実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第725回】パンドラの箱開くの巻(北川景子『指定弁護士』)

速報】次回『騎士竜戦隊リュウソウジャー』にてマスターピンク再降臨


 古い話題になってしまうが、今年の1月から3月にかけて、私が特に関心をもって観ていたドラマは、まず北川景子の『家売るオンナの逆襲』、続いて泉里香の『スキャンダル弁護士 QUEEN』、そして今が旬の若い子たちがたくさん出ていた『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』だった。で、『家売るオンナの逆襲』は措いといて、『スキャンダル弁護士 QUEEN』と『3年A組』の二作品についていうと、タイミングが悪かったというか、リアルな世界で戦っていた元NGT48の山口真帆さんに、どちらも見劣りしていたと思う。



 『スキャンダル弁護士 QUEEN』の竹内結子は、法廷に出ることなく、ネット上でSNSを活用して世論を誘導し、クライアントに有利な状況を作り出す「スピンドクター」ということなんだけど、ちょうどドラマを一歩先行くぐらいのペースで、山口さんによる被害の告発、運営の記者会見に対する批判が、SHOWROOMやツイッターを通して行われた。山口さん本人としては、追い詰められたあげくの必死の反撃だったのかも知れないが、ネットをみごとに活用して、国民的人気をほこるアイドルグループの運営会社を相手に、たった一人で世論を誘導し、勝利してしまったわけで、竹内結子も色あせる「スピンドクター」ぶりだった。



 『3年A組』の菅田将輝は、ネットの恐さを若い世代に伝え、SNSなどで未確認の噂を拡散すれば、場合によっては無辜な人間の生命を奪う結果にさえつながることを自覚してもらうために、命がけの「授業」を行なった。でもその警告も現実世界には届かず、NGT48の特定メンバーは、ファンを利用して山口さんを襲わせた犯人と目され、確定的な証拠も明らかにされないままバッシングを浴びたあげく、殺害予告まで受けた。



 さて今年もアイドルの祭典「TOKYO IDOL FESTIVAL 2019」(TIF)が開催された(2019年8月2日〜4日)。個人的には桜エビ〜ずが、昨年来の勢いに乗ってついにメインのHOT STAGEに踊り出たことが最大のニュースだった。けど世間的には2日目、8月3日の朝一番に、いわば前座の扱いでNGT48が出演、メンバー全員で5曲を歌って活動を再開したことが、何より話題になった。これは事前の出演予定者としては告知されておらず、前日の8月1日に電撃発表された。まあそうなるわな。



 同時にNGT48の運営会社から、5月末からしばらく封鎖していたメンバーSNSの更新を解禁することも告知された。ところがこれが、なかなかな内容で。


  これまでNGTメンバーやAKSデジタルコンテンツ部門担当者等と話し合いを重ね、改めて「NTG48のSNS運用ルール」として、下記を定めました。


1 閉ざされた空間で特定のファンを優遇する行為にあたる可能性があるため、メンバーからのダイレクトメッセージの送信は禁止致します。
2 仲間であるメンバーを傷つけたり、憶測を生む可能性があるため、メンバー自身がフォローしている48グループメンバーのフォローを断りなく外すことを禁止致します。

(中略)また研究生に関しましては、今まで運用していたInstagramを取りやめ、755の運用に切り替えさせて頂きます。正規メンバーに昇格するタイミングがございましたら再開することも可能と考えておりますのでご了承いただければと思います。


 なんだかね。そもそも、こういうルールを世間に伝える意図が不明である。AKBグループのいわゆる「恋愛禁止ルール」だって、公式サイトに明記されてるわけではないし、その必要もないし。それに「メンバーのフォローを断りなく外すことを禁止致します」なんて、また山口元メンバーをディスって、さらには「メンバー同士、仲が悪くても、外向けには仲良しのフリをしておけ」という指示を公にさらして、いいのか? あと研究生はインスタ禁止で、正規メンバーになったらOKっていうのは、しばらく前に不適切投稿をして研究生に落とされたメンバーを念頭に置いたルールとしか思えないんだが。



 そういうわけで、NGT48の運営母体が、いまだ事態の本質を理解できていなくて、抜本的な見直しでなく対処療法しか考えていないことがよく分かった。TIFのステージはわりと暖かい拍手に包まれて無事終わったそうだが、こんな状況で活動再開してもなぁ。



