかしげる。




京 子「ごめん唯ちゃん。 待った?」



京 子「で、控訴はしないでいいのね?」
 唯 (首を横に振る)



京 子「そう……でも、また指定弁護士の仕事 振っていい?」



 唯 (首を横に振る)



京 子「そう……」



京 子「あっそうだ、これ」



 唯 「えっ?」



京 子「やだ、忘れてた? おめでとう」



 唯 「あっ!」



京 子「やだ、気づいちゃった? ふふ、じゃあ、またね」



 何に気づいちゃったか。さっそく帰宅する唯。裁判をめぐって利益相反の関係にあったために、しばらく別居中だった隆司は一足先に帰宅していた。夫婦に日常が戻ってきました。お互いに「お帰り」と言い合うところがかわいい。



隆 司「お帰り」



 唯 「お帰り」



隆 司「『政治家には、国民を不安にさせないための嘘も必要なんだ』」



 唯 「えっ?」
隆 司「あれ? 見てないの? 田金の新しい失言」




 唯 「そんなこと言ったんだ……」



隆 司「うん。 で、また叩かれてるよ」



記 者「国民に説明しないとわかりませんよ」
田 金「危ないよ。 危ない 危ない」
記 者「教えてください」



 唯 「じゃあ 今度の選挙は落ちるかな」
隆 司「どうだろう? 今度の裁判で田金を見直す意見も、ちらほら出ているし」



 唯 「じゃあ しばらく続くね。今回の裁判の報道」
隆 司「どうだろう? 今回の事件、むずかしいから」
 唯 「え?」



隆 司「みんな、むずかしいこと考えるの嫌だから。わかりやすいことだけ叩くから。だからこんな事件でも、みんなすぐに忘れる」



 唯 「だとしたら、私がいろんなものを捨ててまでやった指定弁護士って、何だったんだろう……」



隆 司「でも僕は覚えてるよ。君が懸命に勝ち取った真実を」



隆 司「たぶん、一生」




 唯 「はい! 結婚記念日。私たちの」



隆 司「うわあ、そっか! 忘れてた。今日か」
 唯 「お互いさま。 飲もうか」



隆 司「おお、おお。 ちょっと、今日はすき焼きだから、ぴったり」



 唯 「京子先輩がわざわざ持ってきてくれたの」
隆 司「へええ」


 良いですね。えなりかずきが北川景子の夫という話題性のわりには、作品的に何のために出ているのか分からなかったわけだが、北川景子相手に、こういうふうに自然体で夫婦を演じられるのは誰だろうと思うと、これは意外に大事なキャスティングだったわけだ。
 同じころ祇園のバーでも、唯の労をねぎらって一献を傾けている人がいた。




 このお二人はただいま妊活中であるという。
 エンディング。唯は裁判の結果を、亡くなった田金の秘書、斎藤の墓前に報告に行く。ロケ地は時代劇からサスペンスまで東映京都では定番、右京区鳴滝泉谷町の西壽寺。




 するとそこには里美夫人が来ていた。確かに三塚の言うように、唯たちは斎藤秘書が命がけで隠した真相を世に暴いてしまった。里見はそれをどんなふうに思っているのだろうか?




 唯 「今回の裁判では、本当にご迷惑をおかけしました」



里 美「夫は……夫は悪い事をしてなかった」



里 美「まさか それをあなたが証明してくれるなんて」



里 美「本当に、ありがとうございました」





 橘 「すごいな 指定弁護士ってやつは」



 橘 「被告人側の遺族まで救うことができる。裁判には負けたくせに」





 橘 「また指定弁護士、やるよな?」



 橘 「俺は やりたい。いや、やるつもりだ」



 唯 「じゃあ……やらない」






 以上、北川景子スペシャルドラマ『指定弁護士』でありました。昨年10月から12月にかけてレビュー、今年7月に再開して8月に完結と、非常に変則的なかたちになってしまって申しわけありませんでしたが、ひとまず終了。いかがでしたでしょうか。


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おまけの話題】ところで、スポーツ新聞等でみなさまご案内かと思うが、ハルキ文庫のベストセラー、高田郁『みをつくし料理帖』が、角川春樹監督によって映画化され、2020年秋に公開予定という。


『みをつくし料理帖2』(テレビ朝日、2014年)でハモの骨切りに挑む北川さん


 角川春樹は2008年に佐々木譲の『笑う警官』を監督した時「この映画が観客動員150万人を超えなかったら二度と映画はやらない」とぶちあげて話題になった。動員150万人っていったら興行収入20億円くらいである。結局その1割から2割程度の数字に終わったので、普通の人だったらもう一生、映画から足を洗うと思うが、でもどうせこの人のことだから、10年くらい経ったら、やっぱり監督やるとか言い出すんだろうなと思っていた。そう思っていたのは私だけではないはずだ。ちなみに『笑う警官』の前の監督作品は『時をかける少女』のリメイクで、これが1997年だから、要するになんだかんだ10年に1本くらいのペースで劇場作品を撮っている。今回の『みをつくし料理帖』も「これが人生最後の映画」とか言っているけど、どうだか。角川春樹氏は現在77歳。普通の人じゃないから、80代後半でもう1本は映画を撮る、と予言しておこう。



 話がそれた。で、この角川春樹版『みをつくし料理帖』のキャストだけど、テレビ朝日版との比較で言うと(すみません、NHKドラマ版は省略します)北川景子が演じた澪は「松本穂香」、貫地谷しほりが演じた幼なじみの野江ちゃんことあさひ太夫は「奈緒」、髙橋一生が演じた又次は「中村獅童」というところまでが公表されている。つまり松本穂香は、『この世界の片隅に』『みをつくし料理帖』と、「北川景子で初めて実写化された作品の後追いヒロイン」を二作もやっちゃうのである。
 まあそれだけの話題なんだけど、なんとなく運命を感じる。この二人の共演もいずれ拝見したいですね。以上、今回はこれまで、みなさんよいお盆休みを。