 さ、というわけで『ドラマスペシャル 指定弁護士』はいよいよクライマックスの裁判シーン、開廷だ(2018年9月23日放送、テレビ朝日・東映、脚本:櫻井武晴/照明:池本雄司/撮影:関照男/監督:竹園元)。まずは一ツ木唯(北川景子)の告発から始まる。これまで何度も観てきたように、きっかけは、京都市内の国有地が、社会福祉法人辰波福祉会へ破格の値段で払い下げられた一件である。その便宜を図ったのが、この法人から献金を受けている田金代議士(石橋蓮司)であるという唯の指摘に、真っ向から反論するかつての上司、三塚(中村梅雀)と同僚の箭内弁護士(矢柴俊博)。そして傍聴席で裁判の成り行きを見守る夫の隆司(えなりかずき)、京都地検の橘検事(北村一輝)、そしてこの事件にからんで投身自殺した田金の秘書の妻、斎藤里美(真飛聖)。



 唯 「財務省には、認可は不適当とする関西財務局の意見を無視してまで、この国有地を割り引いて払い下げねばならぬ合理的な理由はない」



 唯 「一方、辰波福祉会理事長、辰波栄泉氏から献金を受けている被告人には、同会に便宜を図るよう国に忖度を求める動機はあると、指定弁護士は推察するものであります」



三 塚「そのような事実はなく、また被告人も立候補する予定の選挙前の時期に、証拠もないのに容疑だけで強制起訴まで持っていくというのは、常軌を逸しており、被告人の政治的抹殺を目的としたものと思わざるを得ない」


 ここで証人として法廷に立ったのが、社会福祉法人辰波会会長、辰波(山田明郷)。辰波は国有地を格安で払い下げたその年から毎年、田金の事務所に政治献金をしている。つまり便宜をはかってもらった代償である。だがもちろん辰波が正直にそう言うはずもないし、献金の額は田金の政治資金収支報告書にちゃんと記載されているので、法的な問題は無い。



 唯 「では あなた個人から被告人の政治資金団体への献金は、国有地払い下げの認可 および値引きを口利きしてもらった対価ではないんですね?」



辰 波「違います。田金先生という政治家の志に、純粋に共感した上での献金です」



 唯 「その献金は財務省が辰波福祉会に国有地を払い下げた2010年からです。これは 偶然ですか?」
辰 波「全くの偶然です」



 唯 「あなたと国を繋いだ被告人への賄賂、いや、手間賃のようなものではないんですか?」



辰 波「は?」



箭 内「裁判長。ただ今、指定弁護士が発言した手間賃の意味が不明です」



裁判長「指定弁護士は、手間賃の意味を具体的に説明してください」



 田金の口利きで、辰波は八割引きという低価格で老人ホーム建設の土地を手に入れた。その「手間賃」として定期的に政治献金をした。両者の関係はそこでひととおり完結している。実は唯には、これを犯罪として立件するつもりはなくて、この件をきっかけに、もうひとつのカネの流れを闇の中から引きずり出すことにあった。それは土地の除染費用として社会福祉法人辰波会に出された金の出所と、その行方である。田金が辰波に便宜を図った最大の目的は、自分への政治献金をせしめることよりも、むしろ辰波福祉会を、この金を通すトンネルとして利用することにあった。



 唯 「はい。では、甲47号証、甲48号証、甲49号証をご覧ください」



 唯 「甲47号証は、2010年から2014年の5年間に、国交省が辰波福祉会に交付した補助金の通知書です」



 唯 「甲48号証は、同じ5年間の内閣官房機密費で、京都府に支出されたある予算です」



三 塚「異議あり!」



三 塚「裁判長、指定弁護士は被告人の容疑と無関係な資料を提示することで、いたずらに審議を長引かせようとしています」



 唯 「裁判長、除染費用を値引きされていたにもかかわらず、そのための補助金が交付されていたことは、被告人の容疑と無関係ではありません」



箭 内「しかし 内閣官房機密費は被告人の容疑となんら関係がないはずです」



 唯 「裁判長、この二者の同じ年の金額をご確認ください」



 唯 「一千万を超える額が、一円の単位まで一致しています」



裁判長「確かに」



裁判長「弁護人の異議を棄却します」



裁判長「しかし指定弁護士、質問の趣旨を明確にしてください」



 唯 「これは、辰波福祉会への補助金が、内閣官房機密費から出ている証拠だと指定弁護士は主張します!」



田 金「いいかげんにしたまえ!」
裁判長「被告人、座りなさい!」



箭 内「裁判長。それは単なる指定弁護士の主観であり、弁護側はこの証拠の削除を求めます」



 唯 「裁判長、甲49号証の金額もご確認ください」



裁判長「これは……」



裁判長「この3つの金額は、5年間、毎年一致していますが、甲49号証の金額は一体」



 唯 「甲49号証は、京都地検の捜査関係費と、京都地裁の第二調達費の合計額です」




 どよめく法廷内。辰波福祉会に対して、土地の除染費用として降りた金の出所は、いわゆる領収書の要らない国家予算、内閣官房機密費であり、その行き先は京都地裁の調達費だった。辰波福祉会は、その入口と出口を隠す衝立で、辰波から田金への政治献金は、それをただの政治家の贈収賄っぽく見せかけるカムフラージュだった。そしてこういうカネの流れをプロデュースしたのが田金代議士だったのである。
 ところでこの裁判長の役をやっている俳優のノモガクジさんは、大学は法学部を出て司法試験に合格して、今は俳優と弁護士を兼業している珍しい方である。そのせいか木村拓哉の『HERO』の劇場版一作目とか、周防正行監督の痴漢冤罪ドラマ『それでもボクはやってない』とか(どちらも2007年)、裁判絡みのドラマの法廷シーンで見かけることが多いし、俳優として出演しつつ、法律面の監修をすることもあるらしい(この作品ではクレジットされていない)。



 英語が堪能で、2012年にはイギリス映画『All That Remains』にも出演している。これは『長崎の鐘』の著者で、長崎医科大で被爆して白血病で亡くなったカトリック教徒の医師、永井隆を題材にした作品で、ノモガクジは昭和天皇を演じている。
 話を戻します。唯たち指定弁護士の狙いは、田金代議士の贈収賄ではなく、それを隠れミノにして密かに用いられた国家予算の使途を明らかにすることにあった。それを知って、田金と三塚弁護士たちも激しく狼狽する。


 唯 「甲49号証は、京都地検の捜査関係費と、京都地裁の第二調達費の合計額です。その金額が、2010年から5年間ずっと辰波福祉会への補助金と一緒なんです。これは……」



三 塚「裁判長!これも本件とは無関係な……」



裁判長「指定弁護士、つまり、どういう事ですか?」



 唯 「全ての予算は2010年から始まっています」



田 金「やめろ」



 唯 「裁判員制度が本格的に動き出した年です」


 その時、傍聴席の橘検事の携帯が震動する。人脈が豊富でどんな情報でも手に入れてくれる橘検事の信頼できる先輩、京都地検の「忠一さん」(生瀬勝久)からだ。裁判を有利に運ぶ新たな資料を入手したのだろう。橘はいったん法廷を離れる。



 唯 「京都地検の捜査関係費は、そのために新たに必要となった捜査費や、それに伴う人件費です」



裁判長「この京都地裁の第二調達費とは?」



 唯 「裁判員制度の導入で、裁判員裁判用の法廷を作ったり、モニタを増やしたり、裁判員の待合室や評議室を作ったり」



 唯 「さらには毎年、裁判官を増やさざるを得なくなったり、そういう費用です」



 唯 「それが、きっと2010年以降、足りなくなり、全国の都道府県で必要となった」



 唯 「あまりにも大きな負担で、これはきっとその京都府の分です」



裁判長「京都府の裁判員裁判の対策費用って事ですか?」



 唯 「そう言ってもいい予算が内閣官房機密費から出て、辰波福祉会に交付された補助金に化け、それが裁判所や検察庁に流されていたんです!」



 唯 「そして、京都でその采配を振るっていたのが、被告人田金清造だと指定弁護士は主張します!」



 司法に対する国民の理解と信頼の向上をはかるため、小泉内閣の司法制度改革推進本部が裁判員制度を実現し、初の裁判員裁判が行われたのが2009年の東京地裁である。様々な運用上の問題点が指摘され、あちこちに波紋を投げ掛けながらも見切り発車的にスタートした制度だったが、当初見込んでいた予算ではとても経費を賄えないことが明らかになる。そこで国民やほかの省庁には秘密裏に、内閣官房機密費からこっそりとその対策費を捻出することが計画されたのだという。



記 者「たった今、指定弁護士から、内閣官房機密費が裁判員裁判対策費として使われていた、という発言がありました」



記 者「繰り返します。たった今 指定弁護士から、内閣官房機密費が裁判員裁判対策費として使われていた、という発言がありました」



田 金「当時……2010年当時、政府による、公務員削減の基本政策があった」



田 金「そんな中で、検察庁や裁判所だけが人員と予算を増やせば、他の省庁との軋轢を呼ぶ」




田 金「それに当時、裁判員制度に対する世論の批判は かなりあった」



田 金「そんな時に そのための予算が、つまり 多額の税金が使われたと公になれば……」



 唯 「公になれば、なんです?」



田 金「今回、私を叩いたキャンペーンが行われたように、私を辞めさせようとあちこちでデモが起きて、世間は大騒ぎをする」



田 金「それはそのまま、始まったばかりの裁判員制度が頓挫することになる」



 唯 「だから表立った予算は組まず、それを内閣官房機密費から出す手を考えたんですか?」



田 金「考えたのは 私じゃない」



 唯 「では誰です?」



田 金「……黙秘する」



 唯 「……田金さん……」
田 金「私のあっせん収賄罪とは無関係だ!」



田 金「もっとも私は賄賂などもらってないが」


 田金がこれ以上しゃべるわけないことは分かっているので、できれば別のルートからさらに情報を仕入れておきたい。そんな唯の執念が通じたのか、ぎりぎりのところで忠一さんが新情報を入手、橘を通じてファイルが唯の手にわたることになった。



 唯 「でも、あなたは当時、国有地の払い下げ認可が下りなくて困っていた辰波福祉会に目をつけ、補助金に化けさせた」


 唯 「で、内閣官房機密費の中継地とする代わりに、払い下げ認可が下りるよう口利きをした。それも8割引きで!」



 唯 「そんな采配を振るった手間賃として、あなたは今も献金を受け続けている」



 唯 「そんなあなたのような繋ぎ役が、京都府だけでなく、全国にいるんでしょうね」






 唯 「そしてその繋ぎ役は、あなたが法務大臣をしていたころの、内閣司法検討会のメンバーですか?」



 唯 「今では 大学の教授、弁護士、市民グループのトップ」



 唯 「民間企業の顧問などの身分で全国に散らばっているようですが」



 唯 「そんな彼らなら、田金さん、あなたと同様に……」



田 金「我々は ただ、日本のため、当時、批判ばかりだった裁判員制度を、なんとか成功、いや失敗は許されないという重圧と戦っていたんだ!」



 唯 「それが 毒まんじゅうを食べたメンバーですか?」



田 金「違う!我々は、今でも日本の正義のために戦ってるんだ!」



 唯 「以上です」





 以上が事件の全貌である。なるほど田金は辰波から(政治献金という名目の)賄賂をもらったことは事実のようだ。ただ、辰波の法人を利用して田金が本当に行なおうとしたのは、始まったばかりの裁判員制度を円滑に進めるための資金運用であって、必ずしも私服を肥やすというたぐいのものではなかったし、金の出所も、内閣官房機密費というれっきとした国家予算だ。田金もまた、ある種の大儀にしたがって行動したのである。しかし国家は官房機密費という国が自由に使える、まあ内閣のヘソクリみたいな財源に光が当てられることを好まない。そこを隠そうとして、一人の人間の生命までが奪われてしまった。
 検察審査会制度は裁判員制度の後を追うように設立した。(御指摘受けたので訂正します)改訂検察審査会制度は、裁判員制度と同じ平成21年(2009年)5月より施行された。その狙いも裁判員裁判制度と同様、司法に民意をより強く反映させることにあった。だからこそ検察審査会が起訴相当と認めた田金の件を、指定弁護士の唯が告発したのだが、その結果明るみに出たのが、内閣官房機密費の支出が裁判員制度のために暗黙裏に使われたという事実である。このへんのちょっと皮肉な感じは、『相棒』の脚本家である櫻井武晴らしいね。
 と、裁判が終わったところで、本日はこれまで。え〜っと、みなさん、ご理解戴けましたか?